このブログ・サイト、Smart&Responsibleが立ち上がって1年が経ちました。読んでくださった方、応援してくださった方、コメントくださった方、本当にどうもありがとうございました。アメリカに暮らして18年、さまざまな苦労と失敗を通して、ものごとのしくみを知り、情報を集め、自分で決めることの大切さを学んできました。このサイトが情報交換の場となり、同じアメリカに暮らす日本人の皆さんと、互いに学びあい励ましあえるようなコミュニティーをつくれたら素敵だなというのはじめの思いでした。
1年経った今、今一度原点に戻り、Smart&Responsibleという名前にこめた思いをちょっと振り返ってみたいと思いまして・・・同時に、みなさんのお考えやご意見を伺えたらとも思います。記事下にメッセージ欄を用意しましたので、もしよろしければご記入いただければと思います。
このブログを始める前、実はわたしはある会社で働こうとしたことがありました。保険やローンや投資のことをアドバイスしたり商品を売ったりする会社でした。自分の得意なことを使いながら、人の助けになるような仕事ができるかもしれないと期待にわくわくしていました。
当時、その会社ではVariable Annuityという保険商品に力を入れて販売していていました。「投資しても絶対に損はしない、それでいてリターンはちゃんと見込める安心商品」というふれこみでした。誰にでもとても安心でお得な商品というイメージです。ただ、わたしは話を聞きながら、心にひっかかるものがありました。
人に薦めるからにはまずは自分が納得せねばと、その会社に置いてあったVariable Annuityについてのパンフレットを全部すみからすみまで読みました。読んだ後でわたしの達した結論は、「この商品がぴったりニーズにはまる人もいるかもしれないが、多くの人には決して最適な商品ではない」ということでした。
ちょうどその時、Fortune誌だったかと思いますがVariable Annuityの特集記事が出て、薦められるがままに購入して非常に痛い目にあった人の話や、この商品の問題点などをえぐった内容が書かれていました。そこで、わたしの疑問とこの記事のことを、その会社のオーナーにストレートにぶつけてみました。「この商品は、万人にとってベストとはいえないのじゃないですか?簡単に薦めてはいけないようなもののように思いますが。」と聞いたところ、そのオーナーの答えは、「みんながみんな、あなたのように研究したり、Fortuneを読む人ではないからいいのです」というものでした。
一瞬その答えの意味がよくつかめなかったのですが、よくよく考えた結果、わたしはその会社からは離れようと決心しました。Variable Annuityはとても儲かる商品です。薦めて売ればかなりいい販売コミッションが得られる商品です。正直いってお金は魅力的でしたが、わたしの心はきっと安らかではいられないだろうなと思いました。
この経験を通して、わたしはいかに消費者に情報がないか、いかに限られた、また偏った情報で消費者が決断をせざるをえないかを垣間見た気がしました。べつに正義の味方を気取るつもりはありませんが、これは「ひどい」と思いました。それが、このブログSmart & Responsibleをはじめるきっかけとなりました。
ということで、今日は、
Smart & Responsibleの 「Smart」 に こめられた意味
を振り返ってみます。。次回は「Responsible」のほうです。。。
「よくわからないので適当に決めてしまって、後で後悔した」、「よく知ってさえいればもっと違う判断をしたのに」と思ったことはありませんか?わたしは何度もあるんです。何度も失敗していろんなことを学んできたような気がします。
よい決断をするには情報が不可欠。わたしたちは瞬時に何ギガもの情報を送受信できるような情報社会に生きています。オンライン情報はふんだんにあり必要な情報はワンクリックで簡単に手に入るかのように感じます。ところが、それとは反して、日々のパーソナル・ファイナンスに関わるデシジョン・メイキングでは、情報が偏っていたり不足していたりするため、ベストでない選択をしてしまうことがよくあるものです。情報はあふれているのに、必要な情報はないのです。それは、なぜでしょうか。
情報を集めるチャンスが与えられない
ペースの速いこの世の中、よ~くものごとを調べる暇もなく瞬時に決断を迫られるような場合も多いですね。たとえば、店頭で聞かれる「ストア・カードをつくりますか?」とか「エクステンデッド・ワランティは買いますか?」というあの質問。“You can save 10% right away.”なんて言われたり、“I highly recommend you get the coverage.”なんて言われると、”Yes”と答えてしかるべしみたいな感じがあります。これは、必要な情報を与えないばかりか、質問したり考えたりする時間も与えないで早く売ってしまえ・・・というとても効果的なセールス戦略です。。。しかも「後じゃダメ、今決断しないと困ったことになります」というようなオドシも効果を奏します。あの状況では、なかなか「Smart」な決断はできません。あらかじめしくみや背景を知っておけば、自信をもって”Yes”なり”No”なりの返事ができるかもしれませんね。
店頭での3秒決断 – エクステンデッド・ワランティ 買う、買わない?
情報がなるべく気づかれないよう提示されている
「Smart」な決断をするのは情報が必要ですが、決断に必要な情報をなるべく見えないように、見つからないようにするというのも企業の戦略です。消費者が知っていれば買うのをやめるような類の情報を、開示しないわけではないけれど”fine print (極小文字の注意書き)”で書いておいて、消費者が気づかずに/よく考えずにワナにはまるのを待っているかのようなやり方もあります。たとえば銀行の手数料。$100のボーナスをくれるというので開けたチェッキング口座。ところが、ちゃんと目を凝らしてきちんと管理しないでいると、あっちで$15、こっちで$25などと手数料がかさみ、当初のボーナスなんてすぐ飛んでしまいます。ギフト・カードもひどいですね。$50のカードだったはずが、使わないでいるうちに残高ゼロなんてケースもあるんですから。これらは、みんな”fine print”でどこかに情報開示されているはずですが、なるべく消費者の注意を引かないようにヒソヒソ・コソコソ但し書きがあるのです。悲しいことですが、そのようなやり方で一番搾取されている顧客層は、一番情報をもたず、一番自分で考えない人たちなのです。負けてはいられません。ちゃんと「知っておくこと」で、「Smart」な行動がとれたらいいな・・心から思います。
銀行が銀行でなくなるとき - ご自分の銀行にハッピーですか?
情報が意図的に隠されている
場合によっては、“fine print”でさえも開示されていない、そう「意図的に隠されている」情報もあります。ミューチュアル・ファンドをはじめとした投資口座の手数料が最たるものです。投資のなかでも401(k)に関しては、手数料の開示がこの夏から義務づけられ、これからは自分たちがいくら払っているのかがよりクリアになっていくはずです。これは投資手数料の透明度を上げるための第一歩ではありますが、消費者の意識が十分高まるのには時間がかかるかもしれません。でも今までは、「いくら払っているか検討もつかない」、あるいは「払っていることさえも知らない」消費者が多かったのです。当然です、隠されてきたのですから。。そしてまだまだこのような問題は存在し続けます。「Smart」であるためには、ちょっとした「情報探偵」になるのも必要かもしれません。
インベストメントの手数料にお気をつけを!(1)-Sales Load
インベストメントの手数料にお気をつけを!(2)-Expense Ratio
インベストメントの手数料にお気をつけを!(3)-ファンドに払う手数料
インベストメントの手数料にお気をつけを!(4)-Trading Costs
情報に不均衡がある
消費者であるわたしたち自身が「Smartであることをあきらめてしまう」ような状況もあります。「情報の不均衡」とでも呼ぶのでしょうか。。。ビジネスが成立するためには、売り手と買い手、サービスの提供者と享受者などの二者が必要ですが、この二者の持っている情報量にあまりの差があると、情報を持っていない側は持っている側の言いなりにならざるを得ないというようなことが起こります。
たとえば、家のモーゲージ・ローン。お店でりんごを買うことは人生に何度もあるし、値段やおいしさの比較も簡単です。おいしくて安いりんごをどう買えばいいかの知識はだんだんついてくるものです。でも、家を買うのは、一部の人を除いてはそうそう頻繁にあるわけではありませんね。それに家の購入のプロセスもローンの内容も、なかなか複雑でよく知ることが難しいものです。消費者側にはどう「Smart」にローンを選べばいいかの知識がなかなか溜まりません。そうなると、どうしてもモーゲージ会社やブローカーのいいなりになりがちで、気づかないうちにとても高くつく買い物をしていることがあるのです。
それから、医療もそうです。わたしたちの多くは何の医療トレーニングを受けているわけではありませんから、お医者さんや病院を前に「Smart」でいることはなかなか難しいですし、場合によっては「Smart」になりたいという気概さえもない場合も多いのではないでしょうか。つまり、「おまかせ」です。もちろん、モーゲージのプロやお医者さんなどと同じだけの専門知識を持つことは不可能ですが、わたしたち消費者も情報の「ツボ」を抑えておくことで、少しでも「Smart」な選択ができるよう用意をすることは可能だと思います。
モーゲージ・ローン - 何千ドルも節約する法(Coming Up)
消費者として、雇用者として、個人として、自分に必要な情報を見極め、自分たちのためにうまく情報を利用する術を身につけたいというのがわたしの目指すところです。個々の消費者は微力でも、みんなで戦えばコワくない!みんなで「Smart」になろうよ・・・というのが、そこに込められた思いです。。
そこで、みなさんがどのような思いを持ってこのブログを読んでくださっているか、どんな問題・課題について知りたいか、ちょっとお聞かせいただけませんでしょうか?Message欄を用意しましたので、お気軽に書いていただければと思います。
- パーソナル・ファイナンスに関わることならどんなことでも。
- いただくメッセージは「コメント」ではありませんので、公開されません。
- 公開される「コメント」をされたい場合は、さらに一番下のLeave a Reply欄をご利用ください。
- 個人的問題には具体的なご解答ができかねますが、一般的な問題として記事にとりあげさせていただくかもしれません。
- お名前はニックネームでOK、e-mailアドレスは入力いただいても、いただかなくてもOKです。
これはコメント欄ではありませんので、ご記入いただいた内容は公開されません。管理者にメールで届くのみです。
1周年おめでとうございます!
わかりやすく、丁寧な記事に、いつも感動しております。
そうですねえ。もう言うことなしにすばらしいサイトです。
前から気になりつつも、自分ではしっかり調べていなかったことがまとめられているので、本当に助かっています。感謝しております!
もし、意見をあえて言うとすると。。。出版社さん探した方がいいかも!!
出版社さ~ん!ここにそのまま本になりそうなサイトありますよ~!!
あと。。。広告はつけないのですか?
Cheeさん、いつも励ましてくださってありがとうございます。そう、そろそろちょっといろいろ考えないといけませんね~。広告もね~。。
はじめまして。
私もこちらのサイトで勉強させて頂いています。
色々役立つ情報に感謝しています。ありがとうございます。
今まで知らなかったばかりにかなり損をして来ましたが、後悔してもしょうがないので高い勉強代払ったと思い、これからはスマートなファイナンシャルライフを目指したいと考えていますので、これからもどうぞよろしくお願い致します。
cranberryさん、コメントありがとうございます。わたしも随分と高い勉強代を払ってきました。。。これからもどうぞよろしくお願いします。
いつも楽しく読ませていただいています。アメリカで生活をしている同じ女性として、岩崎様の素晴らしいファイナンシャルリサーチ能力に頭が下がる思いです。本当にアメリカでは、情報を知らされるのを待つのではなく、自分から積極的に調べるのがとても大切なのですよね。私もこのサイトでたくさん学ぶことができました。
私の夫は小学校の教師で、Public Service Student Loan Forgiveness Programを活用させていただいています。このプログラムのおかげで、大学と大学院の学生ローン、約10万ドルがForgivenされます。こういうのも、お知らせの手紙が来たわけではなく、自分たちでインターネットで調べた結果見つかったという状況でした。ほんと、知らなきゃ損、ですよね。
これからもずっとこのウェブサイトを続けてください。Thank you!
SW様、コメントありがとうございました。10万ドルとはすごいですね。それは知っているのと知らないのとでは、天と地の差ですね!ご自分でお調べになったこと、すばらしい!そういうのって、インターネットで調べようとも思わなければ、それでお仕舞いですものね。みんなで情報共有して、みんなでパワーアップしていけたらステキですね。
1周年おめでとうございます。アメリカで生活初めてまだ4年弱ですが、本当に情報ががぎられているような気がしてました。自分で調べなければ誰も教えてはくれないし、損をするばかり。私はファイナンシャルのことについては本当に知識が乏しく、このページは本当に勉強になります。私も調べて勉強していかなければという気持ちになります。みんなで情報共有してスマートに生活していきたいですね。これからもこのwebサイト続けていってください。応援してます。
turtleさん、いつも応援ありがとうございます。先日は、お薬のことでよい情報をいただきましたこと、ありがとうございます。たしかに消費者、一個人の力は、大企業やWall Streetの前には限られたものですが、自分の得意な分野での情報をみんなで出し合えば、大きくパワーアップできる気がするのです。。これからもよろしくお願いします。
祝一周年、おめでとうございます!!
私も他の方と同感で、このサイトには大変お世話になっています。
ブログはあまり読まない方なんですが、このサイトは例外で、いろいろな分野で勉強になるので、時間がある時はなるべくチェックするようにしているサイトです。気になってはいるんだけど、後で調べようっと思っていて忘れていたり、ろくに調べもせずに勝手にこうだろうと思って決断していたことなども、いろいろな選択肢の長所、短所を並べて、わかりやすく説明してくれるので、ホント助かります。
特に、今まではファイナンシャル関係がさっぱりわからなかったので、無意識にシャットオフしていた自分ですが、このサイトのお陰で、今まで人任せにしてほったらかしにしていたリタイヤメント資金が一体、合計でどれくらいあるのか自分なりに把握したり、会社で行われたフリーのリタイヤメント・セミナーに参加してみようと思ったり、私にとっては非常に大きな進歩がありました。ころころ変わる税制度、複雑なリタイヤメント資金のしくみ、ホント、複雑にしておいて、一般人には簡単には理解できないようにしているのが目的ではないのかと内心思ってましたが、リタイヤメント・セミナーに参加してみたら、多くの参加者もそう思っていたようで、私だけが取り残されている訳ではないのを知ってヘンな安心。まだまだ、わからないことがたくさんありますので、質問させていただくと思いますが、その時はまた、よろしくお願いします。
取り上げて欲しいトピックとしては、2013年に起こる可能性のある税金の値上がりについて、これは相当インパクトありそうなのですが、何か「Smart」な対策があるものなのか興味あります。機会があれば、よろしくお願いします。
Hannahさん、いつも本当にありがとうございます!こうやっていつも読んでくださる方がいるので、がんばれます。税金の値上がり、そうそう、ちょっと要チェックですね。調べてみようと思います。
たいへん詳しい情報なのでまだ1周年とは驚きました。管理人さんは真っ正直で正義感の強い方なんですね(^^)
ウチははもう年齢的にファイナンスを第一に考える時期は過ぎたように思いますが、楽しみ読ませていただいてます。
cachacaさん!コメントありがとうございます。セミリタイヤ。。。なんかいいひびきだなあ。前からあこがれておりました。私にもそのようなときがくるのか!心だけ、cachacaさんと旅させてもらいます。