2013年に同じようなタイトルのブログを書きました。カレッジの授業料や寮費、食費、生活費、その他諸費を含んだトータル費用はいくらくらいになるのかについて調べたものです。あれから7、8年ですが、どのくらい変化があって、またその費用をみながどうカバーしているのかについて振り返り、また今後キーとなるトレンドなどがあるのであれば、それに心を止めてみたいと思います。
以前のブログで書いた2012-2013年のデータでは、ローインカム層(親の世帯年収$35,000以下)のカレッジ費用は$18,000強、ミドルインカム層($35,000から$100,000)は$22,000強、ハイインカム層($100,000以上)は$24,000弱という結果でした。
最新2019-2020年のデータでは、ローインカム層のカレッジ費用は$29,000強、ミドルインカム層($35,000から$100,000)は$29,000弱、ハイインカム層($100,000以上)は$32,000弱です。まあ、これはインカムレベルだけでの比較で、州立か私立か、2年制か4年制かなどは区別されていないので、それぞれのインカムレベルでこれら混在の平均値です。また繰り返しますが、これはカレッジのトータル費用で、グラントやスカラシップが出る前のいわゆるスティッカープライス(標準価格の平均値)です。ローとハイインカムでの差が以前は$6,000だったのが、$3,000まで縮まり、ティッカープライスレベルでは、どのインカムでもそれほど行くカレッジの費用に差がなくなってきていると言えるかと思います。
その下は、2年制公立、4年制州立、4年制私立の別での平均カレッジ費用です。2019-2020年では、2年制公立では$16,000弱、4年制州立で$25,000強、4年制私立だと$47,000強でした。コミュニティカレッジで初めて州立大学にトランスファーというのが、コスト削減のルートであるのが分かります。
さてこのスティッカープライスを具体的にはどのようにカバーするかが以下の表です。インカムレベルや大学の種類を超えた総合スティッカープライスの平均は、2019-2020で$30,017でした。このうち、25%がグラントやスカラシップでカバーされ、44%が親の給料や投資・預貯金でカバー、22%がローンとなっています。親の給料や投資・預貯金での支払いの44%という数字はかなり高く、例年は30%前後が標準です。おそらく2019年は株式市場が好調で投資残高が増えたことも影響しているのかもしれません。
グラントやスカラシップ(上表のScholarship and Grant)と親と学生の組むローン(Parent BorrowingとStudent Borrowing)を合わせたものが、総合的ににファイナンシャルエイドと呼ばれます。その中身を次に少し詳しく見てみましょう。返済しなければならないローンがファイナンシャルエイドと呼ばれることに違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、大学からくるファイナンシャルエイドのオファーレターにもローンは含まれて提示されますのでご留意ください。
下はUndergraduateのファイナンシャルエイドの暦年の構成比率についてまとめたものです。
Pell Grant
Pell Grantは特にファイナンシャルニーズの高い学生に提供される連邦レベルのグラントです。金融恐慌の後の時点で Pell Grantの発行額がかなり増え、その影響もあって提供されるファイナンシャルエイドの額自体をも大きく増えました。しかしながらその後はPell Grantの発行は年々減少傾向です。Pell Grantの減少傾向についてはいろいろな要素があるかもしれませんが、FAFSAでカウントされない資産限度額(Asset Protection Allowance)が近年著しく低下してきていることがあるのではないかと思います。たとえば10年前は65歳の親の場合、$84,000までの資産がカウントされず除外されましたが、2020年にはこの限度額が$9,400までに下がりました。それ以上の資産はカウントされるため、預金などをちょっと持っているとグラントの額が著しく下がります。それと関係してかはわかりませんが、FAFSA申請率も昨今では低下傾向にあり、2017には83%であったFAFSA申請率が2018年には77%、2019年には71%まで落ち込んでいます。ただし、StateごとのGrantはFederalレベルとは異なるルールで運営されるので、むやみにあきらめずFAFSAの申請はしてみるのがよいでしょう。また、FederalやStateと全く関係ないInstitutional Grant(後述)をもらうのにFAFSA申請が必要となっていることも多いのも申請はした方が良い理由です。申請は、タックスリターンの情報を自動インポートできるのでそれほど手間のかかる作業ではありません。
Federal Loans
Pell Grantが減少したのは残念ですが、スチューデントローンも減少したのはよいニュースです。2009年まで40%代だったスチューデントローンの占有率が減り、2018-19では29%にまで下がっているのは注目に足ります(ただし、ここでは個人的に一般金融機関から借りるローンは含まれていません)。すでに全米クレジットカード負債残高をうわまわるまでに増大したスチューデントローンですので、すぐには社会的問題の解決にはなりませんが、それでも新規発生率が減速している(Federal Loanのレベルだけのデータですが)のは良いことと思います。どうしても借りる必要がある場合は、一般的な金融機関からのローンの前に、条件のよいこのFederal Loansを優先して使うことがキーです。
Tax Credit
2009年にAmerican Opportunity Tax Credit (AOTC)が設定され、学生一人につき$2,500までのタックスクレジットが許されるようになりました。この影響は2009年以降、Federal Education Tax Benefitsが増えたことに読み取れます。収入制限がありますが(Modified AGI がsingle $90,000、married joint $180,000以下で利用可能)、利用できるのなら必ず使います。このタックスクレジットは、529などの教育税制優遇を受けていないお金(銀行預金や現行収入)から支払ったカレッジ費用に対してのみ利用することができるので、支払いの時にある程度のプラニングと記録が必要です。AOTC以外にも、Lifetime Learning Creditというのもあります。両方同時には使えません。
教育費で受ける税優遇 その1 - American Opportunity Credit
教育費に対する税優遇 その2 – Lifetime Learning Credit
Institutional Grant
これに並行する形で顕著なのが、Institutional Grantの伸びです。これはInstitution(=大学)が出す独自グラント/スカラシップで、ファイナンシャルニードベースのものもありますが、収入や資産は全く関係ないメリットベース(成績、特技などによる)のものも多くあります。大学の出すグラント/スカラシップは2013年からの5年間で、$10.8ビリオンも増えた(26%増)という結果で、ここ10年以内の新トレンドと言えると思います。
まず、Institutional Grantは州立大学よりも私立大学での提供がメインになります。そしてInstitutional Grantにはファイナンシャルニードがある場合にだけ考慮されるニードベースと、成績・特技などによるメリットベースとがあります。私立大学の中でもトップレベルの大学はニードベースオンリーで、メリットベースでの提供がないのがふつうです。ただし、トップスクールの場合、「ファイナンシャルニード」の定義がかなりゆるやかで、たとえばHarvardなら世帯収入$180,000以上でも「ニードあり」とみなされ、また場合によっては$200,000以上でも状況によっては「ニードあり」とみなされます。トップレベルの大学の姿勢は、「合格しニードがあるならニードは100%満たす。かなり高収入でもニードを認識する。それ以外のグラント(メリットエイド)は提供しない。」というものです。
一方で、多くの私立大ではメリットエイドの提供が見られるようになります。段階的に、ニードベースとメリットベースのグラントを混ぜながら、大学側は運営/経営に必要な学生数を確保していくわけです。なお、このメリットエイドは決して一部のエリート学生、トップ競技者だけに限ったものではありません。大変競争度の高いメリットエイドもあれば、比較的に簡単に手に入るものもあります。もちろん狙う大学にもよりますが、自分のレベルで余裕をもって合格できる学校だとエイドが出る可能性が増えます。
今後当面はこのInstitutional Grantが注目されていくのではないでしょうか。とくに、ニードベースではグラントがもらえない高所得者層ではInstitutional Grantを最大限に活用したいところです。(なお、これらのスカラシップ/グラントの活用は、ファイナンシャル・プラニングの範疇ではありませんので、しかるべきカレッジコンサルタントにご相談ください)
*文中データはSallie MaeとCollegeBoardからのものです。