REIT とコモディティ ポートフォリオに入れる 入れない?

投資ポートフォリオの核となるのは、株式と債券です。とりたいリスクレベルによって、株式と債券の比率を決めます。株式比率が高ければより高リスク・高リターンです。株式と債券に加えて、投資ポートフォリオに入れるべきと議論されるのがAlternativeとよばれる投資媒体です。オルタナティブ投資とか代替投資と訳されますが、要は株式や債券など「ふつうの伝統的な」投資以外のものです。もちろんAlternativeにはいろいろありますが、特に取沙汰されるのはREITとコモディティです。

REITとは

REITとは real estate investment trustの略で、賃貸収入を生む不動産物件を運営するビジネス組織です。REITファンドに投資することによって、投資家は間接的に不動産を“所有”し、賃貸収入やキャピタルゲインを享受する機会を得ることができます。不動産投資に興味はあるが、自分で物件を見つけたり、購入したり、維持したりするのは難しいという場合には、REITによって間接的な不動産投資ができるというイメージです。

コモディティとは

コモディティ(Commodity)とは、日用品、必需品、商品取引所などで取引をされる商品という意味があります。「〇〇がコモディティ化してしまっている」という言い方を聞いたことがおありでしょうか?本来、高付加価値を持っていたものが、一般的なふつうの商品になってしまい、差別化要素はなくなり価格だけが問題になるような現象をいいます。投資においては、麦やトウモロコシなどの農作物、金やプラチナなどの貴金属、石油などの原材料やエネルギーなどのことを言います。

投資の核となる4要素

冒頭にも書きましたとおり、投資ポートフォリオの核となるのは株式と債券です。株式市場も債券市場も全世界に存在し、リスク分散を最高まで突き詰めた世界分散ポートフォリオには、下の4つの要素が各となります。

  1. US 株式 
  2. US以外外国株式
  3. US債券
  4. US以外外国債券

さてこれに、REITやコモディティなどのオルタナティブファンドを加えるべきなのかどうかというのが、今回の論点です。

昨今では、リタイヤメント目標年を決めるだけで投資が始められるターゲットデイトファンドの人気が高まっており、401(k)などではほぼデフォルト化していますが、これらのターゲットデイトファンドではどうしているのかちょっと見てみましょう。

まずは大御所Vanguardの2035年ターゲットファンドでは、REITやコモディティファンドへの投資はみられません。Vanguardはあくまで上の1)から4)への分散投資に徹しています。

次にターゲットデイトファンド業界2番手のFidelityはどうでしょうか? Fidelity Freedom Index 2035の構成要素は以下のようです。やはり、US株式、外国株式、US債券、外国債券の組みあわせで、REITやコモディティは見当たりません。

Charles Schwabはどうでしょう?以下はSchwab Target 2035 Indexの内容です。こちらはREITに5.13%当てています。一方で、コモディティへの投資はありません。基本的には、US株式、外国株式、US債券(Schwabは外国債券には投資せず)の構成になります。

REITもコモディティも、あくまで投資の核である株式と債券ファンドに、ちょっとだけいわばスパイス的に混ぜるものであり、何十パーセントも割り振るようなものではありません。ただ、入れた方がいいのか入れなくていいのか、どうもその辺り釈然としませんね。

考え方のガイドラインとして以下を書きます。

REITはすでに含まれている

US株式ファンドやUS以外外国株式ファンドなど、市場全体をカバーする高分散の株式インデックスファンドに投資しているのなら、すでにそこにはREITが含まれています。たとえば、Vanguard Total Stock Market Index Fundは、アメリカ市場の大型、中型、小型を含む企業をカバーしていますから、もちろんその中にはREIT会社も含まれています。1.72%がREIT会社の比率です。

よって、すでに株式インデックスファンドに投資しているなら、すでにREITは投資しているわけです。株式インデックスファンドにすでに投資している上で、「REITに投資すべきか」と考えるのは、「株式市場全体にすでに投資しているけれど、特に不動産ビジネスセグメントにウエイトを置きたいかどうか」、つまり他のヘルスケアやITやユーティリティ・・といった産業の中でもとくに不動産部門に特別に賭けたいか・・という問題になります。

高分散で市場全体にまんべんなく投資し、市場の全体的な平均を確実に狙っていくインデックス投資の観点からすると、その必要はなく、またどちらかというとそうしないほうがいいという考え方になるかと思います。

コモディティは投資なのか?

ではコモディティはどうでしょうね。コモディティは、株式や債券とは投資的な意味あいが異なるという考え方があります。投資の定義のしかたにもよりますが、「経済活動で生まれた利益を配分する配当金」や「貸したお金に対する利子」を期待したり、「将来的な経済成長によって株式の値段が上がること」を期待して、お金を投じることを投資と呼ぶならば、コモディティはちょっと違うという考え方です。コモディティ自体には経済活動や経済成長はありません。コモディティは原材料です。原材料の値段は、基本的に需要と供給で決まります。

インデックス投資の基本にあるのは、長期的な経済成長への期待です。会社や国やひいては世界経済が、たとえ短期的にはアップ&ダウンはあったとしても長期的には成長していくことで、投資の利益を獲得することを目的にしています。一方で、その時その時の需要と供給で値段が決まるコモディティには、「長期間保持していれば、かなり確実に成長し値が上がる」という前提がありません。利子もなければ配当金もない、キャピタルゲインが必ずあるとも限らない・・コモディティはFX(外国為替)や仮想通貨などと同じで、投資ではなく投機(上がるか下がるかわからないが、その値動きに賭ける)であるといえます。よって、高分散のインデックス投資ポートフォリオには属する必要のないものだと思います。

ちなみに市場が揺れるとよくゴールド投資が取りざたされて、「今こそゴールド投資!」などという宣伝を見たりしますが、そのゴールドでさえ長期的に見た場合好ましい「投資成果」や「インフレ対策」を提供するものではありません。

1802年から2013年までの間、インフレーションを差し引いた実質利回りを比べたのが上の表です。この間ずっとキャッシュで持っていれば、インフレのせいで年間1.4%ずつ価値が目減りしました。ゴールドで持っていたら、年間0.6%ずつ価値が上がったので現金よりはましです。ところがTreasury Bill(US国債)でさえ、年平均2.7%の利回りを出しています。株式なら6.7%です。長期で見た場合は、ゴールドは決して有意義な投資ではありません。短期的に売り買いをする投機では、値動きにうまくのりラッキーであれば大きく儲けられる可能性はありますが、長期パッシブインデックス投資の考え方とは反します。

ということで、Smart & Responsibleでは、投資ポートフォリオの中にはREITとコモディティを含むことはとくにお薦めしていません。

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