Last Updated on 2016年1月7日 by admin
「ソーシャル・セキュリティーは決められたとおり、もらえればそれでよし」と安易に考えていませんか?受給についてのルールを把握し、受給するBenefitsの種類や受給開始のタイミングをうまくプラニングすることで、生涯に受けることができる受給額の合計には、何万ドルもの差がでてくる可能性があるのをご存知でしょうか?一生懸命働いて納めたソーシャル・セキュリティー・タックスですから、Benefitsを受ける立場になったときには、正しい理解できちんと利用していきたいですね。
では、受給額をできるだけ多くするにはどのような点に留意すればよいのでしょうか。
受給開始のタイミングを見計らう
ソーシャル・セキュリティーでは、各人のFull Retirement Age(生まれた年により決まり、65歳から67歳の間)というのが規定されており、各人がFull Retirement AgeでRetirement Benefitsの受給開始を始めたときに受給できる額をFull Benefits(満額)あるいは Basic Amount(基本額)と呼んでいます。 Retirement Benefitsを受け取ることができる最低年齢は62歳ですが、Full Retirement Age以前に受給を開始すると、受給額は減額され、満額あるいは基本額より少ない年金になります。また、反対にFull Retirement Ageを超えてさらに受給開始を遅らす(最高70歳まで)と、遅らした年数に応じて満額あるいは基本額に上乗せがされ、受給額が増やされます。この減額、増額は、永久的(死亡するまで)なものです(詳しくはこちらをお読みください)ので、受給開始のタイミングはよく考慮して決定することが必要です。
この点を考え合わせると、健康であり、平均寿命まで、あるいはそれを超えるまで生きるだろうと予想されるならば、できる限り受給を遅らしたほうが月々の受け取り額が多くなり、結果的に受け取る生涯年金の総額(死亡するまでの合計額)も多くなると考えられます。反対に、すでに大変な病気を抱えていて、残念ながら平均寿命までは生きられないと考えられる場合は、できるだけ早く受給を開始したほうがいいかもしれません。
Benefits算出方法を知る
受給できるRetirement Benefitsの額は、受給の開始時期により左右されるだけではありません。Benefits算出の計算には、過去35年の収入(35年以上働いた場合は、もっとも高いほうから35年分)の平均値が使われます。働いた年数が35年に満たない場合でも、割り算の分母は35ですから、収入のない年があればあるほど、Benefitsの額が引き下げられる結果になります。結果的に、できるだけ長く、できるだけ多く収入を得ることが、Benefitsの額を引き上げることになります。
たとえば、あと2年働けば働いた年数が合計35年になるというのであれば、あえて2年働き続けることで受けられるBenefitsの額を大きくすることができるわけです。
働き続けながらのBenefitsを受給すると…
Full Retirement Ageに達する前に、働き続けながらBenefits受給を開始すると、Benefitsが減額されることがあります。年々、労働収入(Earned Income)の限度額が決められ、この限度を超えた労働収入がある場合に、Benefitsの減額が起こります。実際には、限度額を超える収入2ドルにつき、Benefitsが1ドル減額されます(Full Retirement Ageを迎える年には、この額を超える収入3ドルにつき、Benefits1ドルの減額)。2010年と2011年の限度額は$14,160でした。たとえば、労働収入が$14,260であり、限度額の$100超であると、Benefitsが$50減額されるということです。案外の割合の減額ですね。なお、労働収入とは、文字通り労働による収入であり、投資の利益やレンタル収入などは含まれません。
Full Retirement Ageに達するまで待って受給を開始すると、いくら労働収入があってもBenefitsの減額はありません。
できれば、労働できるうちは受給を受けずFull Retirement Ageまで待つか、あるいはFull Retirement Age以前に受給を開始するのであれば労働収入を限度額以内に押さえることが得策です。
夫婦でのBenefits受給を計画的に行う
夫婦でのBenefitsの受給プラニングは、勤労者ひとりだけのプラニングに比べて複雑です。受給のタイミングと受けられるBenefitsの額をよく吟味し計画的に行うのとそうでないのでは、夫婦ふたりで受ける生涯年金総額は何万ドルもの差がでてくることもしばしばです。
夫婦ともに働いていた場合は、夫と妻のそれぞれの勤労者本人としてのRetirement Benefitsふたつと、それぞれが配偶者の立場で受けられる Spousal Benefitsふたつ、そして最終的にはどちらかが先立ったときの残された方が受けるSurvivors Benefitsひとつという5つのBenefitsの選択肢があることになります。この5つの選択を、どの順序でどのタイミングでどのように受けるかをコーディネートすることが必要になってきます。
配偶者として受けられるSpousal Benefits とSurvivors Benefitsについては、以前のブログに書きましたが、 このルールに基づき、夫婦の年齢、収入履歴、寿命予測などを考え合わせて受給計画をすすめます。
一般的には、夫婦のうち収入が低かったほうは、受給が可能になり次第受給を開始し、収入が高かったほうは70歳までRetirement Benefitsの受給を伸ばすというのが、ふたりの生涯受給額を大きくするする方法だと考えられています。
たとえば夫のほうが高収入であった4歳違いの夫婦の場合、妻は62歳になった時点で、自分の収入によるRetirement Benefitsか夫の収入による Spousal Benefitsのうち、高額のほうを受給し始めます。このとき夫は66歳のFull Retirement Ageです。妻がSpousal Benefitsを受給するためには、夫もこの時点で自分のRetirement Benefitsを申請する必要がありますが、申請後すぐ受給を一時停止(suspend)することができ、こうすることで夫のRetirement Benefitsは年に8%の率で増え続けます。夫が70歳になったとき、夫のRetirement Benefitsは受給できる最高額に達し、この時点で夫は受給をはじめます。その後夫が亡くなった時点で、妻はSurvivors Benefitsに切り替え、夫の受給していたRetirement Benefitsを受給できます。これにより、夫婦ともに寿命近くまで生きた場合、夫婦の生涯受給額はもっとも大きくなり、また同時に夫が先立ったとき、残された妻により高額な年金を確保することができます。(注:この方法は、2015年の法改正の影響を受け、利用が限られるようになりました。詳しくはこちら。)
このようなプラニングを簡単にするカリキュレータをご紹介します。AARPの提供しているカリキュレータで、 夫婦の生年月日、年収などを入力すると、どのBenefitsをどのタイミングで受給するのがよいかを計算してくれます。たとえば下は、1964年生まれの夫と1968年生まれの妻で、現在の収入が夫$100,000、妻$40,000の場合の計算結果です。
以上、このブログ作成時点での法律にのっとり、概要をなるべくわかりやすくまとめました。それぞれの個別ケースで適用はもっと複雑になることはもちろんありますから、詳しくはソーシャル・セキュリティーのサイトで確認いただくとともに、ファイナンシャル・プラナーなどプロフェッショナルにご相談ください。
Junkoと申します。夫はアメリカ人です。
私たちは日本での生活が長く、アメリカのソーシャルセキュリティの詳細に関しては、恥ずかしい話ですが、このサイトを見るまでは、ほとんど知りませんでした。
夫は自営業をしておりまして、セルフエンプロイメントTAXを短期間ですが、少しずつ払っていました。しかし、その額はとても少なかったので、年金は出るとしてもごく僅かです。
夫は今年65歳です。
そこで、質問ですが、70歳で年金をもらうと計画した場合ですが、
(リタイヤして)66歳以降全くセルフエンプロイメントTAXを払わない場合と、
66歳以降も(70歳まで)TAXを払い続ける場合では、70歳で受け取る金額は違ってくるのでしょうか?
実は、夫は病気のため障害者となりましたが、在日アメリカ大使館によると
障害年金の申請は相当面倒な手続きとなる、場合によっては2年くらい時間がかかることもある。。などの説明でしたし、もらえたとしても非常に僅かな額なので、そこまで面倒なことをする気力もなく、66歳まで待つか、それとも少しでも増やした方がいいのか(70歳まで待つ)、と考えているところです。
お時間のあるときに、お答頂けると大変助かります。
宜しくお願い致します。
Junko
Junkoさん、こんにちは。Disability Benefitは確かに非常に時間がかかります。ただ、アルツハイマーなど一部の病気についてはかなり早く受給できるような措置がされているようです。Disability Benefitは、full retirement ageで自動的にretirement benefitにスイッチされます。なので、たしかに面倒な手続きを今の時点で時間をかけてする意味はあまりないかもしれませんね。retirement benefitは、生涯の年収のうち一番高い方から35年分を加算し、それを35で割った年収を計算に使います。なので、66歳以降も働かれて「35年分の最も高い年収」のベースを押し上げるのであれば、受給額が増えるのではなかと思います。Junkoさん、今日本にいらっしゃるのでしょうか?ソーシャル・セキュリティ・オフィス(SSO)に直接相談されることはできるのでしょうか?SSOに行くと、かなり親切に教えてもらえると思います。
早速のお返事ありがとうございます。
はい、現在日本におりますので、SSOで説明を聞くことができません。。。
でも、このサイトを通して良い情報を得ることができ、英語の苦手な私には非常に助かっております。
いろいろと疑問があるのですが、何をどうお聞きしたらいいのか・・・
ちょっと考えてしまいました。
そうですね。やはりもうしばらく支払いを続け、底上げするしか方法はないようですね。でも未だ、よくわからない点ですが、
・66歳(Full Retirement Age)でリタイヤして、70歳で年金支給を受けることにした場合、その間全くTAXを払わなくても、受給額は8%ずつ増えるのですよね?
ただひたすら、70歳まで我慢ってことですね?
・それでは、70歳までリタイヤすることにしてセルフエンプロイメントTAXの支払いを続けた場合、その間の支払い分(66歳から70歳まで払うTAX)も8%増加分の対象となるのですか?
・また、Survivor’s Benefitsに関しては、夫がFull Retirement Age以降に死亡した場合、(夫が)受給する予定の年金を、妻は(月々)全額もらえるのですね?
でも、妻が日本で日本の年金を受け取るとなった場合、そのSurvivor’s Benefitsは減額されるのでしょうか?
すみません、お答できる範囲で教えて頂けたら大変助かります。
Junkoさん、ご質問の件、
・66歳(Full Retirement Age)でリタイヤして、70歳で年金支給を受けることにした場合、その間全くTAXを払わなくても、受給額は8%ずつ増えるのですよね? ただひたすら、70歳まで我慢ってことですね? –>そのとおりです。
・それでは、70歳までリタイヤすることにしてセルフエンプロイメントTAXの支払いを続けた場合、その間の支払い分(66歳から70歳まで払うTAX)も8%増加分の対象となるのですか? –> その支払い分も、Retirement Benefitの額を計算されるのに考慮され得ます。「され得る」というのは、Benefitの計算では、一番年収の高い35年分の年収が考慮されますから、もし支払い続けた年収がそこからはずれれば、計算には入りらないということです。一番年収の高い35年分の対象となれば、計算に入り、Benefitの額があがり、8%増加の対象となるはずです。
・また、Survivor’s Benefitsに関しては、夫がFull Retirement Age以降に死亡した場合、(夫が)受給する予定の年金を、妻は(月々)全額もらえるのですね? でも、妻が日本で日本の年金を受け取るとなった場合、そのSurvivor’s Benefitsは減額されるのでしょうか? –> 夫がFull Retirement Age以降に死亡し、妻がFull Retirement Ageに達してから受給を開始する場合、(夫が)受給する予定の年金を、妻は(月々)全額もらえるはずです。妻が、早期に受給を開始すれば、減額の対象となります。ソーシャルセキュリティのBenefitの額は、働いているうちに受給すると減額されますが、他の国の年金を受けることで減額があるかどうかは聞いたことがないので、(おそらくないと思いますが)知りません。
アメリカ大使館のFederal Benefits Office という部署のSocial Security Benefits and Assistance という係があるようですが、ここで以前お話をお聞きになったのでしょうか。「ソーシャルセキュリティに関するご質問は・・ご連絡ください」と書いてあるので、詳しく説明してくれるのではないでしょうか。ホームページはこちら。
いろいろとありがとうございます。
大変参考になりました。
アメリカ大使館のその部署にはTELで尋ねたことがあります。
たまたま当たった人が悪かったのかもしれませんが。。
答えがすごく曖昧で、不親切でした。
そして、なんと「一番年収の高い10年分の年収が考慮されます」と説明を受けました。
これには、なぜか納得できなかったのです。
やっぱり、違いましたね。
こういう経験をしていると、またTELしたいと思わないのですよ。
このHPを見つけて良かったです。
そうでしたか・・・。これからの情報探しがスムーズにいくといいですね。。お祈り申し上げます。
こんにちは。
有益な情報を解りやすくまとめていらっしゃることに感銘しました。
私自身の調査・理解とほぼ同じですが2点だけ。
◇繰下げ受給
受給開始を一月遅らせるごとに2/3%、最高32%(4年間)受給額が生涯増えるのですが、年率8%相当なので累積総受給額が追いつくのに12年半かかります。つまり、例えば68歳の誕生日(の翌月)から受給開始すると、FRAで66歳から受給開始した場合と同じ累積総受給額になるのは80歳半になります。80歳半以上長生きできれば良いですが、もしそれ以前に死んでしまえば遅らせた分だけ損します。
ただし問題はそう単純ではなく、SS以外の勤労所得、利子・配当所得、401(k)のディストリビューションなど課税収入が一定額を超えるとと、SSの最高85%までが連邦所得税(及び一部の州の所得税)の対象となるので、SSを受給しながらそれらの収入もあると、SSの「手取り」が減少します。一方、SSの受給開始を遅らせた期間、IRAや401(k)などの投資性貯蓄を取り崩すとなると、それらの元金減少に伴って期待リターンも減少してしまいます。
その他物価上昇だの「来年の10ドルより明日の5ドル」という主観的なドルの価値などいくつかの要素があって、単純に「70歳まで受給を遅らせたから32%増えた。嬉しい!」と言うものでもなさそうです。この辺をモデル化して、スプレッドシートでシミュレーションしてみようかと考えていますが、試されたことはありますか?
それとこれは質問なのですが、SSを受給しながら得た所得は将来の受給金額に影響するのでしょうか?例えば、66歳までは年収$50kクラスだったが67歳にして年収$1Mの仕事を始めたような場合です。それとも受給金額のベースは受給開始時に固定されて生涯変わらないのでしょうか(CPIなどによる調整は別です)?
◇WEP
WEP(Windfall Elimination Provision=棚ぼた排除条項)について何も書かれていないようですが、私の理解力不足が原因なのか、SSAの説明がイマイチあいまいで、日本の公的年金を受給した場合の減額分の計算に困難を覚えています。こちらのサイトの来訪者は日米両国の年金受給権がある人が多いと思われるので、もしお分かりになっていることを解説していただけると助かると思います。
よい情報をありがとうございます。たしかにかなり変数が多いので、スプレッドシートなどでシュミレーションできたりしたらすばらしいですね。残念ながら私にはそこまでの意気地がありません。。。SSも保険みたいなものですから、結局自分の健康や寿命に関係してきますので、確かに一概に受給を伸ばしたほうがいいとは言えませんね。
SSを受給しながら得る所得は、フルリタイヤメントエイジ以降なら受給額に影響しないと思います。SSのページには..Starting with the month you reach full retirement age, you can get your benefits with no limit on your earnings. とありました。
WEPについては知りませんでした。そのうち調べてみようと思います。こんなスクリーンツールがありましたがご存知でしたか?これで両国それぞれで働いて、それぞれでSS税を納め、それぞれから年金をもらう権利があるというようなふうに入力すると、WEPが適用されると出ました。細かい情報を入れるといくら減税されるか計算するツールもあるようです。
私はアメリカに住んでおります。国籍もアメリカ人です。35年以上働いてます。
今年66歳になりますので、ソウシャルセキュリティーの手続きをしたいと思います。
しかし、今の仕事は続けて行きます。
その際、幾らの給料を貰っても、問題ないでしょうか?又、妻は64歳になりますが、
妻も貰えるのでしょうか?何が一番良いか
分かりません、何かアイデアを教えて頂ければ助かります。
Full Retirement Ageにもうなられているか、そうでなくとももうすぐFull Retirement Ageでいらっしゃいますね。Full Retirement Ageを超えたらば、どれだけ労働収入があってもソーシャルセキュリティは減らされません。また、奥様も(10年以上婚姻関係)ご自分のソーシャルセキュリティかあるいはご主人の半額(ただし、Full Retirement Ageまで待たないと減額あり)がもらえます。ソーシャルセキュリティオフィスに行かれて相談されるとよいかと思います。