その病院からの請求書、本当に払わなきゃいけませんか?

病院からの請求書の問題はこれまでにも何度もとりあげてきました。請求書はよく確認して、本当に払う必要があるもののみをしっかりと払うのがよいです。残念ながらアメリカの医療請求は、非常にその事務自体が煩雑でエラーが起こりやすいこと、「請求してみて払ってくれるなら払ってもらう」的なスタンスが見受けられるため、必ずしもすべての請求が正当ではないことから、ある意味かなりいい加減な部分が多いように思います。最近我が家で経験したケース3つを取り上げてみたいと思います。

 

ケース1:Lab(検査)費用

とある症状があったので検査を受けることになりました。オフィス内で簡単に終わる検査です。アポをとり、当日出かけたところ、受付でCopay$20と言われました。普通に医師にかかる場合のCopayは$20なので何気なく払いかけてしまったけど、よく考えたら我が家の医療保険は診断のための検査費用はすべてCopayがゼロなはず。「検査は保険が全額カバーするので、Copayはないと思うのですが。。」と言ってみたら、すぐに“Ok.”といって払わなくていいことになりました。

受付の人は、すべての医療保険の内容を把握しているわけではありません。ある程度は受付の人も、Insurance Cardやコンピュータ・システムに入っている保険の情報で確認できるものの、すべてのサービス項目についての保険のカバー状況を把握しているということはありません。自分の保険については自分が責任をもって理解しておくことが大切だと思いました。

たとえば、この$20は窓口で支払ってしまえば、たとえこの請求が間違っていても誰も気づくことがなく、後で戻ってくることはほぼあり得ません。ここではたったの$20ですが、もっと大きな額でもそれはないとはいえません。

学んだこと:

  • 自分の保険のカバー内容は自分がよく理解しておくこと
  • 何か普通と違った医療サービスを受けるときにはあらかじめ何がどのくらいカバーして、自己負担はどのようになるかを調べておくこと
  • 必要であれば保険のカバー内容の文書をもって出かけること

 

 

ケース2:Outpatient手術のCopay$100

とあるOutpatient手術を受けることになりました。保険カバーの文書で確認し、Outpatient手術は100%カバーとあったので、自己負担はないものと思い出かけていきました。ところが受付の時に$100を払えと言われました。「保険で全額カバーのはずですが、この$100はいったい何ですか?」と聞いたところ、受付の人は説明できず、“Then you don’t have to pay it.”といわれ、$100は払わず手術を受けました。

ところが、後日、$100の請求書が届きました。保険カバーの文書を再度確認しますが、Copayはゼロと書いてあります。再度、病院に電話して「全額カバーのはずなんだけど・・」と言ってみましたが、先方の言い分は、「保険会社から届いているEOB(Explanation of Benefits)に本人負担が$100とあるので、これは保険会社に聞いてもらわないとわかりません」とのこと。

普通は、私のところにもEOBが届き、そこに請求額、保険カバー額、自己負担額が説明してあるはずですが、今回はEOBが届いていません。そこで、保険会社に電話しました。「EOBがないのでわからないが、Copayはゼロのはずだからその旨確認したい」と伝えたところ、病院名を聞かれたので伝えましたが、「その病院からの請求は受け取っていません。たぶんこれはメディカルグループに請求が行っていると思われるとでそっちに聞いてください」と。EOBは、病院やクリニックが保険会社などにクレーム申請をしてはじめて作成されるものであり、保険会社はクレームを受け取っていないので、EOBもないというわけです。

このメディカルグループというのは、私にとってなかなか難解な存在で、保険会社と個人の間にはさまって、医療サービスの提供だけでなく、医療サービスのコーディネートやApprovalなどを請け負うこともある機関なのですが、個人側からすると、どういうときに保険会社、どういうときにメディカルグループに問い合わせればいいのか、今一つよくわからないという存在です。

メディカルグループについて調べてみたところ、これは医師の所属するグループであり、保険会社はメディカルグループと契約し、両社が協力して消費者にサービスを提供します。保険会社は、何をカバーするかなどの保険業務にフォーカスを当てるのに対し、メディカルグループはその契約により医療サービスを提供したりコーディネートしたりするところにフォーカスがあります。メディカルグループの大きさはまちまちで数十の医師からなる小規模のグループもあれば、かなり大規模のネットワークまであるようです。私の住むカリフォルニアではこのメディカルグループというのはかなり普及しているようで、保険会社との契約により各ローカル地域で医療サービスをマネージしています。

メディカルグループと保険会社の役割分担についてはかなりグレー(少なくとも個人にとってはよくわからない)な部分が多く、あくまで両社の間の契約により、時と場合によってケースバイケースなようです。メディカルグループの責任範囲が狭い場合には、単なる医療サービスの提供だけであり、責任範囲が広い場合は、医療サービスのコーディネートや医療措置のApproval、請求処理まで行うようです。

。。ということで、保険会社に「直接メディカルグループに聞け」と言われたので、メディカルグループに電話してみました。状況を話して、「どうして$100がかかったのでしょうね?これはCopayのはずはないし何ですか?」と聞いてみたところ、カスタマーサービスの担当もよくわからない様子です。なかなか埒があかないので、「では、とにかくEOBを送ってもらえますか?」とお願いして切りました。

それから1週間ほどしてEOBが送られてきました。それには$100が個人負担とありました。しっかりそう書かれているので、もしかしたら私の見ていた保険のカバーについての文書が古いのかも知れないと思って調べてみたら、保険の文書は去年のものでした。きっとベネフィットが改定になったのでしょう。保険会社のオンラインサイトにログインし、最新の文書を見てみました。そうすると、去年はなく今年は付け足された項目があり、以下のようになっています。疑問だった$100は、このFacility Servicesの自己負担でした。すぐにお支払いしました。

healthnet outpatient

学んだこと:

  • 保険のカバーは毎年更新されるので、毎年変更を確認し、最新のカバーについての文書を入手(昔は自動的に送付されてきましたが、最近はリクエストがあれば郵送、あとはオンラインでファイルにて提供という会社が増えているように思います)しておくこと
  • メディカルグループが仲介で入っている場合には、どういう場合にはどちらに問い合わせればよいかをできる限り明確に把握しておくこと
  • 問い合わせた内容については、日時、問い合わせ先、結果について記録して、複数対象との対応の履歴が残るようにしておくこと

 

ケース3:定期健診費

昨年12月、マモグラム(乳がんスクリーニング)を受けました。年々の定期健診です。いつも受けている同じところで同じように受けました。これが今になって(翌年6月)、画像処理センターからデジタルマモグラム費として$150ほどの請求が来ました。請求書には、保険カバー分がゼロとなっています(保険クレームをしたのに保険がカバーしなかったということ)。毎年、請求など受けたことはありませんし、しかも、マモグラムはObamacareにより、Preventive Careの一項目として保険が全額カバーせねばならないことになったはずです。

前回、保険会社に電話したらメディカルグループに電話しろと言われたのを思い出し、今回はメディカルグループに電話してみました。「いつもの定期健診で毎回全額カバーされているマモグラムに対して請求がきた」と言ったら、すぐに「うちはクレームを受け取っていませんね。ただ、請求書をFaxしてくれればtake careしますよ」とのこと。

ちなみに聞いてみました。「いったい保険会社とメディカルグループの責任範囲はそれぞれどんなふうで、どういう場合に保険会社、どういう場合にはメディカルグループとなるのでしょう」と質問したところ、「それはそれぞれの契約によります」とのこと。それぞれの契約など個人は知る由もなく、オンラインにもどこにも説明はないので、いったいどうすればいいのでしょうね?カスタマーレップ自身もよくわかっていない様子。。。

集めた情報とレップとのやりとりから察するに、マモグラムはメディカルグループ内の医師のReferralでグループ内の画像処理センターで行われており、画像処理センターは保険会社ではなく、メディカルグループに対して保険クレームをしなければならなかったところ、保険会社にクレームをしてしまったため、クレームが拒否され、その結果個人である私に請求がきたということではないかと思います。

。。という理解のもと、請求書がきた画像処理センターに電話し、.「おたくは保険会社ではなくて、メディカルグループにクレーム申請するべきだったのだと思います。メディカルグループにはおたくからの請求書について知らせておきました、あとはおたくとメディカルグループで処理してください」と伝えました。カスタマーレップは、「ではこの請求は一応止めて、Review Committeeにレビューするようリクエストしますので、1か月後に連絡をくれれば結果がわかります」などとわけのわからないことをいうので、私もわけはわかっていない部分もありつつも、「これはメディカルグループの内部のReferralで受けたサービスで、今まで一度も請求書が来たことがなく、メディカルグループも請求をtake careするとすでに同意しているものですし、そもそもおたくが保険会社ではなくメディカルグループにクレーム申請すべきところを、誤って保険会社にクレームしてしまったためこのようになっているので、私の責任はここまでで済みました。1か月後に私は電話しませんから、メディカルグループと連絡をとって解決してください。」と言ってみました。レップは「ではちょっとお待ちください」といって電話をいったんホールドし、その後戻ってきて「わかりました、ではそうします」といって、私への請求を取り消しました。

学んだこと:

  • 自分の保険は自分が理解するしかないこと。保険のカバーについての文書は、その面で理解をするために重要なてがかりとなること。システムがわからないなりにも、なんとか理解する努力が必要なこと
  • 今回の例は、昨年12月の医療サービスに対して、今年6月、半年もたっての請求。こういう場合はなにかおかしいと推測したほうがよいこと
  • システムが複雑すぎて、保険会社もメディカルグループも病院も誰もよくわかっていない。自分になりにしくみをわかって、言われるままでなくある程度自分の考えを主張することも必要ということ

12 comments

  1. いつも楽しみにブログ読んでいます。
    以前保険のブローカーで働いていたので、今回の内容は非常によく分かる物でした。日本人はこの、保険会社と交渉する事に全くなれていないし、それぞれの治療の項目により値段が違う事もよく分かっていません。なので、頼まれて、顧客に届いた法外な請求書について、関係会社に電話をしたりしていました。かくいう私も日本人なので、こっち(NY)に来るまでそんなシステムは知りませんでしたが、勉強するうちになかなか奥が深いなーと思うようになりました。

    アメリカは保険会社が沢山あるし、毎年内容が変わるし、本当に複雑ですよね。でもおっしゃる通り、不明な請求書が来たら、きちんと電話をして確認すべきですし、自分が正しかったら、その旨を伝えて、もうこれ以上払う義務はないときっぱり言った方がいいです。実際私も、出産の時に自分と子供2人分のベッド代(?)の請求が来て、生まれたばかりの子供のベッド代なんて払う必要はない、と書面に書いてサインをしてクレームをしたら、半分になりました。今思うと笑い話ですが、信じられませんでした。。

    長くなってすいません。これからもブログ楽しみにしています!

    1. kayさん、そんな経験がおありでしたか。本当に笑い話ですが、でも笑い話で済みませんね。経験談ありがとうございます。

  2. 難解ですね。同じ保険に入っていても内容が毎年知らないうちに変わっているというのも困りものですね。変更点を強調して連絡してくれたらいいのに。。。

    自分でなんでもまなばないとダメってことですね。いまは脳がまだ機能していますが、これからだんだん老化していくと色々困難になりそうで心配です。

    1に勉強2に勉強ですね。

    1. 本当です。老後はもっと病院にお世話になることになると思いますが、脳が弱っていったら、どうなるのかと私も思います。弱者に対して思いやりのある社会になってほしいですが、現実をいているとなかなか厳しいですね。。

  3. 今月から会社の健康保険が変更になり、とてもタイムリーなトピックでした。

    上向きの業績にも関わらず、頂く保険の種類が年々悪いものになっていき、今回の変更では、PAPテストの全額カバーが3年に1回となっていて驚きました。 

    私もマンモの請求で、クレームを出したことがあります。 私はマンモではhigh densityとなり必ずソノグラムを同時に受けるのですが、病院からの請求ではマンモの解析に高度なものを併用しており、それがカバーされないということでした。 医療知識が少しあるので、「ソノグラムを同日に行っているので、この解析は不要である。」と伝えたら、後日請求はしないとの連絡がありました。

    たとえ自分では分からないとしても、想定外の請求が来た時には必ず電話を掛けるひと手間を惜しまないことは、重要ですね。

    1. pearlさん、体験談ありがとうございます。Papが3年に一回になったというのは、案外多くの保険でそのようですね。ガイドラインが変わったということなのでしょうか。。私の保険もそうです。

  4. 医療保険とは少し違うのですけど、約3ヶ月前に交通事故にあって、救急に運ばれました。自分は自転車、相手は車。自分に非はないので、2500$程の病院からの請求金額は相手の自動車保険で支払ってもらえると思うのですけど、3ヶ月経った今でも、まだ手続きが完了してないんです。保険会社によると、相手の車のダメージの写真待ちということなんですけど、余りにも遅くないですか??実は警察の事故証明の発行も10営業日ということやったのに、3週間ぐらいかかり、とにかく全てが遅い遅い!!!ってイライラしてます。病院は督促の請求書が届いたので、もうクレカで支払ってしまったので、保険会社からの連絡待ちです。もし支払ってもらえなかったら、裁判とか??と思ったりしてます。

    日本でも交通事故にあった事があるんですが、その時も被害者でして、でも保険会社の方や加害者の方はすごく親身になって動いてくれたのに、こっちでは加害者からはなんのコンタクトもないし、保険会社もそんなので、うんざりです。。。。すみません愚痴ってしまいました。。。

    1. お気持ちお察しします。被害者なのに、どこへも持ち込めないイライラをかかえつつ生活するのは、本当にフラストレーションですよね。確かに、自動車対自動車の事故であれば、保険会社対保険会社になりますが、自転車対自動車だと個人対保険会社になり、分が悪いのかもしれませんね。弁護士を立ててハンドルしてもらったほうがスムーズにいくかもしれません。病院の請求額だけでなくPain and Sufferingなども要求できるかもしれないので、弁護士を立てて弁護士代がかかっても医療費くらいはリカバーできるのではないでしょうか?一度弁護士にご相談されてはどうですか?

  5. 今の時期になると大抵送られてくる保険料の値上がりのレターが届き、何か他に選択肢はないものかと調べていたらこのサイトにたどり着きました。
    病院からの請求ミスもいろいろと経験していますが、ここ数年は障害のある息子の保険会社(Anthem Blue Cross)の意図的としか思えないミスに相当な時間をとられています。毎週10時間ほど受けているpreauthorizationが必要なセラピーでして、半年ごとに申請し直す必要があるのですが、診断されて以来、同じプロバイダーで、preauthorizationを途切れさせたことはありません。にもかかわらず、今年の3月ごろ、昨年の8月分のpreauthorizationがなかったというレターが届きました。そんなはずはないと電話で問い合わせたところ30分ほど保留や転送を繰り返された結果、向こうがミスを認め、15日以内に訂正すると言われました。ところが1カ月経っても訂正されず、新たに却下のレターが次々と届きました。再度連絡したところ、また15日と言われ、待ってみたもののやはり音沙汰なし。その段階でCalifornia Department of Insuranceにcomplaintを出しました。それでやっと訂正されたのもつかの間、翌月には新たに同じ却下のレターが続々と届きました。その繰り返しが4カ月ほど続いたので、DOIの担当者にいい加減本当に解決して欲しいと伝えたところ、これまでの経緯とどのような点を見直し、再発防止の対策をとったかという3-4ページのレターが届きました。にもかかわらず、その数日後にはまた同じ却下のレターが。今、再度DOIにフォローアップをしてもらっているところです。こんなことが、これまで3ケースほどあり、毎回、解決までにかかる時間が長くなっています。保険会社から郵便物が届くたびに、心臓がドキドキするほど精神的にも参っています。こんなことに時間をとられなければ、もっと息子と向かい合う時間もとれるのにと思うと、この時間と精神的ダメージに対する補償もしてもらいたいところです。皆さんはこんな経験はないでしょうか。障害児の親のための医療保険に関する掲示板などで日々情報共有し、知識をつけるようにしているのですが、皆さん苦労しています。このようなミスがあるたびにかなりの額のペナルティーが課せられるようにでもなれば改善すると思うのですが、現状では加入者としてできることに限界を感じています。何かさらにできることをご存知でしたら教えていただきたいです。

    1. お気持ちお察しします。私はそれよりもっと軽い問題でしたが、それでも処理をする間ずっと憂鬱でした。息子さんのために必要なトリートメントならばなおさらのことですね。私も詳しいことは何もわかりませんが、それはPreauthorizationは下りるのに、その後支払いを拒否されるというようなことなのですが、それともPreauthorization自体が下りないのでしょうか?

      1. preauthorizationの手続きは診断当初から5年間、まったく問題なくできており、Anthemからも毎回欠かさずauthorizeされた旨のレターが届いています。にもかかわらず、ある日突然「authorizationが必要なセラピーのため支払ができません」という内容のレターとともに半年以上前のものが却下されました。
        直接電話して、担当者に訂正すると言われ、担当者の名前や電話でのやりとりのreference numberまでもらっておいても、約束された期限までに訂正されないことが最近ではほとんどです。supervisorに回してもらっても同じです。「○月○日に、15日以内に訂正するっておっしゃいましたよね」と追及しても「何故かシステムに反映されなかったようなので30日待ってください」とか言われ、また先延ばしされます(そしてもまた何も訂正されず・・)。なので、一度待って訂正されなければ、即Department of Insuranceにcomplaintをするようにしているのですが、最近ではそれでも解決しないのです。息子は毎年out-of-pocket maximumを夏ごろには超えるほど医療費かかっているので、なんとかして解約させたい客扱いされているような気がしてなりません。幸い息子の保険は補償内容がいいのですが、いつ廃止にされたり補償内容が変わったりするかわからないので恐ろしいです。去年あたりからは私の歯の保険(同じくAnthem)でも、単純な定期的なクリーニングが何度も却下されたり、家族全員ブラックリスト扱いされているのかと思ってしまいます。

        1. そうなんですか。安心して医療サービスを受けられるような社会であってほしいですね。毎回毎回、preauthorizationのことを心配しなくてはならないこと、毎年毎年、保険内容がどうなるか心配せねばならないこと、本当にご心労をお察しします。StateのDept of Insuranceも大したヘルプにならないと、どうすればいいのでしょう。私も無知でお手伝いはできませんが、心にとめて今後もいろいろ調べてみます。

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