ホームエクイティ・ローンとHELOCを知る

“Tapping into equity”という表現を聞いたことがおありでしょうか?これは、持ち家の中のエクイティ部分、つまり家の市場価格からモーゲージ・ローン部分を差し引いたもの、にアクセスして、お金を借りる・・ということを意味しています。要は、持ち家のエクイティ部分を担保に借りるローンのことです。以前の不動産市場のバブル時には、この”Tapping into equity“を歌ったダイレクトメールをよく見かけたものです。”今、お考えのキッチンリノベーションを実現しましょう!“とか、”クルージングボートや、キャンピングカー!ずっと欲しかったものを手に入れましょう!“とかひいては”夢の世界一周旅行をしましょう!“などのぴかぴかしたキャッチとともに、広告がたくさん舞い込んできたものです。

その後の不動産市場のバブル崩壊でこのようなぴかぴかキャッチは目にしなくなりましたが、“Tapping into equity”の概念は引き続き存在しており、ボートや世界一周旅行のためのローンはちょっと首をかしげますが、ローンの目的によってはとても有効なものであります。Smart & Responsibleでプラニングをお手伝いした場合にも、今まで”Tapping into equity”の可能性を検討いただくよう提案させていただいたことは幾度もあります。今日はどんなときにどんな使い方ができるのか、それを見ていきたいと思います。

 

“Tapping into equity”ということ

上で書いたように、エクイティとは家の市場価格からモーゲージ・ローン部分を差し引いたものことです。数年前に$500,000の家を$150,000のモーゲージを組んで買いました。現在の家の市場価格は$550,000で、モーゲージ残高は$140,000としましょう。そうすると、$550,000-$140,000=$410,000のエクイティがあることになります。この$410,000を担保にローンをうけるわけですが、ただ金融機関はおそらくこの$410,000をフルには貸してくれません。$280,000とか$300,000とかのようにそのうちの一部を限度にローンを受けることになります。

家のエクイティという”担保“があるため、担保なしで借りるクレジットカード・ローンや、銀行からの無担保ローンに比較すると、金融機関側のリスクが低いため、その分利子も低いという利点があります。また家のモーゲージ・ローンの利子が税控除を受けられるのと同様、これらのエクイティを担保にしたローンの利子は、多くの場合、$100,000までのローン額を限度に、税控除を受けることができるという利点もあります。反面、クレジットカード・ローンの返済が滞っても、利子が膨れ上がるのとクレジットスコアが下がるという問題で留まるところ、エクイティを担保にしたローンでは、もし返済が滞った場合、フォアクーロージャーにより家を失う可能性があるという危険性があります。

エクイティというものは固定ではなく、家の市場価格によりアップダウンするということもよく覚えておきたいものです。借り入れたローン額は固定です。$300,000を借り入れたなら、家の値段があがってもさがっても(エクイティが大きくなっても小さくなっても)とにもかくにも$200,000は返済せねばなりません。もしも上の例で$550,000までになった家が不動産市場の暴落で$250,000になってしまったとなっても、返済する必要のある額は$300,000のままです。バブル崩壊時にはネガティブエクイティといって、家のエクイティ部分がマイナスになってしまい、ローンが返せず家を失った人は数多くいます。あくまで、計画的かつリスクを管理しつつの借り入れが必要です。

担保の優先順位は、モーゲージ・ローンの貸し手が優位で、エクイティを担保にしたローンの貸し手はその下となり、他の条件がすべて一緒であれば、エクイティを担保にしたローンの金利のほうがモーゲージ・ローンより高い(担保に対する優先順位が低く、回収リスクがより高いので)のがふつうです。

“Tapping into equity”の方法にはふたつの方法があります。ひとつは、ホーム・エクイティ・ローンでもうひとつはHELOCと呼ばれるものです。

 

ホーム・エクイティ・ローン

ホーム・エクイティ・ローン(以下エクイティ・ローンと呼ぶ)は、持ち家モーゲージ・ローンと似たようなもので、一時的にまとまったお金を借り入れ、その後月々決まった額を返していくというものです。通常、固定金利で提供され(一部、変動金利も存在する)、一時金として借りたローン額を、一定期間、たとえば10年などのように、をかけて、ローン返済を行っていきます。月々の返済額は固定されており(固定金利を仮定)、返済額は利子部分と元金返済部分との合計額です。これらは、現在のモーゲージ・ローンの月々の返済額に加えて返済が必要になるものですので、計画にあたっては月々の支払能力を吟味することが必要です。

また、エクイティ・ローンは、モーゲージ・ローンと同様に、契約時にエスクロー、タイトルのクリアランス、家の評価などが必要になり、クロージングコストがかかります。

 

HELOC

HELOC(ヘーロックと読む)はHome Equity Line of Creditの略で、こちらは一時金を借りるローンではなく、Line of Credit(限度額までフレキシブルにいつでも借りることができる契約)です。クレジットカードの利用限度額に似ていますが、クレジットカードのほうは無担保(それゆえ高利子)のLine of Creditであるのに対し、HELOCは家のエクイティを担保(それゆえ低利子)のLine of Creditということになります。Line of Creditなので、ただ契約をしておく、つまりLine of Creditをいつでも利用できる状態にしておいて、本当にお金が必要になるまでは全く借り入れをしないということも可能です。クロージング・コストや手数料もかからない場合がほとんどなので、将来的にお金が必要になった場合のために備えてあらかじめ契約をしておくというのもよいアイデアです。Emergency Fund(もしもの時の蓄え)の代替策として、HELOCを開けておくというのも有効です。

ふつう、draw period (引き出し期間)が設定されており、5年から10年が多いようです。この期間には限度額まで自由に借り入れをすることができ、この間は月々、利子さえ支払っておればよいという契約が多いようです、もちろん、利子以上に支払って元金部分も着実に返済していくことが好ましいですが、契約上はそれをしなくてもOKというものが多いようです。引き出し期間が終わると、repayment period(返済期間)が始まり、返済期間のはじめにそのときのローン残高をもとに月々の返済額が計算されます。返済額は利子と元金返済部分からなり、返済期間の最後にはすべての残高が完済されることになります。

HELOCは変動金利制である場合がほとんどで、支払う利子は市場の金利の変化により変動しますが、金融機関によっては返済期間の開始にともない固定金利制に転換できるようにしている場合もあります。

 

どちらがよいか

エクイティ・ローンかHELOCか、どちらの形態を使うべきかは、お金の用途と必要になるタイミングによります。

まとまった一時金が必要で、その後はとくに追加で借り入れをする必要はなく、一定期間をかけて定期的に返済をしていきたい場合にはエクイティ・ローンのほうが適切です。家を売りたいが、家を売りに出すためにところどころ修理をする必要があり、そのためにまとまったお金が必要というような場合がそれです。一時的に借り入れ修理をし、家が売れると同時に返済することになります。病気をして医療費が一時的にどっとかかり、すぐには支払えないというような場合にも、エクイティ・ローンがよいでしょう。

一方で、クレジットカード・ローンをコンソリデートしてより低利子ローンに乗り換え、返済プランをきちんと作って、一定期間で返済したいという場合にはHELOCのほうがよいでしょう。返済プランでは月々の収支をみてできる限りの返済を行い、なるべく早期に負債を完済することを目指しますが、ただ、どうしてもきつい月には利子だけの支払いで済ませるということができます。ただ、最近ではクレジットカードのバランストランスファーで一定期間(1年半など)無利子、というようなオファーもありますので、どちらが得かは吟味しましょう。

また、子どものカレッジ費用が今後4年間かかり、できるだけ積み立ててきた額と月々の給料からの持ち出しでカバーしたいが、どうしても足りない月にはHELOCから借りるというやり方もよいでしょう。ただし利用は計画的に。親がリタイヤメントにどのくらい近いか、他の負債はどのくらいあるかなどにもよりますが、返済は5年から10年の間に無理なくできる範囲が好ましいと思います。

また、スモールビジネスを始めるので、手持ち資金だけでは心もとなく、必要に応じHELOCから借り入れ、利益が上がるにつれ適宜返済したいというような場合も有効でしょう。

車を購入するときは、わざわざエクイティに頼らずとも、車自体を担保にかなり条件のよりローンが組めることが多いでしょう。銀行やクレジットユニオン(ディーラーより銀行やクレジットユニオンがお勧めです)からオートローンの情報を集めてみましょう。

 

最後に…リファイナンスの可能性も?

最後に、エクイティ・ローンでもなくHELOCでもなく、エクイティにアクセスする方法として、モーゲージ・ローン自体をリファイナンスするという方法もあります。先の例であれば、$500,000で購入した家が現在$550,000になり、モーゲージは$140,000で、家のリノベーションのため$50,000が必要になったとしましょう。また、モーゲージ・ローンを組んでから現在は利子が下がり、リファイナンスしたほうがモーゲージ自体の支払いも随分と安くなるとすればどうでしょう。

この場合は、モーゲージをリファイナンスし、同時に現在のローン残高に加え$50,000をキャッシュアオウトすることでリノベーションを実現することができます。具体的には、$140,000+$50,000=$190,000のモーゲージを$550,000の家に対して借り入れるという方法です。より低金利への乗り換え、変動利率から固定利率への乗り換えなど、モーゲージ自体の変更も同時にしたいときには考慮にたる方法です。ただし、この場合、ローンを組むトータル額が大きくなり、多くの場合クロージングコストはその額に比例するため、手数料がかさむ可能性があります。リファイナンスによってはクロージングコストがかからないようなものも提供されていますから、よく研究してお使いください。

 

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9 comments

  1. 初めてコメントをさせて頂きます。長文ですみません。
    2011年に189,000で購入した家が、300,000くらいまで上がり、リファイナンスを考えいています。残りのローンが134.000 / 4.7% / 30YR FIX。子供2人が今年から大学、夫は末にリタイア、私の定年は4年後の予定。学費は、スカラーシップとStuent Loanで残りは、貯金と節約で賄う予定。といった状態で、キャッシュアウト無しのリファイナンスで毎月の支払いを下げるか、同じ支払いで2,5000ほどのキャッシュアウトをするか、悩みに悩んでいます。C銀行と、家を買った時のローンオフィサーに見積もりをもらい、さらに悩んでいます。
    基本的には、ローンオフィサーの方が、銀行よりクロージングコストは高いですか? 銀行でも、クレジットユニオンの方が、もっとやすいですか? 100でも200でも無駄にしたくないんです。ご指南頂ければ幸いです。

    余談ですが、子供のひとりがPuedueに行きたくて、カレッジツアーにも参加したのですが、州外学生には一切スカラーシップは出さないと言われ、年間40,000の学費&寮費は、リスクが大きすぎて断念しました・・・・。

  2. 初めてコメントをさせて頂きます。長文ですみません。
    2011年に$189,000で購入した家が、$300,000くらいまで上がり、リファイナンスを考えいています。残りのローンが$136.000 / 4.7% / 30YR FIX。子供2人が今年から大学、夫は既にリタイア、私の定年は4年後の予定。学費は、スカラーシップとStuent Loanで残りは、貯金と節約で賄う予定。といった状態で、キャッシュアウト無しのリファイナンスで毎月の支払いを下げ、HELOCを開けるか、同じ支払いで$25,000ほどのキャッシュアウトをするか、悩みに悩んでいます。C銀行と、家を買った時のローンオフィサーに見積もりをもらい、さらに悩んでいます。
    基本的には、ローンオフィサーの方が、銀行よりクロージングコストは高いですか? 銀行でも、クレジットユニオンの方が、もっとやすいですか? $100でも$200でも無駄にしたくないんです。ご指南頂ければ幸いです。

    余談ですが、子供のひとりがPuedueに行きたくて、カレッジツアーにも参加したのですが、州外学生には一切スカラーシップは出さないと言われ、年間40,000の学費&寮費は、リスクが大きすぎて断念しました・・・・。

    よろしくお願いいたします。

    1. クロージングコストはまちまちですが、最近はほとんど持ち出しが必要ないようなものも多いので、できるだけ多くの見積もりを集めるのが良いと思います。一概にローンオフィサー(ブローカーですか?)のほうがクロージングコストが高いということはないと思います。モーゲージローンを選ぶ – GFEを知る(1) をご参考に。
      州外授業料は大変ですね。でも$40,000ですか。カリフォルニアは州内授業料でそれから数千ドル低い程度ですから、そう考えるとべらぼうに高いわけではないですが。。大学の授業料の話をしていると感覚がおかしくなりますね、高すぎて。。

      1. 2回もポストしてしまいごめんなさい。一つけしてしまってくださいませ。

        クロージングコストが、銀行の方が$600ほど安かったので、そんなものかと思いました。もう少し、見積もりを取ってみます。

        キャッシュアウトするかしないかは、お金がすぐ必要かどうかというかによるかと思いますが、5年後では、どっちがお得なんでしょう。

        1. キャッシュアウトの件は、実際の状況を鑑みて分析しないと簡単には答えが出ないかと思います。。

  3. 何度も申し訳ありません。
    そうですよね。GFEの記事を拝見し、もう少し研究してみます。分析の際には、何に気をつけたらよいかだけ最後位に教えていただけますか?

  4. 何度も申し訳ありません
    GFEの記事うぃ拝見し、研究してみます。最後に、キャッシュアウトをする場合に、何をよく分析すうるべきかおしえていただけますか?

    1. キャッシュアウトの件、これはそれぞれのご家庭の現在の財務状況と将来的な計画によって、答えはまちまちですので、ちょっとお答えすることができません。財務情報をいただいたうえで分析する必要がある分野です。

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