失敗しない大学選びのマネー計画

子どもが大学に入学する時期というのは、多くの人にとって、自分たちのリタイヤメントをだんだんと視野に入れて長期的なプラニングを立てていかねばならない時でもあります。すでに401(k)でリタイヤメント準備も順調、529で学資準備も良好・・という家庭は非常に恵まれていますが、そうでない家庭ではいったん立ち止まって10年、20年のスパンでのマネー計画を見据える必要があります。このようなマネー計画なしの大学選びはともすると非常に危険であり、「入ったはいいけど・・」、「出たはいいけど・・」の厳しい現実を突き付けられることにもなりません。

 

無理して高級車を買ったり、ローンを組んでクルーズ旅行に出かけたり・・などということは考えもしないという人でも、自分の子どもの教育のためなら多少の無理や借金はしても仕方がないと考えがちです。私たちは、子どもがきちんとした教育を得ること、子どもの将来のために投資をすることは、親の責任だと考えます。多少無理しても、教育は「将来大きく元がとれる投資」であるという正当化も働きます。この考え方が今や、クレジットカードローンを上回って伸び続けるスチューデント・ローンの根底に潜んでいるように思います。

私たちはとかく、子どもの教育、とくに高額な大学教育には「感情的」な判断を下しがちであるということです。「多少無理しても、〇〇大学に入れるなら・・」、「自分たちの生活は犠牲にしても、子どもをサポートしたい・・」という親としてのあたりまえの感情が、ともすると将来の厳しい状態を引き起こしかねません。

大学を決めるのはGAPやテストスコアだけでなく、長期的なファイナンシャル面での実行可能性がベースにある必要があります。

 

リタイヤメント準備が優先

カレッジ費用の工面のしかたを考えるとき、まず前提となるのが、リタイヤメント資金の準備が軌道にのっていることです。親は、自分たちのリタイヤメント準備が順調に進んでいることを確認し、今後もそのために積み立てが必要な資金は確保したうえで、子どもの大学のために負担できる金額、あるいは借りることができる金額をベースに計画を立てる必要があります。

リタイヤメント準備が順調な場合は、子どもの希望を優先することができます。行きたい大学にアプライし、合格した大学の中から、本人の希望とファイナンシャルエイドを考慮したコスト面との兼ね合いを考慮しつつ、ベストの大学を選ぶことができます。

反対に、リタイヤメント準備が不足している場合は、単純に子どもの希望を優先するのがベストとはいえません。努力した子どもに報いたい、子どもの将来に期待したい、子どもの願いをかなえてやるのが親の務めである・・と考えると、たとえ将来の自分たちの生活を犠牲にしようとも子どもが希望する大学に送ってやりたいという思いも出てくるでしょう。しかしながら、将来もしも、老後に自分たちの家計が成り立たなかったら、負担を担うのは子どもです。少しくらいの助け合いの範囲ならいいのです。でも、そもそも生活資金が足りず子どもにおんぶする・・というのは極力避けたいことです。

リタイヤメント準備が不足している場合は、まずリタイヤメント準備を早急に軌道にのせることが最優先です。よって大学選びは、ある程度本人の希望を犠牲にしても、ファイナンシャルエイドが見込める大学を選んだり、コミュニティ・カレッジを経由してトランスファーしたりなど、経済的な面を優先すべきです。

経済面を考えない大学選びは、気づいたら親も子どももローンが残り、親はリタイヤメント資金も十分でなく、子どもは就職してもローン返済に追われ車も家も買えず・・・というようなネガティブ・スパイラルに入る危険性があるからです。

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子どもを巻き込む

大学を選ぶとき成績面だけでなく、経済面についての話も子どもとともにシェアすることが賢明です。

  • 希望大学はどのくらいのコストがかかるのか:大学名とCost of AttendanceというキーワードでGoogle検索すれば出てきます
  • 自分たちの収入ではそのコストの捻出が可能なのか不可能なのか:親の収入やお金の話はタブー視されがちですが、この機会に是非とも家計の状態を理解してもらいましょう。それは将来子どもが自分の金銭生活を建て上げるときにも役にたつはずです。
  • ファイナンシャルエイドは受けられそうなのか:大学名とNet Price CalculatorというキーワードでGoogle検索して、ある程度の情報を入力すると、ファイナンシャルエイドを得た後の自己負担分が予測できます。ただし精度は大学によってまちまち。別に、EFC(Expected Family Contribution)を知っておくことも重要です。こちらで簡易計算できます
  • ローンを借りるならどのようなオプションがあるか:学費ローンの種類と決め方
  • どのくらい借りたら、毎年どのくらい返済することになるのか:こちらで見られます
  • 希望している大学・学部を卒業したらどのくらいの給料が見込めるのか:行く大学によって初任給どのくらい違う? 大学で何を専攻するかで、給料ってどのくらい違う? 

実際、どのくらいファインシャルエイドが出るかとか、初任給がいくらになるかとかなど、将来のことは推測をすることはできますが、正確に知ることはできません。しかしこのような現実的な数字を持ってのディスカッションはしておくに越したことはありません。

大学に行く子どもが、自分の教育にはいくらかかっているのか、教育を得た後で仕事を得ることにどういう意味があるのか、ローンはどのくらい返済が大変なのかなど、体で感じることが大切だと思います。予定は予定で決してその通りには行きませんが、体で感じたことはずっと生き続けます。

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2 comments

  1. 毎回、勉強になる事を教えて頂き有り難うございます。
    私はリタイアメントの準備、学費の貯蓄もかなり遅れておりダブルパンチです。また家の購入を検討しておりモーゲージも考える必要がありトリプルパンチです。16歳の娘がおりますが、今から出せる学費は本人に伝えおり、彼女もそれなりに納得しておりました。心が痛みましたが、コミュニティーカレッジで2年学び、その後は州の公立大学に行ってほしい、学生の間はバイトをして欲しいと伝えました。また専攻で好きなことを学ぶのは構いませんが、プランBとして仕事につける事も学ぶ事が必要とお伝えしました。イメージしているアメリカ大学でのキャンパスライフとかけ離れており親として申し訳ない気持ちです。しかし、これは定年後、老後に金銭面で迷惑かけたくなく、出来ればROTH IRAなどの遺産を残していきたいと考えております。

    1. そのような地に足のついたディスカッションを娘さんと持てることの方が、無計画に”夢のキャンパスライフ”をさせて大きなローンを抱え込ませたり、親の老後の金銭的負担を負わせたりするより、よっぽど責任と愛情のある親だと思います!

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