Last Updated on 2012年3月7日 by admin
“We are the 99%”をスローガンに、今年9月にウォールストリートではじまったOccupy Wall Streetはアメリカをはじめ全世界にまで飛び火しました。明確なリーダーが不在のままあらゆる不満がうずまくプロテスト活動へと発展し、それを非難する声もあがりつつありますが、そもそもの目的は、アメリカのスーパーリッチと呼ばれる1%とそれ以外の99%の間の経済的・社会的格差、大企業の度を過ぎた貪欲さ、ビジネス界トップ層と政府間の癒着について抗議することでした。
Congressional Budget Officeによると、1979年から2007年までの期間で、米国の全世帯の税引き後収入は$27,100増加し、これは55%の伸びであるのに対し、トップ1%世帯の税引き後収入は$973,700増加し、これは281%の伸びにあたるとのこと(詳細はこちら)。たしかにこのデータでは、トップ1%は他の層に比べて不均衡なスピードでリッチになっているのを垣間見る気がします。ミソは「税引き後収入」というところ。トップ1%の税引き後収入の伸びのウラには、税前収入の増加と実質的税率の減少というダブル効果があるようで、収入を得ることにおいても税制のうえでも、1%層に有利な社会システムになってきていることが現れています。
日本でも「Occupy Tokyo」と書いたプラカードを掲げた人々が東京でデモしているのをニュースで見ましたが、日本の実態はどうなんでしょうね。わたしが学生だったころ(どのくらい前かは想像してね)、「一億総中流」とよく言われ、誰もが中流意識を持っていたものでしたが、どうやらそれも変わってきているようです。総務省の「就業構造基本調査」によると所得階級別の労働者の分布は1997年以降、年収299万円以下の層、1500万円以上の層が増加する一方、300〜1499万円の層は減少しているとのこと。日本でも格差社会が進みつつあるということでしょうか。
そこで思いついたのが「日本とアメリカの1%比較」。1%のなかでも生粋1%、企業の役員報酬トップ10位を比べてみましょうか。結果はこのとおり。
役員報酬 TOP10 日本 vs アメリカ
$1=77.16円で換算
日本
(四季報による)アメリカ
(Forbesによる)
1位 日産自動車
Cゴーン 社長9億8200万円 UnitedHealth
Group
S. Hemsley$101.96M
(78億6700万円)
2位 ソニー
Hストリンガー会長/社長8億6300万円 Qwest
Communications
E. Mueller$65.80M
(50億7700万円)
3位 大東建託
多田勝美 前会長8億2300万円 Walt Disney
R. Iger$53.32M
(41億1400万円)
4位 タカタ
高田重一郎会長6億9500万円 Express Scripts
G. Paz$51.52M
(39億7500万円)
5位 エース交易
榊原秀雄前会長6億1800万円 Coach
L. Frankfort$49.45M
(38億1600万円)
6位 セガサミー
ホールディングス
里見治会長/社長6億1500万円 Polo Ralph
Lauren
R. Lauren$43.00M
(33億1800万円)
7位 日本調剤
三津原博社長5億7200万円 Gilead
Sciences
J. Martin$42.72M
(32億9600万円)
8位 資生堂
Cフィッシャー専務4億4300万円 Anadarko
Petroleum
J. Hackett$38.94M
(30億500万円)
9位 G-7ホールディングス
木下守会長4億4200万円 Cisco
Systems
J. Chambers$37.90M
(29億2400万円)
10位 エイベックスグループホールディングス
松浦勝人社長4億800万円 Verizon
Communications
I. Seidenberg$36.75M
(28億3600万円)
日産のゴーン社長は法外な報酬を得ているとか、日本も勝ち組がしきる社会になりつつあるなどという記事を目にしたりするこのごろですが、でもどうでしょう。こうして比べると、アメリカの役員報酬に比べれば、日本の役員報酬なんて子ネコのようなものじゃありませんか。ま、わたしにとっては、億の単位に入った時点で、なんか宇宙空間の話のようになってきてしまい、どっちが大きいとか小さいとか、ピンとこなくなりますけど。ドルから円への換算は、あんまりゼロが多すぎて、何度も数え直しました。
日本の企業については、この表にある社長・会長の年収が、その企業の従業員の平均年収の何倍かを計算したデータもありました。格差がもっとも大きいのは、ゴーン社長。日産の従業員の平均年収は685万円であり、ゴーン社長の報酬はその143倍だそうです。2位のエース交易では、従業員の平均年収が488万円で榊原前会長の報酬は126倍。3位のタカタは112倍。
アメリカ企業については、従業員の平均年収のデータがないので単純比較できませんが、たとえば1位のUnited Health Groupで、従業員の平均年収を大げさに見積もって$100,000としてもMr.Memsleyの収入の$102Mはその1000倍です。もし、従業員の平均年収が$50,000なら2000倍です。
わたしは、能力ある人が一生懸命働き、すばらしい成果を挙げたなら、人より多くの報酬をもらうことについては何の抵抗もありません。たとえばわたしが会社で働いていたとして、わたしのしている仕事よりはるかに大変で難しい仕事を、夜寝る間も惜しんで会社のためにしている社長が、わたしの50倍の給料をもらっているのなら、納得がいくような気がします。それが100倍なら、う~ん、どうかな。ま、それくらいも仕方がないかと思える範囲でしょう。でも700倍、800倍、900倍、1000倍となってくると、ちょっと理解を超えてくるような気がします。どんな人間にも与えられた時間は1日24時間。もちろん能力の差はピンからキリまであるけれど、でも超スーパー級能力のある人でも、平均的な人のアウトプットの1000倍もの付加価値を出すって可能でしょうか。
日本でもアメリカでも格差は広がっているのは確かのようですが、アメリカのそれは度を過ぎているのは多くの人が同意するところではないでしょうか。日本では、会社の経営が芳しくない場合、社長・会長が自らの給料をカットするというのはまだ(これからもあって欲しいけど)ある話。再生に取り組むJALの西松遥社長が、通勤にはバスを使い、ランチは会社の社員食堂で、ひいては自分の給料はカットして年収960万円というのは、アメリカでもニュースで取り上げられとても大きな反響を呼びました。「アメリカではありえない」というのが大方の声。大日本印刷の北島義俊社長は、連結営業利益が30%減になったなどの経営不振の責任をとり、7億8700万円の報酬を55%カットし3億5300万円としました。
それに比べて、ここアメリカ。。。2008年末、Ford、Chrysler、GMの3社のCEOたちが、経営再生に取り組むため、政府からの$25ビリオンのローン(わたしたちのタックス・マネー)を要請するために、ワシントンDCにそれぞれのプライベート・ジェットでやってきたというのは記憶に新しいところ。「お金がなくて借りにくるのなら、ジェット・プールして三人で一機で飛んでくるか、あるいはせめて旅客機のファースト・クラスにダウングレードするくらい考え付かなかったのか」と非難された三人、どうやらその皮肉さえピンとこないほど、彼らの「フツウ」は巷の常識とはかけ離れたものになってしまっているのでしょうね。
2009年には、巨額の損失を出した保険大手AIG が、$170ビリオンの政府支援(もちろん、わたしたちのタックス・マネー)を受けた後で、今度はその損失の原因となった部署の役員へのボーナスとして$165ミリオンを支払う予定であると発表したのも呆れるところ。(ボーナスは支払われ、度重なる非難の末、約1/3は会社側に戻されたとのこと)。
大企業がつぶれて当然ほどの損失を出しても、「Too Big to Fail」だからつぶれちゃ大変、政府からタックス・マネーが流れ込む(土下座してお願いしなくても大丈夫。プライベート・ジェット乗り付けもOKよ)。経営トップ層が会社をつぶすほどの大失敗をしても、ボーナスはちゃんともらえるよ(もしボーナスのお金が足りなければ、政府から借りてでも)。大きく強くなったら、責任はとらなくてよくなるということなのかしら。
うちの息子なんて、毎週月曜のごみだしのお手伝いを忘れただけで、「自分の責任はきちんと果たしなさい」って1ドル罰金なのに、なんかこの世の中おかしいなぁ。わたしの中のOccupy Wall Streetもフツフツと進行中。。。
Great! thanks for the share!
気がついたんですが、再生に取り組むJALの西松遥社長もめずらしく倹約をしたかもしれませんが、失業期間が長く、次の仕事もアルバイト程度の給料しかもらえないひとも日本アメリカともにたくさんいます。通勤のバス代を浮かすために、私は徒歩で会社を往復しています。社内食堂よりもお弁当を作ってもってゆけばさらに安いので、いっさいお金を使わないように努力してます。週末はアルバイトを見つけお子遣いを稼いでます。
ほんとうにそうですね。日本もアメリカも、仕事をしたいと思う人には仕事が与えられる社会に戻って欲しいです。一生懸命勉強して大学は出たけれど、学費ローンだけが残って、仕事にはありつけず、ローン残高が増えていくような社会では、希望が持てません。上にたつ人は、自分の報酬のことだけを心配するのでなく、率いる社員や顧客のことを考えて、社会の中の人々のリーダーとして誇り高くあってほしいです。