IRA 限度額以上を積み立ててしまったらどうする? 

Last Updated on 2018年7月17日 by admin

リタイヤメント資金準備に使われるIRA口座は、年間の積み立て限度が50歳までなら$5,500、50歳以上なら$6,500(2018年)と決められています。また、積み立ての限度額や税控除が受けられる額は、職場でのリタイヤメント制度の有無、所得によっても変わってきます。もしも、限度を超えて積み立てをしてしまった場合、どうすればいいのでしょうか?

IRAの積み立ての期限は、翌年のタックスリターンの期限(通常4月15日)です。たとえば2018年のIRA積み立ては、2019年の4月15日までにすることになります。一年のファイナンスを振り返り、余剰金があったのでタックスリターンを作成する時期に合わせIRAの積み立てを行うという方は、昨年一年の収入がいくらかという情報を手元に計画的に積み立てが行えますので、限度額を正確に守ることができます。一方で、2018年が明けてすぐに、2018年分のIRA積み立てを早々と済ます人もいらっしゃるでしょう。ところが、その後幸運にも2018年の収入がアップした、あるいは思いがけないボーナスが出たなど、最終的にIRA積み立ての限度額が適用されることになる場合もありえます。また、単に複数口座で間違えて積み立てをしてしまったとか、計算間違いで限度額を超えてしまう場合もあるでしょう。

Roth IRAとTraditional IRAどちらを選ぶ 2018年限度額

IRAは税優遇のあるリタイヤメント口座ですから、限度額を超えた利用については年間6%のペナルティが課せられます。この6%は、超えた積み立て分が何らかの形で修正されるまで、毎年課せられ続けます。ただ、修正の方法はありますから、心配することはありません。以下に修正の方法をまとめます。

 

Roth IRAの場合

Roth IRAでは、年収に応じていくらまで積み立てができるかの積み立て限度額が設定されています。

限度額を超えて積み立てた場合は、以下の3つのどれかで調整を行います。

 

1.タックスリターンを提出する前に、超過分を引き出す

4月15日のタックスッリターンの期限日か、あるいExtension(延長)申請をした場合は、10月15日の期限日までに、超過している分を引き出します。また、引き出した元本に付随する利回り部分も引き出す必要があります。超過分とそれに付随する利回りの計算は、口座を維持している金融機関に問い合わせれば計算してくれます。

 

2.タックスリターン提出後なら10月15日までに、超過分を引き出す

知らずにタックスリターンは済ませてしまった場合でも、グレースピリオドが設定されていて10月15日までに超過分を引きだせば、ペナルティは免れます。引き出し額の計算は上と同じです。ただし、引き出した旨がタックスリターンに正しく反映されるよう、Amended(修正)リターンを提出する必要があります。会計士さんにお願いするか、TurboTaxなどのソフトをお使いなら、提出したリターンをもとにAmendedリターンを作成することができます。

 

3.翌年の積み立て分に当てる

超過分を引き出しせず、そのまま口座内に置いておき、翌年の積み立て分に当てることもできます。口座のある金融機関に、超過分を翌年に適用したい旨連絡して手続きします。これは引き出しなど面倒なことがなくて楽ではありますが、ただ当年においては口座の中に超過分が残りますので、当年は超過分に6%のペナルティがかかります(From 5329)。

超過分がたいした額ではなく、6%を払ってもそれほど痛くない場合にはよいオプションかと思います。

 

4.超過分をTraditional IRAに変更(Recharacterize)する

Roth IRAで積み立ててしまったが、限度額を超過していた分は、Traditional IRAに積み立て直す=Recharacterizeすることができます。具体的には、超過分とそれに付随する利回り分をRoth IRAからTraditional IRAへトランスファーすることになります。このトランスファーはタックスリターンでForm 8606(Non Deductible IRA)報告する必要がありますが、報告後はこの超過分はTraditional IRAに積み立てたとみなされます。

 

Traditional IRAの場合

Traditional IRAの場合の積み立て限度額は、常に$5,500(50歳まで)/$6,500(50歳以上)(2018年)です(ただし、収入がこれより少なければそれが限度)。ただ、職場でリタイヤメント制度があるかと所得の大きさによって、いくらまでが所得税控除になるかが変わってきます。

積み立て限度額と、所得税控除額とを混同しないように、別々に考える必要があります。

 

まず積み立て限度額を超えて積み立ててしまった場合は、上記Roth IRAでの対処法の1から3がTraditional IRAにも当てはまります。

1.タックスリターンを提出する前に、超過分を引き出す

2.タックスリターン提出後なら10月15日までに、超過分を引き出す

3.翌年の積み立て分に当てる

 

Traditional IRAの場合は、積み立てが(Non Deductible IRAでない限り)所得税控除で行われているので、タックスリターンで引き出した分を所得に足し戻す作業なども必要です。会計士さんにご相談ください。

なお、前述のとおり、$5,500/$6,500の限度額を超えていなくても、職場でリタイヤメント制度があるかと所得の大きさによって積立額の全額が所得税控除にはならない場合もあります。この場合は、限度額を超えているわけではないので、6%のペナルティを心配する必要はありませんが、ただどこまでが控除範囲で、どこからは控除範囲でないかを見極める必要があります。控除になる額だけ、タックスリターン時にForm 1040のLine 32 IRA Deduction(2017年ではLine 32ですが、年によってLine 番号は変更になることあり)で控除を受け、控除にならない積立額については、タックスリターン時にForm 8606(Non Deductible IRA) で報告します。

Form 8606で、非控除で積み立てた額を報告をしておくと、将来Traditional IRAから引き出しをするとき、通常は所得税がかかるところ、報告分は(一度税金を払っているので)非課税で引き出すことができます。この記録維持は本人の責任です。

なお、控除対象のTraditional IRAと非控除のTraditional IRA(Non Deductible IRAとも呼ばれる)は同じ一つの口座にまとめて入れることも可能です。Form8606で、積立額のどの部分がnondeductibleかは記録が残りますので、必要に応じdeductibleとnondeductible部分を認識することができます。将来的に、Non deductible積み立て額が大きくなっていくような場合は、ふたつの別々の口座にしておいたほうが管理が簡単になるかもしれません。金融機関に相談してみてください。

12 comments

  1. いつも役に立つ情報有難うございます。
    早速ですが、IRAで限度以上積み立てた場合はIRSから6%の請求が来るのでしょうか?銀行の投資部門を通し限度額を確認してからIRAを積み立てた過去があり、銀行に過去の履歴を依頼した所7年以上古いレコードは持ってないと言われました。Form 5498は毎年保管すべきなのでしょうか?それとも銀行、投資会社がIRSに報告しているので、古い情報は必要ないのでしょうか?

    1. タックスリターンでペナルティも計算し、必要なら追加で納めます。IRAから請求が来ることはふつうありません。タックス関係の記録は3年保管義務があります。

      1. さすがアメリカ。。自己責任、自己管理の国ですね。やはりIRAは一つの口座で管理した方がやり易いですね。返信有難うございました。

  2. いつも勉強になります。
    以前、Traditionalでの所得税控除の範囲を間違えて拠出してしまった者です。
    また質問があり、こちらに戻って来ました。

    アドバイスを頂いてから時間が経ってしまいましたが、拠出先であるVanguardに相談してみました。
    事情を説明し、Traditional内にあるDeductibleとNon-deductible分を二つの別々の口座にしたいのですが、と。

    そうしたら、
    『二つの別々の口座にするメリットは無いです。将来の引出しの際には、課税所得の計算はTraditional口座だけではなく全IRA口座の合計額を使用します』と返信が来ました。
    (Please note that there is no advantage to keeping deductible and
    nondeductible contributions in separate accounts. When you take a
    distribution from an IRA, the taxable amount is based on the total balance
    of all your IRAs, not just the IRA you’re distributing from.)

    そこで気になったのですが、本記事の最終段落にある
    ”その後の税金上の処理のことを考えるとふたつの別々の口座にしておいたほうが楽です。”というのは、具体的にはどのようなことなのでしょうか?Vanguardの担当者は、税金処理方法ではなく、課税計算上はメリットが無い、ということを私に伝えたかったのだろうと思います。

    もし宜しければ、教えて頂けませんか?
    現状としては、IRAへの拠出後、タックスファイリングの際にForm8606にてNon-deductible分($240)について申告済みです。

    1. Vangauardの担当者の言うように、課税計算上は分けても分けなくても同じです。Form8606を見れば、いくらがNon deductible積み立てかがわかりますから、それがあればたとえ混ぜていても問題ありません。どの口座で、いくらを、Non Deductible積み立てしたかの記録維持は金融機関ではなくて本人の責任なので、口座を分けておけば明白というだけです。分けておけば、Form8606を見なくとも区分が明白というだけです。額が小さい場合などは、かえって口座を分けると管理が煩雑になったり、手数料が高くなったりするということにもなりますので、それならば敢えて分ける必要はないと思います。原稿本文もそのように追記しました。

      1. ご回答ありがとうございます。
        おかげさまで少しずつ理解が深まって来ましたが、やはり難しいですね。

        現在35歳なのですが、あと25年ほどForm8606を自分で保管しておく自信がなく、本当は別管理にするのが希望です。ただ私はSIMPLE IRAへも拠出しておりますので、エントリー『バックドアIRAを知る』内にございますように、バックドアIRAの利用はデメリットが多いように思います。一つの過ちが、こんなに尾を引くとは思いませんでした。。。

        口座を分けるというのは、上記Traditional口座内のNon-deductibleである$240分を、Roth口座へロールオーバーするということではなく、何らかの別口座というものを新たに作る、ということなのでしょうか?

        税金(節税)は、取り掛かりにくいですが、興味深いです。今後も記事楽しみにしております。

        1. 口座を分けるというのは、もうひとつTraditional IRAを開いて、合計ふたつのTraditional IRAを持ち、ひとつはDeductibleで入れた方、もう一つはNon deductibleで入れた方と認識しておくというだけのことです。ロールオーバーでもなんでもなく、ただ口座を二つに分ける感覚です。オンラインで自分でもできると思います。

          ただ、分けずにそのままにして、たとえForm 8606の保管を怠ってそのまま引き出しを(Deductibleとして)してしまっても、IRAは文句を言いません。本当なら非課税で出せるものを課税で引き出すわけで、IRAには何の問題もないからです。$240と額が大きくないので、それほど神経質にならず、Form 8606を頭の片隅に置いておくというのでも全然問題ないと思います。

  3. いつも勉強させて頂いてます。
    お恥ずかしい話ですが、昨年間違ってRoth Ira に1月に6000ドル2月に6000ドル、トータル12,000ドル拠出してしまいました。(当方シングルなのでMax)つい先日このことに気づいた次第です・・traditional ira に変更しようと思ってるのですが、その場合6%ペナルティーは発生するのでしょうか?また変更の際に注意点など教えていただければ幸いです。よろしくお願いします。

    1. 変更の詳細な手続きは直接金融機関にお確かめいただきたいのですが、タックスリターン前に正せば6%は発生しないと思います。
      1)$6,000(とその分の利回り)は引き出す、2)残りの$6,000はTraditionalにRecharacterizeする ということでしょうか? 金融機関に直接電話されサポートをお受けください。

      1. 早速ご返信ありがとうございます。
        そうです。6000ドルはそのままRoth へのこし超過分6000ドルをtraditionalヘ移動しようと思ってます。

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