“投資したら必ず減ることあります“を納得しておく(2)

前回、インデックスファンドを使った長期投資では、市場がどう動こうと何もしないことが最善であることを見てみました。一般的に10年以上を長期投資とみなしますが、10年の間には平均的な数字ではありますが、10%以上の値下がりが3回、20%以上下がったまま2か月以上続くのが2回、大きな景気後退が1回がある計算になり、市場が大きく下げることは長期投資をする限り必ず誰もがかなりの頻度で経験するものです。それは当たり前に起こるものであり、実際そのような局面に来たら、ただただクールに構え何もしないこと・・これがベストということを学びました。今回は、そのただただクールに構える・・という部分に焦点を当ててみます。

見ない、聞かない、話さない

クールに構えるといっても、やはり一生懸命働いて稼いだお金、老後の生活資金!と思うと、20%下がった・・となれば誰でも完全にはクールではいられないでしょう。

だから、ニュースやファイナンス情報は見たり、聞いたり、ひいては話したりしないのが一番です。見たり聞いたりしてしまえば、やはり不安な感情は生まれることになりますし、それを話したりしてしまうと不安が再確認されます。いったん、きちんと計画をつくって投資を始めたら、あとはすっかり忘れておくのが一番賢いと思います。

各種メディアは、ニュースをセンセーショナルにして注目を集めようとします。タイトルに“今回の市場暴落は今までとは違いキケンだ・・”というようなニュアンスを加えれば、読者のクリック率は上がるでしょう。またGoldやSilverを売る会社は、“だからこそ、市場に左右されない貴金属がよい”というでしょう。でも、何もしないためには、それらは雑音。聞かないのが一番です。過ぎてみればその市場暴落もおそらく今までのものと同じ一時的な下落であったのが分かります。またGoldやSilverは株式市場には左右されなくとも、それら貴金属の市場がありみんなが乗り換えれば買値があがり、売りたいときには思う値段で売れないかもしれません。しかも、インデックスファンドのように高リスク分散しておらず、ゴールドだけ、シルバーだけの投資は一極集中の高リスク投資です。そっちの方がよっぽどあぶない。

感情的にならず、とにかく何もしないでいる・・それが賢明です。次から次へと入ってくるニュースは、雑音です。聞かないのが一番、聞こえてきても雑音として無視します。

前回、例として挙げた下記の記事。。

“現在、株式市場はバブルであり、これから暴落する・・とノーベル賞受賞の経済学者が言っている”という記事ですが、この記事の下の方には、しっかりとこう書いてありました。

警告は無視せよ: もう一人のノーベル賞受賞者Eugene Famaによれば、バブルは実際はあらかじめ見極めるのが不可能だから、見極めようなどとはしないほうがいい。彼の研究によればバブルははじけてみて初めて分かるものであり、“今がバブルだ”というような警告はバックグラウンドノイズ以上の何物でもない・・としている書いてあります。

いろいろなニュースは雑音です。

リアリティチェック

市場の状態のよくない時には、できるだけStatementを見たり、オンラインの残高チェックなどもしないほうがよいです。赤字の数字やマイナスのついた数字は、やはり不安感をあおることになります。

とはいえ、やはり目にしないようにしていても、目にしてしまうこともあるでしょう。一番良いのは、下がった数字を見たとしても気にしないことですが、このために自分をあらかじめ下落に慣らしておくというのが必要かと思います。下落は必ずある、あった時には数字が下がることを心構えするとともに、どのくらい下がる可能性があるかを予想をつけておいてそのマイナスの数字に慣れておくということです。

投資する株式比率に応じて、投資ポートフォリオが実際どのくらい下がるのかをシュミレーションしたのが下記です。

100%株式に投資した場合

まず、まだお若く、実際に資金が必要になるまで30年以上ある方は、アグレッシブに100%株式投資でもよいでしょう(もちろんケースバイケースですが)。上がったり下がったりしながら、30年以上をかけて全体的には右肩上がりで増やしていきます。予想平均年間利回りは6.91%。ただし、右側で、2008年の金融恐慌と同じレベルのものが来たら、株式100%で投資していた場合、全体投資ポートフォリオの51%の値下がりを経験し、絶対額に直してみれば$100,000で投資をしていた場合には、$50,950が消失し残高は$49,050となるという計算です。

数字だけ見ると、ポートフォリオの半分以上がなくなる・・・これは感情的にならずにはいられませんが、前回のブログでも見たとおり、何もしなければこの消失はそのうち回復し、それ以降さらに大きく成長していくわけです。消失した額は、含み損であり、実際の損ではありません。売ってしまったとき確定の損になりますが、含み損はいつか消える損です。

問題は、このマイナス51%という数字、$100,000の投資で$50,950、$500,000の投資なら$255,000分だけ下落し、残高が$100,000の投資で$49,050、$500,000の投資なら$245,000になったとき、クールでいられるかということです。

クールでいられるなら、迷わず100%株式投資をお勧めします。いやいや、そこまで下落するとちょっと正気ではいられない、夜も眠れない・・という場合は、株式比率を下げてリスク調整をします。

株式 82%:債券18%の場合

ちょっとリスクを下げて株式82%にしすると、年平均利回りは6.19%に下がり、2008年の金融恐慌レベルの下落があった場合には、$100,000投資で$39,235、$500,000投資で$195,000だけ残高が下がります。このくらいなら、クールに構えて何もしないでいられるのがら、この比率が最適アロケーションとなります。よく、数字を見て慣れておくこと、あらかじめこのくらい下がることは十分あり得るけど、それは想定内であることを自分で納得しておくことが必要です。

株式61%:債券39%の場合

ハイリスクハイリターンの株式比率がだんだん下がってくるので、年平均利回りも下がり5.35%。ただし、金融恐慌なみの下落が来ても26%しか値を下げないでいられます。

株式54%:債券46%の場合

株式比率が半分ちょっとまで下がります。年平均利回りは5.03%と低くなりますが、その分、恐慌時の下げ幅も21%どまり。このくらいならクールで耐えることができるでしょうか?

ただし、クールに構えていられるために、これほど平均利回りを犠牲にしてもよいかという議論は必要になります。すでに資金準備の目途が立っている場合は、年間5.03%でも十分かもしれません。反対に、リタイヤメント準備を遅く始めたので、年間5%ちょっとでは少し足りない、もう少し増やしていかねばならない・・という場合は、株式比率を高めたアロケーションで投資せざるを得ないかもしれません。だれでも下げ幅は低いほうがいいですが、それで必要な利回りがでるのかという視点も大切です。

株式38%:債券62%の場合

この投資ポートフォリオは、リスクがかなり低くなり、2008年の金融恐慌と同じレベルのものが来ても、10%のみ値下がりするのみです。ただし、その分利回りも犠牲にし、平均利回りは年4.43%に過ぎません。すでにリタイヤメントにい入っており準備してきた資金を引き出す段階においては、“増やす”フェーズは終わっていますから、利回りは犠牲にしても下落の少ないポートフォリオを組むことになります。

ご自分の投資比率のアロケーションに近いものを見つけ、大恐慌のときどのくらい残高が減るかを見て、“慣れて”みてください。

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