小さく始め大きく増やす - キホンの長期投資

「小金が余っているのですが投資を始めるほどではないのです。」という声をよくお聞きします。「どのくらいの小金ですか?」とお聞きすると、十分投資を始めるのに足る金額だったりします。投資にはまとまったお金が必要と考えられている場合が多いですが、 数千ドルから可能です。月々、積み立てるコミットメントがあるなら、もっと小さく始められます。あるいは、「投資を始めたいがどこから始めればいいのかわかりません」という声もお聞きします。投資というとちょっと難しそうに聞こえるかもしれませんが、銀行のオンライン口座のような感覚で、口座を開設したり運営したりできる場合も少なくありません。

 

$500,000ないと投資できない?

実際、ファイナンシャルアドバイザーなどに相談すると最低$250,000とか$500,000の資金が必要などといわれることもありますが、これはそのアドバイザーがそれ以下の投資資産のお客はとらないというだけの話であって、自分で投資を始めるなら話はまったく別です。

なぜアドバイザーはこんな額を提示するのでしょう。その理由は、多くのアドバイザーが、アドバイスする投資額に対するパーセンテージで課金することにあります。投資ポートフォリオを組む場合、大きな投資額になればある程度アドバイスも複雑になるかもしれませんが、実際はそれほど手間が変わるわけではありません。投資額が大きくても小さくても、投資の目的やリスク許容についての分析は同様に必要で、同じような作業が必要です。投資額に対するパーセンテージ手数料が1%の場合、同じような作業をしても$500,000の投資額なら、年間$5,000の収入になりますが、$5,000の投資額なら$50にしかなりません。こういう理由から投資額の下限が設定されているわけで、これはアドバイザー側の勝手な設定です。実際、投資は大金がなくとも可能です。大金がないからこそ投資で増やしたいところですね。

 

かといって払いたくない手数料・・

大金がない場合、ブローカーからファンドを購入するというのはよくある手です。自動的に毎月決まった額をファンドに入れるよう設定してもらうこともできます。ブローカー経由で売られる投資ファンドなら、数百ドルから始められるものもあります。小さく始められ便利ではありますが、ブローカーから買うファンドは多くの場合セールス・ロードと呼ばれる手数料が課されます。このセールス・ロードは数%から6%くらいまでで、決してバカにできる額ではありません。このセールス・ロードがいかに投資リターンを喰うものであるかは、こちらの記事をご覧くださいセールス・ロード以外にも注意すべき手数料はあり、ブローカーに勧められるまま投資ファンドを選ぶのはよくありません。ブローカーにファンドを勧められたら、手数料のかかり方をきちんと確認することと、そのファンドがなぜ自分にとってベストなのかをよく納得することが大前提です。

 

手数料の安いファンドを自分で買う

VanguardやFidelity、T.Rowe Priceなどのファンド会社から、ブローカーを介さずダイレクトにファンドを購入することもできます。これらのファンド会社を利用すると、セールスロードもなく、その他の手数料も非常に低い優良なインデックスファンドに自分で投資することができます。

ただし、こちらは下限が先ほどの数百ドルレベルから少々上がって、数千ドルレベルになります。通常の(課税対象の)投資口座ですと、FidelityやVanguardで$2,500とか$3,000とかという下限、IRAなど(税遅延措置のある)リタイヤメント口座だと$1,000下限あたりです。TD AmeritradeやE-Tradeだと下限設定がなかったり、Scottradeだと$500レベルのようです。

下限設定がある場合、これは1ファンドあたりの下限(あるひとつのファンドに投資する額の下限)であるので、いくつかのファンドを組み合わせてポートフォリオを組もうとすると問題になります。4つのファンドを組み合わせたいのなら、4x$3,000($3,000下限の場合)=$12,000必要ということになるからです。

この問題に対する対処法としては、1) ある程度、資金がたまるまで現金相当品などの低リスク商品で運営し資金がたまったところでポートフォリオを組む方法、2) 下限設定のないETFを利用する方法、3) すでにポートフォリオ化が済んでいるライフサイクルファンドなどを利用する方法があります。

 

で、どのファンドを選べばいいの?

低手数料で知られるVanguardは私のお勧めですが、$3,000から投資可能です。投資開始というと難しいイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、オンラインで口座を開き、銀行から直接送金できますので敷居はそんなに高くありません。

投資を始める場合のもっとも大きな難関は、どのファンドを選べばよいかでしょう。ここで二の足を踏んで、なかなか投資が始められないという方も多いかと思います。ここで大切なことは、深く考えすぎないことです。投資ファンドと言うと多種多様ですが、その何万ものファンドの中から一番いいものを選ばねば・・などと考えると、いつまでたっても始められません。しかも、「一番いいファンド」などというものはそもそも存在しないと考えたほうがよいのです。ある年にナンバーワンの利回りを出したファンドが、数年後には上位10にも入らないということは日常茶飯事です。それより、最もベーシックなファンドにだけフォーカスを絞るということをお勧めします。

たとえば、絵の具の三原色を考えて見ましょう。私の好きな色は、ラベンターのようなパープルと春の空のような薄ブルーとフュージアとよばれるピンクとが混ざったような微妙な色ですが、絵の具屋さんに行っても思ったとおりの色を見つけることはなかなか難しいでしょう。しかしながら、卓越した油絵の先生なら、黄色とマゼンダと呼ばれる赤紫色とシアンと呼ばれる青緑色の三原色で、この微妙な色を作り出すことができます。

ファンド投資も同じで、基本的な株と基本的な債券のファンドにフォーカスを当て、その調合の割合だけを変えることで、自分にぴったりの全体効果をつくるというのが、実はもっとも手っ取り早い方法であったりします。複雑なファンドは手数料も高いことがしばしばですが、基本的なファンドは反対に手数料がもっとも低いというのも利点です。

 

ETFなら・・・

たとえばVangaurdのもっとも基本的な優良インデックスファンドを組み合わせて、資金$3,000ポートフォリオをつくってみましょう。まずはETFでつくってみます。下の例は株60%、債券40%のポートフォリオですが、許容するリスクによりそれぞれの比率は調整、つまり調合の度合いを変化させることができます。

vanguard etf portpolio

先に少し書きましたが、ETFはミューチュアルファンドと違い投資の下限設定がありません。ETFの特徴についての詳しい説明はまた次回にしますが、投資資金が限られていて気軽に始めたいという場合には、利用価値があるでしょう。VanguardにETF口座を開設し、これらのETFシェアを購入する手続きをすれば投資開始です。

 

ライフサイクルファンドなら・・・

先にも書きましたが、投資資金が限られている場合、ETFの代わりにライフサイクルファンドを使うという方法もあります。ライフサイクルファンドはリクス許容度レベルに合わせてすでにポートフォリオ化が済んでおり、自分で調合しなくてもひとつのファンドを購入すればOKという便利なファンドです。VanugardのライフサイクルファンドはLife Strategyファンドという名称で売られています。リクス許容レベルによって4種類のパッケージがあり、株、債券が指定の調合でパッケージ化されています。下の例はModerate Growthという許容レベルのものです。先のETFの例では、4つのファンドを自分で組み合わせましたが、この下のファンドはひとつのファンドを選択すればすでに4つが上の例と同じ比率でパッケージになっています。このライフサイクルファンドはミューチュアルファンドですので、投資額の下限設定がありますが、$3,000の最低限度資金で、すでに調合されたポートフォリオを手に入れることができるというわけです。

vanguard life strategy fund

 

アドバイザーがいなければ投資できない、ファンドが選べないなどとは考えないでください。基本に戻ると、投資はとても簡単です。どのファンドを選べばいいかとか、どのくらいのリスクをとろうか、何%をどのファンドに振ろうかとあまり悩まず、とりあえず上のようにシンプルに始めてみることをお勧めします。必要であればあとで変更は効きますし、今後、追加で投資していくときに他のファンドを買うこともできます。考えすぎるとなかなか始められません。非常時にも借金返済にもその他の中期的目的にも使わないだろうと思われるお金が眠っているのなら、今が始め時です。投資は、「何に投資するか」も大切ですが「いつ始めるか」もとても大切です。

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