リタイヤメント資金準備などの長期投資をするにあたって、最低限知っておくべきポイントを抑え、できるだけ簡単に長期投資を始める、あるいは維持していくための考え方を身につけるシリーズを5回に分けてお送りします。1回目では、投資の基本であるダイバーシフィケーションとは何かとその効果について見てみました。2回目では、実際にどうダイバーシフィケーションを実現するかで、二段階に分けて考えることが必要なことと、その一段階目のカテゴリー内でのダイバーシフィケーションでは、インデクスファンドを使うと効率がよいことをご紹介しました。3回目では、二段階目のカテゴリーを超えてのダイバーシフィケーションとして、アセットアロケーションの考え方をご紹介しました。4回目では、実際アセットアロケーションを決め、インデックスファンドを選んで組み合わせていくステップを見ました。最後の今回は、組み合わせる代わりにひとつを選んで終わるファンドについて見ていきます。
ひとつで終わるファンド
前回、2ファンド、3ファンド、4ファンド、6ファンド型のポートフォリオを紹介させていただきましたが、これらの代わりに1本のファンドで投資してしまう方法もあります。ふたつのタイプがありますが、ひとつはライフサイクルファンドと呼ばれるタイプのファンドで、Vanguardの場合ですとVanguard LifeStrategyという名前で出ています。ライフサイクルファンドは、たとえば株20%:債券80%というアロケーションを決めれば、その割合ですでに適切なファンドが組み合わされて投資されているファンドです。VanguardのLifeStrategyは以下の4つのアロケーションタイプがあり、自分のニーズに合わせて選ぶことができます。
実際に投資しているファンドは、先にご紹介したVanguard4ファンド型の4つの基本ファンドで、それぞれのアロケーションで投資されています。たとえば三つ目のModerate Growthの場合なら下記のような組み合わせで投資されています。
4つのファンドを組み合わせたライフサイクルファンドLifeStrategyは、必要に応じ4つのアロケーション比率から適切なものを選びますが、この選んだアロケーションは、時間が経っても固定です。Moderate Growthタイプを選んだなら、何年たっても株式60%:債券40%の比率は変わることがありません。もしリスクを低下させたいと思うなら、Conservative Growth へ乗り換える手続きが必要です。
このアロケーションの比率を固定ではなくて、時間の経過とともに(投資期間が短くなるにつれて)自動的にリスク低下させる、つまり株式比率を下げて債券比率を上げる調整をしてくれるのがターゲットデイトファンドと呼ばれるものです。
Vanguardの場合、どちらも4つの基本ファンドを使っていることでは同じですが、ライフサイクルファンドは比率が固定、ターゲットデイトファンドでは時間経過とともにリスク低下するように比率調整がされます。VanguardのターゲットデイトファンドはTarget Retirement Fundという名前で出ています。ターゲットデイトファンドには、たとえばVanguard Target Retirement 2040などのように、名前の一部として年号が入っています。Vanguard Target Retirement Fundの年齢の変化につれてのリスク低下調整のスケジュールは下記のようになります。
ターゲットデイトは5年おきの設定になっていますので、たとえば2037年にリタイヤする予定であれば、2035年ファンドと2040年ファンドのどちらかを選ぶか、ふたつを組み合わせることで、ちょうどよいミックスをつくりだします。
以前は401(K)などでは、いくつものファンドを組み合わせて自分でポートフォリオを組む必要がありましたが、最近ではこのターゲットデイトファンドの登場により、自分のリタイヤする年号を選ぶだけで投資は終わりというケースが多くなっています。2006年にPension Protection Actが制定されて以降は、401(k)などのプランに加入した場合のデフォルトの投資オプションとして、このターゲットデイトファンドが使われることがますます多くなりました。2016年末にはターゲットデイトファンドに投資されている投資高が$880ビリオンに達しました。競争の激しいターゲットデイトファンドですが、マーケットシェアは一位がVanguardで30%強、二位がFidelityで20%強、三位がT. Rowe Priceで17%弱で3社で70%を占めています。
ターゲットデイトファンドの手数料は2016年の業界平均で0.71%(Asset-weighted Average)でした。Fidelityは最安で0.12%で、Vanguardが次いで0.13%となっています。最近のMorningstar社のレポートでは、手数料の高さとファンドのパフォーマンスには直接的な関連はないと報告されています。パフォーマンスの差は、手数料の高さではなくて、アロケーションの差による(株比率が高いほうがパフォーマンスがよい)という結果でした。自分が許す範囲のリスクをとりつつも、なるべく低手数料のターゲットデイトファンドを選ぶのが得策だと思われます。
ターゲットデイトファンドの正しい使い方
先にもファンドは混ぜすぎない、重複のないファンドをシンプルに持つことの大切さを書きましたが、この考え方はターゲットデイトファンドにもあてはまります。ターゲットデイトファンドはすでに投資のアロケーションが最適化されています。いろいろなファンドを自分で選んで組み合わせる必要がないように、すでにいろいろなファンドを混ぜてつくられた総合ファンドです。つまり、その時々でのダイバーシフィケーションが最適な状態になっているということです。これに、他のファンドを追加で選んで加えるということは、最適な状態をくずすことになりますので、好ましいことではありません。一般的な使い方においては、ターゲットデイトファンドは基本的には混ぜないというのがおすすめです。
ただひとつ混ぜてもOKの場合があるとすれば、たとえば先にも書きましたが、2037年にリタイヤしたいが、2035年か2040年かどちらかのファンドに決めなければならないのでどうするか・・・というような場合は、2035ファンドに50%、2040ファンドに50%という選択をすることはOKです。そもそも年号が違っても中に入っている投資媒体は同じものであり、比率が違うだけですから、この二つのファンドを混ぜることはアロケーションをいびつにすることはありません。単にアローケーション比率がふたつのファンドの中間になるイメージです。このような調整はOKです。
おつかれさまでした、これでこのシリーズ わかる長期投資 はおしまいです。
5回に渡り長期投資、私にとってはリタイアメントになりますが大変勉強になりました。
ターゲットファンドで40才まではポートフォリオの中身が変わらない事、40以降がボンドの比率が上がってローリスクローリターンになっていきますね。改めてリタイアメント プランは30前半から始めてめておけばよかったと後悔しております。”後悔先経たず”と悔やんでもしょうがないので前進するのみです。
思い立った時が吉日!今から始めれば、今できるベストです!
こんにちは、
もう少し勉強しないと、とここを見つけてちょくちょく覗いています。わかりやすい言葉で丁寧に説明してありとても役に立っています。それでも、かなりファイナンス(経済)音痴の私なので理解できない所があるので思い切って書いています。
現在VangaurdのあるMutural Fundにまとまった額があります。このサイトなど読んで初めて他のファンドと比べて見たのですが、現在のはExpenses Ratioが0.25%とということを知りました。似たような種類の同じVanguard内でのFundを見るとExpenses Ratioが0.08%程度です。かなりの違いがあるし今持っているのを少し分ける形にしてこのExpenses ratioが低いファンドを持とうかと思うのですが、問題は税金です。自分なりに調べたら、違うファンドに移す、というのはその分が実際にキャッシュは手にしないのに収入と見て税金がかかる、ということです。
0.17%をセーブするためにファンドを移してその分税金を払うのは割に合わないと思うのですが、これは私が誤解しているのでしょうか? 数ミリオンのファンドがあるのならまだ違うでしょうが、そうでもないので下手に動かして税金を取られるよりそのまま放置していたほうがいいのでしょうか?
あまり気にしないでいて、大事な問題ですね。そのうち記事でも取り上げようと思います。。お持ちの口座がIRAなどの税遅延措置のある口座でしたら問題にはなりませんが、通常のTaxableの口座ですと、いったんキャッシュアウトしてそれで新しいファンドを買ったことになりますので、キャピタルゲインに課税されます。現在の値段からベース額(元金として積み立てた額、Distributionを受け取ってファンドに再投資した額なども含む)を引いた額がキャピタルゲインになります。この税金はいつかは課税されることにはなるので、今払うか、後で払うかという問題でもあります。現在のご自分のタックスブラケットと将来的にこの資金を使う時のタックスブラケットを予想してみて、キャピタルゲイン課税率を比較され、今のほうが税率が安ければ今敢えて税金を払うのも悪い選択ではないかもしれません(今税金を払って新しいファンドを買えば、その額が新しいファンドのベース額になり、将来のキャピタルゲインが減ります)。あとは投資額にもよります。0.17%が絶対額にしてどのくらいになり、それが払う税金とどのくらいの関係なのかにもよります。また、Expense Ratioが安いだけでなく、全体のポートフォリオの中で意味があるファンドを選ぶこともお忘れなく。。