Last Updated on 2014年9月8日 by admin
アメリカ経済も上向いてきたそうで(どうも、そのような実感はあんまりないのですが)、2014年は過去5年のスローな経済に比してステップアップした成長が期待できるとする見方も強いようで。。。ハウジング・マーケットも(多くの専門家が予想したように、フォークロージャー予備物件などが市場に押し寄せ、価格破壊が起こることもなく・・・)回復を遂げ、小売市場の消費活動も上向き、投資活動も上向きだそうで。。。「そうで・・・」と他人事のように言いたくなるのは、どうも、地の底から湧き上がるような本当の力によって経済が回復しているという実感がないからなのかな。政府や、金融機関や、大手投資家の「操作」による「うわべの回復」というような感じが残るとでもいいましょうか。みなさんは実感ありますか?
株式市場 脱出作戦?
ま、実感はさておき、2009年に暴落した株式市場も5年かけて値が戻ってきました。リタイヤメント口座、学資口座、その他の投資口座でも、残高の回復を見た方も多いかと思います。株好きで知られるアメリカですが、2009年、2010年などは、「もう株式には信頼を置かない」というような意見もあちこちで見られ、雑誌などにも株式投資を前面に出した記事が少なくなり、「節約、節制」などをうたうものが多かったものです。実際、“Should Investors Move Out of Stocks into Cash?(投資家は株式を売り、現金で持つべきか?)”とか、“Is It Time to Get Out of the Stock Market?(株式市場から足を洗うときがきたか?)”などというようなタイトルの記事が大変多く出回りました。事実、2011年春ごろから、株式市場から出て行くお金が、株式市場に流れ込むお金より多い(投資家が投資媒体を株から現金や債券などに移している)という状況が、2013年の初頭まで続いていました。
このブログでも2011年11月に投資アカウントが減るばかり。さて、どうしましょうか。という記事を書いています。2011年始めに少し回復したかと思われた市場が再度落ち込み、「売ることができる株はすべて売り、現金で持つべき」と叫ぶ専門家も多く、実際、手持ちの株式はすべて処理して100%現金化したというような投資家の話も多々レポートされました。ブログ記事でご紹介したとおり、心は揺れましたが、我が家は株式ファンドを売ることなく、つまり、何もアクションを起こすことなく過ごしました。
不安はもちろん感じました。でもガマンしました。それもこれも、以前にガマンできず痛い思いをしたことがあったからです。2002年初頭にも株式市場が落ち込んだ時期があったのを覚えていらっしゃるでしょうか?そのとき、「このまま落ち続けるかもしれない」という不安と、「もっと落ち続ける前になんとかしよう」という焦燥感で、株式ファンドの投資比率を下げたことがありました。つまり株式ファンドから投資を抜き、債券や現金ファンドへと資金を移したのです。でも、それは大きな間違いであることがわかりました。
まだ損してないんだから・・・
投資は目減りしていても、売るまでは「損」はありません。「含み損」というやつで、まだ本当の「損」ではないのです。しかしながら、売るなり「含み損」は確定し、ホンモノの「損」になります。「含み損」のまま持っていれば、いつかは値を戻すばかりか利益も期待できるのに、ホンモノの「損」になったら最後、The Endです。それがリタイヤメント資金など、この先ウン十年も使う予定のない資金であったとしたら、おそらく値を戻し利益が期待できる確率は100%に近いでしょう。
そもそも、長期投資ができること、つまりある程度のリスクをとれることを前提に、投資した株式ファンドでした。リスクがとれるとは、いったん値が下がってもガマンができるということです。リスクをとる覚悟をしたのに、一時の不安と焦燥感に押し流されたのは、えらくおバカなことでした。ニュースや雑誌などを読むのはこの不安と焦燥感を助長しますので、それもよくなかったと反省したものでした。この経験を通して、長期投資はいったんリスクレベル(株式、債券、現金のアロケーション比率)を決めたら、年に一、二度の定期見直し以外は、頻繁に残高をチェックしたりニュースを追ったりしないことの大切さを学んだのでした。
とは言っても・・・
とは言っても、「これからどんどん値が下がるばかりなら今のうちに売っておいて、底値に近づいたら買い戻せば、一番おトク」と思いますよね。この「下がる前に売って上がる前にに買う」というのを英語ではMarket Timingといいまして、日本語でもそのままマーケットタイミングと訳されるようです。
実際、2010年~2012年あたりに株式市場・脱出作戦は2013年以降徐々に株式市場・再入作戦に変わってきました。タイミングを見て出た人が、またまたタイミング見て戻ってきたのです。2013年初頭以降は、株式やファンドなどについての記事も多くなり、“Is it good time to invest?(投資を再開するのに時は熟したか?)”とか、“Is It Time to Dive Into the Stock Market?(株式市場に投資を戻す時が来たか?)”というようなタイトルを見かけるようになりました。
このマーケットタイミング、これはできれば最高ですが、正確にタイミングを読んで実行することは実際はかなり難しい・・・というか、歴史やデータによればほぼ不可能です。株式市場は上がり下がりが激しいですし、その上がり下がりは会社の収益に加え、市場全体の動きや、政府の政策はもちろん、投資家心理にも大きく左右され、はっきりいって正確にタイミングを予想することなどできないというのが、ファイナンス理論で言われるところです。たとえ、一度、二度うまく「当たった」としても、これを恒常的に実現することは不可能ということです。かえって、「はずした」場合の打撃のほうが大きいともいえます。
3つのシナリオ
実際、マーケットタイミングが完全にできた場合、タイミングをつかみ損ねた場合、マーケッットタイミングをそもそも全くしない場合にどういう結果になるかを見てみましょう。過去10年間の株式市場の実際の上がり下がりデータを使ってみて、3つのシナリオを比べてみます。ここでは、株式市場全体を代表するものとしてS&P500インデックスを使いました。
水色の線が、2004年から2013年末までのS&P500の上がり下がりを示しています。グラフ下に3つのシナリオがあります。3つのシナリオは3人の投資家を想定しています。3人とも2004年当初に$10,000の資金をS&P500インデックスファンドに投資しました。
三人の投資家のうち、一人目はPerfect Timerで、先ほどのマーケットタイミングを完全にやってのける人、つまり完全なる時読み師です。2007年のバブル絶頂時点で、「今が頂点で、これから暴落する」と完全なる読みを実現し、ファンドをすべて売り払い、現金$13,680を手にしました。その後、暴落までの間は現金で資金を持ち続け、2009年3月には「今が底値で、これからあがり続ける」というこれまた完全なる読みを実現し、手持ちの$13,680をすべて同ファンドに投入しました。そのまま市場は回復を続け、2014年1月には$36,676まで投資残高が増えました。う~、うらやましいですね。10年で267%のリターン、1年あたり26.7%のリターンです。
でも、実際はこううまくはいきませんね。あくまでこのタイミニグは歴史を振り返るからわかることです。ふつうバブルの絶好調なら、「これからも、ガンガン上がるぞ!」と期待して当然だし、暴落の真っ只中なら、「これからもまだまだ落ちるかも」と思って当然。通常は、暴落が暴落だと確定してその概念が市場に浸透し、しばらくしてから、「株式はすべて売って現金化すべきである」というような「専門家の意見」が出回るようになるわけで、2009年暴落の場合は、早くて2010年、多くは2011年あたりに「株から現金へのシフト」が叫ばれるようになりました。反対に、「そろそろ株に投資してもOK」とレポートされるようになったのは、随分と株価が戻してきた2013年頭ごろです。
ということで、二人目の投資家はLatest News Follower、風潮を追い従った人とでもいいましょうか、日ごろからニュースや雑誌などに目を通し、そこにあるアドバイスに忠実に従った人です。この人も一人目と同じMarket Timerですが、違いは完全さがないこと。一人目のようにカンペキな時読みはできず、巷の状況をみてタイミングを決めています。この人も2004年はじめに$10,000を投資したのは同じですが、2010年初めに騒がれ始めた「株脱出=現金化」に従い、同年2月にファンドを売り現金化し$9,421の現金を手にしました。そのまま株式ファンドに投資する意欲がないまま現金で持ち続け、2013年初めに、「そろそろ株投資もOKか」というアドバイスを受け入れファンドを買い戻しました。2014年1月の残高は$11,364です。
最後の三人目の投資家は、一番怠惰です。マーケットのタイミングを読むなどということは一切放棄しています。Buy & Holder、つまり一度買ったらただ持ち続ける、それ以外は何もしない人です。2004年に$10,000を投資し、そのまま10年経ちました。上がっても下がっても気にしないことにしました。暴落で不安に思ったときも、この先20~30年かけて挽回すればいいと思うことにしました。その結果、2014年の1月の投資残高は$16,047でした。一人目のPerfect Timerに比べれば残高は半分ですが、二人目のLatest News Followerに比べれば$5,000近く(投資元本の半額相当)も上回っています。私はBuy & Holderがもっとも賢いやり方だと思います。
巷のニュースや記事に簡単にのらないことの大切さがわかる結果ではないでしょうか。もちろんマーケットタイミングをどうしてもやってみたいとか、私ならカンペキでなくともある程度はできるという人は、トライしてみるのもいいかもしれません。ただ、このアクションはつきつめると「投資」ではなく「投機」でありギャンブルに近いものであること、リスクの非常に高いものであることを知った上で賭ける覚悟が必要です。
人によっては、有能なアナリストや優秀なアドバイザーなら、もっと的確にすばやくマーケットタイミングが計れるのではないかと思われるかもしれません。これを仕事にしているアナリスト、ファンドマネージャー、ファイナンシャルアドバイザーも多いので、いろいろな人がもっともらしい事を言いますが、先ほど書いたとおり歴史的データが語るところは、一度二度「当たる」ことはあっても恒常的に「当て続ける」ことは不可能とういことです。
また、何もしないBuy & Hold戦法はあくまで長期投資を念頭に置いています。家や車の購入にあてるはずの費用であるなら、マーケットタイミングと呼ばれようが、風潮の追従と呼ばれようが、「売り」に踏み切ったほうがいい場合があります。もちろん、そのような近未来に必要となる資金は投資では増やさないというのも基本ではありますが。。
ということで、今回はここまで。来週はもう少し踏み込んで、長期投資で抑えておきたいポイントを見てみます。
面白い記事ですね。
私は何もしない人です。1年に2回くらい買い足すだけです。
でだいたいその年の2回目に、ああ前の時にまとめて買っておけば良かったってなります。(そんなお金ないのに。笑)
上のグラフでも、落ちる時って急で、上がるときは上り坂じゃないですか。海岸に来る波のような。
なので、半年前の方が今よりも高かったってことの方が少ないです。
もし今度そういう時が来たら、下げ止まりを待って買うぞ~!(無理)
>>半年前の方が今よりも高かったってことの方が少ないです。
なるほど~、そういう見方もありますねえ。下げ止まりじゃなくても、少しくらい上がったところで買えれば十分いいと思いますが、でもコレって後でいうのは安し・・というやつなんですよねえ。。
とても面白い記事だと思います。簡単な質問ですが、そちらは会計業務を主にしていると思うのですが、株や投資信託を扱う場合、その会社に手数料が入る仕組みになっていると思います。そちらで主に扱っているMutual Fund Company、たとえば American Fund や Invesco など、を教えていただければ幸いです。それとも、完全にFee Base で取引をされているのでしたらその旨を教えてください。宜しくお願いします。市場のファンドの種類は無数と言っていいと思いますので。
Oizumi様、私どもでは会計業務はやっておりません。Personal Financeにフォーカスしております。まったくの独立系Fee onlyです。必要に応じ、クライアントの方の指定の範囲内でのファンド分析・推薦もさせていただけますし、もし無数のファンドの中から選んでほしいというのであれば、Vanguardなどの低手数料のインデックスファンドを中心にポートフォリオを推薦しています。クライアントの方からの時間給以外にはどこからも手数料はいただいておりません。
既にリタイアしており、TIAAに主人の4口座(403B Pre. & Post, 401A Pre. & Post)から、RMDがあります。
TIAAアドバイザーから私のVanguardとT. Rowe Priceの口座(共にRoth IRA)をTIAAに移すよう言われました。Investment Planを見るとアロケーションがGuaranteed 16%, Equities 55%, Bond 20%, Real estate 9%になっています。このRothの口座はゆくゆくは子供に与えるつもりなので移すメリットはないと思うのですが、どう思われますか?またアロケーションにGuaranteed は必要でしょうか?
TIAAはなぜ移行を提案するか、理由を説明しましたか?GuranteedというのはTIAAのアニュイティかと思うのですが、とくにアニュイティを今買う必要もないのなら、それにする必要はないように思います。お子さんにそのまま相続するおつもりなら、投資内容も株式中心でいいのではないかと思います。ここに書かれていない他の理由があれば別ですが、とくにまとめて一括管理したいとかいうのでなければ、移行する必要もないのかなと思います。
助言をありがとうございます。わからない事はプロに任せてしまいたい半面やはり自分のお金は自分で納得して管理したいものです。このサイトはとても勉強になります。