自分で入る健康保険 ― 思ったより安く入れるかも!

ちょっと昔のことになりますが、2010年春にできたAffordable Care Actによって、俗に呼ばれる「オバマケア」ができました。これにより、雇用主を通して健康保険を買えない人々も、州の運営する健康保険マーケットプレイスを通して健康保険に個人加入できるようになりました。収入によって政府からの助成金を受けることもできるようになり、よりaffordable(手ごろな価格で)健康保険加入が可能となりました。トランプ政権で廃止の危惧が高まりましたが、なんとかサバイブしました。そんな中、健康保険料はまだまだ高く(決してaffordableではないことも!)、年々上昇する傾向もありました。

そんな折、世界はCovid時代に突入し、アメリカに住む人々の生活が激変しました。これに対応するため、2021年春には2021 American Rescue Planという法律が通過し、各州の運営する健康保険マーケットプレイスでの保険料が2021~2020年の短期間に限って低下する措置が取られました。これにより、すでに助成金を受けて保険を買っている人々も、またこれまで助成金を得るには収入が高すぎた人々にも、新たなコスト削減の可能性が生まれました。

2021 American Rescue Planは2021年春にできた法律で、2021年の1月から2年間、2022年までの保険プランに対して有効な短期措置です。

より高い所得でも助成金が受けられるように

これまでのAffordable Care Actでは助成金の対象がPoverty Level(貧困レベル)の400%の収入層までが限度となっていました。貧困レベルの数字には家族の人数も考慮され、家族サイズと収入とによって助成金の金額が計算されました。貧困レベルなどと聞くととても貧しくなくては助成金をもらえないかと思いがちですが、貧困レベルの400%、つまり4倍が限度となっているので、それなりの収入があっても家族の人数が多ければ助成金を受けられる可能性が高まります。貧困レベルの400%は金額にして、シングルで$51,040、4人家族で$104,800です。

2021 American Rescue Plan によって2021年から2022年に適用されるシステムでは、貧困レベルの400%を超えて600%までの所得層で助成金がもらえる可能性があります。貧困レベルの600%は金額にして、シングルで$76,560、4人家族で $157,200です。

なお、助成金は、ベンチマーク保険プラン(各州でのシルバープランで2番目に安いプラン)の保険料に対して個人の負担金が一定以下になるように設定されているそうで、保険料は場所や加入者の年齢によって変わるため、稀なケースでは(とくに高齢であったり、加入者の薄い田舎など)貧困レベルの600%を超える収入があっても助成金がでるケースもあるそうです。助成金をもらう資格のある人の5%がこの層にあたると予想されるそうで、稀ではありますがばかにもできない数字だと思います。収入が高すぎると思っても、チェックしてみる価値はあるかもしれません。

すでに助成金を貰っているならもっと貰える

2021 American Rescue Planでは、貧困レベルの150%の収入(シングルで$19,275 、4人家族で$39,300)なら、ベンチマークプラン(各州でのシルバープランで2番目に安いプラン)が保険料ゼロで加入可になります。貧困レベルの400%以上で600%までで(シングルで$51,040~$76,560、4人家族で$104,800~$157,200)、ベンチマークプランを買うための自己負担は収入の8.5%となります。

2021 American Rescue Plan以前は、前者は収入の数パーセントが自己負担、後者では10%弱以上が自己負担でした。それぞれの収入レベルで助成金の大きさが増えているのがわかります。

もしも失業保険をもらったなら

2021年失業保険を受け取ったなら、さらに上乗せで助成があります。2021年に、一定期間(各州で違うかもしれませんが、カリフォルニアの場合なら1週間)Unemployment Benefitを受け取ったなら、実際の2021年の収入がいくらであれ、かなり低くみなされる特典があります。結果的に、実際の健康保険料がほぼゼロになるという特例があります。

州のサイトで買うことが必要

2010年のAffordable Care Actに始まる助成金から、今回の2021 American Rescue Planではの特別措置に至るまで、すべてのベネフィットは、州の運営する健康保険マーケットプレイス(Health Insurance MarketplaceとかHealth Insurance Exchangeと呼ばれるサイト(こちらでチェックで契約したものが対象です。ご自分で州のサイトから保険プランを契約するか、あるいは州のサイトが認定しており、助成金などの手続きをできる保険ブローカー/エージェントを通して契約をする必要があります。これらはon-exchange plan (州のサイトに載っているプラン)と呼ばれます。

各保険会社はこれ以外にもoff-exchange plan(州のサイトには載っていないプラン)も売っています。巷のサイトや州のサイトとは関係ない保険エージェントやブローカーを通して購入する場合、たとえ助成金や特典の対象であっても助成金や特典は得られません。

Off-exchange planを購入する人は、そもそも助成金の対象とならない高所得者層であったり、あるいは助成金の対象とはなるかもしれないがそれ以外のプランの内容的なものなどを優先して、敢てoff-exchange planを選んでいることもあると思います。ただ、以前の調査によると、助成金の対象であるのにoff-exchange planを選んでいる人の大部分は、助成金の存在やしくみをよく理解していなかったというリサーチ結果もあります。ベネフィットを得られる可能性があるのであれば、再考する価値があるかもしれません。

なお、これらの法律の適用に関しては各州で差があり、また申請手続きなどの事務事項に関してはSmart&Responsibleは把握していません。この記事はあくまで参考としてくださり、詳細に関しては、各州のサイト(こちらでチェック)か、助成金/特典の手続きができる保険エージェント/ブローカーさんに確認いただきますようお願いいたします。

8 comments

  1. はじめまして。
    アメリカに来て3年ですが、岩崎さんのファイナンシャルプランを受けるにはどのようにしたらよいでしょうか?

  2. いつも貴重な情報をありがとうございます。
    来年のオバマケアの健康保険料を検索してみたところ、昨年調べたときには助成対象外になっていたはずの年収で助成金が出てくるのは何故だろうと思っていました。残念、2021年と2022年のみなんですね。アーリーリタイアして最も大きな固定費は医療保険と固定資産税(中西部のこの地域は全米で最も高い)です。来年半ばに退職時のCOBRAが切れた後はどうしようかと頭を悩ませています。今回のマーケットプレイス健康保険の一時的支援が永久化すれば良いのですが…。

    1. 本当に、固定資産税と医療保険・・悩みですよね。日本では悩まない悩みですよね。。
      助成金が永続するか、保険がもっと安くなるか・・・本当に願いです。

  3. 今回の記事に大変興味を持ちました。どうもありがとうございます。2022年の年収の予測して、それに基づき助成金が出るみたいなのですが、それに頼りすぎるのも…という以前の記事も読みました。もし申告したよりも年収が増えると助成金の返還をタックスリターンでしないといけなくなるそうですね。
    逆に年収を多めに設定し、本来なら助成金がもっともらえるべきだったのに、助成金を限定してしまった場合、タックスリターン時に、タックスが0とかだったら、その差額はもどってくるのでしょうか?収入がソーシャルセキュリティーだったり、Sコープの会社からの損失もあるかもしれないので、年収の設定が難しいです。払い過ぎの場合がその年のタックスクレジットというのはわかるけれど、将来においてもリタイアしてしまうと、タックスクレジットがつかえないこともあるかと思います。そしたら年収の予測がとても難しいですね。

    年収というのはMAGIだと思うのですが、そうですよね。そうするとビジネスを持っていたら変動が多いです。

    1. 私はタックスリターンをする会計士でないので、詳しくはよく知らないのですが、ただいろいろ読んでいると、助成金を少ししかもらわなかったけど、収入的に実際はもらえるのなら、タックスリターン時に戻ってくるようです。たしかにビジネスをやっていらっしゃると年収の予測は難しいですね。

  4. 近々転職の計画がある中、出先で転倒し右指を骨折してしまいました。①Emergency、②(手術のための)Urgent Care、③専門医診療・手術、の後、現在リハビリ通院中(現在の勤務先が提供する保険はDeductibleを超えて、現在診療費の10%負担となっています)です。
    そこで、一般的な質問なのですが、お分かりの範囲内で教えて頂けると嬉しいです。
    1,現在の保険(PPO)ではHealth Saving Account(HSA)がありますが、転職先で新しい保険に変わった場合でも、残高がある場合は、今持っているHSAは使うことは可能でしょうか?
    2,転職後、保険(PPO)が変わるとDeductibleは再度カウントし直しになりますか?
    3,現在の保険会社のウェブサイトでEOBを確認していると、診療と同じ日付で訪問していない医療機関への医療費が掲載されています。恐らく、診療機関から検査機関へ出された検査料ではないかと推測しているのですが、医療機関(診療機関、検査機関双方)の患者への請求には請求期限(例:診療日から90日以内に請求しなければ請求権を失う等)はあるのでしょうか?

    1. 骨折のこと、大変でしたね。リハビリ中とのこと、機能が戻され支障の残らないようにお祈り申し上げます。
      1,現在の保険(PPO)ではHealth Saving Account(HSA)がありますが、転職先で新しい保険に変わった場合でも、残高がある場合は、今持っているHSAは使うことは可能でしょうか?  ==>はい、使うことができると思います。HSAは自分のお金なので、医療費のためにお使いなら、今までと同じように使えると思います。ただ会社を退職されることで、ステイタスに変化があり、手数料など変わることがあったりするかもしれません。HSA金融機関にお問い合わせください。

      2,転職後、保険(PPO)が変わるとDeductibleは再度カウントし直しになりますか? ==>はいカウントしなおしだと思います。同じ保険会社の異なるプランだったりすると、ラッキーならカウント継続ということもないとは言えませんが。。

      3,現在の保険会社のウェブサイトでEOBを確認していると、診療と同じ日付で訪問していない医療機関への医療費が掲載されています。恐らく、診療機関から検査機関へ出された検査料ではないかと推測しているのですが、医療機関(診療機関、検査機関双方)の患者への請求には請求期限(例:診療日から90日以内に請求しなければ請求権を失う等)はあるのでしょうか?  ==>これは存じ上げません。

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