もうすぐ、買って5年になるうちの車。「もうすぐあなたの車のワランティが切れます。ワランティが切れる前に必ずxxx-xxxxへご連絡ください」という手紙がある日届きまして・・・なんだかとても重要なことなので電話しないと大変なことになりそうな文面。エクステンデッド・ワランティという言葉はひとことも出てきませんが、でもこの手紙はエクステンデッド・ワランティ会社のDMです。「ワランティが切れると修理に多額のお金がかかる」という恐怖心と、「ワランティが切れるまでに契約せねばならない」という焦りにうまく訴えたセールスです。
恐怖心と焦りに訴えたセールスは、ディーラーで新車を買うときにも同じことですね。「あなたの“インベストメント(=新車)を守りましょう」というキャッチで、しかも車の購入時にしかエクステンデッド・ワランティを買うことはできないかの印象に訴えます。とにかく、このように煽り立てられるようなセールスはちょっと要注意ですよね。
苦情の耐えないエクステンデッド・ワランティ
どうやら、ワランティを売る会社にはかなり悪質なものもあり、消費者からの苦情は耐えないようです。苦情は大きく分けてふたつの種類に分類できるそうで、ひとつは、買ってしまってからキャンセルしたいと思うが、なかなかキャンセルができない、あるいは返金がされないというものだそうです。もうひとつは、修理が必要になったのでいざワランティを使おうと思ったら、あまりの「例外項目」の多さのために、なかなか補償をしてもらえないというものです。
それでも、ワランティ会社に苦情が言えるだけでも、まだましかもしれません。なぜなら、ワランティ会社の中にはビジネスを始めて数年で会社自体がなくなってしまうケースも多いからです。補償の約束を買ったその会社がなくなってしまったのでは、補償のされようもありません。戻ってくるお金も、微々たるものかもしれません。悪質な経営者だと、一度倒産しておいて、また異なる名前で同じようなビジネスを繰り返すというようなケースもあるそうです。
.なぜ、このような状況が起こっているかというと、その理由は、エクステンデッド・ワランティという商品の中途半端な位置づけにあるようです。エクステンデッド・ワランティは保険のようなイメージがありますが、実はほとんどの州で保険としては扱われておらず、保険業界のように連邦政府や州政府の法律やルールによって規制・監視されていないそうです。つまり、エクステンデッド・ワランティの売り方、補償の仕方、補償のための資金プール維持などにおいて、健全な運営を促すような体制が整っていないということですね。つまり、消費者はon our own・・・自分で自分を守るしかないということです。
「価値」とは乖離した値段設定
保険のように法律による規制や監視がないため、エクステンデッド・ワランティの値段設定も、言葉は悪いですが「やりたい放題」という状態のようです。「修理に対する補償サービスにどのくらいのコストがかかるから、ワランティの値段はこのくらいに設定しよう」という考え方ではなく、「客が払うなら、なるべくたくさん金をとろう」という値段設定です。結果的に、消費者が支払う値段の大部分が、補償をするためではなく、ワランティ会社やそれを売る販売者の販売手数料、つまり利益になるそうです。
規制・監視下にある自動車保険の場合には、消費者が払う年間保険料のほぼ17%が販売手数料であるのに対し、ディーラーが売るエクステンデッド・ワランティの場合、車一台あたりのディーラーの得る販売手数料は50%にも上ることも珍しくないようです。消費者が$1,000払えばディーラーは$500を、消費者が$1,500払えばディーラーは$750を得るわけですね。なんと効率のよい商売でしょうか。この傾向は、車だけでなく電化製品などでも同じです。BestBuyで買ったPCにエクステンデッド・ワランティを買ったなら、その50%から60%はBestBuyの販売手数料になります。
つまり、販売手数料などの仲介者の利益などを差し引けば、消費者の払う値段のほんの一部しか、実際の修理費の補償には使われないというわけです。そしてこれは、エクステンデッド・ワランティの値段が、少しネゴをするとすぐに下がるという事実にも現れています。Consumer Reportsの調査によると、値段交渉をした顧客の実に75%がディスカウントを得るのに成功したそうです。
エクステンデッド・ワランティは必要なのか?
わたしたちの目には、エクステンデッド・ワランティと保険が同じようなものにうつりがちですから、「将来の予期せぬ惨事に備えましょう」といわれたら、「買わねばならない」と思って当然ですね。トランスミッションが故障すれば$4,000、エンジンが故障すれば$5,000などといわれれば、心配は尽きません。
けれどもどうやら、そのような惨事への心配は無用の場合も多いようですよ。Consumer Reportsの調査によると、エクステンデッド・ワランティを購入したひとのうち、実際にワランティを使ったのは58%ですが、修理に対して補償として支払われた平均額は、エクステンデッド・ワランティの値段よりも低いそうです。Lexus、Toyota、Acuraなどでは、エスクテンデッド・ワランティの購入により修理費を節約できた人は全体の10%ほど、Mazda、Honda、Nissanなどでは20%ほど、BenzやBMWでは30~40%という結果です。
Consumer Reportsのデータによると、新車で購入後4年目から6年目までの車では、1年あたり$1,700ドル以上の修理費がかかったのは4%、$3,700以上の修理費がかかったのは1%に満たないということでした。
セルフ・インシュアランスはいかが?
保険は、「万が一の場合のあまりに多額の損失」のために欠かせません。生命保険や自動車保険はそのためのものです。人が亡くなったり、ひどい傷害を引き起こしたりということは、確率的によくあることではありませんが、万が一起こったときにはその損失がとても自分でカバーできるほどのものではないですね。このような場合は、その「万が一」のために保険を買っておくことが肝心です。
これに対し、車のエクステンデッド・ワランティで対象となるような修理は、そんなに起こるわけでもなく、起こったときの損失は少々痛手ではあるが、まったく払えないというほどひどくないケースも多いでしょう。エクステンデッド・ワランティの値段が、販売手数料などによって膨張されており、「非常に高い」のであれば、ワランティを買う代わりに浮いたお金を自分で貯めておくという方法もいいかと思われます。$1,500とか$2,000をエクステンデッド・ワラティに費やす代わりに、Rainy Day Fund(非常時のたくわえ)としてためて置き、修理が必要だった場合にはここから引き出して使うというやりかたです。これを英語では、セルフ・インシュアランス(自分で自分を補償する)といいます。もしかしたら、ぜんぜん修理が必要ないかもしれないし、修理があってもこの範囲内で済むかもしれません。ただし、その範囲内ではまかなえない修理となる場合もあるので、そこはよく覚悟しておかねばなりませんが・・・
やっぱりエクステンデッド・ワランティが買いたいというのであれば・・・
サードパーティの提供するエクステンデッド・ワランティではなく、製造メーカーが提供するもの(Manufacturer’s Extended Warranty)のほうが安全のようです。メーカーのエクステンデッド・ワランティのほうがコスト的には高い場合が多いようですが、メーカー自体がワランティを提供しているので、実際に修理をする際に問題が起こる確率が低いようです。
あとは、必ずネゴすること。もし提示された価格が$1,000であれば、$650あたりでオファーし直してみるのはどうでしょう。ほぼ50%が販売手数料とのことでしたから、$650で契約しても、販売者には販売手数料として$150が残る計算です。最終的に$750あたりで落ち着いても、最初の値段の25%オフ。まずまずでしょうか。エクステンデッド・ワランティに関しては、あんまり低くネゴしすぎて申し訳ないとか恥ずかしいとかは感じる必要はないですね。販売手数料が非常に高い商品で、売る側は売りたくて売りたくてたまらない商品なわけですから。また、もしネゴが破談になったとしても、オリジナルのワランティが切れる前ならいつでもまた買うチャンスはあるわけですから、かなり強気に出てOKでしょう。