人のいいなりにならない家の買い方

「いくらの家なら買えるか」。。。家を買おうとする人なら一番最初に考える質問ですね。実際、“How much house can I afford?”とgoogle searchしてみると、このトピックで書かれた記事はわんさか出てきます。すぐ使えるCalculatorも用意されていて、必要な数字を打ち込んでenterを押すと、「はい、あなたは○○ドルまでの家が買えます」と答えを出してくれます。でも、待って。。このようなアドバイスを鵜呑みにして、購入する家の値段を決めるのには危険があります。

 

いくらの家なら買えるか

たとえば、そのようなCalculatorはこんなかんじ。。。

house affordability calculator

このようなCalculatorは、「あなたがいくらの家を買うべきか」ではなく、「ローン会社として、いくらならあなたに貸してもよさそうか」に焦点が当たっています。多くのモーゲージローン会社が使う計算プログラムでは、借り手の税前所得における借金返済額(モーゲージだけでなく、クレジットカードやオートローン返済などを含むすべての借金返済額)の割合が36%までという上限を設定しています。また、家関係に限った返済額(モーゲージ返済、プロパティ税、ホームオーナーズ保険など)は税前所得の28%が望ましいというガイドラインもあります。政府のバックアップがあるローンだと、この条件がもっと緩いものもあります。

いずれにせよ、これらの28%とか36%とかの数字は、あくまでローン会社が、「この範囲内の借金返済であれば、おそらく借り手は返済できる可能性が高い」と見積もるものであり、ローン会社の採算をベースにつくられたものです。

問題はローン会社は、借り手のライフスタイル、家以外にお金が必要となる部分、将来設計などは全く興味がありません。モーゲージ返済が思ったよりも大変で、リタイヤメント準備やカレッジ資金準備にまわすお金がなくなっても、借り手が着実にモーゲージ返済さえしてくれればそれでよいからです。モーゲージ会社やブローカーにとっては、ローン額が大きければ大きいほど、クロージング手数料や利子なども大きくなるので、限度額まで貸したいというモティベーションもあります。この「いくら貸したいか」は、経済の状態によっても随分と変わってきます。サブプライム問題前の不動産マーケットのピーク時には、クレジットスコアが悪くダウンペイメントがない人に対しても「どんどん貸したい」状態でしたから、簡単にローンが下りて簡単に家を買うことができました。これは貸す側の都合です。借りた側にとっては、それは最善なチョイスでない場合もたくさんあったわけです。

自分のファイナンスですから、ローン会社のお勧めを鵜呑みにするのは理にかないません。ローンがいくら降りるかは、もちろんPreapprovalをとったり、実際のローン発行までの過程で大切な指標ですが、これはあくまで上限の目安というだけで、「実際いくら借りるべきか」は、家庭の現在の収支(キャッシュフロー)をよく吟味し、いくら入ってきていくら出ていくのか、どのくらい余裕金があるのか、将来の資金準備や必要な保険の整備などをしっかり整っているかをチェックした後に、どのくらいの額を家の支払いに回せるのかを割り出す必要があります。

 

いくらの家を買いたいか

「いくらの家なら買えるか」だけでなく、「いくらの家なら買いたいか」も考える必要があります。家庭のファイナンス状態を見て「○○ドルの家なら買えそうだ」という路線がはっきりしても、その額の家を買わなければならないということはないわけで、自分たちの価値観に合わせてその半額の家にするというのももちろん理にかないます。

以前プラニングをお手伝いした方に、このような方がいらっしゃいました。その方はかなりの高収入で、また幸運なことに雇用主が非常に魅力的なモーゲージプログラムを提供しており、家の購入に対してボーナスとしての一時金が支給されたり、家を売るまでゼロ金利で借り続けられるローンが提供されており、いたれりつくせりの状態でした。そのうえダウンペイメントも十分にあったので、これなら家を買うことになるだろうとの前提で分析を勧めました。ところが、その方の住んでいらっしゃる地区は全米でも屈指の高額不動産エリアで、2008~2009年の市場ダウンのあと急速にリカバーし、中国マネーも流れ込み、投資家先行マーケットになりがちで、すでにかなりのバブル状態でした。いくらなら借りられるか、いくらなら無理なく返済できるか、いくら節税効果があるかなど全体的に分析した計算で、購入価格の上限ははっきりしてきましたが、「実際、この額を出す価値があるか」、「レントできる物件と比較してどうか」などを考え合わせたのち、「やはり、買わない」と決断されました。「十分買えるけど、買わない・・」その決断がとても賢明なものに思え、敬意を表しました。

 

高リスク高リターンのレバレッジ

一般的に、「不動産は買っても損がなく、買える限りの家を買うのが良い」と言われることも多いですが、実のところこれはかなり主観的なものです。必ずしもそうとは言えないというのももちろん事実です。

できるだけ高い家を買おうとすればその分借りるモーゲージローンの額は多くなります。「レバレッジ」という言葉をお聞きになったことはありますでしょうか?レバレッジというのは、テコ(レバー)の力を使って、大きなものを小さなもので動かすことを想像していただくとよいでしょう。

leverage

テコを使えば、重い箱も、長い棒の先の小さな力で持ち上げることができます。ファイナンス的に言い換えると、自分の持っているお金は少なくとも、大きな投資をすることで大きなリターンを得るというような意味合いです。買う家もたくさん借りて高い家を買った場合、不動産価格が上がればより高い利益を得ることができます。これはレバーが上向きに動いた場合のことです。ただ、レバーは下向きにも動きます。もし不動産市場が降下した場合、今度はたくさん借りていれば借りているほど、大きな損を被ることになります。30%価格が低下しても、返すローン残高は変わりません。これがサブプライムローン問題で顕著になったことです。アメリカには根強い不動産信仰がまだまだ存在するので、不動産ローンを組むことに対して日本よりもずっと精神的ブロックが小さいのですが、この危険性をきちんと覚悟しておくことは必須です。

多くの人にとって、持ち家というのは最も大きな、あるいはリタイヤメント口座に次いで2番目に大きなインベストメントです。リタイヤメント口座ではどのファンドを組み合わせてリスク調整(ダイバーシフィケーション=投資の多様化)することに心を砕くのに、こと持ち家に関してはたった一軒の家に多額のローンを組んで「一括投資する」といのは、リスク分散という面からは少々勇気のいることでもあります。返済自体はなんとか無理なく可能であったとしても、「本当は避けたかった借りすぎ」のないように、よく納得しての購入が賢明です。

2 comments

  1. そうですよね。ローン会社はお金をたくさん貸したいですし、高い金額のローンを組んでくれる客を好みます。私たちは、家を2012年に購入しました、もちろんその頃の家の値段が今とはだいぶ違いますが、それでもその当時、投資家が一斉に買いあさっていたため、一般人の私たちが購入できる(オファーを受け入れてくれる)家の値段はそれなりのものでした。でも私たちは最初から「いくらまでの値段の家を買う」とバジェットを決めていました。その値段は、投資家が買うかもしれないとする値段のギリギリの価格でした。それでも、ローン会社にいつも毎月のローンの返済額がいくらになるのかを計算してもらい、これにはプロパティータックスやらなんやらすべてを含めた数字を計算してもらい、常に数字とにらめっこしていたものです。投資家も狙う値段の家を購入しようとしていたため、そりゃーなかなか競争が激しく、難し時間を過ごしました。そういう時を狙って、ローン会社は言葉巧みに、もう少し金額あげれば購入できる家はたくさんあります、、、みたいに言ってくるんです。でもそこは言いなりにはならず、あきらめず、最初に決めたバジェット内で家を探すことにした結果、最初にオファーをいれた家を購入できる結果を招いたのです。家の値段と住む人の幸福度は比例しないと思います。高かろうが、安かろうが、住みたいと思う家に住んで、ローン地獄に陥ることなく、生活を充実させることがき出きたほうが私はいいのかなと思う次第です。毎月のローンの返済を低く抑えられると、浮いたお金を他の投資へ回すことができますしね。ローンの返済は、この先何十年と続くわけですから、家計を圧迫する返済金額をこの先何十年と約束するのは逆に怖いです。^^

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