ソーシャルセキュリティ改定の影響

2015年11月に、オバマ大統領がBipartisan Budget Actにサインしたことを受け、ソーシャルセキュリティのリタイヤメントベネフィット(年金)の受給法に変更が加えられました。これまで許されていたFile and SuspendとRestricted Applicationというふたつの受給申請のやりかたが今後は許されなくなることになりました。このブログでも、このふたつの方法にのっとったリタイヤメントベネフィットの最大化についてご紹介してきましたが、今後はこの方法は使うことができなくなります。

File and Suspendの廃止

File and Suspend―申請しすぐに中止する・・・と呼ばれるこの方法は、Full Retirement Age(生まれた年により決まり、65歳から67歳の間)に達した人が、リタイヤメントベネフィットの受給申請を行い、その後すぐさま受給を中止するという手続きをとることを意味しています。受給を中止している間は、その期間に応じて将来受け取れる受給額が増え続けます。その後受給を再開する時点で、増えた受給額は固定され一生涯この額を受けることになります(年ごとのインフレ対応の増加調整はあり)。また、中止している間も、いったん申請の手続きが終わっているとみなされ、その配偶者は配偶者ベネフィットを申請することができました。

たとえば、夫が66歳のフルリタイヤメントエイジになった時点で、申請手続きをしたとします。ベネフィット受給額は$2,000です。この手続きによって、妻は$1,000の配偶者ベネフィットを得るべく配偶者としての申請をすることができるようになります。夫は、すぐに受給を中止します。これにより、彼の受給額は年間8%のペースで増加し続け、70歳になった時点では$2,700程度までになります。その間も妻は$1,000を受け続けることができました。

古いルールではこれが可能でしたが、今後は、File and Suspendができなくなりますので、夫が申請をして実際に受給をしていなければ、妻は配偶者ベネフィットを受け取ることができなくなりました。よって、夫が66歳時に夫$2,000、妻が$1,000のベネフィットを受給し始めるか、あるいは夫が70歳まで待って夫$2,700、妻$1,350を受給するかを選択することになります。その間に妻だけが配偶者ベネフィットを受けるということはできません。(注:実際は、62歳以降、70歳までの間、どの時点でも受給を開始することができ、開始時期によって受給額が変わります。ここでは対照のため66歳と70歳を比較しているのみです。)

 

Restricted Applicationの廃止

Restricted Application―部分的申請・・・と呼ばれるこの方法は、部分的・・つまり配偶者ベネフィットだけの申請を意味しています。自分自身が勤労者であると同時に、勤労者である配偶者を持つ場合は、受けることのできるリタイヤメントベネフィットは2種類あります。ひとつは自分自身の勤労をベースしたベネフィットで、もうひとつは配偶者の勤労をベースにしたベネフィットです。

今まで許されていたRestricted Applicationというのは、とりあえず配偶者としてのベネフィットだけ申請するやり方です。自分のベネフィットはそのまま手付かずで置いておき、年間8%の上乗せ分で増やしながら、後程ふくらんだ受給額である自分のベネフィットに切り替え申請するということができました。

たとえば、フルリタイヤメントエイジの夫婦で、その時点でのベネフィットは、妻が受ける妻の勤労による受給額が$700、夫が受けられる夫の勤労による$1,500としましょう。妻が先に受給を開始し$700を得ると同時に、夫は妻の勤労に基づいた配偶者ベネフィットを受給する申請をすると(Restricted Application)、妻の受給額の半額の$350を得ることができます。自分のベネフィットは申請しないまま、70歳まで待つことで$2,000弱まで受給額を増やすことができます。

法改正で、上の例の夫の配偶者ベネフィットだけの申請ができなくなりました。配偶者ベネフィットを先に受けておいて、後で自分のベネフィットに乗り換えるということができなくなったわけです。よって、今後は、受給を開始した時点で、配偶者ベネフィットと自分自身のベネフィットのどちらか大きい額が支払われ、それがその後もそのまま支払われ続けることになります。

 

もうすでに受給を開始している場合、結婚をしていない方にはこの変更はほぼ影響はありません。

以下のとおりフェーズアウト期間が設定されています。

1950年5月1日以前に生まれた方は、2016年4月30日以前であればFile and Suspendの申請をすることができ、また66歳から70歳までの間にRestricted Applicationをすることも許されています。

1950年5月2日以降、1954年1月2日までに生まれた方は、Restricted Applicationは許されていますが、File and Suspendは許されなくなります。

1954年1月2日以降に生まれた方は、File and SuspendもRestricted Applicationも許されなくなります。

File and SuspendとRestricted Applicationの方法は今後は使えなくなりますが、ソーシャルセキュリティの受給をどう計画するかは今後も重要なポイントとなります。受給可能の最低年齢である62歳から、受給額の最大化される70歳までの間のどのタイミニグで受給を開始するべきかという問題と、結婚している夫婦の場合は、どちらか先に申請するべきかという夫婦間のコーディネートの問題を、よく吟味して決めていく必要があるでしょう。

3 comments

  1. これは知りませんでした。受給できる金額がだいぶ変わりますね。今後も、何年か経過したあとに法律が変わる可能性もありますね。自分たちが受給するころには、本当に少ししかもらえなくなるような法律になっているかもしれないと思うと、悲しいですが、、、。

  2. 私は今64歳と半です。離婚した夫とは十年以上結婚していました。その後新しい夫と結婚してその夫とも少ししたらdvで離婚して3ー4年経ちます。
    最初の夫は再婚をしていますが本人は引退は70歳と決めています。私は身体が弱く働けません。彼が70歳で引退したら私は68歳ですが彼の引退金の50%をいただくことは出来ますでしょうか?私はファイボロマイオロジアという病気だそうです。それとも障害者のソーシャルセキュリティーが降りるのでしょうか?
    よろしく、お応えを待っています。
    ありがとうございます。

    1. ファイブロマイオロジアは痛みがある病気ですね。日常の暮らしが少しでも楽になりますように。10年以上結婚して離婚した場合は、元のご主人がソーシャルセキュリティ年金をもらう資格があり、年金をもらう手続きをしたなら、お二人ともフルリタイヤメントエイジ(66歳~67歳)に達しておれば、れいじゅさんはご主人のリタイヤメント年金の半額をもらう権利があります(退職金ではありません)。元ご主人は70歳になっている必要はありません。ソーシャルセキュリティの障がい者手当は、れいじゅさんご自身がソーシャルセキュリティのDisability Benefitを受ける資格があり(今まで働いてソーシャルセキュリティを一定期間納めてきた)、Disableであると判断された場合(厳しい基準があります)におります。詳しくはソーシャルセキュリティオフィスに直接ご相談ください。

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