日本とアメリカ 老後の必要資金くらべ

アメリカ暮らしも通産18年近くになり、働いたのも貯めたものもほとんどアメリカとなると、日本の年金や保険やその他のしくみなどまったく無頓着になっておりました。。でもわからないなりにも調べてみました、日本の老後。日本ではどのくらいあれば老後の生活が送れるのか、アメリカと比べてどうなのか・・ちょっとキョウミありますね。。

 

日本の生活費

平成23年(2011年)の総務省の発表よると、リタイヤメント後の高齢者夫婦二人世帯の典型的な月の生活費は以下のようだそうです。

nihon_retirement_monthly_cost

合計で23万円の支出です。ただこれは、最低レベルで算出したもので、旅行をしたり少々の贅沢をしたりなどゆとりのある老後生活をしたいとなると、月額37万円くらいあるのが好ましいそうです。これは夫婦ふたりの生活費なので、先に夫が亡くなって妻だけになった場合、最低レベルで15万円ほど、ゆとりレベルで25万円ほどを見込むとよいようです。

アメリカの生活費

これがアメリカだとどうでしょう?日本のサイトでは上記のような「典型的な高齢者世帯の生活費」のような情報がたくさん見つかるのですが、このような情報はアメリカではなかなかありません。この貧富の差の激しい多民族国家で、そもそも「典型的」とはなんぞやというところが問題になります。

日本の場合は、定年60歳まで勤めた平均的なサラリーマン家庭を想定しているようですが、アメリカの場合は「平均的なサラリーマン家庭」という像がありませんね。ということで、アメリカでは「典型例」で攻める代わりに、「リタイヤメント直前の最終年収の70%」などという数字を、リタイヤメント後の生活費と見込むことが多いようです。この70%は別に60%でも80%でもいいわけで、個人的な状況によって変更します。

それでもある程度のモデル例がないか調べたところ、こんなのがありました。ベースライン(贅沢しないそこそこの生活)モデルで、月額$4,000が必要としています。想定しているのは、アッパーミドルクラスのneighborhoodのこじんまりとした家に住んでおり、燃費のよい車に乗り、無駄遣いはせず、健康に気を使い、節約しながらもたまに外食や旅行を楽しみ、時折本を買ったり映画に行ったりして老後を豊かに暮らしている夫婦。家は返済済みの持ち家。こう見ると、案外節約してこじんまりと気持ちよく生きる日本人の夫婦とそんなにイメージが遠くないですね。生活費$4,000は日本の夫婦と比べるとちょっと高めですけども。

おそらく違いは保健医療費と直接税・社会保険料あたりだと思われます。日本は保健医療費が1万2,000円強、直接税・社会保険料が2万3,000円で済んでいますが、アメリカはおそらくこれではまかなえないでしょう。Fidelity社のリサーチでは、65歳の夫婦がMedicare保険料とその他の追加医療保険料、DeductibleやCoinsuranceを含むトータル生涯医療費として用意せねばならない額として$240,000と見積もっています。月割りにすると$1,000レベルの出費となります。日本では、入院しても一割負担あるいは二割負担でいいというのは大きな魅力ですね。しかも歯も保険でカバーされているのは心強いです。日本では、老後は目だの歯だの皮膚科だの診療代がかさんだり薬代が積もり積もって、月々大きな負担になるということはあまりないのかもしれません。そのうえ高額医療費の援助があるので、ちょっと病気をして大きなコストを抱えるということからは守られていますね。

また、直接税に含まれる固定資産前もアメリカは高めである場合が多いかもしれません。評価額にかかる税率は、日本もアメリカも1%から1.4%あたりで大きな差がありませんが、市場価格に対する評価額の設定が日本のほうがゆるいように思います。日本では、土地については時価の60~70%、建物については建築費の50~70%ぐらいだそうですが、アメリカでは市場価格の30%を評価額に設定する“良心的な”場所もあれば、市場価値そのままの100%というところもあります。日本だと、東京の4,500万円のマンションに対し固定資産税が14万円とか17万円とかいう例を見つけましたが、アメリカで$450,000の家を持っていたら、$5,000近い固定資産税を払わねばならない場合も多いでしょう。月にして$400の出費となります。

これらの違いが、日本の最低ラインが23万円に比べアメリカのベースラインが$4,000である理由かと思われます。

日本の必要資金

必要となる老後資金はおいくらでしょう?日本のファイナンシャル・サイトでみかける計算はこんな感じです。

日本人の平均寿命は、男性79.44歳、女性85.90歳(2011年データ)とすると、65歳からの老後平均期間は、男性15年、女性21年ということになります。前述のとおり、最低レベルの月額生活費が夫婦二人で23万円、妻だけで15万円、ゆとりレベルの月額生活費が夫婦ふたりで37万円、妻だけで25万円としましょう。そうすると老後資金として必要になる額は・・・

最低レベルで

23万円x12ヶ月x15年 = 4,140万円

15万円x12ヶ月x6年 = 1,080万円

合計 5,220万円

ゆとりレベルで

37万円x12ヶ月x15年 = 6,660万円

25万円x12ヶ月x6年 = 1,880万円

合計 8,460万円

ということになります。実際は、ぎりぎりでは心もとないですし、葬儀代や子どもへの援助などの経費は含まれていませんので、できればこれに1,000~2,000円くらい余分があると心強いようです。6,000万円から1億円ほどあるといいということでしょうか。

収入のほうはどうでしょうか。サラリーマン家庭で妻が専業主婦とすると、夫婦二人の厚生年金は月額23万円ほどだそうで、そうするとトータルで4,300万円ほどが年金として給付されることになります。これに加えて退職金が受けられる場合は、勤続35年以上の大卒総合職で約2300万円、高卒総合職は約2000万円、高卒現業職では約1700万円くらいらしいので、あわせると

年金 4,300万円

退職金 1,700万円~2,300万円

合計 6,000万円~7,000万円

ということになります。そこで・・・必要となる老後資金と収入の差の数千万円(人によってはゼロでもいいかもしれませんが)を自力で貯めておくことを提案しているサイトがたくさんありました。

アメリカの必要資金

アメリカのアプローチは、日本のようにこう簡単にいきません。通常は、カリキュレータがあって、年収、退職後の希望生活費、ソーシャルセキュリティ年金の予想額、その他の企業年金予想額、投資の利回り、インフレ率などなどさまざまな情報を入力して、必要資金やリタイヤまでの積み立て必要額などを決めていきます。以前にもこのようなカリキュレータをご紹介したことがあります

アメリカの場合、多様な人々がいる国家なので平均的なモデルケースというのがつくりにくいのか、あるいは平均的なモデルに納まるのを嫌う国民性なのか、日本のようなモデルケースは目にしません。

しかしながら、カリキュレータは使いにくいので、もう少し簡単に目安を知りたいという要望はありまして、いろいろな金融機関などが「最終収入の倍数モデル」を作り出しました。たとえば、平均的な勤労者なら65歳までに最終収入の11倍の貯蓄が必要・・・というような具合です。最終年収が$75,000の夫婦なら$825,000、最終年収が$100,000なら$1,1millionが必要ということになります。この倍数モデルの○倍というところは案外差があって、Fidelityは8倍でOKとしていますし、T. Rowe Priceは12倍が必要としています。これは、かなりのざっくり大雑把な目安です。

いずれにせよ、日本の数千万レベルからすると大きな資金が必要とされていますね。ひとつには、アメリカは退職金がない場合がほとんど、確定拠出型の401kモデルがデフォルトですから、この$825,000なり$1.1millionの必要資金の中に、その残高も入っているという違いがあります。ま、日本の数千万レベルというのは、日本の年金と退職金がもらえる人ですが、アメリカに住む人が老後日本に帰った場合で、日本の年金と同じレベルの年金をアメリカからもらい、退職金部分だけ401kでカバーするとすると、5~6千万円貯めておけばOKということでしょうか。

この必要額の計算法ですが、日本のほうは単純計算で、月額生活費x12ヶ月x○年という掛け算で対応していますが、アメリカのほうはインフレ率や運用利回りを鑑みると同時に、Time Value of Money(10年後と$1と現在の$1は価値が違いますから、そのあたりの調整)を考慮して、もう少し複雑な計算をしている場合がほとんどです。昨今の日本はインフレどころかデフレ状態ですので、インフレ率を考慮する必要もないのでしょうが、アメリカは健全なインフレ率をキープすることを目指していますのでこれを無視することはできません。また、アメリカでは同時に運用利回りも必ず計算に入ってきます。適切な投資ポートフォリオを組んで運用することなしには、おそらく多くの人が老後の必要資金をまかなうことは難しいでしょう。インフレを考慮する場合には、とくにそれを超える利回りを出していることが非常に重要です。日本では、インフレも利回りも考慮に入れていないのは、投資をして増やすということがまだ一般的でないからなのでしょうか。日本の現状はよく知りませんが。。

以前のブログ記事にいただいたコメントで老後はやっぱり日本で・・とお考えの方が案外いらっしゃることを知りました。文化的にも、医療費などの金銭的な面でも、やっぱり老いたら日本・・というのは自然な考えですね。医療費は安くインフレがなく・・・というのなら、アメリカで一生懸命貯めて老後は日本に戻るというのもいいかもしれませんね。でもインフレがない国って、経済的に大丈夫なのかという疑問は残りますけど。最近、日銀もインフレ目標を作ったみたいですから、日本もインフレを無視できなくなるかもしれません。あと、日本の高齢者医療はこれからどうなるのでしょう?それから大きな問題は為替ですね。アメリカはどんどんお金を刷ってインフレで、日本はお金を刷らないと、やっぱりどう見てもドル安円高。一生懸命ドルで貯めても、ドルの価値が低ければ元も子もなし。。ま、できることだけ今やって、心配はそのときすればいっか~。

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15 comments

  1. へぇ~~(^^) よく調べられましたねー。日本の平均的な年金は月額24万円で、28万(37万円でなく)あれば旅行に行ったりできるとか聞きます。その一方で一家4人の平均年収は400万円ですよ。本当に夫婦で24万円も必要なのかと思います。実際ウチは日本にいる月は直接税・医療費などの12分の1を足しても20万円以下で十分生活しています。ヨーロッパでロングステイしても、食費・光熱費・娯楽費などは日本で使う分をヨーロッパで使っているので、余分にかかるのは旅費・アパート代だけ。

    でもウチがアメリカに住んでいれば、つれあいの年金額と私の収入ではロングステイというライフスタイルは無理です。理由は簡単、固定資産税と健康保険です。アメリカで払うであろう固定資産税と健康保険代でロングステイしているようなもんです(^0^)

    それでも、老後はマレーシアどころかブルガリアまで行かれる方々が結構おられますkら、JJさんも日本と言わず、そういう方面を目指すのもアリかと。。。

    1. へぇ~!28万円で旅行に行ったりできるのですか!アメリカではちょっとありえませんね。なんかケタが違いますね。ズバリ、固定資産税と健康保険ですか。病気になれば医療費もですね。一家4人の平均年収が400万円ってホントですか!!アメリカ(とくにここ南カリフォルニア)ではなかなか苦しいですね、その年収では。固定資産税どころか、モーゲージでもレントでもごっそりとられます。いやあ、アメリカは絶対豊かな国ではない!と確信しています。cachacaさんの、豊かな生き方、共感を覚えます。賢く節約して、豊かに使う!これからリタイヤメント・プラニングには、国外脱出プランも組み込みます!

  2. ここではよく、何かに払ったお金に対する見返り率を調べておられますが、アメリカの健康保険料はどう思われます?雇用されている方は自分の負担額はそれほどでもないかもしれませんが、私の友人たちのように50代後半で非雇用で全額自分で払っている額(1人で年間15000ドルとか)だと、見返り率など考えたら払ってられないと思ってしまいます(^^;   fidelityの65歳夫婦で年間24000ドル(240000はミスタイプですよね?)となると、さらに???です。

    日本の住宅にも言えます。10年経つと上モノ(土地は別)は価値ゼロと言われますからね。

    ところで、リンクさせていただいてもいいでしょうか?

    1. cachacaさん、$240,000は65歳時点での生涯医療費見積もりです。(すいません、定義があいまいで。本文に、「生涯」と付け足しました)いやあ、でも老後、年間保険に15,000ドルとかちょっと病気がちだと20,000ドルとかいう数字は大いにありえますね。見返り率、全然悪いと思いま~す。でも、保険がないと、もしもの大病の時にすべての資産を失うというような上方リスクがあるので、それを回避するというのに必要ということじゃないでしょうか。ちょこちょこの通院や薬ではモトがまったく取れませんが、でも1週間入院したら$80,000とか請求が来てしまう国ですからね。
      日本の住宅は10年経つと上モノは価値ゼロ・・・ですか。ここ南カリフォルニアでは、1945年の家でも十分「価値あり」で税金もごっそりとられますからね。いや~、不思議な国ですよ、アメリカは。。リンク、ぜひお願いいたします。

      1. >日本の住宅は10年経つと上モノは価値ゼロ
        スミマセン、20年です。人のミスタイプを言ってる場合じゃない(^^;
        >でも1週間入院したら$80,000とか請求が来てしまう国
        私も友人たちから聞いています。ある友人は日帰りの子宮摘出手術で14000ドル請求され、保険があってよかったと言いましたが、翌年は年々上昇する額以上に保険料が上がったそうです。

        >もしもの大病の時にすべての資産を失うというような上方リスクがある
        ここが根本的に異常ではないかと思うわけです。義父が29年前にアルツハイマーで老人ホームへ入り、義母がまさにこの状況に直面したことをよく覚えています。

        どの国も善し悪しがあるので全体に見てどこが自分に合っているかですねー。
        リンク、ありがとうございます!

        1. いや~、全体的に見てどこが自分に合っているんでしょう。。わたしもわからなくなりました~。。将来は、cachacaさんのように、ロングステイでいろんな国を体験してみたいなあ。そのうち、プラハでお会いしましょう!

  3. いつも大変勉強させていただいております。素晴らしい知識、情報をお持ちですね。さて、私もアメリカ生活31年になりますが、老後は日本でと考えております。今は、永住権を保持しております。日本に帰国する際にアメリカで増やした資産を国外へ持って行くのにどの位税金がかかるのか、もしくは事前に対策する事柄、情報等をご存知でしたら是非是非シェアしていただきたく願います。

    1. コメントありがとうございます。このような質問をお受けすることがよくあるのですが、この件は日本とアメリカの税務に詳しい会計士さんの専門分野であり、しかも個人個人のケースでかなりバリエションがあるので、私では力不足です。もし今後勉強してみて、ジェネラルな部分で何かわかったら記事を書いてみますね。

  4. 私自身も勉強するべき大事な事柄ですね。
    何か情報が入りましたら宜しくお願い致します。

  5. 初めまして。コメント初めてします。
    私も少しアメリカでの’リタイアについてブログで書いていて、ブログ読者さんからお勧めのブログでこちらを紹介していただきました。
    すごい情報量知識量ですね。とてもためになります。

    我が家も徐々に将来アメリカにずっと住むのか?日本に戻るのか?
    日本に戻るとするとどのタイミングで帰ったらいいのか?リタイアしてからか?それともセミリタイアしてから日本か?
    などなど色々なことを考えていますが、結局結論は出ません。

    ブログ記事を拝見すると、アメリカの老後はやはり医療費と税金が高いということのようで将来大きい病気になる可能性が高いのであれば日本の方が安全かなーと思っています。
    もちろん自分や家族が将来大きい病気になるかならないかは予想できませんが。。。

    cachacaさんのコメントにあるようにアメリカと日本以外にもチョイスはあるのは理解しているのですが、どうしてもリタイアしてから自分が生まれた国でもない、ずっと住んできた国でもない場所で生活するのは勇気がいりますよね。
    それを特に気にしない人であれば上手いことリタイア生活が満喫できるのでしょうが。

    1. コメントありがとうございます。マイルの使い方など、楽しくて夢のあるブログをお持ちですね!
      将来のことは、なかなか具体的には想像がつきませんよね。私もです。
      計画はできても、なかなかそのとおりにはいかない部分もあるでしょうし。
      やるだけやっておいて、あとは天に運をまかせる感じです、、我が家も。。

  6. 実は私もそろそろリタイアすることを考えています。米国に30年以上住んでいますし、米国籍もとりました。リタイアしたら今住んでいる場所(米国内でも非常に高い生活費のかかる場所)から引っ越しするつもりです。今は日本に帰ろうかと勉強中。日本に帰るなら住む場所が必要ですから。ただし、友人は日本の不動産は絶対に買わないほうがいいという意見です。値上がりしないからだそうです。日本を選ぶ理由は安全性です。もちろん貯金はすべて米国にあるので日本での生活はちょっと不安です。もし円高になれば、目減りしますから。それでも、日本を選ぼうかと思っています。

    1. そういう方、以前より増えてきたように感じています。不動産は確かに、日米でずいぶん違うのではないかと感じます。アメリカは、建物が古くなっても、市場によってはがんがん値段が上がっていきますが、日本はそうはいきませんね。アメリカは新築・中古もあまり大きな差がなく取引されているように思いますが、日本は違うように思いますし。。為替の問題も悩ましいですね。。それでも日本というのもわかる気がします。。。

  7.  初めまして。私も30年近く在米で、米国籍を取りましたが、数年後に日本に帰ることを考えています。理由は医療費のことが不安なのと、文化的にやはり馴染めなかったことです。
     永住帰国した人のブログや情報を見ていると、日本で賃貸住宅に住むのは本当に難しいそうです! 家主さんが嫌がるとか…。それは日本の事情ですから仕方ないですね。現実問題として、やはり住まいは中古の家を買うつもりです。日本では数十年経てばもう家の値打ちは無くなるのはアメリカとの大きな違いですね。まだまだ中古の家は人気がないようなので、都市部でもまだまだ安く買えると期待しています。維持費とのにらめっこですね。そのまま最期の日まで住んで、あとはお上に召し上げてもらうなり好きにしてもらったら、と思います。
     まあ、仕事を見つけるのも更に困難、ということで、色々準備が必要ですね。今後も時々寄らせてください。

    1. 賃貸が難しいとは聞いていましたが、やはりそんなに大変なのですね。中古の家に対する日米の考え方の差もびっくりですよね。それほど維持費のかからない中古物件(単に中古だから安いだけで、モノとしては悪くない)というようなものって見つけられるのでしょうか?それとも気候や湿度柄、やはり劣化が激しいのでしょうか?築50年でも一億以上の家がわんさかあるカリフォルニアに暮らしていると、どうも想像がつかないです。

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