アメリカの社会保障制度であるソーシャルセキュリティは、リタイヤした後の年金、障害や死亡が起こった時の、個人とその家族に対する金銭的サポートを提供します。私たちは収入のうちから一定額をソーシャルセキュリティ税として納めます。一方でサポートが必要になったときは、決められた資格を満たせば金銭的サポートが得られるしくみです。
ソーシャルセキュリティ税の徴収のされかた
雇用者のソーシャルセキュリティタックスは、FICA(Federal Insurance Contributions Act)に基づき、給料から天引きで徴収されています。FICAに基づき支払われるタックスは、ペイロールタックスとも呼ばれ、総収入に対するパーセンテージとして徴収されます。
FICAタックスは、2つの要素に分けられます。ひとつは今回の話題のソーシャルセキュリティ税(12.4%)で、もうひとつは老後の医療をカバーするメディケア税(2.9%)です。雇用主と雇用者が半分ずつ負担しますので、ソーシャルセキュリティについてはそれぞれが6.2%、メディケアについてはそれぞれが1.45%の負担となります。
自営の場合は、FICAの代わりにSECA( Self-Employment Contributions Act)に基づき納税の義務があり、ソーシャルセキュリティ・タックスは12.4%、メディケア・タックスは2.9%です。
2023年のソーシャルセキュリティの課税対象収入の限度額は$160,200で、これを超えた収入は課税の対象になりません。メディケアに関しては、限度額の設定がなく、すべての収入が課税対象になります。収入が一定以上(シングルで$200,000 、夫婦で$250,000)になると、メディケア税に追加で0.9%の負担が課せられます。
ソーシャルセキュリティ税のかかる収入
基本的にはearned income と呼ばれる労働収入に対して、ソーシャルセキュリティ税がかかります。給料、自営業の純利益、チップなどです。
利子収入、キャピタルゲイン、配当金収入、レンタル収入、401(k)やIRAからの引き出し、企業年金、アニュイティなどは、所得税やキャピタルゲイン税などの対象とはなりますが、ソーシャルセキュリティ税の対象とはなりません。
ソーシャルセキュリティ保障の内容
1.Retirement Benefits (老齢年金)
ソーシャルセキュリティの対象となる労働に、ある一定以上の年数携わることによって、62歳から年金を受け取る資格が与えられます。ある一定以上の年数とは、通常は10年です。
年金を受け取る最低年齢は62歳です。Full Retirement Age(生まれた年により決まり、65歳から67歳の間。1960年以降生まれは67歳)まで働いてから受給を開始した場合の額が、基本額となります。Full Retirement Age以前に受給を開始すると、本来もらえるはずである額より減額されます
また、Full Retirement Ageを超えてさらに受給開始を遅らすと、遅らした年数に応じてさらに受給額が増やされます(最高70歳まで)。この減額、増額は、永久的(死ぬまで)なものですので、受給開始時期は慎重に決めたいものです。
本人の配偶者には、条件を満たせば本人の資格をベースにして得られるSpousal Benefits(配偶者年金)があります。
2.Disability Benefits(障害者となった場合の保障)
年金受給を開始する前に、肉体的・精神的な問題により”disabled“となった場合、この保障を得ることができる可能性があります。一定の期間、ソーシャルセキュリティの対象となる労働に携わっている必要がありますが、年齢が低いほど条件が緩やかになっています。たとえば、24歳以下だと最低で1年半働いていれば受給資格を得られる場合もあります。
ソーシャルセキュリティの“disabled”の定義はかなり限定的で厳しいものになっています。今までに携わっていた仕事をすることができず、肉体的・精神的な疾患のため他の仕事にも適応することができず、そのような状態が一年以上続くか、あるいは死に至らしめると予期される場合というのが条件です。いったん保障を受ける資格を得ると、働けるようになるまでこの保障を受け続けることができます。もしも障害を負って働けなくなった場合は、すぐにこの保障の申請をしましょう。審査には数ヶ月以上かかり、また特別な診断テストを受けなければならないこともあるからです。
3.Survivors Benefits(残された家族への保障)
ソーシャルセキュリティの保障の対象となっていた人が亡くなった場合、残された配偶者と子どもに対しこの保障が与えられます。ソーシャルセキュリティの一部として、このような保障があることを知らない人も多いようですが、学齢期の子どもやそのような子どもを養育している配偶者に対して保障が定められており、働き盛りの片親をなくした家族にとっては心強い制度です。こちらも、Disability Benefitsと同様、死亡した人の年齢が低いほど、受給資格を満たすための条件が緩やかになっています。受給できるかわからない場合は、むやみにあきらめず申請してみることがたいせつです。