アメリカの自動車保険、誰から買うかも案外大切

もう2年前のことになりますが、4台の玉突き事故に遭いました。私は前から二台目。私のすぐ前の車(一台目)が急に道の真ん中で止まったので、私も急ブレーキを踏み、ぎりぎりのところでなんとか止まることができ、「あ~、よかったぁ。ぶつからなくて~」と思った瞬間、後ろからドン!その後もうひとつ、ドン!三台目、四台目が続けざまにぶつかってきたのでした。その勢いで、私も一台目にコツンとぶつかり四台玉突きとなったのです。四台目はすぐに非を認め、ポリスリポートにもその旨記されたはず。写真もあちこち撮り、情報交換し帰宅。そして保険会社へ連絡。。。ここからが私の悪夢のはじまりでした。

 

どうも?なクレーム・アジャスター

その時使っていた保険会社はTravelersだったのですが、すぐに1-800クレーム・センターに電話。お決まりの情報が聞かれ電話をきると、しばらくして私にアサインされたクレーム・アジャスターから電話がきました。さらに詳細を伝えたところ、「あなたに非はないようですから、スムーズに解決されるはずです」との言葉。

ところが3日後ぐらいになってまた彼女から連絡が。「三台目は、あなたがまず一台目にぶつかったと強く主張しています。しかも、一台目の運転手は妊娠中で、何か問題があったら大きな損害になります」とのこと。何だか彼女自身動揺しているような口調です。三台目の運転手は若い男の子で、その場では自分がぶつかったことを認めるようなことを言っていましたが、家に帰ったあと意見を変えたのでしょう。

クレーム・アジャスターは保険会社の人で、もちろん保険会社の利益を優先します。補償金の払い出しはできるだけ最小化するのが最終目的でしょうから、もちろん私の完全なる味方とは思っていませんが、それでも顧客である私の主張と事故の相手の主張を前にしたとき、何の根拠もなく相手の主張を鵜呑みにしているような物言いに怒りを覚えました。

相性もあるのかもしれませんが、このクレーム・アジャスターとのコミュニケーションは非常に難しく、質問に対しても答えがなかなか返ってこず、私が何かしなければならないのか、ただ待っていればいいのか、それさえもわからないまま大きなフラストレーションでした。結局、自分の主張はきちんとしておこうと思い、事故の状況や自分の信じる事故の原因とそれをサポートする事実を書き連ねたレポートを提出しました。長い時間の末、結果的には、私には非がないことで落ち着きましたが、これは私にとってひとつのレッスンでありました。

 

Amazonで本を買うように・・・

その時の自動車保険は、インターネットで買ったものでした。保険の内容はちゃんと吟味しました。見積もりもいくつかとって値段的にも良いものを選びました。保険会社の財務成績も調べて安定している会社を選びました。「インターネットってすご~い。全部ネットで調べて、ネットで保険まで買えちゃう」と感動しつつ。その何年か後に相手にすることになるクレーム・アジャターのことなど心配することはありませんでした。

アメリカでは簡単に保険はネットで買えますが、本とは違います。万が一のことがあったとき補償をしてもらう、その約束を買うのだからです。ネットで買ったり、1-800に電話をかけて買うのなら、何が問題があるとき、質問があるとき、クレームしたいときも、コンタクトするのはオンライン・サイトか1-800になるということです。つまり、会ったことも話したこともないひととのやりとりです。クレームをするときは、事故や盗難にあい精神的にも追い込まれているときですから、普段よりさらにスムーズなコミュニケーションを臨みたいところ。

もちろん、クレームのタイプによっては、オンラインのクレーム・フォームに情報を入力するだけで簡単に解決されるものもあるでしょう。でも、私の玉突き事故は違いました。それよりもう少し多くのガイダンスやアドバイスが必要だったように思います。また、クレーム・アジャスターもぴんからきりなのでしょう。有能でやる気のある人に当たれば、フラストレーションを感じずに解決ができたのかもしれません。

私がこの事故から学んだレッスンは、「事故のときは、“顔のある人”とやりとりがしたい」ということでした。“顔のある人”とは、コンピュータがわたしにアサインしたアジャスターではなくて、ある程度コミュニケーションの履歴のある人で、私を“顔のある顧客”としてとらえてくれる人ということです。

 

しかもNon-Renewal Letterが・・・

事故の解決を見たか見ないかというころ、保険会社からNon-Renewal Letterが届きました。内容は、「今度の契約の期限が終わったところで、あなたとの契約更新はいたしません」というもの。実は、このTravelers、東海岸に住んでいるころに契約した保険だったのですが、2年半前カリフォルニアに引っ越す際、とりあえずそのままの会社でいいやと、1-800に電話して同じ契約内容のまま、新しい住所で再発行してもらったものでした。

後で調べてわかったのですが、Travelers本体はカリフォルニアでは保険を売ることができず、Standard Fireという子会社が私たちの保険を発行していたのでした。このStandard Fireにしても、存在感はどうやら東海岸のほうがメインよう。つまり、カリフォルニアに住む私たちは、そもそもTravelersのメイン・ターゲットから外れていたということのようです。これは保険料の面からしても決して私たちにとって有利ではなかったことを後で発見しました。また、これはクレーム処理にしても同じことでした。

“顔のない”保険会社の一部署から送られてきたこのNon-Renewal Letterという一枚ペラで、私たちと保険会社との関係がますますさびしいものに感じられました。

 

そこで再スタート

ということで新しい自動車保険を探さねばなりません。それまで心がけていた、1) 自分に必要なカバレッジを見極める、2) 見積もりをたくさんとること、3) 信頼できる保険会社を選ぶ、4)ディスカウントを利用するに加えて、5) “顔のある会社”を選ぶが私の今回の課題になりました。

“保険会社の顔”を考えるとき、誰から保険を買うのかを考えなければなりません。そこで、ちょっとリサーチしてみました。アメリカの保険会社が保険を売るのには、以下の5つのスタイルがあるようです。保険会社によっては、このうちの1つのタイプに特化した販売形態をとっているところから、このうちのいくつかを組み合わせて販売しているところまであります。

  • 専任エージェント: 専任エージェントは、いわば、保険会社を代表して顧客であるあなたとのやりとりを統括する人で、保険商品の質問、請求関連の問題、クレーム処理の相談など、さまざまな件に関して窓口となってくれます。
  • 多社エージェント: 専任エージェントにせよ多社エージェントにせよ、エージェントはあくまで保険会社の代表として保険会社のために働くのであって、あなたのために働くのではないことを知っておく必要があります。もちろん顧客の立場にたって心づくしのアドバイスをするエージェントはいるはずですが、ただし法的にはあくまでエージエントは保険会社のエージェント(代理人)。エージェントの顧客に対する義務は正確な事務手続きが主で、顧客の状況を総合的に判断してベストの保険商品を選ぶということには義務がありません。これは、顧客であるあなたの責任となります。
  • 保険ブローカー: 保険ブローカーは、多数の保険会社の商品を取り扱います。多社エージェントは保険会社のために働きますが、保険ブローカーはあなたのために働きます。顧客から必要情報を集め分析し、顧客に代わって複数の保険会社にコンタクトし、顧客のニーズにあった保険商品を見つけることに責任があります。一般的に、エージェントよりブローカーのほうが高いトレーニングと経歴を持っています。このサービスにはもちろん手数料が伴います。ブローカーは、保険料に上乗せされる形で徴収される手数料から報酬を得ます。
  • オンライン・ブローカー: 保険ブローカーのオンライン・バージョンです。顧客が自分で情報を入力することによって、一度に何社からも見積もりをとることができ、値段の比較が簡単にできます。保険会社間の競争も促進されて、保険料も魅力的なものであることが多いようです。
  • 保険会社からダイレクトに: こちらもインターネットの発達によって生まれた販売形態です。インターネットが保険会社と顧客をダイレクトにつなぐことにより、仲介者を介さないで保険を売り買いすることが可能になりました。アグレッシブな広告で認知度を高めたGEICOは、オンライン・サイトを充実させることで、顧客が必要なリサーチをしたり、見積もりをとったり、保険を買ったり、またクレームをしたりすることを可能にしています。仲介者を省くことで手数料をなくし、それを保険料に反映させるというのが売りです。Progressiveもこのタイプです。これらの会社はダイレクト・セラーと呼ばれます。

 

我が家の場合・・・

見積もりをたくさんとることが保険料削減には大切なことですから、まずはオンライン・ブローカー・サイトで見積もりを集めました。同時に、保険会社のサイトにいって、直接見積もりも集めました。Non-Renewal Letterというのは気分が悪いもので、「もう今後はあなたには保険を売りません」ということですから、「他に、保険を売ってくれる会社がなかったらどうしよう」というような不安もよぎりましたが、何のことはなく、見積もりを集めればそれまでのTravelersよりずっと安く保険に入れてくれる会社はたくさんありました。やはり、その会社のメイン・ターゲットに入っていることが、リーゾナブルな保険料と良いサービスを得るためには大切なようです。

見積もりを取ると、個人エージェントからメールが来る会社もあり、質問をするなどして感触をつかみました。“顔のある保険会社”が私の課題でしたから、おそらく専任エージェントのいる会社がいいかなと思っていたところ、State Farmの保険料がとても魅力的だったので、そこにすることにしました。家の近くのエージェントを選び、契約は電話やネットだけでもできるのですが、わざわざ出向いていって契約をしました。

玉突き事故の話をちょっとしてみたら、“That’s right.  With those companies, you are on your own.”というレスポンス。ってことは、このエージェントなら少しは親身になってくれるということだといいのですが。実際、他の保険会社は「事故の際は、1-800かオンライン・クレーム・サイトへ」と唄っていますが、State Farm、Allstate、Farmersなどの専任エージェントを置いている会社は、「事故の際は、エージェントか、1-800か、クレーム・サイトへ」と唄っています。もちろんエージェントがクレーム処理をしてくれるわけではありませんが、困ったときのワンクッションにはなってくれると期待したいところ。

一方、多社エージェントやブローカーがクレームをどう扱うかは、バラつきがあるようです。いろいろなエージェントやブローカーのサイトを見てみましたが、「クレームがあれば、まずは我が社に連絡をください」というところから、「クレームは直接保険会社へ」というところまでありました。カスタマーケアをどのレベルで提供したいと考えているかで、違いがでてくるのでしょう。おそらく保険エージェントやブローカーの中には、クレーム処理はできれば関わりたくないというタイプもいるでしょう。多社エージェントやブローカーを使うのであれば、彼ら自身のクレーム処理へのスタンスを確認しておくことといいですね。

また、私はGEICOやProgressiveは使ったことがないのですが、これらの会社はダイレクト・セールスとダイレクト・コミュニケーションにお金を使っていますから、オンラインでのクレーム処理がフラストレーションなく進むシステムが確立されているのかもしれません。“顔”は直接見たことがなくても、システムがしっかりしていて、全体的にクレーム・アジャスターの質が高いというのなら、問題にならないかもしれません。みなさんの経験はどうでしょうか。お聞かせください。

この玉突き事故は、保険の内容と保険料だけではなくて、誰から買うかということも案外重要な要素なのだということを学んだ経験でした。。。

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