モーゲージを組んで家を買った方なら、ご存知でしょう。毎月返済する額(固定利子を想定)は一定です。毎月毎月同じ額をローンが完済されるまで払い続けます。しかしながら、その中身は月々変化し、15年ローンであっても30年ローンであっても、一定の返済額の内訳はふたつと同じものがないということをご存知でしょうか?車のローンなども同じことです。一定期間で全額を返済し終わるように、月々一定の額を返済し続けるこのプロセスはAmortizationと呼ばれます。ちょっと日本語にはしにくいこのAmortizationのしくみが今日のトピックです。別に知っていなくても大きな問題にはならないけれど、知っているとちょっと違う見地からものを見ることができるようになるかもしれない・・・そんなお話です。
月々の返済額の中身
いくら借りたいか(下ではHome priceマイナスDown payment)、返済期間(Term)、利子(Annual interest rate)を指定すると、月々の返済額は簡単に計算できます。下は、Bankrateのカリキュレータで、$300,000の家を20%ダウンで買う、つまり$240,000を3.88%固定利子で借り30年かけて返済する場合の月々の返済額(持ち家保険やプロパティ税は含まない、純モーゲージ返済部分のみ)を計算してみると、$1,129.26となりました。
30年間、毎月この$1,129.26を支払い続けると、$240,000の元金が完済できるわけです。
さて、この$1,129.26は30年間変わることがない(繰り上げ返済や、借り換えなどは除いて)わけですが、この返済額には実はふたつの要素が含まれています。ひとつは利子であり、もうひとつは元金返済部分です。
利子というのは、返済残高x利子(月あたり)で計算されます。上の例でいうなら、1か月目の利子は、
$240,000 x (年利3.88%÷12か月) =$776
となります。
元金返済部分というのは、借りた$240,000の返済に充てられる部分ということで、
固定の返済額である$1129.26 - $776 =$353.26
となります。
では2か月目はどうなるでしょう?
1か月目に元金を$353.26分、返済しましたので、2か月目の返済残高は
$240,000 - $353.26= $239,646.74
となっていますから、2か月目に払う利子を同じように計算すると、
$239,646.74 x (年利3.88%÷12か月) =$774.86
となります。1か月目の利子より、少し減りましたね。元金の返済が少しだけ進んだからです。
一方、2か月目の元金返済部分というのは、
固定の返済額である$1129.26 - $774.86= $354.40
となります。
おわかりでしょうか、このように、元金を少しづつ返済していきますから返済残高は少しづつ減っていき、結果的に返済残高x固定利子で計算される利子の額も少しづつ減っていきます。反対に、月々の元金返済部分は、固定返済額―利子額で計算され、だんだんと増えていきます。
月々の返済額が一定でも、ローン期間を通して、返済額のうちに占める利子額部分は小さくなり、反対に返済額のうちに占める元金返済部分は大きくなっていきます。これをローン期間を通してどんなふうになるか計算してくれる機能があります。上のBankrateのサイトでは
というリンクがあります。これをクリックしてみると・・・
月々の返済が30年=360か月分計算されて出てきます。上は最初の1年分。元金返済部分がだんだんと増え、利子がだんだんと減り、返済残高がだんだんと減って返済が進んでいるのがわかります。これがAmortization Schueduleと呼ばれるものです。
最後の1年はどうなるかというと・・・
最後の方は、ほとんどローン残高がないので利子も少なく、ほとんどが元金返済に充てられているのがわかります。30年の最後にはローン残高はゼロになります。グラフにするとこんな感じ。
このAmortization Scheduleを理解しておくといろいろな応用が利くようになります。たとえば・・
よく家を買えば、レントとは違いエクイティが貯まる・・といいますが、モーゲージ返済を開始した直後は、月々の返済額のうちほとんどが利子で、エクイティの貯まりのスピードは遅いことがわかります(ただし、家の価値自体が上がればエクイティになりますが・・)。
タックスリターンでのモーゲージ利子控除も、毎年定額ではないこと。モーゲージ返済開始当初のほうが、より大きな額になります。
毎月返済額に上乗せで返済したり、一括で追加返済したものは、返済残高を増やすので、その後の利子が小さくなり、それでさらに元金返済部分が増え、返済スケジュールがスピードアップする。
応用編 モーゲージ - 無理に15年ローンにしないのが賢明なわけ
なお、すべてのローンの返済が、このようなAmortizationの考え方で進められるわけではありません。
Amortizationの考え方が適用されるものは:
- 家のモーゲージ
- 車のローン
- 学生ローンなどのパーソナルローン
これらはみな固定額を着実に返済さえしていれば、期限がくると完済するように組まれたものです。
反対に、Amortizationの考え方が適用されないものは:
- クレジットカード負債: リボ払い(Revolving)ローンと呼ばれ、Minimum Payment以上で、いくら返済するかを自分で決めることができるローンです。Minimum Paymentさえ払っていればよしとされますが、それだけでは返済は進まないローンです。計画的に返済しないと、いつまでも利子ばかり払い続ける危険性を含むローンです。
- Interest onlyローン:その名のごとく利子だけを払うローンで、自分で敢えて利子以上に返済をすると決めて行動しない限り、元金部分は返済がまったくされないので、これもいつまでも利子を払い続ける危険性を含むローンです。
- Balloon ローン:初期には小さな額を返済するだけでよいので、月々の返済負担は小さいですが、元金返済はなかなかすすみません。ある時がくると元金のすべて、あるいは元金うちの大きな額(Balloon)の返済が必要になるローンです。
お金を借りたなら、きちんと計画的に返済したいですね。それがAmortization のローンなのか、ちがうのか、またAmortizationするものであれば、どのようにそれが進むのか、ちょっと頭の隅に置いておくとよいと思います。