バランス・シートをつくってみる-あなたの純資産(Net Worth)は?

お友達の家に遊びに行った息子が帰ってくるなりこう言いました。「○○のおうちはすごいお金持ちだよ。大きな家で、テレビもゲームも最先端のものだったよ。」お金持ちかどうかをその人の持っているもので判断するのは、何もうちの息子に限ったことではないでしょう。その人が身に着けているもの、住んでいる家、乗っている車を見て、お金持ちそうだとか、あんまりお金がなさそうだとか考えたりしますね。

でも、お金がなくてもものは買えますよ。その一番いい例はクレジット・カード。お金がなくたって、どんどん(リミットが来るまでですが)買い物を続けることはできます。大きな家に住んでいても、一昔前なら全額ローンを組んで買うということもできました。昨今では、ネガティブ・エクイティーとよく呼ばれていますが、持っている家の時価より残っているモーゲージの額のほうが大きいなどということだってよくあります。つまり、持っているものだけを見て、その人が本当にお金持ちかどうかは本当のところはわからないのです。

 

バランスをはかるもの

どうしてかというと、持っているもの、これを資産と呼びますが、これはわたしたちの成績表の片方に過ぎないからです。もう片方は何かといいますと、借りているもの、つまり負債です。持っているものと借りているもの、資産と負債の両方を天秤にかけてみて、どちらが多いか、少ないかというのを見ない限り、その人のお金持ち度は量れないのです。

これをするのがバランス・シートです。まさに資産と負債のバランスを見るのです。バランス・シートの左側には、その人の持っているすべての資産がリストされます。銀行預金やリタイヤメント・アカウントは残高が、持ち家、家具、宝石や車などは時価でリストされます。反対側の右側には、その人の借りているものがすべてリストされます。家のモーゲージ・ローン、オートローンをはじめ、クレジット・カードでその月に支払いきらず次月に持ち越す部分もここにリストされます。以下で、リストアップのプロセスを見てみましょう。このプロセスでは、資産や負債のそれぞれの性格と、資産や負債に対するあなたの意図などを考慮しながら構成要素をチェックし分類していくことになります。

 

資産をリストアップする

個人のバランス・シートの場合、通常資産のほうが細かく分類されます。負債の種類や数に対し、資産のほうが多様であることのほうが常だからです。、構成要素の分類の仕方は、分析の目的によっても変わってきますが、資産を分類するのに良く使われるのは、下のような分け方です。

流動資産 :

その名のとおり、流動的(換金性が高い、つまりすぐにお金として使える)資産で、使いたいときに使うことを意図して一時的に貯めてある資産のことです。満期がないか、あっても1年未満のもの。必要なときにすぐ使える資産。銀行のChecking, Saving、Money Market、Certificate of Deposit(1年満期まで)などが該当します。

インベストメント :

こちらは流動性(換金性が低め、つまりすぐに引き出して使うことはできないわけではないけれど、ちょっとしにくい)資産で、ある程度以上の期間持ち続け、増やしていくことを意図している資産です。満期が1年以上であったり、換金の時期を見計らう必要のあるもの、あるいは法律上引き出し条件が制限されているもので、比較的長期の投資目的でもっている資産を指します。株式、債券やリヤイヤメント・学資準備の投資口座などが含まれます。

不動産 :

不動産とはその名のとおり、動かない資産で、当面換金する意図がない資産です。持ち家や別荘などが入ります。ただし、賃貸目的あるいは値が上がったら売ろうと思っているアパートや家などの場合、インベストメントのカテゴリーの下に入れることもあります。同じ資産でも、所有者の意図により分類が変わってくるからです。長期間住む家なのか、必要があれば売ろうと思っているのかで分類のされかたも変化するわけです。

動産 :

こちらは動く資産です。動くけれども、流動資産のようにすぐにお金としては使えなし、インベストを目的に所有しているわけでもないもの。自家用車、家財、美術品や宝石などです。アンティーク・カーなどは、自家用車とは違いインベストメントに分類されることが多いようです。

 

負債をリストアップする

以上が資産の分類のしかたでしたが、これに対して負債は分類することなく、ただ持っている負債と利子とをリストします。通常、短期的な負債(クレジット・カードなど)から先にリストし、車のローンやモーゲージなど長期的ものを後に書きます。払っている利子もきちんと確認し記入しておくと、あとで役立ちます。

 

バランスを見る

さてリストが終わったらバランスを見ます。もちろんどちらが多いほうがいいかというと資産ですね。資産合計が$100,000で負債合計が$80,000なら、資産のほうが$20,000多くて安心ですが、おなじ資産合計$100,000に対し負債合計が$120,000だと、持っているものは同じでも借金のほうが$20,000も多いことになり成績としてはバツです。このバランスを一目で把握するための指標が、資産合計から負債合計を引いた額で、これを純資産、英語ではNet Worthといいます。もうおわかりですね、純資産はもちろんプラス(黒字)であるのがよく、その額は多ければ多いほどいいのです。この純資産は、住んでいる家の大きさや車のかっこよさでは測れないものだということがお分かりでしょうか。たとえば・・・

堅実派のAさんは、無理せず買える家に住み、車も実用的なものに乗っています。クレジットカードの残高は毎月払い切ることに決めており、リタイヤメントや学資など将来への貯蓄もできる限りしています。反対にきらびやかなBさんは、大きな家に住みBMWに乗っていますが、借金もそれなりに多く、月々の返済額はなんとか支払うことができていますが、その分将来への貯蓄がおろそかになっています。

持っているものだけを見ると、どうやってもBさんのほうがリッチそうに見えますが、純資産を見てみると、Aさんは$250,000であるのに対しBさんのほうはその三分の一ほどです。バランスシートの成績という面では、AさんのほうがBさんより優秀でありリッチということになります。

あなたの資産と負債のバランスはどうでしょうか。よろしければ、こちらのバランス・シートのテンプレートをお使いください(Exceファイル)。アメリカの年齢別純資産のデータはこんな感じらしいです(Federal Reserve 2011/12月データ)。

左側のMedian Net Worth というのは、純資産高を低いほうから高いほうに順番に並べたときの中央値です。右側のAverage Net Worthというのは、すべての純資産高を足し合わせてデータ数で割った平均値です。平均値のほうがずっと高くなっているのは、各年齢層ともに非常に高い純資産を有する人が存在するため、全体の平均を引き上げているからでしょう。

もうひとつ、CNN Moneyのサイトをご紹介しましょう。ご自分の年齢と年収を入力すると、それぞれの年齢グループ、年収グループでのアメリカ人口の純資産の平均値がどれくらいかが見られます。下は、35歳、年収$100,000の人の例です。

このようにバランスシートは、あなたのパーソナル・ファイナンスがバランスがとれた状態にあるか、借金を差し引いた「本当の」資産はどのくらいあるかを測るための重要な役割を果たすのです。理想的には、純資産が時の経過とともに増えていくのがよいでしょう。ただし、急激に不動産が値下がりしたり、子どもが大学に入って大きな学費を支払ったりすれば、一時的に純資産が減ることもありえますし、またリタイヤメント以降は通常純資産が減っていくのが普通です。自分の現在おかれているフェーズ(貯める時期か使う時期か)を見極めるとともに、時折、純資産の動きをチェックするとよいでしょう。

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5 comments

  1. 持ち家は購入した時の価格を入れるのか、今のマーケットのestimate 金額を入れるのか、どちらでしょうか?教えてください。宜しくお願いします。

    1. 今の市場価格です。理由は、今もし売ったとしたら、その金額が現金として資産になる(実際にはセースルコミッションなどありますが、それは考慮せずでOK)という考え方からです。

  2. たった三千四百万円の純資産しかありません。40歳で自分の価値が此れだけだと気がつくと嘆きますね。

    1. 三千四百万円はごりっぱだと思いますが。。それに、純資産は自分の価値ではありませんよ。池上さんの価値は、数字には現れないところにもたくさんあります。今日、人にかけたやさしい言葉、人知れず拾った道のごみ。。。そんなことこそ、その人の価値だと思います。

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