カレッジ資金を貯めるための529口座は、運用利回りが税遅延で積み立てられ、カレッジ費用のために使う場合には、そのまま非課税で引き出しができる口座です。529口座の口座名義は、通常親である場合が多く、Beneficiaryとしてカレッジに行くはずの子どもを指定します。Beneficiaryは複数人にすることはできません。複数のお子さんがいる場合で新たに529を開く場合や、あるいはすでに一番上のお子さん用の口座があるが、二人目のためにどうするかと迷っている場合などなど、今回は529口座を分けるべきなのかどうなのかを考えてみましょう。
王道は子どもの数だけ口座をつくる
通常お勧めするのはお子さんひとりひとりに別口座をつくることです。理想としてはお子さんが生まれたときに529を開設し、少しづつでも積み立てを始めることです。たとえ月に$100の積立であっても、年に5%で運用したら18年間で$35,000になります。ただ、お子さんが生まれたときはそれどころではない場合も多く、経済的余裕ができ積み立てを始められるのは学齢期になってからということもあるでしょう。お子さんが複数いらっしゃり、そろそろ同時にカレッジ資金準備を始めたいということもあります。
そんな場合は、同時にすべてのお子さんに対して529口座を開設するのが良いかと思います。上のお子さんの場合は、下のお子さんよりカレッジ入学までに年数が少ないでしょうから、少し掛け金を多くして積み立てをパワーアップする必要があるかもしれません。月々、学資積立にあてられるトータル額を、カレッジ入学までの準備期間の長さに応じ、上のお子さんと下のお子さんに対し割り振っていきます。
529のすばらしい点は、同じ家族間であれば、同一口座でのBeneficiaryの変更や、あるBeneficiaryの口座から他のBeneficiaryの口座にお金をロールオーバーすることが非常に簡単なことです。上のお子さんのために少し多めに積み立てをしておいて、残った分を下のお子さんに回す(必要ならその反対も)という融通も聞きますから、積立額の割り振りはそれほどナーバスになる必要はありません。
最適な投資ができる
Beneficiaryの変更が簡単にできるのに、それでもお子さんごとに別口座を開けた方がよいわけは、お子さんの入学までの期間に応じて、投資運用上でとれるリスクが変わってくるからです。まだ入学まで10年ある場合と5年しかない場合では、前者のほうがより高リスク高リターン投資が可能です。入学年が近づくにつれて、できるだけ株式比率を下げ、債券比率を上げることで、値下がりのリスクを下げる必要もあります。別口座であるほうが、それぞれに最適の運用方法を選ぶことができるわけです。
多くの529のプログラムで、Aged-basedプランというものが提供されており、これは、お子さんの年齢によって(つまりカレッジ入学年までの期間によって)自動リスク調整をしてくれ、お子さんが小さいうちはよりアグレッシブにリスクをとり、入学が近づくにつれてだんだんとリスクを低くしていってくれるファンドです。529のプログラムにもよりますが、多くの場合このようなAge-basedプラン(とくに低手数料のもの)が最適です。お子さんごとに別口座を開き、お子さんの年齢を選ぶだけで自動投資が始まります。
お子さんごとの別口座にしておくと、それぞれのお子さんに対して、現時点でカレッジ資金がどのくらい準備ができているのかを確認することも用意になります。途中経過をチェックして、少しこちらが足りなさそうだから、積立額の割り振りを変えようというようなこともできます。
引き出し段階での管理も簡単
お子さんごとの別口座を持っていることは、実際にカレッジに入られ、お金を引き出して使うフェーズになってもプラス面があります。529からの引き出しは、いったん銀行口座に送金しそこから費用を支払ったり、あるいは529から直接大学に支払いをする方法があります。どちらがよいかは、大学の出納課の手続きにもよりますので、それぞれ確認が必要ですが(とくにファインシャンシャルエイドをもらっているような場合、529からの支払いが外部スカラシップとしてカウントされないよう確認が必要)、いずれにせよ、529からの引き出しがカレッジの費用に使われていることを確認するための管理は大切です。また、この場合、529口座のBeneficiaryとカレッジに通っているお子さんの名義が同一である必要があります。Beneficiary本人のカレッジ以外の費用に使うと、せっかく税遅延で伸びてきた運用利回りが所得税課税されたうえ10%のペナルティがかかります。
州税控除やボーナスも
もしも、529積立に対して、州のインカムタックス控除が受けられる州にお住まいの場合で、それが一家庭に対しての控除ではなく、Beneficiary一人に対しての控除枠である場合には、とくに別口座にすることによってより多くの税控除が受けられる可能性もあります。また、口座開設時の金融機関からのボーナスや、すでにある口座からのロールオーバーに対して金融機関がボーナスを出すようなプロモーションもあり、これらの場合は、別口座をつくってBeneficiaryごとにボーナスをもらうというのもおいしい話かもしれません。ただし、インカムタックス控除が受けられる州の529プログラムや、新規開設・ロールオーバーボーナスを提供している529プログラムが必ずしも、よいプログラムとは限ららないので、その都度の吟味はよくしてください。ポイントは手数料の大きさです。
ひとつ注意点は、州税控除があった州の529マネーを他の州の529にロールオーバーするときは、州によっては、それまで受けた州控除の恩恵分を支払う(Recapture)ことを要求したり、あるいはロールオーバー自体をカレッジ以外の費用のために引き出したとみなし、所得税と10%ペナルティの対象とする場合もあるようです。州税控除がある州の529からのロールオーバーは、その529プログラムを運営している金融機関によく確かめてください。
また、月々の細かいお金ではなくて、ある程度まとまったお金をドンと529に入れたいような場合は、お子さんごとに別口座にすることによって、年間$14,000までの贈与税免除(一度に$70,000まで入れて、それを5年間、$14,000ずつ積み立てたとして処理することも可能。また夫婦それぞれからの贈与とし、この2倍の額を入れることも可能)を利用することができますが、これもお子さんごとに別口座にすると、それぞれでそのベネフィットが受けられます。
一口座でするのも場合によっては
ただし、当面一つの529口座で運用するというのも決して悪い選択肢ではありません。まだ、529への積立額がそれほど大きな額でない場合、別々の口座に数十ドル積み立てるというような形よりは、まとめて一つの口座に積み立てる方が管理上も簡単かもしれません。場合によっては、定額でかかる口座管理費などが設定されている場合もあり、とくに積立額が小さいうちなどはひとつ口座にして、積立、管理費を削減するほうが得策でしょう。とりあえず一人目のお子さんで始めておいて、積立額が増やせるようになったら、新口座を追加するということでも問題はありません。
また、お子さんの年が離れているのでカレッジ在学期間が重ならず支払いの管理上の問題がない場合、あるいはカレッジ費用の大部分を給料などの月々の収入からカバーできるので、529にはあまり頼る度合いが少ない場合、あるいはスカラシップが期待できるので529には頼る必要度が低い場合などは、あえて一つの口座にしておいて、必要に応じて口座名義を変える、あるいは口座をスプリットするという対応でも、よいかもしれません。
以前にも質問させて頂いたものです。いつも為になる記事をありがとうございます。
529プランからの拠出金は、Qualified Higher Education Expenses(QHEE)だけが非課税となるということですが、Grantが出た場合には、QHEEからそのGrant額を引いたものが拠出可能金額になるのでしょうか?あるいは、Grant額は関係なくQHEEの額でいいのでしょうか?
第一子が他州の大学に行っており、すでに529は使い果たしてしまったのですが、今年、第二子が自宅から通える大学に進学することとなり、Grantがでましたので、ほとんど529からの拠出が必要なさそうです。(上の質問に関連しますが。)この状況ですと、今後、第一子の学費を私の預金やRothから出すよりは、第二子の529のBeneficiallyを変更したほうがよさそうに思っています。「必要に応じてBeneficiallyを変更する。」とおっしゃっているので、一旦変更しても、また元に戻すことも簡単なのでしょうか?