「アニュイティをリタイヤメント準備のために契約したものの、その後処理に困っている・・」という話をよく聞きます。アニュイティを、IRAなどの投資と同じようにとらえ、「将来への備えだからいいものに違いない。。」と考え契約したものの、どうも満足していない・・というようなケースです。アニュイティは「ふつうの投資」ではありません。アニュイティは保険商品です。よく理解しないで気軽に契約すると、非常に高くつくことにもなります。紐解いていきましょう。。
アニュイティとは・・
アニュイティとは、年々、月々など一定期間ごとに一定額が支払われるしくみのことで、保険商品です。アニュイティに入れたお金は、将来わたって月ごと、年ごとの複数回の定額受け取りに変換されます。
受け取りのタイミングで分けると・・
Immediate Annuity: アニュイティにお金を入金してからすぐに受け取りが始まるタイプ。リタイヤメント準備のため投資で増やしてきた資金で、Immediate Annuityを購入し、リイタイヤメント後の月々の定額受け取りをつくりだすような場合に使われます。
Deferred Annuity: アニュイティにお金を積み立てる蓄積期間があり、蓄積期間ののちに受け取りが始まるタイプ。リタイヤメント準備のために長年かけてアニュイティに積み立てをし続けるような場合に使われます。
運用の種類で分けると・・・
Fixed Annuity: 積み立てられた資金に対して一定の固定利回りが適用され、契約時に定められた支給額を受け取るタイプ。リタイヤメント口座でいえば、PensionなどのDefined Benefit Plan(確定給付型)に似ています。
Variable Annuity: 積み立てる資金を利用し、契約者自身がミューチュアルファンドなどによって運用し、その投資パフォーマンスに応じて支給額が決まるタイプ。リタイヤメント口座でいえば、401(k)などのDefined Contribution Plan(確定拠出型)に似ています。
税金上の取り扱いは・・・
アニュイティに入れる資金は課税後所得であり税金控除はありませんが、運用利回りは税遅延が適用され、受け取りをするときまで課税が遅らされます。この意味でRoth IRAに似ています。
受け取りのタイプ
一定期間受け取り: 5年、10年、20年などの一定期間、受け取りをします。その一定期間内に本人が死亡した場合は、残りの期間はBeneficiaryが受け取りをします。
生涯受け取り: 本人の生存している限り、受け取りが続きます。
一定期間の保証付 生涯受け取り: “Life with a 10 year period certain”などのように、一定期間の受け取り保証がついた生涯受け取り型。一定期間内(この場合は指定の10年間)に本人が死亡した場合は、Beneficiaryが残りの期間支払いを受けます。本人が10年を超えて生存すれば、生存している間は支払いが続きます。
ジョイント・サバイバー: 夫婦の場合などに使われ、夫婦のどちらが死亡しても、残りの一方が生存している限り、支払いが続きます。
早期に引き出すと・・・
59歳半前に引き出しをすると、利回り部分はインカムタックスの課税対象となり、また10%のペナルティもかかります。加えて、後述のサレンダー・チャージもかかる可能性があります。
アニュイティをIRAや401(k)の中で持つことは・・
アニュイティはそれ自体で契約することもできますし、IRAや401(k)などのプログラムの中で選択することもできます。IRAや401(k)のプログラムの中で、アニュイティにするかあるいはミューチュアルファンドなど直接投資する媒体を選ぶかの選択がある場合、どうするのがいいのでしょう。
先にも書いたとおり、アニュイティは税遅延のベネフィットがあり、利回りが受け取り開始まで課税されないという利点があります。一方、IRAや401(k)もこれと同じ税遅延のベネフィットがあります。誰でも底なしでこの税遅延のベネフィットを利用できないように、一年でIRAや401(k)に積み立てられる額の上限が決まっています。この意味で、アニュイティをこれらのプログラムの中で持つことは、税遅延のベネフィットをダブルで使っているわけで、持ってはならないということはないですが、あまり意味のないことです。もしIRAや401(k)の積み立て上限を超える資金があるのなら、IRAと401(k)を最大まで積み立てたうえに、残ったお金はアニュイティに入れれば、税遅延のベネフィットを効率よく使うことができます。
アニュイティの長所
利回りへの税遅延: 上のとおり、運用利回りへの課税が、引き出しまで先延ばしにされます。ただし、これは前述のとおりIRAや401(k)でも得られるベネフィットです。リタイヤメント準備のための積み立て資金が、IRAや401(k)の積み立て上限以上にあるので、他に税金上優遇のあるプログラムを探している場合には利点となりえます。そうでない場合は、あえて手数料の高いアニュイティを利用する価値はないかもしれません。
プラニングが簡単に: 月々の定額確定給付は、自分で投資ポートフォリオを組み運用を続けて、月々いくらずつ引き出していけばいいかという計算を不要にします。企業年金が死語になりつつ今、月々の定額給付はソーシャルセキュリティだけという人も多いでしょう。月々決まった額が受け取れるということは、生活費のプラニングが簡単になるということです。
長生きしてももらえる: 上の事項と関連して、確定給付が生涯続く(このオプションを選んだ場合)というのは心強いものです。リタイヤメント・ポートフォリオから月々引き出しすぎて、老後の資金が枯渇してしまったという問題を回避することができます。ただし、十分な生涯給付を受けるためには、それなりの資金がアニュイティに入っていることが必要ですから、これは決して安く簡単に手に入るベネフィットではありませんが。
アニュイティの短所
アニュイティの短所はなんといっても高い(よく見ないとわからないようになっている)手数料です。手数料は投資の利回りを直接的に減らしますから、「ちっとも増えない」ということになりがちです。また、増えないだけならまだいいですが、「気が変わってやはり解約したい」となった場合、高額のキャンセル料をとられることになります。アニュイティの契約をするときは、よくよく吟味したうえで契約書にサインをせねばなりません。銀行口座や生命保険のように、「とりあえず契約しておいて、あとで不要なら変更・解約すればいいや」というやりかたは、アニュイティの場合は通用しません。サインしたらおしまい・・というところのあるアニュイティが多いので、とにかくすみずみまで契約書を読むことです。
では、どんな手数料があるのか見てみましょう。
販売手数料: 保険ブローカーやセールス担当者が売るアニュイティは、10%に上るコミッションが組み込まれているといわれています。ミューチュアルファンドの販売手数料に関しては法律で上限が決められていますが、恐ろしいことにアニュイティが課すことができる販売手数料の上限は法律で設定されていません。結果として、アニュイティは、数ある投資・保険商品のなかでも、とびぬけてコミッションの高い商品となっています。販売する人はこの意味で大きなインセンティブを持っており、顧客に最善でなくても販売するという悪質なブローカーも登場し、多くの訴訟問題も起こっています。この10%は、目に見える形で私たちのお財布から支払うわけではなく、下に列挙するさまざまな形態で間接的に徴収されていきます。
サレンダー・チャージ(キャンセル料): 契約によりまちまちですが、たとえば「最初の7年間に解約する場合は、口座残高の7%がキャンセル料としてかかり、1年を減るごとに1%ずつ減少、8年目からは解約してもキャンセル料なし」というような具合です。この7%はまだ良心的なほうで、15%、20%、ひどいと25%という契約も存在するようです。とにかく、契約書はよく読むことです。たとえば、低コストを誇るVanguardの提供しているアニュイティなら、このサレンダー・チャージは課されません。低コスト・アニュイティで提供されないようなベネフィットがあるなら別ですが、そうでないなら、高いサレンダー・チャージの契約はしないほうがいいでしょう。
保険料: アニュイティは保険商品ですから、死亡の場合、あるいは生存中継続されるべき保険としての「価値」を提供します。多くのアニュイティでは、もし受け取り開始前に本人が死亡した場合は、投資した元本か現在の投資残高か、どちらか大きいほうを支払うという死亡保障がついています。その保険としての「価値」に対して保険料が発生するのは当然ですが、これは口座残高の1.25%程度とされています。問題は、その補償が本当に必要かどうかということです。自分にとってコストに見合うベネフィットがあるなら問題ありませんが、よくわからず契約して、不要な補償にお金を払い続けることはなんとももったいないことです。アニュイティでなければならない場合はアニュイティであるべきですが、将来のリタイヤメント準備であれば、まずは通常のリタイヤメントへの低コスト投資で資金を増やしていき、本当にアニュイティが必要になった時点で購入するということも十分可能です。
投資マネージメント手数料: Variable Annuityの場合、401(k)のように自分でファンドなどの投資媒体を選択して運用していくわけですが、このファンドの手数料(俗に言うExpense Ratio)がばかになりません。
Morningstarが各社のVariable Annuity で投資することができる全69,123のファンドを調べたところ、80%以上のファンド(約56,000ファンド)が2%以上の手数料(Expense Ratio)を課しており、9%以上のファンド(約6,200ファンド)が3%以上の手数料を、中には5%以上の手数料を課しているもの(約290ファンド)もあったという結果でした。ミューチュアルファンドの手数料は日ごろから問題になっていますが、その中でもこれらのアニュイティの選択肢として提供されているファンドの手数料は非常に高いものが多いということがわかります。
VanguardのVariable Annuityで提供されている選択肢ではこの手数料(Expense Ratio)は0.40~0.80%ほどですので、上記の2~3%というのは法外に高いものといわざるを得ません。
アニュイティの契約は、慎重に進めるべきです。自分のとってアニュイティは必要か、コストはどのくらいか、コストにみあうベネフィットがあるかなど、契約書をよくよく読んで契約することをお勧めします。セカンドオピニオンが必要な場合は、ぜひSmart & Responsibleのプラニング・サービスをご利用ください。
これ、日本の年金型生命保険と同じじゃないでしょうか。日本のは受け取りにこれほど選択肢はないですが。
先日リクエストをしたんですが(^^; ご覧になりました? 生命保険もそうですが、non-citizenの場合(居住、非居住に関わらず)、6万ドル以上の相続は35%も課税されます。それについて、Trust以外に方法はないでしょうか。特にnon-citizenの親から子供への相続はどうするのがいいでしょうか。
cachacaさん、日本では、年金型生命保険というのですね。へえ。日本のことは何も知らないのです。。リクエスト見ましたよ。コメント・バックした内容は、US CitizenとPermanent Residentを想定していましたが、cachacaさんの言っておられるのは、non-residentでアメリカに財産を持っている方の話ですね。こちらのページのことですね。残念ながら、non-residentの方のケースはまったくわかりませんで。。お役にたてません。
私の尋ね方が悪かったですね、すみません。Permanent Residentでもnon-residentでも同じはずです。それでお尋ねしたのです。
つまり死亡者がUS Citizenでない場合、GCを持ったPermanent Residentであっても、その遺産が6万ドルを超える場合は、相続人がUS Citizenだろうと、残りの遺産には35%の相続税(遺産税)がかかると理解しています。
ドイツ国籍でGC保持者のPermanent Residentの友人は、US Citizenである子供たちの相続のことを考えて米国籍を取ろうとしました(ただ、その後不運続きで遺産と言えるほどのお金もなくなってしまい、米国籍を取る意味がなくなった。これもツライ--)
夫婦間であっても死亡者がUS Citizenでない場合、同じと聞いていますが、間違っていますか?例えば生命保険もこの対象なので、死亡者がUS Citizenでない場合、仮に1ミリオンの保険がおりたとしても、beneficiaryである配偶者は6万ドルを差し引いた額に35%課税されるのではないですか。
だからTrustに全部入れてしまうという方法もあるのでしょうが、夫婦だけでなく子供も加えるということでしょうか。
TODやPODにしておいても、35%は免れないのでしょうか。
リンクのサイトはこれから読んでみます、ありがとうございます。
Cachacaさん、us citizenとresident alienには同じexemptionが適用されます(2013年は$5,250,000)。その上、夫婦間の相続で相続人がUS Citizenの場合だと、exemptionがunlimitedになります。$60,000のリミットはnon-residentの場合ですね。でもその$60,000の適用範囲は、real/tangible propertyとUS stockとなっていたので(ただし、法律改定で変わる可能性はあるようですが)、銀行口座とか生命保険とかは免れるのではないのかしら(←これは推測で言っています・・)
>us citizenとresident alienには同じexemptionが適用されます
本当ですか?知りませんでした。
リンクを読むと、USにある資産が銀行口座だけの場合、non-resident alienにはものすごく朗報に思えます。 U.S.-situated assetsの定義にはbank accounts not used in connection with a trade or business in the U.Sは含まれないわけですよね。
だから以下の6万ドル以上のU.S.-situated assetsには当たらない、との解釈で正しいですよね。
Executors for nonresidents must file an estate tax return, if the fair market value at death of the decedent’s U.S.-situated assets exceeds $60,000
もう少し詳しいPDFも見つけました。
http://www.jpmfinancialservices.com/images/PDFs/EstateTaxation.pdf#search='deceased+is+resident+alien+inhertiance+tax‘
ということは、銀行口座のみの場合、non-resident alienであるほうが、us citizenとresident alienよりも優遇されていることになりますよね。us citizenとresident alienには$5,250,000という限度があるのに、non-resident alienなら、無制限にtax exemptということです。そんな虫のいい話があるのかと、かえって不安になります(^^;
resident alienについての表記はそのとおりです。non resident のほうは、よく分からないでコメント差し上げることは控えたいので、これは一度専門の方に確認されてみてください。
こんにちは。
配偶者が来年からTrad IRAに拠出できなくなり、Roth IRAもMAGIで駄目そうなので、優遇税制の投資方法をFidelityに相談したところアニュイティを勧められました(401(k)は目いっぱい拠出しています)。
VariableのImmediateで
・最低$1万
・引出し自由
・フロンドロード、サレンダーチャージなし
・マネージメントフィー0.25%
・55種類のファンド(結構成績がよく信託報酬0.9%前後)
と、マネージメントフィーを除いてTrad IRAと変わりなく、条件がよさそうなので今後5年間ぐらいの課税繰延投資用に考えていますが、どう思われますか?
保険部分はないとの説明でした(生命保険は不要)。
アニュイティを検討するのは初めてなので何か落とし穴があるのではないかと心配です。
低手数料のフロントロード、サレンダーチャージなしのアニュイティは、他の税優遇プログラムがそれ以上使えないレベルになったかたにはお勧めすることもありますので考慮に足るのではないでしょうか。ただ個別ケースについては、ここで詳細情報なしではアドバイスがさせていただけませんのでご了承ください。