今日は地震保険のお話。我が家はカリフォルニアに住んでいますので、地震は「すぐそこにある危険」です。でも実際、アメリカのどの州でも地震はありえるんですね。オクラホマやバージニア、コロラドでも地震がありました。昨夏に家を買ったので、そろそろほおって置いた地震保険の問題、今日は真剣に考えてみたいと思います。
地震保険のベーシック
- 地震のダメージはHomeowner’s Insurance(持ち家保険)ではカバーされない : 地震のダメージは洪水によるダメージ同様、ふつうの持ち家保険ではカバーされません。ただし、二次災害としての家事や水害(水道管破裂など)は通常、持ち家保険でカバーされます。
- 地震保険はDeductibleが高い : 自動車保険、持ち家保険などのDeductibleは$500とか$2,500とかいうレベルですが、地震保険になると、カリフォルニアの場合では家の価格の10%、15%などというレベルに跳ね上がります。$300,000の家なら、$30,000~$45,000までの被害は自分もち、それ以降保険がカバーというようなかんじ。
- 家財・私財への補償は比較的低い上限あり : 持ち家保険では家の価値の50%から70%というように、家の価値に応じて補償額が上がっていきますが、地震保険では$5,000とか$10,000、多くて$100,000ほどの固定上限が設定してあります。
- 除外項目あり : 庭、プール、フェンス、家以外の建物などは通常除外されます。
- Loss-of-use : 地震の被害により家を使えなくなった場合、一時的に他に住むなどの費用がかかった場合も、家財・私財のときと同様、$1,500~$25,000ほどの固定上限が設定されます。
- 保険料 : 断層から遠いより近い家、新しい家より古い家、木造よりれんがづくりの家、岩地より砂地の家、一階建てより二階建ての家のほうが保険料は高くなります。カリフォルニアの方でしたら、こちらで保険料が見積もれます。下記は$475,000の家(持ち家保険で掛けている家の価格を使います)の場合、Deductibleの選択により、年間保険料が$1,149~$1,531の範囲で見積もられている例です。
買うか買わないか
地震保険は広く浸透した保険ではありません。地震の危険の高いカリフォルニアでさえ、地震保険を購入している世帯は20%以下です。買ったほうがいいか、買わなくてもいいかは、それぞれの家庭の状況に応じて決めることで、一概にどちらがいいとは言えませんが、以下では、買わない派と買う派に分けて判断基準を洗い出してみます。
買わない派
補償が受けにくい
地震による家屋へのダメージは、新しい建築コードにのっとり耐震構造でつくられた家であれば、多くの場合部分破壊であり、火事のような全破壊にはなりにくい傾向があるといえます。比較的古い家であれば、暖炉の煙突、れんがの壁など構造上弱い部分が崩れ落ちたり、ファウンデーションが固定されていない(unbolted foundation)ために、亀裂や破壊が起こる可能性は高いですが、全家屋が崩れ去るという事態は比較的少ないかもしれません。
地震による全壊というよりは、地震の場合多い被害は火事です。ガスもれに引火しての火事が大きな被害を引き起こしたりします。また、地震により水道管が破裂して水害が引き起こされる場合もあります。これらの被害は、たとえ地震が原因であっても通常、持ち家保険でカバーされます。
実際、持ち家保険での火災による家屋全焼の保険申請クレームはよくあるようですが、地震保険での全壊の保険申請は、過去の地震をみても比較的まれのようです。1989年のLoma Prieta地震のときは、約45,000件の保険申請があり、1件あたりの平均申請額は$18,000~$36,000ほど(インフレ調整後の2013年相当額)だったそうで、家の値段よりはずいぶんと小さいものです。1994年のNorthridge地震では195,000件の保険申請があり、平均申請額は$60,000(同様に2013年相当額)ほどで、やはり家の値段よりは小さいといえます。
ひとつ面白いサイトをご紹介しましょう。こちらのサイトでは自分の住所と家についてのデータを入力し、想定される地震の震源地とマグニチュードの大きさを選択して、どのくらいの被害を被るかについてシュミレーションすることができます。我が家の例だと、サンベルディナンドで8.0の地震が起きると$70,000の被害、ロサンゼルスで8.0の地震が起きると$121,000の被害ということでした。このサイトどのくらい信憑性があるかはぜんぜん知りませんのであしからず。とりあえずUC DavisのProfessorが作ったらしいので、まったくのむちゃくちゃというわけではないかもしれませんが。。
そうこう考えてくると、かなり大きな地震が起きても、家へのダメージは家の価値に比べて数分の一というレベルなのではないか・・・と考えられるかもしれません。前述のとおり地震保険のDeductibleは高く、10%~15%のレベルです。$300,000の家で$30,000~$45,000、$500,000の家で$50,000~$75,000までは自己負担。それを超えた被害でやっと保険のカバーがあるということです。少なくとも上のふたつの過去の地震の例を見る限り、高い保険料を払ってもほとんど補償を受けられないという可能性も大いにありかもしれません。
CEAの財源が心配
カリフォルニアの場合は、California Earthquake Authority(CEA)という半官半民のようなエージェンシーを立ち上げ、ここが地震保険を担っています。持ち家保険を売っているふつうの保険会社が地震保険を売ることもありますが、実際は販売活動だけを保険会社がしているのであってすべての保険料はCEAにプールされ保険もCEAによって提供されます。半官半民のようなエージェンシーですが、実際はプライベートファンド・ベースで成り立ち、カリフォルニア州は大地震が起こりCEAがすべての保険請求をカバーできないような状態になっても、公金を使ってのバックアップは一切行わないということをすでに公にしています。
ま、お金のなりカリフォルニア州に多くは望めないのはわかりきったことですが、だけど、万が一のとき「やっぱりお金はもらえなかった」とは辛いもの。上記にあるとおり、比較的小さい被害なら、そもそもDeductibleをクリアしないのでお金はもらえない。。反対に大きな被害なら、CEAが破産するのでやっぱりお金はもらえない。。。これじゃ、保険にならないよ・・と考える人が多いのもうなづけます。
こう考える人の多くは、地震保険にお金をかけるなら、家の耐震性を高めるためにお金をかけたほうが理にかなうという結論に達するようです。
耐震性を上げたほうが・・・
平均的な1階建て、クロールスペース(床下)があり、床下には障害物が少なくコンディションもよく、木枠の壁があるような家の例だと、$4,000~$7,000程度で耐震性向上の処置ができるという目安があります。クロールスペースなしのコンクリートに直接建っている家なら、$3,000~$6,000程度。2階建て以上、大きい家、斜面に建っている家、地下がフィニッシュしてある家、ガレージの上の部屋がある家などだとコストが上がり、$10,000程度までになる可能性もあるとのこと。
実際、地震保険を買おうが買うまいが、耐震性向上は考慮したい点ですが、この点について、ひとつ注意事項。ちまたには耐震性向上を生業にする業者がたくさんあります(とくにカリフォルニアには)。英語ではRetrofittingと読んだりしますが、この分野では行政が介入した標準やルールがまだまだ整備されていません。オンラインサイトがプロフェッショナルに見える、あるいは、言う事がかなり信憑性が高いように思える業者だったので、多額のお金を払って「耐震性を向上」してもらったはずが、実は非常に不十分であったというようなケースもたくさんでているようです。とくに処置の多くは目に見えるところでなかったりしますし、目に見えても素人にはそれが構造上十分なのかどうか判断がつきにくいわけです。業者を雇うときには、その会社の業績や存続性やレビューなどをよくよく確認することが大切のようです。
買う派
エクイティを守る
保険は万が一のときのためのもの。Deductibleが高く小さな被害なら補償は受けられないかもしれないが、被害が小さいのなら自己負担もいたしかたないと割り切る。もし大地震が起こってとんでもない大きな被害を被った場合の建て直しと割り切って、地震保険はやはり買ったほうがよいという見方もあるでしょう。とくに、家のエクイティがたまっている場合は、この考え方がより理にかなうといえます。
家の価値のうちモーゲージの借金部分がほとんどの場合、大地震が起こり、最悪家が住めるような状態でなくなった場合、建て直しをあきらめて家を破棄するという手があります(英語ではWalk Awayと呼ぶ)。モーゲージのオーナーである金融会社はあなたの家をフォアクローズし、できる限りのコストを回収し、損失をかぶります。あなたは家を失い、家にたまっていたエクイティ(ダウンペイメントと返済済みの元金)も失いますが、ローンからも開放されます。$500,000の家で、エクイティが$50,000しかなければ、$50,000を失っても$450,000のローンから開放されたほうがいいと判断する人も多いでしょう。
しかしエクイティがたくさんたまっている場合は、そう簡単にあきらめがつきません。$500,000の家で、エクイティが$400,000、残っているモーゲージが$100,000の場合、もし家を破棄すれば$400,000のエクイティをまるまる失うことになります。このようにエクイティが多くある人は、なんとかモーゲージ返済を続け、かつ建て直しも行い家を所有し続けたいと思うでしょう。このようにエクイティがたくさんある人のほうが、地震保険で家を守るニーズも高いといえます。
政府には頼れないだろうし・・
大災害の場合、フェデラル政府や州が介入し、被害者に対するなんらかの優遇が受けられるかもしれません。しかしこのような補助プログラムは、もちろん資格審査もありすべての人が享受できるわけではありません。多くの場合、何万ドルものフリーマネーが得られるわけではなく、低金利のローンなどであり、返済が必要なものです。また、上限も限られる可能性が高く、必要な額を全額工面できる可能性は低いでしょう。そういうわけで、保険金に代わるものではありません。
家のモーゲージが残っているような場合、モーゲージを払い続け、修理のためのローンの金利も払いつづけ、自己負担する部分もあり・・というのはなかなか困難な状態です。やはり、大被害の場合にこそ、補償を得られる地震保険は心強い味方かもしれません。
CEAは大丈夫そう?
前述のとおり、カリフォルニア州のバックアップは一切ないCEAですが、でもA.M.Bestでみると財務成績はA-(Excellent)ですから、今のところは大丈夫ということですね。でも、大地震のような超最大級の危機になった場合、どのくらいの耐久性があるのかは知る人ぞ知る。。しかしそれを言い出せばキリもなく、どんな保険会社でも危ないといえば危ないもの。なんとなれば、Too big to failでフェデラル・マネーがつぎ込まれるかもしれないし(!?)。。
う~ん、一般市民の私にとってはビミョーな選択ですが、でもカリフォルニアで地震保険を買うといえば、CEAしかないから、買うのならとりあえず信じるしかないというところでしょうか。。
さて、あなたはどちら派ですか。買うにしろ、買わないにしろ、納得して決めたことならばそれで心の平安もあるというもの。
我が家はどうしましょう。少しばかり買うほうに心が傾いています。どんなに耐震構造にしても、超最大級の地震がくれば家は崩れるでしょう。そもそも保険は万が一のためものと割り切り、Deductibleを引き上げ、万が一のときの被害にだけ特化してカバーすれば、我が家の場合なら保険料$1,149ドル。決して手が出ないほどの額ではありません。買っておこうかな~(といって、伸ばし伸ばしにするような気もしています。。)
はじめまして、いつもブログを読ませていただいてます。
ちょうど今朝LA近郊で、このあたりにしてはちょっと大きめ?の地震がありましたね。うちはTorranceとRolling Hills Estatesの境界あたりに住んでいますが、朝ベッドの中で「なんか揺れてる?」と思って気がつきました。日本の地震に慣れきっているので、まったく大したことないですが、こういうのがあると、保険や災害時の備え(水、食糧、、)などを考える機会になりますね。
ちなみに、私はRedondoとかManhattanとかの海岸近くの家やCondoは環境的には良いのですが、さすがに日本で大震災(津波)を見ているだけに、住むのはちょっと躊躇してしまって、少し離れたところで住居選びました。
Lunaさん、ありましたね~、地震! うちはかなり災害対策が甘いので、こういうことがあると2~3日はちょっとがんばって、水や缶詰を買い換えたりするのですが、どうも続かなくていけません。がんばります。。
また、LA近郊で昨日、M5.1の地震がありましたけど、Adminさんのお宅は大丈夫でしたか?ニュースで見ると、結構揺れていたようで、レンガの塀が崩れていたり、家の壁などにひびが入ったりと大変そう。
私たちも、地震の断層に近い所に住んでいるので人事とは思えませんが、地震保険には入っていません。日本の東北大震災の状況を見たら、入っても無駄かなあと思ってしまって。。。でも、やっぱり入ろうかなあ。あっ、非常時の備えもしていないので、明日、買いに行こうっと。
ご心配ありがとうございます。すぐ近くが震源地でしたが、目に見えるところではダメージはありませんでした。案外長い地震でした。。地震保険、主人にこの記事を読んでもらって夫婦で決めようと思っているのですが、なかなか進みません。。どうしようかなあ。。