Medicareを知る(1) –  Part A and Part B

3回シリーズで、Medicareについてまとめてみます。Medicareにはどんな要素があるのか、それぞれが何をカバーするのか、どうやって利用すればよいのかなど、概要をまとめます。

Medicareとは?

  • 65歳以上の人、あるいはそれ以下でも障害や重い腎臓疾患のある人を対象に提供される連邦政府の健康保険システム
  • Medicareで提供される適用範囲は米国議会によって決定される
  • Center for Medicare and Medicaid Services(CMS)によって運営される
  • Social Security Administration (SSA)が、受給資格と受給申請をハンドルする

Medicareは、Part A、Part B、Part C、Part Dなどの各パートに分かれて、適用範囲が定められています。Part AとPart BはOriginal Medicareと呼ばれ、もっとも古くから存在し連邦政府により直接提供される部分です。Part CとPart Dは、Original Medicareを代替・補足するためにつくられ、Medicareと提携した保険会社を通して提供されます。私たちはこのパートのどれかを選んで組み合わせたり、あるいは場合によってはMedicare以外の非公的保険と組み合わせて、自分に最適な健康保険パッケージを作り上げることになります。

今回は、Original Medicareと呼ばれるPart AとPart Bについてみていきます。Medicareの適用には非常に細かい規定がありますが、以下は概要です。

 

Part A(Original Medicare – 入院)

病院や看護施設などへ入院、ホスピスや在宅ケアなどをカバーします。10年以上働いていれば、その間必要な保険料はすでに納めていますので、Medicare受給申請時以降のPart Aの受給は実質上無料で受けることができます。受給については一部の場合を除き、申請が必要です。無料でPart Aを得る資格がなくても、一定の基準(65歳以上、Part Bに加入しており、市民か、継続的に5年以上滞在のグリーンカード保持者 etc.)を満たしていれば、最高で$426(2014)の月額保険料を支払うことで加入可能です。

 

 Inpatient hospital care(入院した場合の病院費用)

  • 一度の入院につき、$1,216(2014) の自己負担(deductible)のあとは、60日まで全額カバー
  • 61日~90日までは、一日につき$304の自己負担(coinsurance=上記deductibleの25%)があり、それ以外はカバー
  • 91日以降は、一日につき$608 の自己負担(coinsurance=上記deductibleの50%)があり、それ以外はカバーする。ただし、91日以降のカバーについては、Lifetime reserve(生涯許容日数)の60日まで。60日のreserveを使い果たした後は、カバーがなくなる。

Skilled-nursing facility(高度看護施設)

3日以上の入院の後、引き続き、日々継続的な、高度看護・リハビリサービスが必要であると医師が診断した場合に適用されます。

  • 一度の入院につき、1日から20日までは、全額カバー
  • 21日から100日までは、一日につき$152の自己負担(coinsurance=deductibleの12.5%)があり、それ以外はカバー

Home Health Care (在宅ケア)

自宅から離れることができない状態であり、医師が必要とみとめ、医師の監督のもとにある在宅ケアに適用されます。家まわりの生活アシストケア(シャワーや食事準備など)には適用されません。

  • ケアサービスは全額カバー
  • 酸素タンクや特殊ベッドなどの機材は20%の自己負担(copayment)の後、差額をカバー

Hospice (ホスピス)

病状末期にあり、余命6ヶ月以下と医師が診断した場合で、本人が治療ではなくコンフォート・ケアを選択する場合に、本人の自宅でのサービスを前提に提供されます。

  • 一部の比較的小額の自己負担を除き、全額カバー

 

Part B(Original Medicare – 医療サービス)

疾病予防の費用、診断の費用、検査費用、治療費、手術代など、医療サービスの費用のうちPart Aでカバーしない費用の大部分をカバーします。月々の保険料は$104.90(2014)で(ただし、高収入者は収入にしたがって保険料が高くなる。たとえば、夫婦で$170,000以上の収入だと$146,90(2014))、受給にあたっては、一部の場合を除いて申請が必要です。

カバーする費用の例

  • 疾病予防の費用、診断の費用、検査費用、治療費、手術代
  • フィジカルセラピー、循環・呼吸器系リハビリ
  • 自分で投薬できない薬、医療品
  • 医療器具レンタル
  • 義手、義足
  • 救急搬送

医療サービスによっては全額カバーするものもありますが、多くは年間$162の自己負担(deductible)の後、20%を自己負担(copay)、残りの80%をMedicareがカバーします。この%は、Medicare approved cost(医療サービスごとに、Medicareが設定した費用)に対するパーセンテージです。

 

カバーされない穴

これらのOriginal Medicareだけで、必要となる十分なカバーが受けられるかというと、多くの場合答えはNoです。Original Medicareだけではカバーされない穴を埋めることを目的に、Original Medicareを代替し、より手厚いカバーを提供するプランや、Original Medicareを補足するプランができました。それのプランについては、次回以降見ていきますが、今回は、Original Medicareでの穴について考えます。Original Medicareだけでは、どのようなものがカバーされず残されるのかを見てみましょう。

 

1.Deductibles

Part Aの一回の入院につき$1,216(2014)のDeductible、Part Bの年間$162のDeductibleなどは、Original Medicareで自己負担となります。

2.Part Bの20% Coinsurance

疾病予防のための費用などは全額カバーするものもありますが、ほとんどの医療費に20%の自己負担(Coinsurance)が発生します。必要となる検査、診断、治療が重なれば、この自己負担もかなりの高額になりかねません。

3.Part Bの適用外費用

医療サービスの提供者(医師、クリニック)がMedicare assignmentをアクセプトしない場合、通常の20%の自己負担(Coinsurance)に加え、追加料金を負担せねばならない可能性があります。Medicare assignmentをアクセプトする医師は、Medicareの設定する料金を請求すること(それ以上は請求しないこと)に同意しており、患者はMedicare設定料金の20%だけを負担することになります。一方、Medicare assignmenttをアクセプトしない医師は、Medicare設定料金の115%までを限度に請求することができます。Medicare assignmentをアクセプトしない医師でも、Medicareにクレーム申請せねばならないことになっており、医師はMedicare設定料金の80%をMedicareから徴収し、患者は20%のCoinsuranceに加え15%までの追加料金を負担することになります。

4.処方箋のコスト

Original Planでは一部の例外を除いてほとんどの処方箋がカバーされません。

5.眼科関係のコスト

Original Medicareでは、医療的に必要な眼科系の措置(緑内障テスト、白内障手術など)のみカバーします。それ以外のルーティンチェックや眼鏡などはカバーされません。

6.歯科関係のコスト

上記同様、Original Medicareでは、医療的に必要な歯科措置はカバーされますが、それ以外のルーティンクリーニング、チェック、治療、入れ歯などはカバーしません。

7.聴覚関係のコスト

上記同様、Original Medicareでは、医療的に必要な聴覚系措置はカバーされますが、それ以外のルーティンチェック、補聴器などはカバーしません。

8.長期介護コスト

Original Medicareでは医療上必要な在宅ケア(Home Health Care)はカバーされますが、慢性的病状や障害のため生活のアシストが必要となった人向けの非医療ケア(Custodial Care)はカバーしません。

9.代替医療コスト

Original Medicareでは針治療など代替医療はカバーしません。

10.米国以外の国での医療コスト

Original Medicareでは、一部の例外を除いて、米国外での医療措置はカバーしません。

次回は、これらのOriginal Medicareの穴(gap)を埋めるために、利用することができるプランについて見ていきます。

2 comments

  1. 初めまして。今年65才になったのですがまだ会社からの健康保険を持っているので、パートAだけ手続きしました。今回白内障手術が必要になり、単焦点レンズ使用の乱視矯正レイザー手術を提案されました。レイザー治療は保険適応外で片目1900ドル、ディダクティブルが1500ドルなので、軽く7千ドル越え。sns上でメディケアはレイザー白内障手術もカバーされるという記事を見つけました(パートB)。事実でしょうか? そうであればメディケアに入ってから手術すべきかとか、保険料が割高なので結局は同じかな?とかぐだぐだ考えています。

    実際メディケアは良い保険なのでしょうか? 良い保険という表現もおかしいのですが、勤め先からの一般的な保険と比べて年寄りに適した保険内容なのでしょうか? パンデミック中、メディケアに関して悪い噂(?)を耳にして不安感があります。米国の保険制度は。。。最悪です。何故ここに居るのかと良く思います。宜しくお願い致します。

    1. どうでしょう、私も保険の内容についてはよくりしませんが、ちょっとサーチしたらこんな記事がありました。

      https://www.forbes.com/health/medicare/does-medicare-cover-cataract-surgery/
      Original Medicare covers 80% of the cost of cataract surgery.
      According to Medicare.gov, having cataract surgery at an ambulatory surgical center costs about $1,789 ($750 in doctor fees and $1,039 in facility fees). Medicare pays $1,431 of that total, which means the patient pays $357. (Ambulatory surgical centers are non-hospital facilities for patients who don’t need more than 24 hours of care.)

      Having cataract surgery with a hospital’s outpatient department, on the other hand, costs $2,829 ($750 in doctor fees and $2,079 in facility fees). Medicare pays $2,263 of that total, so the patient pays $565. These estimates vary based on where you live and the complexity of your cataracts.

      多くの方がMedicare Part A/Bに加えて、Supplementの保険を買います(Medicare Advantageというパッケージにするか、Medigapという追加保険にするかで)。その内容によって、残りの20%もカバーされるかどうかが決まるのだと思います。

      Employer PlanとMedicareと、どちらでも選ぶ権利はおありと思いますので、保険料とベネフィットを比較されて、必要なら乗り換えもできるのだと思います。ただし、配偶者の方などがEmployer Planに一緒に入っていらっしゃるのなら、注意が必要(Medicareは夫婦プランはない)です。

      こんな記事もありました。
      https://www.retiremed.com/library/articles/comparing-employer-coverage-medicare-whats-better-option#:~:text=This%20is%20unique%20for%20every,may%20be%20more%20cost%2Deffective.
      This is unique for every plan, but generally speaking, Medicare tends to provide more benefits than employer coverage at a lower cost.
      If you have a high-premium or high-deductible plan through your employer (or your spouse’s employer), switching to Medicare may be more cost-effective.

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