株大荒れでもクールにかまえるために

中国発の経済減速で、世界じゅうの株式相場がに揺さぶられているそうで・・・。今月も株式市場は荒れ模様かという予想が大変のようです。「このままこの投資持っていてもいいのでしょうか」、「今のうちに売っておいたほうがいいのでしょうか」というようなご質問をいただくこともあります。みなさんはニュースを見て不安に思ったことはおありでしょうか? そんなとき何かアクションをとられますか?

 

何もしないが一番?

市場の変化を報道するのが仕事のメディアは、さまざまなニュースを送ります。その中には、先行きの不安をあおり、今のうちに何かアクションをとることの必要性を強くかもし出すようなものもあります。以下は最近のニュースの見出し。。

The stock market is crazy. What should you do now?

The Stock Market Crash Of 2015 Is Just Getting Started…

Get Out While You Can!

こんなのを読んでしまうと、今すぐに何かアクションをとらねばならないという衝動にかられます。

こんなのもあります。

How to survive the market’s wild ride…

How to survive。。。激しく変化する市場をどう乗り越えればよいか・・というタイトルですが、多くの個人投資家にとって、その答えは実はメディアが新たに記事を書くまでもなく、非常に簡単です。それは・・何もしないこと・・です。ただ、何もしないことは、何もしないでよいようにあらかじめ準備がしてあるからです。

 

あらかじめの準備とは?

あらかじめの準備とは、よく考えてつくられた投資のポリシーステイトメントを持っておくことです。ポリシーステイトメントというと大げさですが、要は、投資の目的(リタイヤメント、学費、その他の資金準備など)、年齢や投資期間、リスク許容度を踏まえて、最適なアセットアロケーションを見つけそれを文書化したものです。たとえば、こんなかんじ:

  • 現在35歳で、32年後の67歳でリタイヤしたあとのリタイヤメント資金として、30年以上の投資期間を念頭に、毎月$500ずつを、コストの安いインデックスファンドを中心に投資する。職場の401(k)で提供されているターゲットデイトファンドを利用することで、当初のアセットアロケーションは株ファンド85%、債権ファンド15%、その後徐々に株比率が下がり債権比率が上がるよう自動的に調整される。5年から10年ごとに、アロケーションの調整やリスク・リターンの成績をチェックし、もし目的とのずれがあれば再調整するが、それまでの間は、基本的に投資変更などは行わない。

この場合、リタイヤメントが予定されている67歳時点に最終ゴールが設定されており、そこにいたるまでどのようなファンドに投資するのか、どのようなアセットアロケーションでいくのかが明確になっています。株ファンドに投資するということ自体、市場のアップダウンによって、よいときもあれば悪いときもあるが、それも計算のうちであり、よいからといって急にたくさん買うとか、悪いからといって急に売るとか、そのようなことはしないという心構えもこのポリシーステイトメントに盛り込まれています。かえって、市場の動きやニュースで聞くことがらに惑わされて想定外の動きをすることは、このポリシーを反故にするものともなりかねません。

 

リスクは想定内

上がったり下がったりの不確定な変化こそが「リスク」です。一般に上がることは好ましいので問題になることがありませんが、下がることだけがリスクというように理解されていますが、実はこの上にいくか下に行くか不確定で推し量れないこと自体がリスクです。ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンというように、不確定要素が大きいほど返ってくる利も大きく、不確定要素が小さいほど返ってくる利は小さいというのが理論です。不確定要素が小さい(決められた利子がもらえる)定期預金にお金を入れておいて、それだけでリタイヤメントに十分な資金がたまるのであれば、それに越したことはないかもしれませんが、なかなかそうも行かないのが現実です。そうすると、ある程度不確定要素が大きくとも、もう少し効率よく増えていくものにお金を入れる必要があるということになります。これがたとえば株式ファンドだったりするわけですが、ではどの程度ならその不確定要素を覚悟できる心構えがあるか・・というのがリスク許容度と呼ばれるものです。

不確定要素は投資媒体やその調合率を変えることで、調整することができます。一般的に、株式ファンドは債券ファンドより不確定要素が大きく、おなじ株式ファンドのなかでも新興成長株ファンドは大型株ファンドより不確定要素が大きいという具合です。投資ポリシーを作るときには、リタイヤメントなどの最終ゴールにたどり着くまでの間、市場がどのように変化しても、どのくらいのレベルのアップダウンなら呑み込んで持ちこたえる覚悟があるのかを腑に落としておく必要があるのです。

この覚悟があると、「株式市場暴落で売り続出」などのニュースを見ても、「あら~、長い投資期間にはいろいろあるわ。今は下がるときなのね。」とクールな気持ちで傍観していられます。「下がったあとは上がるわね。」と思っていればよいし、「私のリタイヤメントまではあと25年、その間に何度上がって下がるのかしら。。」と悠長にかまえていればよいわけです。

ただ、リタイヤメントまであと5年とか、来年カレッジに行く子どもさんの学費などという場合は、「そのうちあがるわね」とは言っていられないかもしれません。ですからこそ、すぐ必要なお金や、投資期間が短い場合などは、それなりに不確定要素の低い投資・預金を選んでおく必要があるということになります。これは当初つくる投資ポリシーステイトメントに反映されているべきです。

 

これ以上下がる前に売ったほうがいいのでは?

「でもこれから下がるとわかっているなら、売ってしまいたい」と思うのは人情。しかしながら、このアクションこそが、それこそ非常にキケンなのです。売ってしまっておしまい・・ならいいかもしれませんが、もともとの投資目的は「32年後のリタイヤメント資金づくり」でしたね。ということは、売ったものはまた買って投資を続ける必要があります。下がるのを恐れて売ったファンドは、今度はこれから値上がりするというときに買わねばなりません。問題は、このタイミングを計ることが非常に難しいということです。ニュースで、「株式市場は上向きに」と聞いたときには、すでに上向き傾向が始まっています。ニュースを聞いてアクションをとった時点では市場の初期回復が終わっており、もっとも大きな値戻し部分をミスしてしまってから買うということもよくあることです。つまり、売るなら、買わねばならず、売るタイミング、買うタイミングの2回どちらもにおいてぴったりタイミングが当たらないと、かえってひどい目にあうということです

2回とも当てるということは、個人投資家はおろか、経験をつんだファンドマネージャーでも難しいことであり、ほとんど運といっても過言ではありません。実際、市場のタイミングを読むのが可能かどうかについては、過去にも非常に多くのリサーチがされていますが、そのほとんどが「まぐれ当たり以上の、恒常的な当たりを記録し続けることはできない」と結論付けています。

市場が暴落して投資残高が30%も下がってしまったら、うろたえて当然ですが、そこを当初の投資ポリシーステイトメントに立ち返り、あえて何もしないでがまんするというのが一番の正解というわけです。柔道と一緒で、投げられうときは逆らわず、そのまま投げられるのが一番ということです。感情的になって衝動売り・買いをしないためにも長期投資家は、市場に関するニュースなど見ないほうがいいとも思います。

 

今が安いなら買ったほうがいいのでは?

上と反対の観点が、「暴落後、今安いならもっと買ったほうがいいのではないか?」というものです。みんなが怖がって売っているときが、一番の買いどき・・といったのはウォレン・バフェでしたでしょうか。。

それはそのとおりなのですが、これまたいつ買うかというタイミングを計るのは、上記で述べた理由と同じで難しいものです。ところが、きちんと用意された投資ポリシーステイトメントは、実はこの、安いときにもっと買っておく・・というメカニズムを知らないうちに抱合することですでに実行しているものなのです。

最初にあったステイトメントに「毎月$500ずつを・・・投資する」というのがありますね。この一定額を定期的に投資し続ける方法をDollar Cost Averaging (DCA)といいます。定期的に買う、つまり市場がよくても悪くても買うというこのしくみは、自然と市場がよいときには少ない株数(あるいはファンド・ユニット数)を買い、市場が悪いときには多い株数(あるいはファンド・ユニット数)を買うことになり、自動的に「高いときには少し買い、安いときにはたくさん買う」という作用をつくりだします。自分でタイミングを計ろうとするかわりに、この仕組みに頼るのが一番楽で間違いがないといえます。

また、最初にあったステイトメントには「ターゲットデイトファンドを利用する・・」とありますが、これは株ファンドと債権ファンドの比率を一定に自動的に保ってくれるファンドですから、投資者があれこれ考えなくても、リバランスが自然にされます。リバランスというのは、株市場が暴落して、株ファンドの残高が減り、それによって株ファンドの比率が下がってしまった場合、自動的に債権ファンドを売り株ファンドを買い足して、当初の目指す比率に戻すということです。結果的に、ほおっておいても、安いときに買う・・ということがされているわけです。

ターゲットデイトファンドではないミューチュアルファンドを使って、自分で投資比率を設定している場合は、投資会社が提供しているWebページで、オートリバランスの機能をオンにすることで自動的の同じような効果を得ることができます。これも、タイミングを自分ではかって買うより、はるかに楽で確実です。

このようによく練られた投資ポリシーステイトエントさえあれば、市場の荒波もクールに構えて乗り切れるというわけです。一度きちんと考えてはじめたら、定期チェック以外は、ほおって置くのが一番なのです。

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