The American Taxpayer Relief Act of 2012という法案が2013年1月1日に(やっと!)可決され、それまで騒がれていたFiscal Cliff (財政の崖) 懸念は一応の解決を見ました。年末年始も返上で長~いミーティングに耐えてくれた議会の皆さんには脱帽しますが、でも、なんか釈然としない感が残りますね。1)ないお金は使わないこと、2)返せないようなお金は借りないこと、3)その場しのぎの言い訳(対処策)をしないこと、4)問題を先延ばしにしないこと、5)宿題がでたら期限までに(余裕をもって)すること…どれも親が子どもに教えることですけども、ワシントンの人たちはみなさん知っているのかしら~
そのThe American Taxpayer Relief Act、名前にTaxpayerとReliefという言葉が入っていますから、さぞかし税負担が少なくなるかと期待しますが、実はそうではありません。ほとんどの人の場合に、税負担は増えます。ではなぜReliefという言葉があるのかって?それは、この法案が可決されなければ、もっともっとずっとひどい状態になるはずだったのが避けられて「あ~、よかったぁ(Big relief!)」となるはずだからです。う~ん、人間、多くを期待しないと小さなことでも喜べる・・・そう考えるとこれはいいことなのかもしれないけど~
それでその内容とはどんな感じ??
ソーシャル・セキュリティ・タックス
2011年と2012年の2年間は、雇用者負担分のソーシャル・セキュリティ・タックスが、本来の6.2%から4.2%に暫定的に引き下げられていましたが、これが2013年には6.2%に戻されます。ソーシャル・セキュリティ・タックスは、$113,700を限度とした所得にかかりますので、これ以上の収入がある人は、$2,274($113,700x2.0%)の増税になります。それ以下の人も一律2.0%の増税です。Self-Employed(自営)の方は、暫定的に引き下げられていた10.4%から12.4%への増税です。
雇用されている場合は、ソーシャル・セキュリティ・タックスは給与から天引きされるものなので、これは手取り給与の減少という形で直接的な影響を与えます。
インカム・タックス(所得税)
シングルで$400,000、ジョイント(夫婦)で$450,000以上の所得のある人は、これまでの35%の税率が39.6%に上がります。それ以外の人は、税率は昨年2012年と同じです。
個人・扶養者控除(Personal Exemption)
これは、納税者が自分自身、配偶者、その他の扶養者に対して受けられる控除ですが、この控除が所得によってフェーズ・アウトする(段階的に消滅していく)ことになりました。所得(AGI)が、シングルで$250,000、ジョイント(夫婦)で$300,000からフェーズ・アウトが始まり、それぞれ$372,500、$422,500で完全に 控除が消滅します。
項目控除(Itemized Deduction)
所得(AGI)がシングルで$250,000、ジョイント(夫婦)で$300,000以上になると、その部分の3%分だけ控除額が減らされます(最高で控除できるはずだった額の80%までの減額)。チャリティへの寄付やモーゲージ利子などが含まれます。富裕層が数ミリオンもする家を購入し、年間数万ドルものモーゲーじ利子を控除するということが手放しではできなくなりました。
インベストメント・インカム(投資収入)
これまでは株の配当金と長期キャピタル・ゲインとは課税のされかたに差がありました(通常、配当金は他の就労収入と同じカテゴリに数えられ、キャピタル・ゲインに比べ課税率が高かった)が、この差がなくなりました。ただし、上記高所得者(39.6%所得税率の層)においては、これら投資収入(配当金と長期キャピタル・ゲイン)にかかる税率が、2012年の15%から20%に引き上げられます。それ以外の人への税率は、現行の15%(35%、33%、28%、25%所得税率の層)あるいは10%(15%、10%の所得税率の層)のまま据え置きです。
ただし、所得(AGI)がシングルで$200,000、ジョイント(夫婦)で$250,000以上の場合は、投資収入(損失差し引き後)が一定以上になるとその部分に対して3.8%の追加税金(Medicare Surcharge)が新しく課せられることになりましたので、高所得者は最悪ケースで20%+3.8%の23.8%を支払うことになります。
もうひとつのMedicare Surcharge
上の投資収入へのMedicare Surchargeに加え、所得(AGI)がシングルで$200,000、ジョイント(夫婦)で$250,000以上の場合はその所得部分に対して0.9%のもうひとつのMedicare Surchargeも課せられます。
Alternative Minimum Tax(AMT)
AMTはもともと、高額所得者が多額の税控除によって支払う税金を劇的に少なくすることを防止するために導入されたものでしたが、次第にミドルクラスまでがその適用対象になりつつあるという問題がありました。計算法も非常に煩雑で面倒でした。今回の法案がなければ2012年のタックス・リターンでは全国で3,400万世帯がAMT対象となる予定でしたが、法案が通った今、それが400万世帯に減少しました。AMTの対象となるかならないかというグレーゾーンにいた方には朗報です。
エステート・タックス
法案可決をみなければ、相続・贈与を合わせて、$1ミリオン以上の譲与があった場合、相続税の課税対象となるはずでしたが、これが2012年の$5.12ミリオンを引き継ぐ(実際は、インフレ調整されるのでこれより少し増額する予定)ことになりました。ミドル・インカムの多くの家庭において、相続税回避の心配が低くなりました。ただし、課税される場合の最高税率は35%から40%へと引き上げられました。
その他
2012年までとなっていたAmerican Opportunity Tax Creditの有効期間が5年間延長され、2017年までに。大学授業料などに対し最高$2,500までのタックス・クレジットが受けられるこの制度は多くの家庭にとって価値あるものでしょう。
最後にあなたの2013年のタックスを予想するカリキュレータをご紹介します。
ご自分の条件を入れると、ATRA(The American Taxpayer Relief Act)可決後の今の予想額と、以前の法律での予想額を比較してくれます。
まとめ・・・
「高所得者とはいったいいくら以上の所得のある人なのか」という議論ですったもんだしていましたが、大局的にはシングルで$400,000、ジョイント(夫婦)で$450,000という線に落ち着いたようです。この層が、一番増税のダメージが大きい層です。あとは所得税以外の部分で、シングルで$200,000、ジョイント(夫婦)で$250,000以上だと少しばかりの痛手があるかもしれません。ミドルクラスにとっての一番の打撃は、ソーシャル・セキュリティ・タックスが2%増えること(増えるというよりは元に戻るのですが)でしょう。