クレジット・カードのバランス・トランスファー成功の秘訣(2)

クレジット・カード会社はなぜ0%APRというようなプロモーションをするのでしょう?新しい顧客を獲得するためです。でも、新しい顧客を獲得してもAPRがゼロでは全く利益がありませんね。なぜそのようなプロモーションをするのでしょう? 答えは、クレジット・カード会社はギャンブルしているからです。このギャンブルは計算されたギャンブルです。クレジット・カード会社は、バランス・トランスファーをする顧客の中には、0%APRの期間のうちにすべてのカード負債を返済してしまわない人もおり、また新しく購入した分も負債に加わり、結果的に利子を払うことになる人たちがいることを知っているのです。

これを顧客の立場から考えると、よく計画したバランス・トランスファーをしないと、カード会社に儲けさせるだけで、自分のためにはならないこともあるかもしれないということです。0%という宣伝に飛びつかないこと、バランス・トランスファーをしたほうがいいかどうか、するなら、月々の返済額をどのくらいに設定してどう負債を解消していくか、その場合利子はどのくらい節約できそうかをあらかじめ把握しておくことが大切です。バランス・トランスファーの成功の秘訣(1)ではバランス・トランスファーをする際の心構えについてご紹介しましたが、今回は条件の吟味のしかたについて紹介します。

 

バランス・トランスファーの条件を理解する

バランス・トランスファーAPR

APRはAnnual Percentage Rateの略で、年利のことです。バランス・トランスファーに関わるAPRには2種類のAPRがあって、一つ目はバランス・トランスファーAPRです。これは、古いカードから新しいカードへバランス(残高)をトランスファー(移す)する際の、そのバランスに対するAPRのことです。最近では、このAPRがゼロというカードも多く出回っています。ただし、これもクレジット・スコアによります。スコアがあまりよくない場合、APRが0%ではなく、2%とか3%になる場合もあります。それでも、今のカードのAPRが15%というのであれば、トランスファーすることを考える余地はあるでしょう。

Purchase APR

ふたつめのAPRは、バランス・トランスファーをした後に、新しいクレジット・カードを使って購入した額に対するAPRです。条件のよいカードだと、バランス・トランスファーもPurchase APRも15ヶ月なり、18ヶ月なりの同じ期間0%というものもありますが、あるいはPurchase APRはバランス・トランスファーAPRに比べ短い期間だけ0%というようなものや、Purchase APRは最初から8%というものなど条件はまちまちです。バランス・トランスファーAPRだけでなく、Purchase APRにも注意を払いましょう。

0%期間とその後のAPR

0%というAPRは新しい顧客獲得のためのプロモーションであり、一定期間の後、APRは劇的に上がることをよく理解しましょう。0%APRの期間は、カードによって、6ヶ月、12ヶ月、15ヶ月、18ヶ月とまちまちです。長ければ長い方がいいような気もしますが、もし現在のカード負債が6ヶ月で返済できそうなものなら、6ヶ月0%APRのカードでも十分かもしれません。たとえば年会費ゼロの6ヶ月0%APRと年会費のかかる15ヶ月0%APRのカードがあった場合、あえて前者を選ぶということが理にかなっている場合もあるでしょう。現在のカード負債の残高と月々返済に充てられる額とを考え合わせて、ニーズにあったカードを選びます。

バランス・トランスファー手数料

0%APRだけみるといかにも「無料」という感じがしますが、バランス・トランスファーには手数料がかかることがあります。手数料なしというものも存在する反面、手数料はトランスファーする残高の3%から5%という場合も多いようです。現在の負債残高が大きく、新しいカードの0%APR期間が短い場合には、高い手数料をとられる割に節約できる利子が小さく、バランス・トランスファーをするとかえって高くつく場合もあるかもしれません。計算して確かめることが必要です。

その他の条件

年会費があるか、リワード・プログラムはどうかなども考慮にいれます。年会費は毎年かかるものなので、できるだけ避けたいところです。また、リワードも、よいプログラムをうまく使うとかなりの節約になることもあるので、よく吟味します。また、俗に言うFine Printsは隅々までちゃんと読みましょう。支払いが少し遅れると、0%APRが受けられなくなるものもあります。そうなれば、バランス・トランスファーの意味が覆されかねませんから、きちんと確認するとともにそう状態にならないようより厳密な計画が必要です。さらには、複数のアカウントからバランス・トランスファーをするような場合は、アカウントごとに手数料がかかったりするケースもあるようです。とにかくすべての条件をしっかり理解したいですね。

実際に計算してみる

バランス・トランスファーを吟味する場合にお役にたちそうなカリキュレータをご紹介しましょう。

ひとつはこちら。現在のカードの条件と、新しいカードの条件を入力すると、1)バランス・トランスファーをし、現在のMin Paymentを払い続けた場合と、2)バランス・トランスファーをして、月々の支払額を増やした場合とで、完済まで何ヶ月かかるか、支払う利子の合計はいくらかを比べてくれます。

もうひとつはこちら。現在のカードのまま(バランス・トランスファーをしない)で、1) 現在のMin Paymentを払い続けた場合と、2)月々の支払額を増やした場合とで、完済まで何ヶ月かかるか、支払う利子の合計はいくらかを比べてくれます。

これらのふたつのカリキュレータを使えば、バランス・トランスファーをすべきかどうか、月々の支払額を増やすとどのような効果が期待できるかを比較することができます。

例を見てみましょう。残高$10,000をバランス・トランスファーするかどうかを決めます。現在のカードと新しいカードの条件は下記のとおり。現在のカードはAPRが15%であるのに対し、新しいカードは18ヶ月間APRが0%です。18ヶ月が終わると15%になります。この場合、ふたつのカリキュレータを使って計算してみると、結果は下の右部のようになります。

一番よい策は、緑ハイライトの2)で、バランス・トランスファーをして、月々の支払いを$300にすると、36ヶ月で完済、利子合計は$539です。一番悪いのは、赤ハイライトの現状のまま、つまり古いカードのままMin Paymentしか払わないと、なんと完済までに335ヶ月もかかり、利子の合計は$11,979にものぼります。この新しいカードは条件がよいものであったので、この場合はバランス・トランスファーすると大きく利子を節約することができるという結果になりました。

今度は反対に、新しいカードの条件があまりよくない場合を見てみましょう。下の新しいカードは最初のAPRは0%ではありますが、これは6ヶ月しか有効ではありません。また、6ヶ月を過ぎると、20%という現在のカードのAPR(10%)の2倍の利率になります。しかもAnnual Feeも$50かかります。これをふたつのカリキュレータに入れて計算してみると、一番よいのは緑ハイライトの4)バランス・トランスファーをしないで、月々の支払額を$300に増やすというものです。一番悪いのは赤ハイライトで、バランス・トランスファーをするものの、現在のMin Paymentを払い続けるというものだということがわかります。

これらの例からわかるように、バランス・トランスファーを考える場合は、0%APRという宣伝にとびつくのではなく、それが利子節約につながるのかを吟味することと、完済を早めるために月々の支払いをどのくらい増額できそうかとあわせて計画することが必要なのです。

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