Last Updated on 2022年2月2日 by admin
Vanguard はこれまでPersonal Advisor Services という名前のアドバイザーサービスを提供してきました。テクノロジーを駆使しつつ人を介してのサービスで、$5ミリオンまでの投資額で年間0.30%の手数料でした。これに加え、2020年には新たにVanguard Digital Advisorというサービスが登場しました。こちらは人を介さないロボアドバイザーです。
必要最低限だけど手堅いチョイス
Vanguard Digital Advisorは最低投資額が$3,000。IRAや課税口座で使えます。他社のロボアドバイザは何十何百ものファンドや個別銘柄を選べることも多いですが、このロボアドバイザーが投資するファンドは、Vanguardの以下のETF4つのみです。
- Vanguard Total Stock Market ETF
- Vanguard Total International Stock ETF
- Vanguard Total Bond Market ETF
- Vanguard Total International Bond ETF
たった4ファンド?と思われるかもしれませんが、この4ファンドは数あるファンドの中において、主要要素なる4投資分野をもっとも無駄なくかつ包括的にカバーしているファンドです。上から、1.はUS株式を大型から小型まで含み、Growth株もValue株も網羅しています。2.は同様にUS以外の外国株で先進国からエマージング市場まで、大型株から小型株まで含み、Growth株もValue株も網羅しています。3.はUS債券で、国債から社債までインベストメントグレード債券をカバーします。4.はUS以外の外国債で先進国からエマージング市場まで、国債から社債までインベストメントグレード債券をカバーします。
これら4つのETFのそれぞれのファンド手数料は0.03%から0.08%です。アロケーションによってポートフォリオ全体の手数料は変わってきますが(組合せにより最低で0.03%、最高で0.08%、ふつうはこの間)、Vanguardによれば平均的には0.05%程度としています。よって、ロボアドバイザーの手数料0.15%と合わせて合計で支払う手数料は0.20%ということになります。
Vanguard Target Retirement Fundと同じ内容
Vanguard社はVanguard Target Retirement Fundというターゲットデイトファンドを提供しています。これは業界のビックヒット作品です。2020年初頭時点ではバンガードは、2位のフィデリティに大きく差を開け、 ターゲットデイトファンド市場の$1トリリオン(38%)を占めています。Vanguard Target Retirement Fundの401(k)市場への進出は目覚ましく、Vanguard社の401(k)に加入している人のうち5人に4人が(自分で個別にファンドを組み合わせるのではなく) ターゲットデイトファンドを選んでいます。バンガード社によれば、ターゲットデイトファンドの利用率上昇により、これまでの高株式・高リスク投資が75%解消され、投機的な売り買いが減少し、適切なリスクでの長期投資が促進されたと報告しています。
このVanguard Target Retirement Fundに使われているのが、上の4つのファンドです。たった4つのファンドですが、これだけで全世界の株式を10,500銘柄程度、全世界の債権を16,500銘柄程度カバーします。
401(k)でVanguard Target Retirement Fundが提供されているのなら、それがベストチョイスである可能性が(もちろん個々の特殊なニーズがありますので、必ずベストとは言い切れませんが)高いです。また、IRAなどでお使いになる場合もVanguardで口座を開けば、同様にこのターゲットデイトファンドを選択できます。企業提供の401(k)の場合は、Institutional クラスという特別契約ベースでの手数料となり0.09%程度ということもよくありますが、個人で利用するとInvestor クラスになり0.14%程度になります。それでも、十分に価値があると思います。
ターゲットデイトファンドの困ったところを解消
401(k)もIRAも限度まで積み立ててもまだ余剰がある方や、まとまった額の原資で投資したい場合は、課税口座(Taxable Brokage Account)を使うことになります。もちろん課税口座でもVanguard Target Retirement Fundを利用することもできますが、この場合は少々考慮が必要です。ターゲットデイトファンドではなくVanguard Digital Advisorの利用が理にかなうケースも多いかと思います。
Vanguard Target Retirement Fundは4つのファンドをパッケージにしたファンドですので、将来的にお金を引き出す時は、4つの内在ファンドをパッケージのまま売ることになります。リタイヤメント時代のお金の引き出し方のリサーチでは、引き出し時には市場のアップダウンを見ながら、どのファンドからお金を現金化するか考慮したほうがよいという結果が出ています。たとえば、株式市場が落ち込んでいる時に株式ファンドを売ってしまうよりは、市場の影響を受けていない債券ファンドから引き出しをしたり、あるいは反対に株式市場が好調のときは値が高いうちに株式ファンドを売っておくなどのフレキシビリティ確保が、資金枯渇を防ぎリタイヤメント資産を維持するのに有効ということです。このフレキシビリティはターゲットデイトファンドにはありません。Vanguard Target Retirement Fundでは4つのファンドを組み合わせていますが、パッケージファンドなので、売る時はこの4つを組み合わせ比率に応じてまとめて売るイメージになります。
この問題を解決するためには、リタイヤメントまでターゲットデイトファンドで運用していたものを、引き出しフェーズに入った時点で個別の4つのファンドに分解してやることが必要になります。具体的にはVanguard Target Retirement Fundを売って、要素である4つのファンドを買うのですが、401(k)やIRAは税遅延/非課税口座なので、その中でファンドを売却してもキャピタルゲインが発生しません。つまり税金がまったくかからない状態で、ターゲットデイトファンドを4つの個別ファンドに置き換え、その後はフレキシブルに個別ファンドからの引き出しができます。
一方で課税口座の場合はどうでしょうか。
ターゲットデイトファンドを売って4ファンドに乗り換えるとき、たとえお金を引き出さなかったとしても(口座のなかで売り買いするだけで)キャピタルゲインが発生し、キャピタルゲイン税がかかります。課税口座だからです。これを考慮すると、課税口座では、多少面倒ではありますが最初から4ファンドでの組合せで運用したほうがよいかもしれないということになります。ただ、この場合、投資比率が崩れた場合のリバランス(各ファンドの投資成績がまちまちなので、時間経過とともに投資額比率が当初よりずれてくる)や、リタイヤメント年が近づくにつれてのリスク低下調整(株式比率を下げ、債券比率を上げていく調整)を自分でやることになります。これが面倒でない人はよいのですが、できれば毎年、少なくとも数年に一度は必要ですから、ちょっと覚えておきたくない、ターゲットデイトファンドのように自動でやってもらいたいという場合には、このVanguard Digital Advisorは頼れる存在となるでしょう0.15%の手数料はかかりますが、リバランスもリスク調整もやってくれます。
個別スケジュール対応も可能
さらには、Vanguard Target Retirement Fundの場合には、ターゲット年に向けてのリスク調整スケジュールが1種類しかありません。年号は違えど、同じスケジュールに沿って、株式比率が下げられ債券比率があげられます。人によってはこのOne size fits all的なフレキシビリティの無さを嫌う人がいます(私は、別に大きな問題ではないと思います。Aggressiveで行きたいとかConservativeで行きたいというご希望がある場合には、ある程度年号の選択の調整でカバーできます)。この点、Digital Advisorを使えば、個々人のリスク性向を考慮したpersonalized glide path(glide pathというのはリスク調整のスケジュールのことです)を提供でき、その種類は300種類に上るとしています。
とにもかくにも、課税口座でターゲットデイトファンドを使わずに、ターゲットデイトファンド的な自動リバランス・リスク調整機能をゲットできるというのが、Vanguard Digital Advisorの最も大きな魅力ではないかと思います。ただ、0.15%の手数料(決して大きすぎないが、絶対額が大きくなるとばかにならないかもしれない)がかかります。Vanguardにこだわらないのなら、Schwab Intelligent PortfoliosやM1 Financeなど無料のものを使うというチョイスもあります。なお、このVanguard Digital Advisor、まだベータ状態で、2021年一年かけて調整していくということです。使い勝手としてはまだベストの状態ではないかもしれないことを付け加えさせていただきます。
以前に課税口座についてコンサルテーションをしていただいた者です。
先日Vanguardに口座を開き、アドバイスをいただいた下記のETFをロボットアドバイザーを利用して、実際に購入をする所です。
そこで質問なのですが、ロボットアドバイザーにアセットアロケーション。リバランスをしてもらうと言うのは、この4つのfundを横断的にと言う認識であっていますか?
例えば、最初は1000ドルづつ4fundに均等に投資を行ったのち、ロボットアドバイザーのアドバイスにより自動でアロケーションがされ、1. VTに800ドル、2.VTIに1200ドル、の様な感じでしょうか?
1.Vanguard Total Stock Market ETF
2.Vanguard Total International Stock ETF
3.Vanguard Total Bond Market ETF
4.Vanguard Total International Bond ETF
自分なりに調べてみましたが、明確な答えが見つかりませんでしたので、ご教授いただけましたら、幸いです。
ロボットアドバイザーにアセットアロケーションしてもらうというのは、お客様がお答えになった質問の回答に応じてロボアドばこの4つの比率を計算して自動割り振りをするということです。ロボアドにリバランスをしてもらうと言うのは、この4つの比率がいつも最適(お客様の回答内容に応じ)になるよう、定期的に比率調整をするということです。