日本とアメリカの老後 介護費用はどのくらい違う?

前回はリタイヤ後の生活について、日米比較をしてみました。だれもがいつまでも元気で、自立した生活を送りたいと願っていますが、そのうち人の助けが必要になります。介護といってもいろいろなレベルがありますし、人によって通る道は異なるので、一概にどのくらいのお金がかかるかは正確に測れません。ここでは、ある程度の予測をつけることを目的に進んでみます。

アメリカの支援・介護費用

アメリカで、生活をする上でのヘルプや支援が必要になった場合でも、多くの人はまずは自宅に住みながら暮らしを続けたいと願うようです。近くに住む家族や友人に買い物や掃除などをお願いしたり、あるいはヘルパーに自宅に来てもらって、 家事、送迎やその他生活を続けるうえで必要なヘルプをしてもらうこともできます。家事一般レベルを手伝ってくれるHomemaker Servicesや、一歩踏み込んでシャワーや着替え、薬の管理やリハビリ運動などまで行うHome Health Aidなどがあります。

自宅での暮らしが難しくなったとき、次の段階にくるのがAssisted Living Facilityへの入居です。自宅での独立型の暮らしと、完全に介護が必要な場合に入るNursing Homeの中間的な存在です。Assisted Livingの住人は、自分のアパートで暮らすイメージですが、共用スペースや社交スペースを共有し、食事やその他の日常生活動作の支援を受けることができます。

Nursing Homeは、身体的または認知的な問題が大きくなり、家庭で提供できる以上のケアやAssisted Livingでの監視が必要になった人向けです。部屋と食事に加えて、24時間365日の医療および個人ケアを提供されます。

州や施設によってコストが異なります。2021年度、Genworth調べのコストは以下の通り。Home Maker Serviceは、自宅に居ながら受けるサービス料金なので、生活費はある程度今まで同じようにかかるうえに、追加でこれらの料金がかかることになります。

Assisted Living Facilityの値段には、ふつうアパートのレント、三食、掃除、トランスポーテーション、アクティビティ、ある程度のパーソナルケアが含まれていることが多いようです。衣料費や医療費、趣味や娯楽などは別途かかる可能性があります。

アメリカ 介護 費用

Covid中には、Assisted LivingやNursing Homeでの面会が非常に困難だったこともあり、最近のトレンドとしてはできるだけ長く自宅にとどまり、必要に応じてHomemaker ServiceやHome Health Aideを入れるというやり方が増えているそうです。

日本の支援・介護費用

まずは、自宅に居ながらにして受ける在宅介護を見てみます。生命保険文化センター(2021年)調べによると、在宅介護に必要になる費用は月額平均で8.3万円ということでした。ただ介護度やサービスの度合いによって個人差が大きく、15万円かかったと答えた人も16%以上いました。この調査では、在宅介護サービスを月間で何時間使ったかのデータがなく、上のアメリカのHome Maker Service の44時間/週のコストと単純比較は不可能です。別サイトでは、介護保険を使わず40時間/週のサービスをうけた場合、1か月で32万円程($2,400)度というデータがありました。これを最も高いレベルの自己負担額としても、アメリカのレベルの半額程度ということになるかと思います。

在宅ではなく入居施設を探す場合には、日本にはさまざまな名称の施設が存在しています。自立の人(自宅で暮らせる人)が入れる施設もチョイスが豊富です。できるだけ必要なヘルプを受けながらできるだけ自宅で過ごすタイプが多いアメリカと違い、日本では早い段階から独立型の施設に移って第二の人生を楽しむというスタイルを選択する人も多いようです。シニア向け分譲マンションは不動産として次世代に相続することもできます。買い取りなので初期費用が高額ですが、リタイヤしたばかりのアクティブシニアの中では関心が高いようです。自分のアパートをレントするイメージのサービス付き高齢者住宅も自立者には人気です。これらはどちらも、自由に好きなように生活できるフレキシビリティがある反面、介護度が上がると住み続けることが難しくなります。

日本 介護 費用

自立のうちから入居が可能で、介護度が上がっても同じ施設内で継続的に介護が受けられるタイプの介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームは、入居時に数千万円がかかるものもありますが(場合によっては億単位のものの)、整ってきれいな施設で高品質のケアが受けられるということで、経済的に余裕のある人には人気です。アメリカ在住者がアメリカに(または日本でも)自宅を所有していて、それを売った金額を一時金にあて、ソーシャルセキュリティ年金などで月々をまかなうということも物件によっては十分可能だと思われます。

介護度が上がって入る特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などは公的施設で、入居費もなく月額料金もかなり抑えられています。都市部などではなかなか入居が難しいということも聞きますが、入居できさえすれば、アメリカのNursing Homeの1/6程度で済みます。

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4 comments

  1. いつも大変有益な情報を有難うございます。
    前回の日本とアメリカの生活費の比較に続いて、今回の医療費の比較もとても興味深いトピックでした。我が家は50代半ばでアーリーリタイアしたので、メディケアを受けられる65歳まで自分で医療保険を購入し続けなければなりません。メディケアの開始年齢まで日本に拠点を移して日本の国民健康保険にお世話になろうかとも思ったりしましたが、日本では60歳まで国民年金の負担もあります。幸いにして、一昨年からオバマケアの所得制限が緩和されたため、医療保険の掛け金はぐっと抑えられました。ただ、アメリカの比較的手頃な医療保険は、日本の手厚い健康保険と違ってDeductibleまで全て自己負担なので、大病したり長期介護が必要になったら日本に帰った方が良いかもとは考えています。とは言うものの、人間関係や生活の基盤は既にアメリカにあり、子供達から離れて人生の最後を過ごすことになるわけで悩めるところです。いまは健康寿命をなるべく伸ばすために適切な運動と食生活を心がけています!

    1. コメントありがとうございます。わかります!まさにそういうお悩みの方は多いと思います。まあ、いくつか選択肢があるというだけでも感謝なことですね。どうぞリタイヤメントを引き続きエンジョイしてくださいね。

  2. お久しぶりです。 親の介護と将来の自分の介護。 考えるところですね。 

    私の母親は認知症が進み、日本で上記にはあげられていない ”小規模多機能型施設” に通っております。 
    これはデイサービス+訪問介護+老人ホーム+ショートステイを足して割ったようなサービスを提唱する機関で、まだまだ新しく日本でもそんなに数はありません。 下記の概要を貼っておきます。 
    母親が実際に通うようになってからわかったのは、本当に介護する側にとって助かる機関であるという点。 すべてのサービスは空きがある限り突発でも受けることができます。 例えば介護する側が病気になったので3日間ショートで預かってほしい、疲れてきたので週に7日間デイサービスに通わせてほしい、仕事が不定期なので平日は施設で週末だけ家で過ごしたい、明後日病院に連れて行ってほしい、、、
    そんなことが可能になるんです。 うちはたまたま引っ越し先の近くにこの珍しい多機能があったのでラッキーでしたが、こういう施設もあるということで。なお費用ですが、地区によって違うし受けるサービスによっても違うのでなんとも言えませんけれども、公のサービスなので安い設定にはなってます。 
    一か月単位で滞在しても、普通の老人ホームよりもお安いようです。 適当なことは言えませんがおそらく15万円以下。(千葉の例)デイサービスに5日間通った場合で(無料で入浴つき)5万前後と言ったところ。 毎日7日間通うならば8万円前後。 デーサービスだけではきついけど、老人ホームにはまだ入れたくない場合のチョイスとしては最強だと思いました。 
    <ネットより>
    小規模多機能型居宅介護は、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心として、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組合せ、家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行います。

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