アメリカでのバンキング ― なるべく高い利子で、現金を安全に便利に運用するには (2)

前回の記事で、アメリカの銀行と銀行口座の種類をざっと見てみました

今回は実際に、どのような基準で銀行を選んでいけばいいのか、その基準みたいなものを考えてみます。

銀行の選び方のポイント

預金保護があること

銀行が破綻したとき、預けているお金を保護されるかされないかは大きなポイントです。銀行の種類によっていくつかのパターンがあります。

The Federal Deposit Insurance Corporation (FDIC)

FDICは、破たんした銀行の口座にあるお金を預金者に対して保証する団体です。FDICが発足する前は、銀行が破たんすると、預けていくお金は早い者勝ちで預金者に振り分けられるため、金融機関の前に長蛇の列ができました。現在では、FDICのおかげで、万が一の破たんの場合にも限度額までは保証されますので、預金者はパニックせず安心していられます。FDICのメンバー銀行にある口座であれば、一人につき$250,000までの預金(元本と利子)が保証されます。銀行がFDICのメンバーかどうかはこちらでチェックできます

FDICは預金保護なので、あくまで預金(投資でない)が対象です。以下が対象になります。

  • チェッキング口座
  • セービング口座
  • マネーマーケット口座
  • CD
  • トラスト口座

以下は預金ではないので対象外です。

  • ミューチュアルファンド
  • アニュイティ
  • 株式、債券などの投資媒体

一つの金融機関につき、口座名義ごとに、$250,000の保証です。夫婦は一人ずつ個人名義の口座を作れば、それぞれ$250,000まで保証されます。そのうえジョイント口座をつくれば、さらに別口座(共同の別名義)と数えられ、それぞれのオーナーにつき$250,000の保証があるため、ジョイント口座で合計$500,000までの保証となります。さらに他の金融機関にも同様な口座をつくれば、そちらも一口座につき$250,000の保証が受けられます。

National Credit Union Administration(NCUA)

クレジットユニオンは上記のFDICには属していません。クレジットユニオンは独自の組織、National Credit Union Administration(NCUA)をつくっておりNCUSIFという基金によって、FDICと同じような保証を提供しています。クレジットユニオンに預けたお金は、預金とは呼ばれずシェアと呼ばれますが、NCUAのメンバーであるクレジットユニオンであれば、銀行口座と同様に一人$250,000、ジョイント口座$500,000までカバーされます。クレジットユニオンがメンバーかどうかはこちらでチェックできます

  • シェア・ドラフト口座 (チェッキング口座相当)
  • レギュラー・シェア口座 (セービング口座相当)
  • マネーマーケット口座
  • シェア・サーティフィケート(CD相当)

預金の利子

利子に関しては、クレジットユニオンのほうが銀行より若干高いことが多いですが、差はそれほど大きくはありません。これに対し、オンラインバンクは一般的に各段に高い利子を提供していることが多いです。建物や土地などを持たず、窓口の運営もないオンラインバンクは、その分口座の金利が高く設定されています。たとえばセービング口座の場合、従来の銀行の金利は0.10%以下であるところ、インターネットバンクだとその十倍、二十倍、あるいはそれ以上というレベルです。また、従来の銀行はさまざまな手数料を課すことが多いですが、多くのインターネットバンクでは手数料もないか、あっても低めです。セービングだけでなく、CDやMoney Market Accountに関しても、オンラインバンクが提供するものは総じて利子が高めの場合がほとんどです。

こちらのサイトで、High Yieldのセービング口座、マネーマーケット口座、CD、チェッキング口座を検索することができます。

すぐ行ける支店があること

オンラインバンクには物理的な支店はありません。支店が必要だとなれば、従来の銀行を使う必要があります。オンラインで支払い、送金ができる昨今、私たちはいつ銀行の支店に行く必要があるでしょうか。たとえば以下のような項目があります。

Cashier’s Checkをつくる

家や車など大きな買い物をする場合には、クレジットカードや通常の小切手が使えないことが多いです。そんな場合はCashier’s Checkという特別な小切手を銀行から発行してもらう必要があります。Cashier’s Checkは額を特定して作ってもらう小切手で、銀行口座にその額がなければ作ることができません。反対に言えば、Cashier’s Checkを受け取った人は、かならずその額が受け取れるという保証がある(通常の小切手のように残高不足で返されるということがない)のです。

オンラインバンクでもCashier’s Checkを作ってくれる機関もありますが、受取は郵送になるため時間がかかります。一方で、銀行の支店に行けば、すぐその場でCashier’s Checkをつくってもらい受け取ることができます。

現金取引が頻繁

受け取った小切手の入金ならば、オンラインバンクのApp(アプリ)で済む場合が多いです。一方で、現金を入金したい場合は、App(アプリ)では無理です。オンラインバンクでも、現金をパートナーATMから入金するということができる場合もあるようですが、使い勝手は今一歩のようです。コインなどを含む現金入金が頻繁となれば、近くの銀行の支店に持ち込むのが一番簡単です。

同様に、大きな額の現金を引き出す必要がある場合も、ATMでは限度額の設定がありますので、銀行の窓口に行くのが一番簡単です。

セーフティボックスの利用

セーフティボックスを利用したい場合には、銀行の支店で提供をうけることになります。

相談に行きたい

家に居ながらにして多くのことができる時代になりましたが、同時に電話をかけても自動返答システムで埒があかない、App(アプリ)でも対応できない内容となれば、人に話しに行くことができる場所があるというのは一つの安心ではあります。スモールビジネスなどを持っていたり、複数の口座がありある程度の預金があれば、よりよい特別対応が受けられる可能性もあります。

コミュニティーへの焦点

銀行もオンラインバンクも営利企業であるのに対し、クレジットユニオンはメンバー(口座を持つ人)によって所有される非営利団体です。地域や職業などをベースにコミュニティーのために存在するということと、非営利で連邦税を納める必要がないということもあり、手数料は低く利子は高めという特徴があります。サービスも、より親密でパーソナルな場合が多いです。

手数料

銀行は、クレジットユニオンやオンラインバンクに比べて、幅広い金融サービスを提供している一方で、さまざまな手数料がかかることが多いです。口座残高が一定以下になるとかかる月額サービス料金や、残高が十分でないのに支払いが発生したため、お金を他の口座(セービング口座)からカバーする必要があったときのオーバードラフト手数料など、数十ドル単位の手数料がかかることも少なくありません。これに対し、オンラインバンクではこれらの手数料がかからないことが多いです。

どうしても銀行でなければできないことに対する手数料はいたしかたありませんが、オンラインバンクで事足りることに関しては、わざわざ銀行に手数料を払ってやってもらう必要もありません。できるだけオンラインバンクでできることはそこで済ませ、銀行でなければならないところだけを銀行にやってもらうという使い分けがよいでしょう。

App機能+オンライン機能

App(アプリ)でのバンキングや、オンラインでのバンキングサービスの充実を求めるのなら、全米展開している大銀行系か、オンラインバンキングかの選択になります。Bank of AmericaやWells Fargoなどの大銀行は、物理的店舗も持ち合わせながら、一方でネットバンキング機能も充実させる資金力があります。小切手の入金、送金、小切手の注文、外国為替の購入など幅広いサービスをネット上で行い、さらにはバジェット機能などまでカバーすることもあります。

この点においては、地方銀行やクレジットユニオンはひけをとっていることが多いです。一方で、オンラインバンクはその発足がそもそもネット上なので、金融サービスの幅には限度がありますが、ネットバンキング機能が充実しているものも多いです。

よくある使い方のパターン

銀行、クレジットユニオン、オンラインバンクをどう使いこなすかは、それぞれのニーズによります。ここでは、よくある典型パターンをご紹介しましょう。

銀行かクレジットユニオンをメインバンクとして、給料の入金をするチェッキング口座をつくります。小切手の発行や口座維持手数料などが無料になったり、よく使うサービス(送金、Cashier’s Check発行、外国為替発行などなど)があればそれらも無料になる預金残高レベルを確認します。それを常に満たすことができる残高はこのメインバンクにおいておくようにします。

これと同時に、オンラインバンクでより利子の高いハイイールド・セービングやCD口座を開き、上のチェッキング口座にキープする必要のないお金はこちらに移し、より高利で運用します。ふつうオンラインバンクで口座をつくるときには、メインバンクからの入金が必要ですからふたつの口座をリンクします。その後、何等かの理由でお金が必要になった場合は、オンラインバンクからメインバンクのチェッキング口座にお金を送金し、使うことができます。必要に応じ、銀行のチェッキング口座とオンラインバンクの口座間では、自由にお金を動かすことができます。

こうすることで、銀行の提供する幅広いサービスをできるだけ無料で使いつつ、余剰の現金はより高い金利で運用するという体制がつくれます。

2 comments

  1. いつも役に立つ情報を有難うございます。

    5年程前に、このサイトでオンラインバンキングを知り、正に「よくある使い方のパターン」を実行しています。開設当時、オンラインバンクの利子は銀行の2倍ありましたが、2020年頃から利子が低下し、また現在は急激に回復しています。最近オンラインバンクから普通の銀行に送金したのですが、以前より日数が掛かったように思います。以前は翌日送金だったように思うのですが、先月は数日掛かりました。

    また、Check Bookの発行が無料になる口座がある事は知らず、早速調べました。いつも大量の小切手はいらない、しかもDepositのスリップはそんなに必要ない、と思いながら購入していました。先日詐欺に遭い、既存アカウントを閉鎖、新アカウントを開設し、Check Bookはまだ注文していません。私の使用する銀行でCheck Book発行が無料になる口座は月額のメインテナンス費が必要のようです。Costco、Walmart、Vistaprintでは少量の小切手を発行できるようなのですが、どうなのでしょうかね。

    1. 体験のシェアをありがとうございます。そうですね、ある程度の残高でCheckbookを無料でもらうか、割り切って外部の業者を使うかなのでしょうね。私はCostco、Walmart、Vistaprintについては、小切手をつくるために使ったことがありません。もし体験されたらシェアしてくださいね。

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