生命保険に入っている人は多いけれど、Disability保険(病気やけがで働けなくなる場合の保険)について考える人は少ないようです。しかしながら、20歳以上の勤労者が60台半ばで退職するまでの間に、一定期間disabledとなる確率は10人に3人というデータもあります。ソーシャル・セキュリティーにはこのような場合の保障が定められています。ソーシャル・セキュリティーの1) Retirement Benefits、 2) Disability Benefits、 3) Survivor Benefitsの3つの柱のうちのひとつ、Disability Benefitsについて見てみましょう。
Disabilityという言葉は、日本語では「障害」と訳され「一生続くもの」というイメージを持ちがちですが、ここでの意味はそうではありません。ここでいうDisabilityとは、「病気やケガなどで通常の仕事や生活ができなくなること」であり、わたしたちの誰もが経験しうることです。たとえば、あなたはどうでしょう。交通事故にあい長引くリハビリのため1年間仕事ができなくなっても、その間の家族の生活は守れますか?このような例もれっきとしたdisabilityです。どの年齢をとってみても、死亡する確率よりdisabledになる確率が高いというデータがあります。35歳の方ですと、65歳になる以前に3ヶ月以上のdisabilityを経験する確率は50%、45歳の方ですとこの確率は44%です(the National Association of Insurance Commissioners調べ)。
日本では、「病気やケガで障害が残ったときに受取れる年金」を障害基礎年金あるいは障害厚生年金と呼ぶ一方で、「病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に一時的に支給されるもの」を傷病手当金と呼んでいます。前者は一生残る障害、後者は一時的な障害のことをいうようですが、ソーシャル・セキュリティーのDisability Benefitsは、このふたつを合体させたようなものと考えると理解がしやすいかもしれません。
Disability Benefitsを受ける資格
Disability Benefitsを受けるためには、(1)労働面の条件と (2)Disability面の条件 の双方を満たしている必要があります。まずひとつめの労働面の条件について説明します。
(1) 労働面の条件には、ふたつの要件があり、どちらも満たさなくてはなりません。
ひとつめの要件:“recent work” test
「比較的最近、働いていたか」をテストするものです。長期間働いていなかった人が、そもそも勤労収入がなかったのに、Disability Benefitsを申請することを防ぐものです。
「比較的最近」の定義は、disabledになった時点での年齢によって異なります。
24歳までなら、過去3年のうち1.5年働いていること
24歳以降31歳までなら、21歳から現在までの年数のうち半分の年数を働いていること
31歳以降なら、過去10年のうち5年間、働いていること
ふたつめの要件:“duration of work” test
「十分長期間、働いたか」をテストするものです。disabledになった時点の年齢ごとに、何年働いていなければ資格を得ることができないという年数が定められています。下記を参照してください。
(2) Disability面の条件は、「あなたに本当にdisabilityがあるか」を判断するもので、書類やさまざまなテストなどにより、総合的に判断されるものです。一般的に、ソーシャル・セキュリティーの使う「disability」の定義は非常にきびしいものとなっており、ちまたの保険会社のDisability保険では「disability」と認定されたが、ソーシャル・セキュリティーでは認定されなかったということはよく聞くことです。
現在(病気、けがの後)働いているか
現在働いておりある一定の収入がある場合には、「disabled」とはみなされません。「一定の収入」とは年々見直されますが、2011年の例だと$14,160でした。
症状は「severe(重度)」か
1年以上の間、歩くこと、座ること、記憶することなどの基本的な活動が著しく限定されていることが条件となります。
症状がList of Impairments(障害の症状リスト)に載っているか
List of Impairments(障害の症状リスト)に載っている症状は、十分severe(重度)であるので、法律により自動的にdisabilityに値すると認められるものです。ここにリストされていない症状については、掲載されている症状と同じくらいsevere(重度)であるかを審査されることになります。審査の結果、同じくらいsevere(重度)と判断されればdisabilityと認定されますが、そうでない場合は以下の基準でさらに審査が行なわれます。
以前携わっていた仕事ができるか
できると判断されればdisabilityとは認定されません。できないと判断されれば下の審査に進みます。
なんらかの仕事をすることができるか
以前携わっていた仕事ができない場合、本人の症状、年齢、学歴、経験、スキルを総合的に判断し、その他なんらかの仕事をすることができるかどうかを判断します。できると判断されればdisabilityとは認定されません。
いくらもらえるか
ソーシャル・セキュリティー・サイトのカリキュレーターで、「もし現時点でdisabledになったら、いくらもらえるか」を知ることができます。詳しくは、ソーシャル・セキュリティーの手はじめ(1)-何がいくら貰えるの いくらもらえるの? のセクションをご覧ください。
Disabilityが認定されると本人に加えて、下記の人がBenefitsを受給できる可能性があります。
本人以外にもBenefitsがもらえる可能性のある人:
- 62歳以上の配偶者
- 本人の16歳以下の子どもを養育している配偶者
- 学齢期にある19歳以下の未婚の子ども
- 22歳以前にdisabilityと認定された18歳以上の子ども
留意点
Disabilityが仕事に起因するものであれば、Worker’s Compensation(労災保険)の対象となると考えられます。その場合は、そちらの申請をしましょう。Worker’s Compensationやその他、公的なdisability関連のbenefitsを受けられる場合は、それに応じソーシャル・セキュリティーのDisability Benefitsは減額されることがあります。公的なものでない、その他の保険会社や企業年金などからdisability関連のbenefitsの受給は、ソーシャル・セキュリティーのDisability Benefitsの額を左右することはありません。
自分がdisabledになったと考えられる場合は、すぐにDisability Benefitsの申請を行いましょう。審査には平均で3から5ヶ月かかるということです。
前述のように、ソーシャル・セキュリティーの使う「disability」の定義は非常にきびしいものです。申請の初期ステージで60~80%の申請が却下されるというデータもあります。Disabilityになったときの補償として、ソーシャル・セキュリティーだけを頼りにするのは心もとないことです。本当に必要なときにはこのような補償が存在することを覚えておくことは非常に大切なことですが、、ソーシャル・セキュリティーだけに頼るのではなく、もしも一時的にdisabilityになって所得が途絶えたときの備えを考えておくことが大切です。一時的に働けなくなった場合の所得保障をしてくれるようなbenefitが、自分の雇用者の福利厚生として提供されているか、いない場合は自分でDisability保険に加入する必要があるかを考慮する必要もあるでしょう。
以上、このブログ作成時点での法律にのっとり、概要をなるべくわかりやすくまとめました。それぞれの個別ケースで適用はもっと複雑になることはもちろんありますから、詳しくはソーシャル・セキュリティーのサイトhttp://www.ssa.gov/で確認ください。
いつも貴重な情報を解りやすく拝読しています。
夫がDisabilityの保障が受理されて1年になりました。2年前まで働いていた年数の条件やDrからの証明がすべて受け付けられた事が感謝でした。
質問です。
伴侶のわたくしは今年で60歳ですが、夫のDisabirit受給金額の半分でしょうか?62歳になれば配偶者のベネフィットはいかほどなものでしょうか。実は伴侶である私の働いて来たソーシャルセキュリティーのクレジットスコアが現在17あります。40ポイントで個人が受ける権利がありますが、自営業でこれから仕事をして得る収入から70歳までこれから納めたなら(どのように)満期に受け取るほうが条件がいいのか、計算方法があれば知りたいです。
アメリカでは年金受給(配偶者も含めて)は62歳からです。62歳からだとご主人の額の半額からさらに三十数%減らされると思います。こちらで誕生日と受給開始日を入れるとどのくらい減額されるか計算できます。ご自分のソーシャルセキュリティのベネフィットがどのくらいかはこちらで試算できます。Sousal Benefitをもらいつつ働くというのは、Benefitを減らされたりすることもありあまり具合がよくありません。日本では働かれていましたか?それであれば、その分も40クレジットのなかに換算してもらえるので、あと23クレジット無理に働かなくてもよいかもしれません。