「今の投資はただ薦められるままに持っているが、老後を見越すと本当にこれでいいのでしょうか」、「401(k)のファンドを適当に決めていますが、これでいいのかいまいち自信がありません」、「できれば早くリタイヤしたいですが、実際それは可能なのかどうやったらわかるのでしょう」などという質問をよく受けます。これらのご質問は、「どんな投資ファンドをお持ちですから大丈夫です」とか、「現在いくらいくらの投資残高があるから十分でしょう」などのように一言でお答えすることは、残念ながらなかなかできるものではありません。このご質問に回答を出すためには、まずはたくさんの情報が必要です。情報を整理して、シュミレーションをしてみてはじめて、判断がつくことが多いものです。どのような情報と手順が必要なのか簡単にご紹介しましょう。リタイヤメントプラニングシリーズとして全三回でお届けします。
Smart & Responsibleでは、リタイヤメント準備分析として下記のような分析サービスを承っています。必要に応じ、部分的に、あるいは各要素を組み合わせて分析を承っています。
これらのどの分析モジュールをお使いいただく場合も、可能な限りにおいて家族情報、財務情報Formというシートにご記入いただくことをお願いしています。なぜなら、そこで集める情報が、真に納得いただける分析結果を導くために必要不可欠だからです。
基本情報
まず必要となるのは、現在の年齢と希望リタイヤメント年齢です。この二つによって、リタイヤメント資金に手をつける必要が出るまで投資をし続けることのできる期間が決まります。ご夫婦の場合には、それぞれにこの情報をお聞きします。年齢に差があって、おひとりがリタイヤ、お一人は働き続けるという期間がある場合や、あるいはソーシャルセキュリティーなどの受給開始年齢に開きが出る場合などは、それぞれ収入の得られる期間とその合計額が何フェーズかに分かれるのでそれも考慮します。
またリタイヤメント分析には寿命の予測値も必要です。ただ、こればかりは誰にも具体的に見積もることはなかなか難しいですね。寿命を短く見積もりすぎると、「まだ生きているのにもうお金がない」という悲しい状況にもつながりがちです。ですから、すでに重い病気を抱えておられるなどの特殊な場合を除き、現在のファイナンシャルプラニングでは寿命を90歳~95歳を目安に設定することが多いです。「え~、今の寿命統計はそんなに長くないでしょ」と思われるかもしれませんが、今後も医療技術が発達していくと、皆さんがその年になる時にはこれらの数値は夢では決してありません。
リタイヤメント時の生活費見積もり
いくらくらいで生活したいかを見積もります。この見積もりは、まずは感覚的にこのくらいあれば・・という数字を出していただきます。日本的な感覚でいうと、ご夫婦で年間500万円とか600万円あれば十分な生活ができることも多いため、$50,000とか$60,000という数字をご記入になる方が多いようです。この数字での生活は、アメリカでお住いの場所や生活の仕方により十分可能な場合もあります。また一方で、かなり厳しいという場合もあります。とくに都市部などの場合、もし持ち家のモーゲージローンが終わっていたと仮定しても、固定資産税が日本とは比べ物にならないほどのかなりの高額になる場合もありますし、また医療保険料や医療費も日本よりずっとかさむと予想されます。ですので、ご希望の生活費予測が実現可能なものであるか、そうでないかを吟味するステップが必須となります。
感覚での数字がある程度現実的なものか測るためには、ふたつのやり方があります。ひとつは、先にご紹介しました財務情報Form(下図がサンプル)にご記入いただくことで、現時点での月々の生活費一覧を吟味する方法です。これらの項目の一つずつがリタイヤメント後にはどのように変化していくかを洗い出していきます。たとえば、リタイヤメントの貯蓄などは現在は必要でも、リタイヤメント後には必要なくなっていますから削除します。また、持ち家がリタイヤメント時には完済しているはずであれば、モーゲージ支払いも削除します。グローセリーの食費も、お子さんが巣立ち夫婦ふたりだけになるのであれば、それにしがたい減額します。
反対に医療保険や診察料などは、リタイヤメント後はある程度確保しておいたほうがいいかと思われます。家族の人数は減るかもしれませんが、職場でコスト安の医療保険に加入されていた方は、かえってリタイヤメント後のほうが保険料が高くなることもあるかもしれませんし、まただたでさえ年齢を重ねれば健康上の問題は増えます。
リタイヤメント後は学費や習い事などもいらないのではと思われがちですが、リタイヤメント後の生活を潤すために趣味や新しいことへの挑戦もあるでしょうから、ある程度の額を確保しておくほうがよいでしょう。また、リタイヤメント後から70代くらいまでは旅行もされたいという方も多いはず。十分なバケーション代も確保する必要があるかもしれません。
このように、一項目ずつレビューしていき、リタイヤメント後の生活を頭に描きずつ生活費の洗い出しをしていくわけです。いずれにせよ、現在の生活費の支出が把握できていると、リタイヤメント後の見積もりもしやすくなります。
もう一つのやり方は、現在の年収を目安にする方法です。これは手っ取り早く使われる方法で、最終年収の70%とか80%などという数字をリタイヤメント後の必要な金額として使うという方法です。年収と生活スタイルおよび生活費はある程度正比例の関係にあることを前提にしているやり方で、リタイヤした後は少しは生活費が下がることを目安に70%とか80%とするという考え方です。アメリカではよく使われる方法ですが、かなり大雑把なな目安であり、特に節約嗜好の日本人には適用が無理な場合も多いです。
たとえば、年収$150,000があるご夫婦でも、節約して貯金にも力を入れているため、貯蓄を除いた純生活費は50%とか60%でも十分という方もいらっしゃるはずです。よってこのやり方は、ある程度の目安にとどめ、先に感覚で見積もった生活費が妥当な線かどうかを大雑把にチェックするために使うために使います。
ここまでで今何歳で何歳まで働くか、何歳くらいまでを寿命と考えるかを洗い出すとともに、リタイヤしてからは月々いくらくらいの生活費がかかるかを調べました。次のステップは、その生活費をサポートするために今まで準備してきたリタイヤメント資産について調べていきます。