不動産は決して値下がりしないし、毎月低収入が入ってくるし、レンタル物件をたくさん持って楽にリタイヤしよう・・と聞くと、誰でも少しは心が動きますね。たとえばインデックスファンド投資をとってみた場合、Buy&Hold(長期的に持つ)という基本的なルールさえ守っていれば、どんな人でも誰でも市場の平均的な成績を達成できるといって間違いがありませんが、一方で不動産投資は、秀でたスキルと経験を持つ人とそうでない人(とあとは時代と地理的な運・不運も大きいですが)で、かなり差が出る投資だと思います。
ポートフォリオの一部として不動産投資を考える場合、どのような考え方で進めればいいのでしょう。不動産投資を考えるシリーズ全4回でお届けします。
不動産賃貸収入はパッシブインカム(不労収入)と呼ばれたりします。不動産を貸すだけで収入が入ってくるわけで、額に汗して働いてえる労働収入とは性格が違うからです。だからといって、賃貸収入を「なんにもしないで得られる収入」と勘違いするのは危険です。なぜなら、不動産の大家(ランドロード)になることは、かなりの労働を必要とすることだからです。どんな仕事もそうですが、たくさん稼ぐためにはそれなりのスキルが必要で、スキルがあればよい仕事ができよい収入が得られますが、そうでないと収入が限られます。大家業の場合もしかりです。以下に大家になると、しなければならない仕事と必要とされるスキルについて整理してみましょう。
よい物件を見つけること
まずは物件ありきです。シリーズ最後に、不動産購入の場合の利益を計る三つの指標を詳しく見ていきますが、まずは利益を生む力のある物件を見つけなければ話がはじまりません。低い空室率で着実にレンタル収入を得られるように、支払い能力のあるよいテナントが簡単に見つかるエリアを見極め、メンテナンスやその他の経費を最小化することができる物件を見つけることです。これは目利きのある人であれば簡単かもしれませんが、知識経験がないとなかなか大変なことでしょう。このスターティングポイントで転ぶと、その後どう頑張ってもうまくいかないことにもなりかねません。物件の目利き選択、これが第一の最も大切なスキルです。
自分に目利き選択のスキルが足りなければ、もちろん不動産のエキスパートに助けてもらうことはできます。ただし、この場合も具体的な数字で、自分の目標とするキャッシュフローやキャピタルゲインがどう実現するのか、その可能性はどのくらいか、そうならない要素は何かなど、よく説明を受けて理解することが必要かと思います。このステップの吟味が甘い状態で不動産を購入することは、ブローカーが進めるままに手数料や内容をよく確認しないでミューチュアルファンドを買うのと同じです。何を購入するにしても自分のお金。物件を見極めるのか、不動産コンサルタントのアドバイスを見極めるのか、対象は違っても「見極め」をスキップするのは後悔をすることにもなりかねません。
よいレンターを選択すること
良い物件が購入出来たら、次はレンターの募集と選択です。私はやったことがないので経験談では語れないのですが、大家業の中核ともいえる大変な仕事のようです。レンターの募集をかけ、応募者のスクリーニングをし、最終的によいレンターを選択するわけですが、なかなか手間と判断力のいることのようです。経験豊かな知り合いによると、彼は応募者のクレジットヒストリや雇用情報を集めるだけではなく、その人が前に借りていた物件の持ち主にコンタクトをして、レンターがどのように物件を扱ったか、過度で不当なメンテナンス上の文句がなかったか、大家との関係は問題がなかったかなどを直接聞き取りをするそうです。現在応募者が借りている物件の大家だと、問題のあるレンターを追い出すために、故意によいコメントをするようなこともあるそうで、そういう可能性のあるときはもっとさかのぼって以前の大家にまでコンタクトをするとのことです。
問題のあるレンター、支払いの悪いレンターは、レンタル収入を下げ費用を上げますので、レンター選択は非常に重要な要素です。不支払いのためのEviction(立ち退き請求)や、荒れ果てた物件の修復などは、できる限り避けたいコストです。反対に、よいレンターが見つかった場合は、市場相当のレントより少しディスカウントをする(あるいは値上げを控える)などして、なるべく長く安定的に借りてもらうというマネージメントも必要です。これはれっきとしたビジネス判断であり、片手間にできることではありません。
次回言及しますが、物件管理会社を使ってこの作業を委託することは可能ですが、よい信頼のおける管理会社を見つけることがまた難しい作業のようです。上にあげたミューチュアルファンドのブローカー、物件探しの不動産コンサルタントと同じですが、有能な専門家に委託をすることはまちがったことではありませんが、そもそも良質の仲介者を選ぶことと、丸投げにしないこと、これはどんな場合にもあてはまることでしょう。
メンテナンスのためのハンディマンやコントラクターを雇うこと
日々起こる問題の修理、ウォーターヒーターやエアコンなどのメンテ、レンターが出た後の改修やリモデルなど、ハンディマンやコントラクターはレンタル物件の必須要素です。ここで大きな出費になると利益ががくんと減ります。大家の多くが、自らハンディマンとして働ける人であったり、コントラクターであったりするのは、この意味で自然なことです。そのような人は自分で機敏に動くことができ、この部分での費用を大きく下げられるのでうらやましい限りです。
自ら手をくだすことができなくとも、自分が近くに住んでいれば、プラマーやペインターなどサンブコントラクトしてくれる人を見つけ、自分がコントラクターとして指示することも可能でしょう。いずれにしても、自分がするかしないかにかかかわらず、ある程度の家回りのメンテや修復についての知識を持ち、コスト管理ができることが必要なスキルになります。自分がしない場合は、見積もりを集めて、実際に作業をする人を選択し指揮管理することになります。これも立派なビジネススキルです。
レンターの選択と同様、物件管理会社を使うことはできますが、その場合は「物件管理会社を管理する」姿勢が必要かと思います。知人の経験ですが、他州にある物件を管理会社に委託していたところ、修理メンテで費用請求されていたもののうち、「架空」の修理メンテが存在したり、実際に修理メンテされたものも、第三者のハンディマンと結託する形で割り増し請求されていたことがわかったケースがあります。委託する場合は、委託先の選択と管理を怠らないこと、やはりビジネススキルが必要です。
ドキュメントをきちんと管理すること
大家業は、収入と費用が発生する立派なビジネスです。タックスリターンは会計士にお願いするとしても、すべての会計情報をきちんと管理しておくことは必須です。また、タックスリターンだけでなく、レントの額はいくらにすべきか、現レンターとの契約更新をすべきか、必要なメンテ回収はなにか、いつするか、費用をどう工面するかなどのビジネス判断を下すためには、情報が必須です。大きなメンテ要素(10年ごとのアプライアンスの取り換え、5年ごとの外壁ペイント、5年ごとのカーペット取り換えなど)はあらかじめ長期的な資金繰りに組み込んでおく必要もあります。また、レンターとのいざこざは訴訟問題に発展する可能性も無きにしも非ずですから、その意味でもドキュメンテーションは必須です。やはりビジネススキルが必要です。
他にもレンタル物件投資で大家業をするうえで必要なことはたくさんあるとは思いますが、まずは主なところをあげてみました。次回は、自分できりもりしようとせず、物件管理会社に委託することについて考えてみます。