どうもお金が貯まらない人ですか?
ちょっと前のリサーチですが、「急に$2,000が必要になったら、すぐにお金を工面できますか?」との質問に、「できない」と答えた人は28%、「おそらくできない気がする」と答えた人は22%で、約半数の人が対応できないだろうと答えました。
この場合、問題は二手に分かれます。
どっちが問題?
お金はある
もし、他にお金はあるのだけど、現金がないからすぐには対応できないというのであれば、これはお金の「持ち方」が偏りすぎているのが問題。固定的なお金(不動産や投資口座など)が多いけれど、すぐに現金化するのが難しいというようなケースです。
それなら、固定的なお金の一部を、すぐに換金できる形に変換し現金リザーブ(エマージェンシーファンドとも呼ぶ)にすれば問題解決です。
お金がない
一方、とにかくお金が貯まっていないというのであれば、解決はもう少し大変になります。現金もなければ、現金化できる資産もない、なにもない・・というのでは、まだ就職したばかりの20代ならわかりますが、そうでないならちょっと改革が必要です。
収入の問題ですか?
収入が少ない・・・
収入自体がない、あるいは非常に少ないのでなかなか貯蓄まで手が回らないという場合ももちろんありますね。その場合は、なんとか収支を合わせて生活していくのが精一杯ですから、赤字にならないで(あるいは、赤字を増やさないで)生活を続けているだけで二重丸だと思います。
そのうち、ある程度収入を増やしていけるような目処がたつとよいですね。また、月に$20でも貯金に回す努力ができると素晴らしいと思います。あまりに小額だからしない・・・というのではなくて、小額でもとにかく貯めるというモメンタム(慣性)をつくっておくことが、将来収入が伸びたときにもきっと生かされます。
収入はそこそこあるのに・・・
反対に、収入はそれなりにあるのですが、とにかく貯まりません・・・という方もいらっしゃいます。今の生活レベルに満足だし、特に貯蓄まで考えたくないケースです。車もぴかぴか、ケイタイは最新のiphone、でも貯蓄とくるとあんまりない・・・という人もいます。あるいは、月々の収入ではまかないきれない買い物は、気軽にカードローンでするという人もいます。
支出が収入を上回る状態が続けば、もちろん借金がかさんでいきます。最初は小さく始まった借金も、そのパターンを続ければ続けるほど雪だるま式に増えていきますから、数年もすればかなりの借金になります。貯まらない・・・という問題が、借金が減らない・・・、あるいは借金が増え続ける・・・という問題へと発展していきます。
お金はプラスもマイナスも増幅する!
お金というのは不思議なもので、プラスの方向にせよマイナスの方向にせよ、最初は1だったものが月日がたつとそうち10になり、もう少したつと100になりと加速度的に増幅していきます。+1が+100になるのはうれしいことですが、-1が-100になるのはいたたまれないですね。
これをお金の時間的価値(Time Value of Money)とか複利のパワー(Power of Compounding)などといいますが、つまり利子というものはプラスにせよマイナスにせよ複利で増えていくので、時がたつとプラスであれば(下図緑線)資産が加速度的に成長し、反対にマイナスであれば(下図赤線)負債が加速度的に膨れ上がることをいいます。
ふたつの道のどちらに入るかは、大きな分かれ目です。最初はかなり近い場所にあるのに、踏み出す方向が違うと何十年か後には、大きな差がでるからです。できれば早いうちに緑の路線に入って、プラスの方向に伸びていきたいものです。
緑と赤とを対比させているので、誤解があるといけないので付け加えますが、人生、一度も借金をしないという人は少ないでしょうし、借金自体を悪として排除する必要はありません。使い方次第で「よい借金」、状況によっては「致し方ない借金」というのも存在するからです。必要なのは、本来ならば避けることができた条件のよくない借金をつくらないこと。そういう借金があるのなら、早く返済し終えて、その後はもうそういう借金をつくらないことです。
外のツールに飛びつかない
ではプラス路線で伸びていくためには、どうすればよいでしょう。もちろんいろいろなパターンがあります。起業して一発あてる人、サイドビジネスで収入を増やす人、利回りのよい投資をする人・・・いろいろなツールがあるかもしれません。
いったんマイナスの方向に入ってしまったのでとにかく借金を完済したい、減らしたいというのであれば、バランストランスファー、借金の一元化(コンソリデーション)、低金利ローンという言葉が思い浮かぶかもしれません。
しかしながら、マイナス路線脱出&プラス路線成長のためには、そのような「外のツールありき」で始めるとうまく行かないことが多いです。外から始めるのでなく、まず内側をよく見つめることが必要です。内側とは、1)自分の家計と2)自分自身です。
内側吟味 ― 自分の家計
自分の家計の吟味とは、以下の二つのツールを使います。
- 自分が今どんな資産(家、車、預金、投資口座など)を持っていて、同時にどんな負債(モーゲージ、ローン、クレジットカード負債など)を持っているかをまとめたバランスシート
- 月々の収入がいくらで収支はいくらかとその内訳をまとめたマンスリーキャッシュフロー
この二つをよく吟味することで、たとえばこんなことが分かります。
- 持っている資産は多いけど、負債もありすぎる:資産を整理して負債返済に当てるのもいいかも?
- 収入は案外あるけど、支出も同様に大きいので赤になっている:無駄を省けば支出が下げられ、借金返済に当てられる?
この把握をしたら、よくよくふたつの表を見つめ、本当に自分は負債をなくしたいと思っているのか、本当にお金を貯めたいと思っているのか考えてみるとよいでしょう。このままの生活でよいと納得するのもひとつの道です。自分の人生、人それぞれです。
一方で、自分の今のパターンを変えたいと思っているのなら、変化のための決断が必要です。負債がなくなってほしいとふんわり希望しているくらいでは、おそらく変化は遂げられません。絶対に実現したいという強い願いがあるかを確認します。3年で負債を完済し、5年目には資産をどのくらいのレベルまで持っていきたいかという具体的な目標・・・というか、この時点では夢でもOKですが、そういうものをつくったほうがいいでしょう。変化のための「強い願望を確認します。
ここまでが自分の家計の見つめなおし。次は自分自身の見つめなおしです。
内側吟味 ― 自分自身
あなたはマシュマロ食べますか?
1960年ごろ、スタンフォード大学のウォルター・ミシェルという心理学者があるテストをしました。4歳児の前ににマシュマロをひとつ置いて、チョイスを与えます。これをすぐに食べてもいいが、何分か食べないで待っていられたらもうひとつのマシュマロがもらえるよと。一部の子どもはすぐに目の前のマシュマロを食べ、残りの子どもはふたつのマシュマロをもらいました。
Instant Gratification(即席満足)という言葉をよく耳にするようになって久しいですが、ワンクリックですぐ見えること、翌日にはすぐ届くこと、やったらすぐ結果が出ることなど、即時に自分の満足を満たすことがあたりまえになっています。そうでないと、満足できないどころかストレスすら感じる世界に私たちは生きています。お金がたまったら買う、オーダーしてから届くまで1週間待つ、芽が出て育つのを心待ちにするという姿勢が失われつつあります。あなたは、どちちらの子どもでしょう。ひとつのマシュマロをすぐ食べますか?それとも待って利回り100%でふたつのマシュマロをもらいますか?
この心理学者は、14年後フォローアップ調査を行い、ひとつのマシュマロをすぐ食べた子どもたちは、ふたつマシュマロをもらった子どもに比べ、自己評価度が低く、周りからも言うことを聞かない子どもと評価されがちで、人に嫉妬したりフラストレーションを抱える傾向が高いという結果を出しました。一方、我慢して待てた子どもは、柔軟性、社会性、楽観的視点、自己表現能力、信頼性という面で、我慢できなかった子どもたちに比べ優れており、SATの点では210点ほど成績がよかったという結果だったそうです。4歳時点でそんな差があるのかと思うとちょっと恐ろしいし、自分や自分の子どものことを考えるといったいどっちのパターンだろうと考えさせられる部分も大きいですが、でもとにかくこのリサーチではこういう結果だったそうです。
楽しみに待つ
そして、この即時に満足を満たそうとする傾向、言い換えるとInstant Gratificationを求める傾向が強い人と、今我慢して後に楽しみを取っておける、つまりDelayed Gratificationが可能な人との差は、金銭的にバランスのとれた豊かな生活ができるかを決める、大きな要素でもあるらしいということがわかってきたそうです。頭がいいからとか、給料のよい仕事についているからというだけが、ファイナンシャル面での成功の要素ではないということです。実際あるリサーチでは、ミリオネアの多くはDelayed Gratificationの価値観を持ち、もっと贅沢な生活が可能であっても、敢えて倹約生活を選んでいる人であるという結果がでています。
アメリカはスーパー消費社会です。巷には私たちの中にあるInstant Gratificationへの要望を大きくし、コンマ5秒の消費決断に訴えかけるものであふれています。すごい速さで新モデルの出てくるiPhone、0%Interestで買える家電、インフルエンサー―の流す口コミ、いかにも得そうなBuy1 Get1 Free、今日中にオーダーすれば30%ディスカウントとうたう広告、即日配達のAmazon Prime・・・。これが欲しい、しかも今欲しい・・・という欲求はムクムク。負債をなくしたい、お金を貯めたいと思っている人で、自分がこの傾向が高いと思う人は、そのあたりをじっくり考える必要があるのかもしれません。
収入に対して支出が少なくなれば、おのずと負債は減りお金が貯まるはず。ただし、支出を少なくするということは、今まで買っていたものを買わなくしたり、今まで持っていたものを持たなくするということです。借金返済には、流血のがまんが必要なこともあるでしょう。
支出を区別していく
NeedとWantを区別する・・・とよくいいます。
- 生活に絶対必要なもの
- かなり必要だけどなくてもなんとなかるもの
- 欲しいけど必要ないもの
を、インカムステイトメントの支出をひとつずつ吟味し、ラベル付けしていくことが必要です。クレジットカードでは明細を見て、ひとつずつ仕訳をしていきます。そこで、必要度の低いものは流血のがまんをすること。Amazon Primeに慣れていれば、Amazon PrimeもNeedに入れたくなるかもしれません。でもそれ、本当に生活に絶対必要ですか?すぐ来ないとなればオーダーすること自体も減るかもしれません、いくらかまとめて買わないとシッピング料金がかかるのなら、他のものが必要になってまとまったオーダーができるまで待つ、あるいはなしですませるというスキルを学べるかもしれません。
内側から変わる
自分のことを省みてもつくづく思うのですが、人間変わることは本当に難しいです。自分の悪い癖はわかっていても、3日はなんとかがんばれるものの、4日目にはまた戻ってしまう。身についてしまっているのです。流血のがまんをする必要がない生活がしていた人にとって、流血のがまんはすぐにできるようにはなりません。でもいくつか方法があります。
見ない
まずは、マシュマロを見ないようにすること。常に新製品の情報が入ってくるソーシャルメディアなどを見なくする、Adを見ないようにする、最新情報を追いすぎないようにするのが一番手っ取り早い方法かもしれません。それから、他に夢中になることを見つけること。何か他に時間がとられることが見つかれば、消費活動に時間を費やす時間が軽減されるはず・・・。ディストラクション戦法というやつです。
楽しい将来を想像する
それから、想像力をたくましく発揮することです。今いい思いをしたいと思ったら、そのために将来はいい思いができないで欲しいものが手に入れられなくなっている、悲しい自分を想像します。反対に、今がまんしたら、そのお金で将来は楽しいことができている自分を想像します。これを癖にするまで繰り返します。将来の楽しみを毎日思い描き、それだけでワクワクできたらしめたもの。実際、楽しみにしている旅行など、もちろん旅行に行っている最中も楽しいですが、旅行に行く何ヶ月も前から、ああしよう、こうしようと想像するプロセスこそが一番楽しかったりしませんか?
自分にご褒美をあげる
また、時折、「待てた」自分にご褒美をあげることも有効だそうです。いつも流血のがまんではやっぱりやっていられません。一週間に$10ずつご褒美ファンドを貯めておいて、3ヶ月がまんできたら、たまった$120はどんなに無駄遣いしてもOKというような具合です。小額でもとにかく貯めてから使うことが肝心で、その開放感を味わうというのが目的です。「貯めてから使う」開放感を体験し続けることで、「使ってから返済する」のでは罪悪感を覚えるようになればしめたもの。
励まし合う
人間、ひとりではすぐ萎えるところ、ふたり、三人ならなんとか持ちこたえられるもの。一緒にがんばれる人というのをもつことです。夫婦で励ましあいながらがんばるのもいいですし、友人が何人かで集まってするのもよいでしょう。長期的に、プラスの路線に乗っていくためには、それなりのサポートシステムが必要です。でもプラス路線のリズムができてくると、もうそこからはそれが心地よくなってくるはずです。
目に見える数字で確認!
がんばれば成果は必ず出、成果はバランスシートとインカムステートメントに具体的に現れます。数字で成果が確認できます。それが励みになり、さらに借金返済が進んでいきます。そのうち、借金返済に当てていたお金が貯蓄や運用に回るようになります。徐々に、上の図の赤い線から緑の線へと徐々に移行していきます!
素晴らしい記事ですね。
うちの4歳に試してみようかしら。即食べそうだけれど。笑
欲しいのを我慢して、となると、またどこかに歪が出てきそうなので、マシュマロが自分にとって何なのか、自分の価値観からブレないっていうのが、いいのかな。
ブログを一度、辞めることにしました。
今までありがとうございました。
Cheeさん、お久しぶりです。ブログを一度お辞めになること、次のステージへの一歩ですね。Youtubeのほう、引き続きどうぞ頑張ってください!
こんにちは、いつも楽しく読んでいます。
アメリカ人の夫と昨年結婚し、現在彼のStudent Loanを二人で必死に返済しています。渡米したての昨年は、グリーンカードの関係で私もまだ働けず、彼の収入も生活していくのに足りるくらいで余裕がなかったのですが、ようやく私も仕事が決まり少しずつ見通しが立てられるくらいになりました。今まさに記事に書かれているような状況で返済&貯蓄を頑張っているところですので、思わずコメントしてしまいました。自分は元々倹約家で節約や我慢も苦にはなりませんが、夫に”内側から変わる”ことの重要さをもっと理解してもらわないといけないなと思いました^^; まだまだ完済までかかりそうですが、こちらのアドバイスがとても励みになります!
ACさん、私もこのようなコメントいただいて、励みになります。新しい生活が始まったところですものね。今は返す時期、そのうち貯める時期、思い切って使う時期など、人生はフェーズがありますから、これからご主人と長い道のりを楽しく歩んでいってください。応援しています!