ソーシャルセキュリティの最適な開始年齢は?

ソーシャルセキュリティ年金は62歳から受給開始ができます。多くの方が67歳(1960年より前に生まれた方は66歳)でフルリタイヤメント年齢に達し、その後70歳が最も遅い開始時点となります。フルリタイヤメントでもらえる年金額は“一応の”基本となりますが、フルリタイヤメントで受給開始する代わりに、それより前に開始すれば(最早で62歳)受給金額は減り、それより後に開始すれば受給金額は増え70歳で最大になります。今日は、いつから受給開始をするのがよいのか・・という問題を見ていきます。

いつから開始するのがよいかは、寿命によります。健康で長生きの人は70歳までまって、受給金額を最大化してから受給開始をし、一生涯高い受給金額をもらい続けるほうが、生涯の累計受給額が最大になります。一方で、病気があり残念ながらあまり長くは生きられないという場合いは、早くもらい始め受給できるものはもらってから亡くなるというのがよいことになります。

誰も自分の寿命はわからないので、ある程度の予想をつけて受給開始を決めるわけですが、今日は、いったい何歳まで生きたら待つことのモトがとれるのか・・という考え方をしてみます。別の言い方をすれば、ソーシャルセキュリティー年金を、

  • 少ない額だが早くもらい始める
  • 多い額だが遅くもらい始める

ことのブレークイーブン年齢を調べるということです。

きほん

ソーシャルセキュリティの年金システムは、収入に対して課せられるソーシャルセキュリティ税でサポートされています。私たちは収入の6.2%をソーシャルセキュリティ税として納めます(Self Employedの方はその倍)。ただしソーシャリセキュリティ税が課せられる収入には上限が定められており$137,700(2020)です。この課税上限額は、毎年インフレ調整されます。これを超えた収入があってもソーシャルセキュリティ税は同じ(最大額)です。

将来受け取るソーシャルセキュリティ年金は、ご自分の年々の収入のうち最も高いものから35年分の平均月額収入から割り出されます。収入のある年が35に満たない場合は、収入のない年は収入=$0としてカウントされます。よって年金をなるべく多くもらうには

  • 35年間は働く
  • 年収を多くもらう(前述のとおり、課税上限額を超えても、課税上限しか考慮されない)

が有効です。たとえ35年を超えて働いていても、過去平均より高い給料で働き続けるのなら、最も高い35年間の年収が上昇しますので、年金が上がることになります。

以下では、年収の額ごとに、開始年齢によってもらえるソーシャルセキュリティ年金額を調べ、“何歳まで生きたなら遅くもらうことのモトが取れるのか”というブレークイーブンを見ていきます。なお、ここでの年収は、“過去35年間の平均年収がこの額であった場合“と仮定しています。

また、受給開始とリタイヤ(働くのをやめる=ソーシャルセキュリティ税を納めるのをやめる)のは同じ時点と仮定しています。

年収$150,000(課税上限値を超えた収入レベル)の場合

月額年金受給額予想は、フルリタイヤメント67歳では$2,642、62歳で早期開始なら$1,849、70歳まで待つなら$3,276となっています。もちろん、これらの年齢の間のどの年齢からでも受給は始められますが、ブレークイーブンの比較は62歳受給、67歳受給、70歳受給のみを考えます。

下は、62歳受給、67歳受給、70歳受給で開始した場合の累計受給額を表したグラフです。それぞれ二つの線が交わるポイントが、その二つの選択のブレークイーブンポイントです。

たとえば、62歳で開始(青)と67歳で開始(赤)は78歳くらいで交わっています。ブレークイーブンポイントが78歳ということで、この年より早く亡くなるのなら62歳で早々と受給開始したほうが累計受給額は大きいが、78歳より長く生きるなら67歳まで待って受給した方が累計受給額は大きいということです。

67歳で開始(赤)と70歳で開始(緑)は82歳くらいで交わっています。ブレークイーブンポイントが82歳ということで、この年より早く亡くなるのなら67歳で受給開始したほうが累計受給額は大きいが、82歳より長く生きるなら70歳まで待って受給した方が累計受給額は大きいということです。

同様に、年収$100,000、年収75,000、年収$50,000の場合は以下のようになります。

年収$100,000の場合

年収75,000の場合

年収50,000の場合

おもしろいことに、どの年収でもブレークイーブンの線は同じようなスロープで表され、ブレークイーブンポイントはいつも78歳と82歳でした。

ということで、ソーシャルセキュリティ年金の開始年齢については、78歳まで生きられないと見るなら62歳で受給開始、82歳まで生きられないと見るなら67歳で開始(あるいは67歳以前でも余命宣告された時点での開始もあり)、それ以上生きられそうなら70歳まで待つというのが基本ルールのようです。

なお、これはお一人のみの分析です。夫婦での受給の場合は、お二人の組み合わせで考える必要があるのでこれより考慮点が増えますのであしからず。

11 comments

  1. 今も当てはまるのかは分かりませんが、昔受けたセミナーでは、配偶者が年下の場合は、先に配偶者としてのSSを62歳で受け取り開始して、上に紹介されてるような計算で、自分の分は最適年齢で、受給開始(スイッチする)するのが良いとアドバイスしてました。その時の世帯年収とか、税率とかも考えないといけないですよね。

    1. 現在は、本人がSS受給をすることなく、配偶者が配偶者ベネフィットだけ受け取るということができなくなりました。

      1. 法律が変わると学び直しですね。早めに色々学ぼうと参加したセミナーですが、定期的に学びの機会を持たねばいけないという事ですね。勉強になりました!

  2. 私も同じようなアドバイスをどこかで読んだのですが、本人がSS受給をすることなく、配偶者が配偶者ベネフィットだけ受け取るということができなくなったということであれば、このアドバイスはもうOUTDATEDですね。老後のファイナンスは、現役時代の貯めるだけに比べ、色々調べて計画する必要がある上に、法律も変わったりするのでは、先が思いやられる気分です。老後で失敗するのは、取り返せず怖いです。

  3. いつも大変ためになる記事をありがとうございます。
    リタイアに向けて準備をするのに勉強させていただいています。
    ソーシャルセキュリティ受給額について、これまで読んだ大抵の比較では、リタイアとSS受給が同時という前提で計算されていますが、リタイアとSS受給開始がずれた場合はどうなると思われますか?リタイアしても、SS納税総額は寝かせたまま、勤続年数は増えないとなると、フルリタイアメントの65歳以降に受給開始をずらしても受給額は増えないのでしょうか?
    当方、62歳でリタイアする予定で10年間は会社のDeferred Compensationが支払われます。勤続年数は25年、SSは上限額を納税してきました。

    1. フルリタイヤメントで受け取る予想額(PIA)が提示されていると思いますが、それはその年まで勤続されることを前提に計算されています。なので早くお仕事をやめられる(ソーシャルセキュリティ税を納税されない)数年分は、PIAが若干減ると思います。それでも62歳に受給開始することで減額する額に比べればずっと小さい減額と思います(最大30%)。ソーシャルセキュリティオフィスに問い合わせれば具体的に計算してくれると思います。

      1. 明快なご返答をありがとうございました。リタイアしても余裕があるうちはソーシャルセキュリティの受給を遅らせたほうが良いということですね。これからも有意義な記事をよろしくお願いいたします。

  4. はじめまして。いつも参考にさせていただいております。
    質問させて下さい。
    主人は70歳を超えていますが、SSを受給しながら現役で働いています。
    なので、受給額は毎年増額しています。
    私も働いていますが、配偶者としての受給額の方が多いので、そちらを選ぶつもりでいます。この場合、主人が働き続けるているうちは、私の配偶者としての受給額も増額していくのでしょうか? それとも主人のフルリタイアメントエイジ時点の受給額のままなのでしょうか?

    1. 私の理解では、配偶者ベネフィットのベースは、ご本人(ご主人)のフルリタイヤメントエイジ時の本人ベネフィットをもとにするので、今ご主人が働かれてご本人ベネフィットが増えている分に関しては考慮されないのではないかと思います。ソーシャルセキュリティオフィスにご確認いただけますか?

      1. ありがとうございます。
        こちらのサイトを読むまで増額していくのものだと思っていたので、質問させていただきました。気づかせていただいて感謝します。
        ありがとうございました。

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