今日は、Michael Finke(PhD, CFP®)という人が書いた記事を読んでいて、なるほど~と思ったのでシェアします。この人は、次に市場が価格調整をするときには、クリプトやミーム銘柄の保持者にとっては大変厳しいダメージがあるだろうが、その対極にいるような長期インデックス投資者も同時にいくばくかのダメージをこうむることになる・・・と書いています。以下、Michael Finkeの書いた記事をベースに、ところどこ主観もまじえて書いてみます。
前回の記事でも書いたのですが、バブルというのは、「いかにそれが価値があるものか」のストーリーから始まります。テック・バブルの場合は、「ニュー・エコノミー」というストーリーであり、不動産(ハウジング)バブルの場合は、「家の価値は上がり続ける」というストーリーでした。このストーリーは次から次へと語られ、人を信じさせ、市場に浸透していきます。今日のミーム・カルチャーにおいては、「著名人のやり方をフォローしたり、管理の枠の外にある自由な新しい通貨(クリプト)を持つことで、瞬く間に大富豪になれる」というストーリーであり、これはスリルやエキサイティングなものを求める人々のニーズを実によく満たしています。
ミーム銘柄とは
今日のバブルがどのようにはじけて、どのように勝者と敗者をつくりだすか・・は誰にも見えない部分です。今ではすっかり有名になったGameStopの株を例にとりましょう。GameStopの市場価格は一年前には$300ミリオン以下でした。それが今では$12ビリオンです。GameStopの株主全体を考えるとき、一年前と比べて、$11.7ビリオン分、リッチになったわけです。当のGameStop社は2021年9月までで$170ミリオンの損失を計上しているのにです。損失を出している会社の株が、$11.7ビリオンも上がる・・それはどういうことなのでしょう。
GameStopは、最初のミーム銘柄だといわれています。ミーム銘柄というのは、企業の業績に関係なく、ソーシャルメディアによる情報拡散で大きく注目が集まり、短期間で急激に株価が上昇した銘柄です。普通なら、企業自体の業績や財務状況、将来予想などによって株価が決まるところ、それらと全く関係なく、TwitterやRedditなどの書き込みの内容だけで、個人投資家の売り買いが急激に激しくなり、本来の企業価値とは全くかけ離れた値動きをする銘柄です。
インデックスの中に
これらの売り買いは投機的なものであり、長期パッシブ・インデックス投資を目指す私たちはもちろん参加はしないし、関係もない・・とそう思いますね。
ところが、実は私たちもGameStop株の保持者なのです。US全体のインデックスファンドを持っていれば、そこにGameStoopも含まれているからです。
GameStop株がどんどん値上がりすれば、私たちの持っているインデックスファンドの中でのGameStop株の比率があがることになります。Vanguard のUS株式全体に投資するインデックスファンド、Total Stock Marketは2021年8月に、GameStop株の保有率が13.88% も上昇したと発表しました。インデックスファンドは通常、時価総額(株価x発行株式数)に応じて各社に投資しますから、GameStopの時価総額が$300ミリオン以下からいきなり$12ビリオンになれば、それに応じて投資比率が高まるしくみです。
「ミーム銘柄だから買わない」というのは「投資する銘柄を選ぶ」行為であり、これはインデックスに含まれる株式をたんに時価総額に応じて淡々と投資するインデクス投資に反することになります。インデックス投資ができた当初は、ミーム銘柄というものが存在しなかったので問題にもなりませんでしたが、これはどう考えるべきか。
US小型株2,000社に投資しているインデックス、Russell 2000は、ファンド内でのGameStop株の比率があまりにも高くなってしまったため、同社株式の一部を売却しました。反対に、US大型株500社のインデックスS&P500は、時価総額が大きくなったGameStopを同インデックスに入れるべきか検討中です。
市場全体にも影響
GameStopを多少のパーセンテージなりとも保有しているならば、私たちインデックス投資家もそのバブルの影響をいくばくかは受けていることになると同時に、Michael Finkeはそのいくばくかの影響が市場全体に与える影響についても書いています。
少数の投資家が株式市場全体に与える影響は、決して小さくないのだそうです。株式に対する需要が少し高まっただけで(ミーム銘柄に個人投資家が殺到しただけで)、株式市場全体に比較的大きな値上がりを引き起こすのだそうです。反対に、株式に対する需要が少し小さくなっただけで(ミーム銘柄へのバブルがはじけただけで)、株式市場全体に比較的大きな値下がりをもたらすことになります。
ということで、長期パッシブ・インデックス投資家であっても、インデックス投資の中に持っているミーム銘柄自体の膨れ上がった比率と価格に加え、さらにはミーム銘柄が市場全体に与える影響については理解をしておくべきである・・と記事は締めくくっていました。
たしかに、2020年春にコロナの影響で暴落した株式市場は、その後あまりにも好調です。ミーム銘柄のせいなのか、それともほかのバブルなのか、区別は簡単つきません。インデックス投資家としては、ただインデックスに投資するだけですから、ミーム銘柄が入ろうがなんだろうか、やはりインデックスに投資するしかありません。そして、バブルがあちこちではじけても、それもインデックスの中のことであれば甘んじて受け、また全体が上がっていくのを待つ・・、これが究極のパッシブ投資なのでしょうね。少なくとも、ビットコインのバブルがはじけても直接的な影響は受けないという安心はあるんじゃないでしょうか。