HOA Feeを考える

Home Owners Association(HOA。住民による管理組合)はアメリカではますます一般的になってきているようです。全米の物件の4件に1件はHOAに属しているというリサーチもあり、今後新設される物件がHOAの管理下にある確率はどんどん高くっているようです。HOAがきちんとしていると管理の届いた美しい環境に住むことができる一方で、毎月かかるHOA Feeは決して軽くみられる程度ではないことも多く、毎月のキャッシュフロー上での考慮はもちろんのこと、長期的なプラニングの面でもきちんとした認識が必要だと思います。

HOA Feeとは

HOA Feeは、芝生や通路・廊下などの管理、外壁や屋根、雨どい、エレベータなどのメンテ、それら建物の外側部分の火災保険、ジムやプールなどのアメニティ運営のための費用が含まれています。そこに住む住民はHOA Feeを免れることはできず、そこに住む限り毎月、Feeを収める必要があります。

HOAは通常、住民による住民のための非営利運営委員会ですが、場合によっては不動産ディベロッパーからのスタッフが加入していることもあります。HOAは、物件全体の維持メンテにどのくらいの費用が掛かるかについて調べ、一件あたりの負担料を計算し、それをHOAでの規定にとづいた住民の合意のもと各オーナーから徴収します。「HOA Feeを徴収したり値上げしたりするHOA」と捕えるとなんだか天敵のようなイメージもあるかもしれませんが、HOAメンバーの多くは自分自身もオーナーであり、物件の維持管理のために無償で心を砕いている人でもあります。

HOAは地域によっても物件によっても、大きく異なります。平均的なHOA Feeは$300/月程度のようですが、大都市のコンドなら$600から$700というのも珍しくないですし、ハイエンドのフィットネスセンターやバレーパーキングなどのサービスを含むところなら数千ドルのHOA Feeということもあります。ちなみに、東京のタワーマンションの平均管理費は3万円弱らしいです。

アメリカはHOA Feeがそもそも高いうえ、このHOA Feeは毎年上昇するのがふつうです。維持メンテのためには費用がかかり、その費用もインフレ率にともなって上昇するのは避けえないので、インフレ程度のHOA Fee上昇なら納得もいくのでしょうが、実はそれよりも高い率で上がっている物件も多いのです。

モーゲージローンの返済額(PrincipalとInterest)は、ローン期間中一定です。リファイナンスしない限り変更はありません。プロパティ税やホームオーナーズ保険は年々改定されますが、家計に負担を与えるほど大きく上昇するということはあまり聞いたことがありません。一方で、HOAに関しては「年々すごい勢いで上がるので参った」という声を聴きます。HOAのある物件を購入される場合には、HOAとHOA Feeについて理解し、ある程度の上昇をあらかじめ心づもりしておくことが必要です。

HOA Feeの決まるしくみ

住民から選ばれたメンバーで構成されるHOAが、年間バジェットを決めます。その年に必要な維持メンテ、修理、などをカバーするとともに、予期せぬ事態に対応できるようある程度の余剰金をキープしておけるように計画をします。それをもとに、それぞれのオーナーの負担Feeを計算します。通常の維持メンテの範疇ではない急な修理対応や問題処理に関しては、前述の余剰金から対応するとともに、それが十分でない場合には各オーナーからSpecial Assessmentと呼ばれる特別負担金を集めることになります。

HOA FeeやSpecial Assessmentはオーナーの義務なので、避けることはほとんど不可能です。支払いが極度に困難な場合は、HOAとネゴができる場合もあるかもしれませんが、基本的にはHOAはオーナーに対して不払いの法的措置を取る権利もあり、HOA Fee不払いの物件を抵当設定することもでき、またCollection Agencyを使うことも可能であるので、オーナーのクレジットスコアが傷つくことにもなります。

CC&Rsを読む

HOAの運営ルールに関しては、Declaration of Covenants, Conditions, Restrictions, and Easements(CC&Rs)という文書にまとめられています。HOA Feeの増額についての限度額(たとえば年間2%増までなど)が設定されていることもあるようですが、最近ではこのような記載は稀になっているようです。住民には、HOA Feeの年間増の%に上限設定があるほうが好ましいと考えられがちですが、実は必ずしもそうではありません。本来なら、物件の維持メンテのためにどうしても5%増をしなければならないのに、CC&Rsにある規定のために2%しか上げられなかったら、維持メンテのどこかがおろそかになり、物件の劣化につながり、ひいては物件価値の低下が起こるからです。

なお、HOA Feeの年間増の限度は、各州政府が設定している場合もあるようですが、多くの場合かなり大きいパーセンテージ(20%など)が設定されているので、あまり意味がない場合がほとんどのようです。

CC&Rsを読むことで年間増%のリミットなど具体的な数字は探せないかもしれませんが、その代わり、HOAがどのように年間バジェットを組み、支出管理をしているかを理解することができます。物件を購入する際には、物件自体のチェックやファイナス的な数字の確認とともに、HOAの運営状況を確認することが賢明です。CC&Rs、HOA の財務状況報告、HOAミーティングの議事録ををよく読み込み、以下の点についてチェックするとよいようです。

  • 余剰金(Reserve Fund)はどのくらいあるか。予期せぬ問題が起きても、Special Assessmentを課すことなく、対応ができる体力がありそうか。
  • 今まで、HOAに対して、訴訟や法的な問題がもちあがったことがあるか。
  • 過去のHOA Feeの上昇傾向はどうか。
  • 周りの同じような物件(ランク、築年数)と比較して、維持メンテの度合い、HOA Feeとの釣り合いはどうか。
  • 過去にSpecial Assessmentsを課した履歴、その理由、頻度はどんなか。

言ってみれば、HOAのある物件を購入するということは、そのHOAと自分の家の管理と財務計画をシェアするということでもありますから、HOAのチェックはおそかにしないというのが良いのだと思います。

2 comments

  1. > HOAと自分の家の管理と財務計画をシェアするということでもありますから、HOAのチェックはおそかにしないというのが良い

    アメリカに住む以上、上記は本当に大事です。

    私が実際に体験した例をシェアさせてください。
    数年前に購入した家のHOAの会計係が不正を働き、HOAメンバーから徴収した$300,000以上のHOAフィーのほとんどを使い込むという暴挙に出ました。
    HOAの残額があまりに少ないことに気づいたHOAのトップが告発し、Tresurarerは数年間、刑務所に行くことに。

    しかしながら、使い込まれたお金は結局戻らず、メンバーの私達はいまだに損失に上乗せされたHOAフィーを払い続けています。
    HOAの良し悪しがわかる一例として、こちらの掲示板にくる皆様に周知されれば嬉しいです。

    1. なんと!貴重な体験をシェアしてくださってありがとうございます。
      そんなことも起こるのですね。HOA Fee以上に、HOAの管理体制のチェックは大事ですね。勉強になりました。

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