投資しているファンドの名前のあとに、AとかBとかCとかのアルファベット文字がついているのをご覧になった方もあるのではないでしょうか?これらはシェアクラスと呼ばれるもので、ひとつのミューチュアルファンドに対して存在する異なるシェアの種類のことです。たった一つの文字ですが、これが案外大きな意味を持ちます。今日はシェアクラスの学びです。
シェアクラスとは
たとえば、Franklin Income A とか、Franklin Income Cとか言った具合に、最後についているアルファベットがシェアクラスです。シェアクラスが違っても投資しているファンドは全く同一です。同じリスクレベル、同じ投資内容、同じ投資目的で運営されている同一ファンドです。しかしながら、シェアクラスが異なると、ファンド販売において付随して受けられるサービスが異なるため、セールス上の異なる手数料が設定されています。手数料が異なるため、同じファンドであるにもかかわらず、シェアクラスごとで得られる利回り成績が異なることになります。投資をする人は、投資するミューチュアルファンドに対して提供されているシェアクラスのうちから、自分に最も合ったシェアクラスを選ぶのが筋ですが、ところが案外このシェアクラスの選択肢についてはあまり知らないまま、ひとつのシェアクラスを選んでいる場合も多くあるように思います。主要シェアクラスの内容は以下のとおり;
クラスA: frontend sales load(投資するときにかかる販売手数料)の設定があります。投資額が大きくなると、frontend sales loadが下がっていく仕組みが提供されている場合もあります。年々かかる販促/マーケティング費用(12b-1feeと呼ばれる)は低めの設定であり、よって毎年かかるファンド手数料は低めです。
クラスB: frontend sales loadはない代わりに、backend sales loadといってファンドを売る時にかかる手数料の設定があったり、また年々かかる販促/マーケティング費用(12b-1fee)の設定が高めで毎年かかるファンド手数料が高めです。
クラスC: frontend sales loadや backend sales loadは低めで、年々かかる販促/マーケティング費用(12b-1fee)の設定があり、毎年かかるファンド手数料が高めです。
クラスI: すべての手数料が低めですが、団体向けに提供されるため、雇用主の401(k)プログラムを通してなどでしか投資することができず、個人には開かれていないクラスです。
それぞれのミューチュアルファンドが発行しているProspectusとよばれる説明文書にすべてのシェアクラスと手数料が開示してあります。あるいは、オンラインでファンド名を入れてみると、異なるシェアクラスの情報が出てきます。
なお、すべてのミューチュアルファンドでシェアクラスの設定があるわけではなく、一種類のクラスしかないミューチュアルファンドもたくさんあります。さらには、ETF(Exchange-traded Fund)にもシェアクラスはありません。
最近では毎年かかるファンド手数料に注目が当たるようになり、低手数料化傾向が顕著です。このため、ファンド手数料が最も高めなBシェアは大変少なくなっており、今後消滅していくのではないかと予想されています。
こんなかんじ
たとえば上で取り上げたFranklin Income Fundのケースを見てみましょう。
このファンドの場合は、シェアクラスAに2種類があり、どちらもfrontend sales load(上ではFront Load)の設定があり、毎回投資を行うたびに投資額の3.75%を販売手数料として支払います。A1のほうが毎年のファンド手数料(上ではNet Expense Ratio)が低めですが、現在はA1シェアは新規顧客には開かれておらず、0.72%のAシェアだけが開かれています。Cシェアは、frontend sales loadがないので積み立てを行う全額が投資に回りますが、毎年のファンド手数料は1.12%と高めであるうえ、ファンドを売る時にbackend sales load(上図では、Deferred Load)が1.00%かかります。たとえばリタイヤメントに入って、年間$20,000引き出したとすると1%の$200を支払う形になります。Advシェアは最も手数料が安く、frontendもbackendも手数料がかからず、年間のファンド手数料も最も低い0.47%です。
Aシェア、Cシェアはブローカーやエージェントを通してファンド投資を行う場合に、ブローカーやエージェントの提供するアドバイスやサービスに対しての販売手数料を支払うしくみになっています。アドバイスに対して満足しているのなら支払う価値があります。ただ、投資額が大きくなるにつれてパーセンテージ設定されている手数料のドル絶対額は大きくなりますから、投資額がある程度大きいなら、アドバイスは固定額で受け、ファンド投資は販売手数料のないものを選ぶほうが理に適う可能性が高いでしょう。
おもしろいことにE*TRADEでもFranklin IncomeのAシェアが購入できますが、もちろん人を介しての販売ではないので、frontend sales load(下図ではFront-end load)はWaive(免除)されると書かれています。
frontend sales loadがなかったとしても、下のクラスのほうがファンド手数料が低いので、やはり投資するならこちらを選ぶべきと思います。
手数料は、積み立てをするたび投資額を減らし、また年々の利回りを食いますので、できるだけ最小にするのが望ましいです。たとえば、IRA口座を開き、初期投資額$10,000でファンド投資を始め、その後年々$5,000ずつFranklin IncomeのAdvシェアとA1シェアに20年間積み立て続けた場合、20年後の残高は$166,563と$176,136の差が出ます。その差、$9,573です。年々のファンド手数料累計は前者が$7,513、後者が$9,513であり、後者には追加で$3,787の販売手数料がかかっています。
なお、再度書きますが、販売時のアドバイスやその後のフォローなど、この差を正当化するサービスを受けているのなら、この手数料は喜んで支払うべきだと思います。そうでないのなら、他のシェアクラスを選んだ方がよいことになります。
注)ここではFranklin Incomeファンドを例に出しましたが、この記事はこのファンドの良し悪しを考慮するものではありません。上の例であげた20年間のリタイヤメント資金準備には、通常はIncome Fundの類は適さないことが多いので、それを付け加えさせていただきます。
いつもとても参考になる情報をありがとうございます。引退して今は全く別の業界ですが、昨年まで長年、ウェルスマネジメントを大手証券会社で行っていました。以下気がついたことがありますので、コメントいたします。(余計なことだったらすみません)
1。Cシェアのback end loadは一年以上保有していると、払わなくてすみます。
2。Aシェアは同じファンド会社の別のファンドに乗り換える時、セールスチャージを改めて払う必要はありません。乗り換える場合はExchangeと言います。セールスチャージがかからないことを確認し、またAシェアを選びます。もし保有しているA シェアの成績に不満があったりして、ファンドの種類を変えようと思う場合、同じファンド会社の別の投信を選んだ方が、手数料が安いはずです。(ブローカーはあまりExchangeのことは教えてくれない)
3。大きな会社の401kであれば、Iシェアのファンドかもしれませんが、従業員が少ない会社は別のクラスのファンドの可能性があります。勤めている会社の401k資産全体額でシェアクラスが決まります。
4。アセットベースまたはフィーベースと呼ばれる口座タイプ(預かり資産に年間1%〜1.5%ぐらいのアドバイス料を払う仕組)であれば、一般の人もIシェアを購入可能です。ただ、預かり資産の金額がある程度多くないと、その口座タイプを選べません。下限は会社によって変わります。
大変参考になる、経験に基づくお話しをありがとうございます!みなさんに参考になると思います。
こんにちは。いつも為になる情報をありがとうございます!
ETFについてお聞きしたいです。ETFにはシェアクラスがないとのことですが、世界中で発行されているETFも含めたすべてのETFにはシェアクラスはないということなのでしょうか?
どうなんでしょうね。SECの情報サイトには;
Although ETFs offer only one class of shares, many mutual funds offer more than one class of shares. Each class will invest in the same portfolio of securities and will have the same investment objectives and policies.
とありますが、これはアメリカのSECの情報なので、他国だと異なる法律で異なる管理をしていれば、シェアクラスがあることもあるかもしれません。私にはわかりません。
いつも大変ためになる記事をありがとうございます。
個別株にも「xx INC CL A」という記載のあるものがありますが、
これも最後のAはクラスAということで、同じ会社の株でもこちらのほうが手数料が高い、
ということでしょうか?
株式(Common Stock)のクラスは、ファンドのシェアクラスとは異なる概念だと思います。
同じ会社の株にはいくつかのクラスが設定されていることがあり、そのクラスによって株主の権利(Voting Rightsと呼ばれる投票権)、また配当金への権利などにレベルが設定されています、。クラスAは、最も権利が大きいものです。権利が違うので株の値段も違うかもしれませんが、それは権利への対価であって、セールス手数料ということではありません。