アメリカでは65歳からはMedicareに加入して健康保険ベネフィットを得ることになりますが、65歳以前に退職したらどうすればいいのでしょうか?あるいは65歳以降に退職しても、雇用主が退職者保険などを提供していたら、Medicareとの兼ね合いはどうなるのでしょうか?
65歳前にリタイヤした場合
Medicareが使えるようになるのは65歳からです。Medicareに加入できる65歳以前にリタイヤした場合は、Medicareが使えるようになるまでの間、雇用主が退職後の元雇用者に提供する退職者向け健康保険(Retiree Health Insurance)に加入するか、あるいは個人で健康保険に加入することになります。
退職者向け健康保険がある場合
雇用主が退職後も継続して健康保険ベネフィットを提供している場合には、その保険を利用することができます。退職者向け健康保険の内容はコストと比較して利用を決めるべきです。もしも、外部の保険のほうが内容的・コスト的にベターというのであれば、外部の保険を使うことももちろん理にかないます。州の提供するHealth Insurance Marketplace経由での健康保険を利用すれば、家族構成と世帯収入によっては助成金が得られる可能性もあります。この助成金は退職者向け健康保険には適用されません。退職者向け保険を選ぶか、外部の保険を選ぶか、どちらがよいかは内容と助成金のあるなし、総合的なコストをよく吟味のうえ決定するべきです。
なお、年の途中で退職者向け健康保険からMarketplace経由の健康保険に乗り換えることは基本的にできません。乗り換えは次のオープンエンロールメントまで待つことになります。
退職者向け健康保険がない場合
以前はシニアになってからの健康保険の加入は、健康状態によっては困難な場合もあり、コスト的にも難しいこともありましたが、オバマケアの導入でどんな人でも健康保険に加入できることになりました。退職者向け健康保険がない場合は、州の提供するHealth Insurance Marketplace経由で健康保険に入ることができます。
退職により、それまで加入していた雇用者向け健康保険を失った場合は、Special Enrollment Periodが適用され、次のOpen Enrollmentまで待たなくとも、Marketplaceでの健康保険の加入が可能です。家族構成と世帯収入によっては助成金が得られる可能性もあります。
65歳になってから退職した場合
Original Medicare
65歳になると自動的にMedicare加入資格が生まれます。Medicare Plan AとPlan Bを合わせてOriginal Medicareと呼びます。Plan Aは、病院や看護施設などへの入院、ホスピスや在宅ケアなどをカバーします。10年以上働いていれば、その間必要な保険料はすでに納めていますので、Medicare受給申請時以降のPart Aの受給は実質上無料で受けることができます。受給については一部の場合を除き、申請が必要です。無料でPart Aを得る資格がなくても、一定の基準(65歳以上、Part Bに加入しており、市民か、継続的に5年以上滞在のグリーンカード保持者 etc.)を満たしていれば、最高で$411(2016)の月額保険料を支払うことで加入可能です。
Plan Bは、疾病予防の費用、診断の費用、検査費用、治療費、手術代など、医療サービスの費用のうちPart Aでカバーしない費用の大部分をカバーします。月々の保険料は$121.80(2016)で(ただし、高収入者は収入にしたがって保険料が高くなる)、受給にあたっては、一部の場合を除いて申請が必要です。
Original Medicareはある意味、健康保険の基本部分ですが、一方でこれだけでは十分な医療費のカバーが確保されているとはいいがたいところでもあります。多くの場合、このOriginal Medicareとその他のプランを組み合わせてカバーの範囲を広げていき、必要な補償を確保するという作業が必要です。
Original Medicareを補足するのは、MedigapプランやMedicare Advantageプランですが、これらについては次回以降詳しく見ていきます。
退職者向け健康保険がある場合
退職者向け健康保険がある場合は、その保険を利用することができます。退職者向け健康保険の内容はコストと比較して利用を決めるべきです。65歳以降は、退職者向け健康保険を利用する場合でも、ほとんどの場合(一部のFederal Employeeなどを除いて)Original Medicareへの加入が必要です。Medicare加入のうえで、退職者保険を利用することになります。この場合、プライマリー保険はMedicareであり、退職者保険はセカンダリーとなります。これは、たとえ在職中と同じような健康保険の内容でカバーされているとしても、65歳以降のMedicare加入後の医療サービスにおいては、MedicareのPlan AとPlan Bががカバーする範囲においてはまずMedicareが支払いをし、その後、退職者保険がそのカバー内容に応じて残った部分の支払いをするということを意味しています。Medicareと退職者保険がコーディネートされてひつのカバーを生み出すというイメージです。
退職者保険だけに加入し、Medicare加入の手続きをしていないと、Late enrollmentのペナルティが発生することもあります。雇用主によっては、退職者保険の特定のプランに加入すれば、個人が払っているPlan Bの保険料を返金(Reimburse)してくれるようなアレンジを提供していることもあります。一方でPlan B加入を正しい時期にしておかないと、気づいてからすぐに加入手続きができない(General enrollment periodまで待つ必要がある)などということにもなります。とにもかくにも退職者保険を利用する場合には、それがMedicareとカバレッジとコストの上でどのように連携しているのか、Medicare加入手続きはいつどうすすめるべきかなど事前に確認することが必要です。
雇用主の健康保険に加入している方ならご存じのように、雇用者提供の健康保険は毎年内容が変更になったり保険料が上がったりと変化が激しいものです。退職者保険もこの点においては同様で、内容や保険料は雇用主が独自に決めています。よって、年ごとに保険自体がなくなったり、保険料があがったり、カバレッジが削られたりという可能性があります。いったん加入していた退職者健康保険がニーズに合わなくなった場合、すぐにMedigapやMedicare Advantageに乗り換えることができれば問題はありません。ただ、Medigapに関しては特定の期間を逃すと加入が難しいことも大いにあり得ます。退職者保険が切れたら、本当にMedigapに乗り換えることができるのか、購入できるのなら健康状態によらず無条件で加入できるのか、健康状態が保険料に反映されないで購入できるのかなどについては、微妙な部分があり、安定的に健康保険補償を受けるという意味ではリスクが残るといえます。このような意味で、安定性を重視する人は、いったん加入したら安定した補償内容を長期にわたって期待することができるMedigapプランを好む方もいます。
雇用主は退職者向け健康保険を提供する義務はないうえ、現在提供している保険についてもいつなんどき停止したりベネフィット内容をカットしても違法ではありません。退職後はただでさえ年齢が上がるので保険会社にとってはリスクがあるうえ、それまで健康上の問題がなかった人でもなんらかの問題が浮上する確率も高くなります。最初はよかったこ退職者向き健康保険が、急にカットされ、代替Medigapプランを探すも、メディカルスクリーニングの結果なかなか加入できないというようなことにならないように、自分の雇用主提供の健康保険については、選択前にきちんとチェックしておくことが必要です。具体的にはSummary Plan Description(SPD)と呼ばれるリタイヤメントベネフィットについて説明した冊子や、その他の関連情報を入手し、よく読むことです。退職後の健康保険について、一定期間あるいは生涯にわたって提供が保証されているのか、それともそのような保証はないのか、プラン内容に変更を加える権利を雇用主が保持しているか否かがポイントになります。たとえば、”
“The company reserves the right to modify, revoke, suspend, terminate, or change the program, in whole or in part, at any time.”
のような一文がある場合、健康保険の安定性は低いといえるので要注意です。
次回以降で、退職者保険が期待できない場合、あるいは退職者保険は利用できるものの、上述のような理由から敢えて利用しない場合の、Original Medicareに補足してどのように医療カバーレッジを確保していけばよいかを見ます。
2020年よりカリフォルニアではFedralレベルのいわゆるオバマケアをさらに充実させて、2人のhouseholdで $101,460以下の収入であれば、助成金が受けられるようになったと理解しています。
これって、65歳前にリタイアして401Kからの引き出しを$101K以下になるように調整し、不足があるようであれば、Roth IRA/401KまたはTaxable Accountから補充すれば、助成金を受けられるという理解であってますでしょうか?
Taxable Accountはキャピタルゲインが収入に数えられますが、それ以外は大筋合っていると思います。
ただ、助成金といっても、収入レベルで大きさが違ってくるので、二人で$100,000レベルだとそれほど大きな助成金にはならないかと思います。
たとえばSouthern Californiaだと平均的プランは$1,500~$2,000(二人)して、収入$100,000だと助成金が$200程度で差引後は$1,300から$1,800のコストに、一方で収入$50,000であれば助成金が$1,300程度出て差引$200~$700になるイメージです。助成金はうれしいですが、このクレージーな保険料をなんとかしてもらいたいものですね。
早速のお返事ありがとうございます!
Covered CaliforniaのサイトのShop and Compareで、62歳2人で$100,000の収入(北カリフォルニア)と入れると、Estimated Monthly Savings $1,460.25/month for 2 memberという結果がでるんですが、何か間違えているんでしょうか、、、?
ほんとうですね、私もzipと年齢を変えてみると、同じ収入でもずいぶんとちがう助成金が出ました。
高コスト地域では、同じ収入でも助成金が上がるのかもしれません。私はあくまで推測だけで物を言っています。。。
同じカリフォルニアでもそんなに違うんですね!確かにこの辺りだと$100K程度だとカツカツの生活なので。これだけ助成金が出ても厳しいです。ご確認ありがとうございました。