2020年ももう半ばで若干遅ればせながらではありますが、本年から新しくなったW4フォームについてご報告します。給与からの所得税の源泉徴収を調整するためのW4フォームが2019年までのものから更新されました。トランプ税制改革(Tax Cuts and Jobs Act)の内容を反映させると同時に、複数の収入ソースがある場合や夫婦で収入がある場合など、より正確な源泉徴収を実現するようにリデザインされました。
まずは基本から
所得税は年間まとめて払えばよいというものではなく、所得が発生するにつれて都度納めねばなりません。給与収入がある人は、給与から毎回、源泉徴収(withhold)される形で一年を通じて所得税を納めていきます。源泉徴収が難しい場合は、Estimated Taxという形で年間4度に分けて自分で納めていく必要があります。今回はW4についてでの記事ですので、給与収入者にフォーカスを当て、源泉徴収の場合について考えます。
基本的には、源泉徴収されている額の年間合計が、実際のタックスリターンのときの納税必要額となるべく近いのが理想的です。源泉徴収のほうが多ければ、無駄にIRSにお金を預けていることになり、そのお金には利子もつきませんし、月々他の用途や貯蓄・投資に使うこともできません。タックスリファンドをIRAなどに入れるというのは良い考えですが、わざと多めに税金を納めておいて、リファンドされてからIRAに入れるというのならちょっともったいない可能性もあります。多めに納める税金を月々直接投資ファンドにいれたほうが、Dollar Cost Averaging(一定額月々入れる)でリスク分散をしつつ、余剰金を一刻も早く投資に回して利周りを生むことができます。多めの源泉徴収くらいならいいですが、多すぎる源泉徴収は少しもったいないと言えます。
反対に、源泉徴収のほうが少なければ、タックスリターン時に納税する差額が発生し、負担となりかねない上、源泉徴収分があまりに少ないとUnderpayment Penaltyがかかることになります。通常は、追徴分が$1,000以下であるか、あるいは本年の所得税の90%か又は昨年の所得税の100%の額かのどちらか小さいほうは納めていた場合においては、Underpayment Penaltyはありません。
大きく納め過ぎにはならず、かといってUnderpayment Penaltyはしっかり避けるような源泉徴収の額を決める必要があります。
なぜW4が変更されたのか
これまではW4フォームでAllowancesの数を上げたり下げたりすることで源泉徴収の額を調整していました。Allowanceの数(自分、配偶者、子どもの数)を上げれば、源泉徴収が低くなるしくみです。Allowanceはタックスリターン時のPersona Exemptionとほぼ同じもので、タックスリターン時も多くのExemptionが利用できる人は、所得税が低くなります。
トランプ税制改革ではこのPersonal Exemptionが廃止されました。タックスリターンではPersonal Exemptionがなくなったのに、古いW4ではAllowanceで源泉徴収を調整していたので、少しひずみのあるしくみでした。
今回、このひずみを見直し、より正確な源泉徴収を実現するべく造られたのが新しいW4フォームです。
新しいW4では何が違う
Allowanceでの源泉徴収計算ではなく、もうすこし細かい個人状況を把握することで、より正確な源泉徴収計算をするようになりました。個人の状況とは、セカンドジョッブ(本業以外の給与収入)があるか、配偶者が所得があるか、給与収入以外にセルフエンプロイメント(自営)の収入や配当金・利子・キャピタルゲインなどその他の所得があるかなどの収入面での状況に加え、Dependentsの有無やItemized Deductionの有無など、控除面での状況も把握します。
ある意味、タックスリターンのミニバージョン的な感じで、詳細情報を総合的に使って正確な源泉徴収計算をするわけですが、人によってはセカンドジョッブやその他の収入など雇用主には知られたくない情報もあるかもしれません。そんな場合は、個人の状況に関する情報は無記入にしておいて、Step 4のExtra withholdingで、いくら月々余分に源泉徴収されたいかを指定できる仕組みになっています。
自分の状況でいくら源泉徴収すればいいのかをEstimateできるサイトが提供されています。こちらのTax Withholding Estimator で、セカンドジョッブや自営などの収入も含めた上で適切な源泉徴収額を計算し、上乗せ分を決めることができます。
また、先にも書きましたが、敢えて少し多めに源泉徴収をしておいて後でリファンドが戻ってくる方がうれしいという場合もこのStep 4(c)で調整ができます。
新W4はみんなが提出要ではありません
新しく雇用関係に入った、あるいは結婚した、子どもが生まれた、養子縁組したなど、家族の状況に変化があった場合には、新W4での源泉徴収の設定が必要ですが、そうでなく、すでに雇用関係があり源泉徴収が行われていたような場合は新たなW4フォームの提出は必要ありません。その場合は、今までのW4の情報をもとに自動的に源泉徴収が続いていきます。
ただ、この機会に、ご自分の源泉徴収を見直してみるものよいでしょう。2019年のタックスリターンもやってきますから、このタックスリターンで実際の所得税と源泉徴収された額のバランスをみてみて、必要に応じW4設定を変えるのもよいと思います。W4フォームは年間を通していつでも更新することができます。