529マネーを効率よく使うために

Last Updated on 2015年2月24日 by admin

一生懸命貯めてきた529カレッジプランのお金。お子さんがついにカレッジに入学し、今度は貯めたお金を使うフェーズに入りました。貯めるフェーズでは貯めるフェーズなりのプラニングが必要でしたが、使うフェーズでは使うフェーズなりのプラニングが必要になります。税金上のルールを押さえつつ、かかったカレッジコストもきちんと記録しつつ、計画的に529プランからお金を引き出し支払いをすることが必要です。どんな点に注意をしたらよいのでしょうか。

 

引き出しすぎない

529プランからの拠出金は、Qualified Higher Education Expenses(QHEE)と呼ばれる、高等教育のために使われた金額だけが非課税となります。高等教育機関は、連邦政府のファイナンシャル・エイド・プログラムに参加している機関である必要があります(日本の大学は参加せず)。高等教育のために使われる金額としてカウントされるのは、授業料、手数料、教科書、その他備品と、ハーフタイム以上で在学する場合は寮費・食費のうち大学がcost of attendanceの一部として指定している費用もカウントします。

保険料やジム費、個人的ニーズで購入したPC(大学が必要と認めればOK)、交通費、スチューデントローンの支払い、大学がcost of attendanceとして指定している寮費・食費を超えた寮費・食費はQHEEには含まれません。自宅に住んでいる場合やオフキャンパスのアパートに住んでいる場合などは、大学がQHEEとして許容する住居費・食費の額というのを定めていますので、ファイナンシャルエイドを管轄する部門に問い合わせます。

つまりQHEEとは大学に通うのに最低限必要な費用であり、余興としてのジムや、趣味のためのPCや、ちょっと豪華なアパートなどの費用はQHEEには含まれないということです。529プランからの拠出はこのQHEEの範囲内で行うことが必要になります。もしQHEEを超えた拠出があった場合は、利回りには所得税がかかると同時に10%のペナルティもかかります。引き出した額の利回り相当分は下のようにして計算されます。

たとえば$50,000積立て、利回り$20,000を得、現在のバランスが$70,000の529プランがあったとします。そこから$20,000拠出し、そのうち$18,000しかQHEEとして認められなかった場合、$2,000(QHEEを超えた拠出)x$20,000(利回り)/$70,000(元金)=$571に所得税と10%ペナルティがかかり、所得税率によりますが$200強のペナルティを払うことになります(ただし、親の代わりに子どもが拠出を受け、子どもの税率で所得税を払うことも可能です)。目が飛び出るほどの額ではありませんが避けられるなら避けたいものです。

 

タックスクレジットのことも考えて

American Opportunity Tax CreditやLifetime Learning Creditなどのタックスクレジットを利用する場合(所得制限があります。前者の場合、夫婦ジョイントリターンで、AGI$160,000から利用できるクレジットが減少しはじめ$180,000で完全消滅)は、タックスクレジットを得るための費用支払いを529からの拠出金ではなく、それ以外のリソース(月々の給与など)からする必要があります。これは529の非課税優遇措置とタックスクレジットという税優遇措置を、同じ費用に対してダブルで受けることを防ぐためです。

所得が高すぎてタックスクレジットが受けられない場合は問題にはなりませんが、タックスクレジットが受けられる場合は、クレジットを受ける部分(American Opportunity Tax Creditで、最高$2,500のクレジットを受ける場合は、$4,000分の費用)については、529プランからの拠出で支払わないことが必要です。

ただし、計算がうまくいかず、結果としてタックスクレジットを申請する費用が、529プランからの拠出金で支払われていたと後で気づいた場合については、その拠出金の利回りには所得税はかかりますが、10%のペナルティは免れます。なお、所得税は払ってもタックスクレジットをもらったほうが、ほとんどの場合プラスになります。

必要以上に引き出してしまったら

もしも529プランからお金を引き出した後で、QHEEが思ったより少なかったなどの理由で、引き出しすぎたことに気づいたらどうすればいいでしょうか。60日以内ならば、他の529プランに入金することで、実質上(お金を使わないで)ロールオーバーしたとみなされ、所得税・ペナルティはかからなくなります。あるいは、来年度の費用を前払いすることで、QHEEとしてみなされる方法がないか大学側に問い合わせてみます。

年毎のQHEEをよく把握し、一年ごとの単位で529プランからの拠出とマッチアップさせることが必要です。年末を迎える前に、一年間のQHEE、タックスクレジット該当費用と529拠出金を計算し、QHEEからタックスクレジット該当費用を差し引いたものが拠出金より大きければ、追加拠出をしたほうがいいかもしれません。反対に拠出金のほうが大きければ、他の529プランへのロールオーバーや来年度の費用の前払いを考慮します。

 

全部使い切らないと

大学で全部使い切らなかった529プランの残高は、本人の大学院に使ったり、本人の兄弟姉妹やその他家族にベネフィシアリーの名義変更をすることで新ベネフィシアリーの高等教育費に使うことができます。あくまで529プランは高等教育費のために使われなければなりません。そうでない目的のために使われると、前述のように利回りに所得税と10%のペナルティがかかります。たいした額が残っていない場合や、積立年数が比較的短いためそれほど利回り部分が多くないなどの場合は、所得税と10%ペナルティもそれほどの額にならないかもしれません。反対に、まとまったお金が残っている場合は、これらの額も大きくなるでしょう。残し過ぎないように、計画的に使う必要があります。

ただし、529プランに一生懸命積み立てたが、大きなスカラシップがもらえたような場合は、10%ペナルティがかからないというルールもあります。スカラシップに相当する額の529プランからの拠出金は、ペナルティを免れます。前述のとおり、タックスクレジットを受ける費用に相当する額の拠出も、ペナルティを逃れます。しかしながら、利回り部分の所得税はかかります(ただし、親の代わりに子どもが拠出を受け、子どもの税率で所得税を払うことも可能です)。

 

拠出は誰が行うか

529プランにもよりますが、だいたいのプランで引き出したお金の受け取り先に3つのオプションがあります。1) 親、2) 学生、3) 大学がです。1)、2)では受け取った拠出金で、親や学生が大学に支払いをします。3)は529拠出金をもって直接大学に支払いがされます。

3)は便利ではありますが、大学費用のうちどの費用にその拠出金があてがわれるかなどのコントロールを大学の出納係にゆだねることになります。ご存知のとおりアメリカでは事務上の間違いなどが多いので、できる限り自分でどの費用を支払うかを管理したうえで送金するほうが安心でしょう。また、大学側が529プランからの拠出金を、外部のスカラシップマネーとして判断し、次年度以降の大学経由のスカラシップが減らされたというようなこともあるそうですから、3)のオプションは避けたほうが無難といえます。

1)か2)かは親と子どもの信頼関係やコミュニケーションにもよりますが、親の管理が行き届くなら、2)の学生への拠出が一番いいかもしれません。もしもQHEEを超えての拠出となり所得税がかかる場合も、学生の所得税率は低いでしょうから税金が少なくてすみます。ただし、学生への拠出したお金は法律上は学生の管理になりますから、子どもが浪費しても親は無力ですのであしからず。

他の資金源があるなら

529プランだけでなく、Roth IRAなどを利用してカレッジ資金をためているような場合は、ファイナンシャルエイドがもらえる可能性を鑑みながら、引き出す順序をコーディネートする必要があります。ローンを含むニードベースのファイナンシャルエイドは一切期待できそうにない家庭(目安としては州立大で年収$150,000以上。私立大で$200,000以上。細かい条件により誤差はあります。)では、どの順序で引き出しをしても差はありません。反対にニードベースのファイアシャルエイドがもらえそうな家庭では、親の資産としてカウントされる529はなるべく早く(でもQHEE以上の拠出のしすぎには気をつけつつ)使って残高を小さくするほうが得策です。

RothIRAはリタイヤメント口座ですから親の資産としてはカウントされませんが、RothIRAからの拠出は、「所得」とカウントされ収入を上げるという好ましくない効果があるので、ファイナンシャルエイドを申請する間は拠出しないのが得策です。エイド申請をする間は529プランからの拠出優先、Roth IRAは最後のファイナンシャルエイド申請の終わった後、大学の最終学年に利用をすることで、なるべくエイドに悪影響を与えず効率的に資金が使えます。

 

いくつも529プランを持っていたら

同じ子どもに対して複数の529プランをお持ちの場合もあるかもしれません。自州の529プランを利用し州税控除を受けつつ、手数料の低い他州の529プランも利用するというような場合です。その場合は、積立額に対して利回りが高いプランから使っていくのがよいでしょう。こうすることで、もしも卒業後529プランの残高が余った場合、利回りに対する所得税と10%ペナルティの額がすくなくてすみます。

6 comments

  1. いつも参考にさせていただいています。この記事ですが、途中からQHEEがGHEEになっていて、あれ?と思いました。お知らせまで。

  2. QHEEに関する質問です。大学からもらったFinancial Aid Award LetterにあるCost of Attendance = QHEEと考えてよいのでしょうか?一応、大学のFinancial Aid OfficeにQHEEといって、再度、問い合わせした方が確実でしょうか?初めてのことなので、細かい質問をしてすみません。

    1. COA と QHEEは、ほぼ近いことが多いようですが、厳密には異なるようです。COAのうち”required for enrollment”であるものか、あるいはSpecial Need対応のものであれば、QHEEとしてカウントできますが、あったほうが絶対よいが、requiredではないものは、QHEEにはなりません。
      QHEE includes tuition, fees, books, supplies, computers and related equipment, and the additional expenses of a “special needs” beneficiary. For students who are pursuing a degree on at least a half-time basis, QHEE also includes a limited amount of room and board. You CANNOT include the following expenses:

      Insurance, sports or club activity fees, and many other types of fees that may be charged to your students but are not required as a condition of enrollment
      Transportation costs
      Repayment of student loans
      Room and board costs in excess of the amount the school includes in its “cost of attendance” figures for federal financial aid purposes. If your student is living off campus, ask the financial aid department for the room and board allowance for students living at home with parents, or living elsewhere off campus, as the case may be. If the student is living in campus-owned dormitories, the amount you can include in QHEE is the amount the school charges for its room and board.

      1. ありがとうございます。それでは、On Campus Housingの場合、Dorm Fee と
        Meal Planは、529から出しても問題ないようですね。ただし、Room & Boardは、American Opportunity Costの対象にはならないという理解なので、Tuitionの方を($4000までは)、他の財源から出しておいた方がお得ですね。

        1. その通りですね。タックスリターンのときに慌てないように、そのようにきちんと計画して記録をとっておかれるとよいですね。素晴らしいと思います。

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