今回はHigh Deductible Health Plan(High Deductibleプラン。HDHPと略される)とともに使われることの多いHSAについて取り上げます。
High Deductibleプランに入っているならHSAを考慮する
雇用主がHigh Deductibleプランを提供する場合は、ふつうHSAとペアで提供している場合が多いでしょう。言ってみればHSAはHigh Deductibleプランの魅力度をアップし、High Deductibleプランをプロモートするための「甘味料」的な意味合いがあります。さらには雇用主がベネフィットの一部としてHSAにいくらかお金を入れてくれることもあり、その場合は魅力がさらにアップします。
一方で個人でHigh Deductibleプランに入っている方の場合、意外とHSAのことを知らないでいる方もいらっしゃるようです。プランの保険会社がHSAを提供する金融機関とパートナーを組んでいればそれを利用することもできますし、そうでなければ、個人的に金融機関を選んでHSAを開設することができます。
もしもご自分の健康保険がHigh Deductibleプランである場合は、ぜひともこのHSAの利用を考慮されることをお勧めします。なんらかの理由でHSAは不要と判断した場合ならともかく、High Deductibleプランに入っているのに、「甘味料」であるHSAを利用しないことは、せっかくのおいしいところを活用しないでいるようなことにもなりません。High Deductibleを自分で払わねばならないハイリスクの分を、HSAという魅力的なおまけで補うという意味合いがあるわけで、そのおまけを無視していることはもったいないことです。
HDHPに加入している場合だけ使えるSaving Account
HSAは税優遇のある貯蓄・投資口座で、High Deductible プランの健康保険に加入している人だけが持つことができます。一年あたり個人で$4,150(2024)/ $4,300(2025)、家族で$8,300(2024)/ $8,550(2025)までを口座に積み立てることができ、この積立額は所得税がかかりません。なお、55歳以上の方の場合は、$1,000を余分に積み立てられます。もし、EmployerがHSAに積み立ててくれる場合は、その分もこの限度に数えられますので、個人での積立額を減らします。
雇用主経由でHSAに加入している場合は、給与天引きで口座に積み立てができ、この額には前述のとおり所得税控除です。個人的にHSAに加入している場合は、自分で口座に積み立てをし、この額はタックスリターンのときにForm8889で申告し所得税控除を受けます。
どのくらいの税控除があるかは所得税率(Tax Bracket)によりますが、年収$150,000程度のご夫婦で、夫婦でHigh Deductibleプランに入っており$6,650を積み立てた場合、$1,662(積立額$6,650x25%税率)程度の節税になります。
HSAは雇用主を通して加入したとしても、個人の所有であり、雇用主を変えても個人の所有であり続けます。多くの場合、雇用主がHDHPとHSAをセットで提供していることが多いですが、雇用主の提供するHSAでは満足できない場合(手数料が高いなどの理由で)、ほかの金融機関が提供するHSAに乗り換えることもできます。
自分で開くHSA口座としては、2024のMorningstar社のHSA格付けによると、FidelityのHSAが低手数料で高評価を得ています。
FSAのように、積み立てた額を一年間で使い切らなかった場合に、その額が没収されるということはありません。残ったお金はそのまま貯蓄・投資され、将来使えるように貯めておけます。利子や利回りには税金がかかりません。
口座のお金を使う
HSA口座のお金は、IRSによって指定されたカテゴリーに属する医療費のためであれば一切税金がかからないまま使うことができます。指定された医療費には、High DeductibleプランのDeductibleやCo-insurance、処方箋代、めがねやコンタクトなどを含む眼科系の費用、歯医者の費用なども含まれます。
しかしながら、High Deductibleプランの保険料金は、指定医療費には含まれませんので、HSAのお金で支払うことができません。長期介護保険の保険料や、65歳以降のMedicare保険料(ただし、Medigapは除く)は含まれますので、HSAのお金で支払うことができます。
金融機関の多くは、医療費の支払いをダイレクトにHSA口座からすることができるようにDebit Cardを発行しています。少々面倒ですが、医療費を自分で(HSA口座以外のお金で)立て替えて支払っておいて、あとでHSA口座からReimburse(返金)してもらうこともできます。高額の医療費の場合、キャッシュバックやポイントの高いクレジットカードで払い、後でReimburseしてもらうのが、多少手間はかかりますが一番賢い使い方かもしれません。いずれにせよ、医療費のレシートはしっかりと保存しておきます。HSAのお金をどんな医療費に利用したかはタックスリターン時にForm8889で申告します。
トリプル節税
前述のとおり、積み立ては所得税控除で、運用利回りも非課税、そして医療費に使うなら全く非課税で引き出すことができます。非課税で積み立て、非課税で運用、非課税で引き出しというのはHSAにしかないトリプル節税特典です。
指定された医療費以外の用途でHSAのお金を使うと、所得税と追加の20%ペナルティがかかります。ただし、65歳以上の場合は、医療費以外の用途で使っても、所得税だけがかかるだけで、20%のペナルティはありません。これは、HSAがTraditional IRAと同じように利用できる(税控除で積み立て、税遅延のまま投資し、引き出し時にのみ所得税課)ということで、リタイヤメント対策にもなりえるということです。