Last Updated on 2020年1月16日 by admin
自分のリタイヤメント準備はどの程度うまくいっているのか、漠然と抱えているリタイヤメント後の生活はなんとか実現できるものかについて知るための、リタイヤメントプラニングシリーズ全三回の今回は最終回です。最後のステップでは、最初の二回で集めた情報をもとに、リタイヤメント資産から少しずつ引き出して生活していくにあたって、寿命までの生活をカバーし続けることができるのかを見るシュミレーション分析です。
シュミレーション
実際希望の年齢にリタイヤし、希望レベルの生活費で、現在のリタイヤメント準備資金によって、寿命まで生活することができるかどうかをシュミレーション分析するのがこの最終フェーズです。シュミレーションは将来のことを予測するわけですから、それに必要な前提というものがあり、前提が変更になると結果も変わってきます。なるべく適切だと思われる前提を設定するとともに、前提の設定をベストシナリオからワーストシナリオの範囲で変化させ、どの程度リタイヤメント準備に耐久性があるのかを見ることも行います。
前提には、インフレ率、投資利回り予想値などがあります。インフレ率は2%~4%の数値を使うことが多く、利回り予想値は、投資の内容によりさまざまですが3%~8%くらいの間で、平均的には5%~6%くらいを使うことが多いかと思います。これで、希望通りのリタイヤメントができそうだという結果が出ればまず一安心です。そうでない場合は、その方の状況により最適な対処法を探っていくことになります。
リタイヤメント準備が足りなさそうだとなれば、準備への積立額を増やす、リタイヤメント年齢を遅らす、投資をもう少しアグレッシブに変更するなどをお勧めすることになります。
個々のケースでさまざまな状況がありますが、ここでは3つほどケーススタディを見てみましょう。
ケーススタディ1
55歳と53歳のご夫婦。お子さんは30歳と27歳ですでに自立。収入は、夫$80,000、妻$35,000で、それぞれ67歳でリタイヤ予定。夫の401(k)に年間で$8,000ほど積み立て中。IRAは定期的には積み立てず、思ったときに入金。401(k)の残高は$200,000、IRAは$20,000ほど。妻はペンションが期待でき、年間$10,000ほどの見込み。
シュミレーションの結果、おふたりのソーシャルセキュリティーと奥様のペンションの合計は$3,800程度になり、リタイヤメント後の目標生活費の60%をカバーすることになる。残りの40%は401(k)を切りくずして生活することになるが、現在の残高では寿命予想まではもたせることができず、82歳で資金が枯渇する可能性が高いという結果。現在の401(k)の積立額を$17,000に引き上げることに。
現在の$8,000と比べると$9,000のアップであるが、401(k)積み立ての節税効果を考えると実際は$6,700ぐらいの追加額となる。年に2度大きなバケーションをしていたところを一度に減らすとともに、月々の外食を減らすことでこの額をカバーすることにした。また、401(k)の投資内容をチェックしたところ、あまりにも保守的な内容であったので、ある程度のリスクを考慮しバランスのとれたポートフォリオに変更することで、年間平均6%程度のリターンを見込めるように変更した。
ケーススタディ2
45歳の独身者。年収$100,000、リタイヤメントには年間$10,000ほどを401(k)に積み立てている。将来も結婚するつもりはなく、趣味のロッククライミングをできる限り続けていきたい。401(k)には$145,000ほどたまっている。リタイヤメント後は贅沢をするつもりはないので、なるべくシンプルに生活したいが、ただできれば60歳でリタイヤできればと思う。
シュミレーションの結果、現在のまま積み立てを継続し60歳でリタイヤした場合、75歳でリタイヤメント資金が枯渇する可能性が高いことがわかった。60歳でリタイヤした場合、ソーシャルセキュリティが受給できず(受給は早くて62歳から)、401(k)から生活費全額を引き出す必要があり、早期に元金を崩すため資金枯渇が急激に早まることに。
また、62歳から受給するソーシャルセキュリティはフルリタイヤメント67歳で受けることができる受給額よりも大幅に減額されるため、さらに401(k)の枯渇を早めることになる。
リタイヤを4年遅らして64歳にすると、状況は大幅に改善され91歳まで資金が存続する可能性が高まった。401(k)の投資は適当に選んだファンドで、選択された数多くのファンド間には投資内容のダブリがあったり、中には手数料が1.2%を超えるファンドもあったので、この際、63歳になる2033年をターゲットにしたターゲットデイトファンドに全額移し、低手数料+バランスのとれた投資内容+年齢があがるごとにされる自動リスク調整を実現した。実際のリタイヤメントのターゲットは64歳程度に置きながらも、実際にどのタイミングでリタイヤするかは、投資パフォーマンスを踏まえながら将来的に決めていくことにする。
ケーススタディ3
65歳と64歳のご夫婦。ご主人の年収は$180,000で70歳まで働き続けるつもり。SEPリタイヤメントプラン(スモールビジネスオーナー向けIRA)には年間、年収の10% $18,000を積み立て中。リタイヤメントプランの残高は$800,000ほどで、それとは別に$500,000程度の投資アカウントもある。リタイヤメント後は年間$100,000くらいで生活し、旅行や趣味を楽しみたい。70歳のリタイヤメントを前に、投資アカウントを一部解約しアニュイティの購入を勧められているので、買うべきか悩んでいる。
70歳まで働き続けられることでソーシャルセキュリティの受取額は最大化される。ご主人と奥様のソーシャルセキュリティ受給額に加え、70歳半を過ぎた時点でSEPプランのRequired Minimum Distribution(RMD。70歳と半年を過ぎた時点で、たとえ引き出したくなかったとしても、引き出すことが必要とされる法的に決められた額 **(2019年末SECURE ACTにて72歳に変更) )が発生。SEPリタイヤメントプランの残高が70歳半の時点でいくらになっているかは確かなことはわからないものの、このままの積み立てペースのまま6%利回りで増えれば$1.2ミリオンくらいまで増え、その場合のRMDは年間$45,000程度になる。
おふたりの最大化されたソーシャルセキュリティとRMDの合計ですでに希望生活費の年間$100,000がカバーされることになる。よって、加えて固定年金を得るためのアニュイティは必要がないので、購入は見送ったほうがよい模様。RMDの縛りのない(おろしたいときにいつでもおろせる)$500,000の投資アカウントはそのまま持ち続け、バケーションや旅行など大きな出費のある年などのためにとっておく。投資は、SEP口座と投資アカウントとを全体的なひとつのポートフォリオとみなし、全体的に適切なリスクレベルになるようある程度のファンド調整を行った。課税対象である投資アカウントには、地方債などの税控除の債券ファンドなども組み入れた。