ロックダウン状態での家計見直し

コロナウイルスの影響で一番打撃を受けたのは、レストラン、旅行、小売りなどのサービス業界であり、フロントラインで顧客とのインタラクションが必要な職種が最も先に消滅しました。Mckinsey & Companyば、これらの業種が、“影響を受けた/受ける可能性のある職種”の42%に当たるとしています。打撃を受けた業界に関わられる方は、今本当に大変な時期だと思いますが、どうかこの苦難の時期、球根が冬のあいだ静かに養分を蓄えるように寒さを耐え、春には力強く咲くことができるようにとお祈りいたします。

一方で、他の業界への影響はそれほど大きくありません。前述Mckinsey & Companyのリサーチでは、ユーティリティ、農業、鉱業系への打撃は少なく、また専門職・金融・保険・情報・マネージメント系の職種への影響も極小としています。増幅するUnemploymentの状況をニュースを日々目にしていますが、その一方で、影響を受けない業種で働く人々は、多くがリモートで遂行可能である可能性も高く、家を出られない不便はあるものの、ファイナンシャル的にはほとんど影響がないという方も多いようです。

影響を受けた職種の86%は、年収$40,000以下の仕事であり、打撃を受けた人々の大多数は低所得・低教育層で、貯金もほとんどなくpaycheck-to-paycheckで暮らしている人々だそうです。失業・収入の停止などのファイナンシャル面での打撃とは別に、コロナに感染し亡くなったり、あるいは重症化して大きな医療費を抱える層も同様にかなりの偏りがあり、低所得者・一定の人種に集中が見られるというのも問題になっています。ファイナンシャル面でも、ヘルスケア面でも、どちらでも打撃を受けやすい人々が存在する一方で、どちらでも影響を受けない人々も存在するという、アメリカのシステムの歪が露わにされたように思います。

フランクリン・ルーズベルトの下の言葉などを見ると、アメリカ社会は本当に”発展“してきたのだろうか・・・と疑問に思わずにいられません。いろいろ考えさせられる日々です。

 “The test of our progress is not whether we add more to the abundance of those who have much; it is whether we provide enough for those who have too little.”

  — Franklin D. Roosevelt, 32nd President of the United States

このブログはファイナンシャルプラニングのブログですから、とにもかくにも焦点を戻して、今私たちはどうすべきかについて考えてみます。、

長期的なファイナンシャルプランについては、今考えない

10年以上先の目標のためにやってきたことについては、今敢えて考えず、やってきたまま続けるのが良いと思います。401(k)やIRAの積み立て、カレッジファンドの積み立てなどはそのまま維持する。もちろん投資してきたものも変更をしない・・これが鉄則です。

あなたが、インデックスファンドやその他高度にリスク分散したミューチュアルファンドに投資されているのなら、今回のような市場崩壊は長期投資では“想定内”です。市場が崩壊したから、何か変更しなければならないということはありません。

中・短期的な目標については見直し・吟味する

一方で、来年リタイヤしようとしていた、あるいは今年子どもがカレッジに入る・・などという中・短期のゴールがある方は、見直しと吟味が必要です。

来年のリタイヤメントを前にしながら、市場が暴落すれば不安になってあたりまえですが、ただリタイヤしてから寿命を全うするまでは、通常20年から30年ほどの長期間があります。10年以上向こうの長期的将来の生活費をカバーするためには、長期投資が十分に可能です。市場暴落以前に、きちんとリスクレベルを考えて適切な長期投資をしておられたなら、今変更する必要はおそらくなく、これまで投資をしてきたとおりにStay investedが一番です。

ただし、来年、再来年という“市場が完全に回復しない(可能性のある)時期”の生活費については、どう捻出するかを考察する必要があります。現金で他に十分な貯金があるのでそれを使う、あるいは年金だけでなるべく生活するなどが可能であり、値下がった状態で投資資金に手を付ける必要がないのであれば、予定通りのリタイヤも可能でしょうが、そうではない場合には他の手段を考えないとなりません。生活費自体を調整することで市場回復まではローコスト生活をするか、あるいはそれが不可能ならリタイヤメントを少し先送りするということも必要かもしれません。

入学が差し迫ったお子さんをお持ちの場合も同様な考察が必要です。529カレッジファンドの場合、Smart & ResponsibleではローコストのAge-based投資をお勧めしており、その路線を選んだ方であれば、市場暴落の影響はあったとしてもネガティブインパクトの大きさは限られているかと思います。

Age-basedの場合は、入学年が近づくにつれ、自動的に株式投資の比率を下げていきますので、今年入学・来年入学の場合は、株式投資比率が20%以下がほとんどです。それでも値下がったところでの現金化はなるべく避けたいですから、今年・来年あたりのカレッジコストは他の貯金から、あるいは月々の給料からできるだけ捻出し、市場回復とともに529から引き出しを行って補てんしていくというプラニングが必要になるかと思います。

月々のバジェットの見直し

上のようなケースに関連して、あるいは一時的な収入減などと絡んで、期間限定のバジェットの見直しというものも必要かもしれません。今回のようなロックダウン生活では、何が自分にとって大切なのか、どの費用は生命維持に欠かすことができず、どの費用は必須ではないものの生活を豊かにしてくれるのか、まだどの費用はなくてもなんとかなるのかを考えるよい機会が与えられたのではないでしょうか。

また、このような危機的な状況は、家庭内でファイナンスの話をする最適な機会でもあります。普段は避けていたお金の話も、こういう機会ならしやすい、あるいはしたくなくてもせざるをえないということもあります。どうかロックダウン生活の夕食のテーブルで、家計の話をしてみましょう。

今回のコロナショックを乗り切っても、またこのようなことは起こるかもしれません。今回が整理のよい機会です。優良な家計は、必須の固定費(Need)、必須ではないが生活を豊かにするのでできれば支出したい費用(Want)、絶対必要ではないが余裕があるなら他のトレードオフとも考え支出した費用(Wish)の整理ができている家計です。たまのちょっとした無駄遣いも思い切ってすることができる家計、でも必要ならすぐに無駄を切って支出カットできる家計が、お金と健康的につきあえる家計です。月々のバジェットを大きくしたり小さくしたり柔軟に保つ秘訣は、このカテゴリー分類です。

必要なら支払いを一定期間止める

連邦政府がからんだローンなら、支払いの一定期間の休止などが提供されるようになりましたが、その他の会社からのローンでも、このコロナの時期、さまざまなヘルプが受けられます。多くは待っていては受けられず、自らリクエストする必要があります。

モーゲージ

コロナウイルス モーゲージ救援 参照のこと

クレジットカード 

クレジットカード会社に連絡すると、支払い義務の一時免除、利子の一時的な削減などの対応が受けられることがほとんどのようです。電話して直接レップと話すのが一番かもしれませんが、だた電話はどこも非常に混雑していると思います。会社によっては、Web上でリクエストを始められるところもあります。決して大きくは宣伝されていないので、ホームページを詳しく調べる必要があります。

スチューデントローン

連邦政府のローンは60日間(その後再考慮)、自動的に利子ゼロになります。2か月分(その後再考慮)の返済義務を免除してもらえる権利もあります。この免除はリクエストする必要があります。1-800-4-FED-AIDに電話するか、あるいはそれぞれのローン・サービス会社のWebサイトをチェックします。その他の会社のローンも、それぞれ何らかのヘルプを提供してくれる可能性が高いので、ホームページで調べるか、必要なら電話で聞いてみましょう。

現金が必要なとき

今回のような状態で、一番の頼みの綱はエマージェンシーファンドとして維持している現金です。投資が値下がりしたときに売ったり、リタイヤメント資金をくずすなどしなくても、すぐに頼れる現金を手に持っておくことの意義は大きいです。

その現金では足りない場合、どう現金を工面するかについてですが、これはそれぞれのご家庭でさまざまです。以下のような選択肢があり、それぞれの条件や家計の状態により最適なものを選びます。

  • 課税口座でミューチュアルファンドをお持ちの場合、それらのファンドを担保に短期ローンを得る。
  • 401(k)がローンを提供している場合、ローンを受ける。すべての401(k)で提供されているとは限らない。利率・返済条件など検討のこと。
  • 401(K)から引き出す。CARES ACTにより早期引き出しのペナルティなし。3年以内に入金し戻せば、所得税もなし。ただし、値下がりした状態でファンドを売る必要あるので検討要。
  • 家のエクイティが十分ある場合は、エクイティローン(HELOC)を開く。Line of Creditは、いったん開いておけば、必要に応じて引き出しできるという特典がある。返済条件は確認のこと。
  • 家のエクイティが十分ある場合は、キャッシュアウト・リファイナンス(リファイナンスして、現在のローン残高以上に借り入れることで、現金を受け取る)する。現在利子が下がっているので、場合によってはよい選択の可能性あり。将来的な返済設計を鑑みつつ行う。
  • 家のエクイティがあり、(結婚されている場合はご夫婦ともに)62歳以上なら、リバースモーゲージでLine of Creditを開く。手数料、コスト、リスクなど十分に考えて決断する。

どれがよいかは、それぞれのご家庭で違うので、状況にあわせて吟味が必要です。

2 comments

  1. お世話になります。

    時間に余裕ができたので、勉強して投資を始めたいと考えている40代の者です。
    ヴァンガードのターゲットファンド2040に投資しようかと考え中なのですが、
    コロナ禍の現時点で投資をはじめても良いものか悩んでいます。
    レインマネーは今後1年分手元に残し、それ以外の余剰金を充てるつもりです。
    観光業に従事していますが、経済の見通しが不明なため
    もう少し様子を見たほうがいいのかと二の足を踏んでいます。

    なにかアドバイスをいただければ幸いです。

    1. 一つの考え方は、今市場が落ちているからこそ、投資のしどきです。まとまった当面使わなくてよい(10年目安)があるなら、投資を始めるにはよいタイミングと思います。非常資金1年で足りるか、現状考えて、もうすこし増やすかはよくお考え下さい。当面使わなくてよい資金のみが長期投資に向きます。

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