アメリカ生活も20年近くになりますが、それでもまだどうも慣れないことのうちのひとつがチップの習慣です。私がはじめてアメリカに来たころはチップはたしか10%が目安でしたが、それがいつのまにか15%になり、最近では20%までになりました。レストランやホテルでは一応「目安」にしたがってチップを置きますが、じゃあ、スポーツジムでマッサージを受けたらどうするの・・・とか、ヘアサロンでシャンプーだけしてくれた人にはどうするの・・とか。。案外、フクザツ。チップという習慣のない日本で育った私には、チップはいつまでもどうもしっくりこないものです。
たとえばレストラン。可もなく不可もなくのサービスなら15%、よいサービスならば20%を目安にチップを置いてきますが、でも私のどこかで「チップで面倒だし高くていやだなあ」という意識が残ります。日本で食事をすると、割とこぎれいなお店だったとしても、ひとり1,000円も出せば案外おいしいものが食べられることもあり、夫婦で行っても2,500円位で非常に満足できることもしばしば。ところが、我が家のあたり(南カリフォルニア)だと、何のヘンテツもなく、どちかというと原始的な装飾のレストランで、ごくフツーのものを食べても、40ドルから50ドルということも頻繁。メニュー自体も質の割には高めな値段設定に加え、税金が加わり、そしてチップ。。税金とともにチップもなからましかば・・まし・・と思う私。
チップは%目安というのも苦しいですね。30ドルの20%なら6ドルだけど、300ドルの食事なら60ドルです。。よいレストランならばそれなりにサービスの期待値も高いから当然といえば当然ですが。。
日本では税金以外すべての値段がAll inclusiveで食べ物の値段に入っており、それを受け取ったレストランのオーナーが、場所代、材料費、広告費、電気水道料金などをカバーするのと同様に、サーバーの給料もカバーします。このシステムに慣れていると、なぜ食事の代金を払いつつ、その上でサーバーの給料も二度払いせねばならないの・・という気持ちにもなります。
そこで調べてみました。いったいチップとはなんぞや。なぜチップを払わねばならないのか。
チップの歴史
アメリカでのチップの習慣は1800年代後半に始まったそうで、裕福なアメリカ人がヨーロッパに旅行に行き、ヨーロッパの知識階級/富裕層がチップをしているのを目撃し、その習慣を真似てアメリカに持ち帰り、ある意味で「みせびらかすため」にはじめたそうです。TIPというのはto insure promptitudeの頭文字とかで、迅速なサービスを確保するためにはじまったとか。
ただ、その後、チップの習慣は金で人を買う隷属関係のイメージを生み出し、アメリカの平等主義に反するものだという考えから、チップを違法行為とするチップ廃止運動も始まりました。1900年代に入ると、サービスの代価を二度払う、つまり一度はオーナーにもう一度はサーバーに、というのはおかしい、やはり隷属関係を助長するもの以外の何者でもないという人も出てきました。しかしながら、その後もチップの習慣は廃止されることなく、今もアメリカに残っています。
現在のアメリカでは、チップが隷属関係を助長するという議論はあまり聞かれないように思いますが、どちらかというとチップはオプショナルか、つまりよいサービスを受けたら支払うが、悪いサービスならば払わなくてもよいものか、というところに焦点があたっているようです。
チップの意味
少し前にCNNのフードブログでチップについての読者投票が行われました。45,000人の回答があったそうです。サービスが悪かった場合チップをどうするか・・についての質問に対し;
49%がチップは支払わない
29%がいつもより少ないチップを支払う
15%が、サービスがよくても悪くても15%以上を払う
5%が、1セント玉を残して静かな苦情とする
という結果でした。
あなたはどれでしょう。私は29%派です。いつもは15%~20%目安ですが、不満が残ったときは10%くらいにしています。ただ今回、いろいろ調べてみて少し考えが変わりました。
大きな発見は、通常アメリカでは、食事の代金にはサーバーの給料は含まれていないということです。現在のアメリカ連邦政府の最低時間給は$7.25ですが、これはそのままサーバーには適用されていないのだそうです。サーバーに限らず、1ヶ月に30ドル以上のチップ収入がある労働者の最低時間給は$2.13です。もしも、時間給とチップの合計の時間給が、アメリカ連邦政府の最低時間給は$7.25に満たなかったら、雇い主がその差を埋め合わせて支払うことになっているそうです(でもどうやって徹底するのだろう?)。2012年の調査では、チップを含めた時間給は全米平均$11.82ということでした。
サーバーは大変な仕事だと思います。いろいろな客の注文を的確に聞いて、食事の進み具合にも気をとめつつ、臨機応変にサーブする・・我が家にお客さんを迎えたときのことを考えても、私にはなかなか十分にできない仕事だと思います。今まで、きっと最低でも十数ドルの基本給をもらいながら、それにおまけでパフォーマンスがよければチップをもらうというしくみなのだと考えていたのですが、どうやらそうれは間違いだったようです。アメリカの場合は、サービスに対する報酬は、お客のチップに託されているというわけです。
ま、州によっては、チップ収入がある労働者もない労働者も一律同じ最低時給を設定しているところもあり、たとえばカリフォルニアは9ドルです。これなら、9ドルもらったうえにチップということになるのでしょうが、いずれにせよ、チップへの依存は大きいことには変わりはないのでしょう。
アメリカでは、レストランに入って座って食事を始めるとき、それは「食事の代金は払います。そしてサービスに対する代金を、私にある程度の決定の裁量があるものの、15%~20%を目安として支払います」という暗黙の了解があるということのようです。
その他、チップ収入に頼るところが大きいと思われる職種へのチップの目安はこんなかんじ。
ホテル
- ポーター:バッグにつき2~3ドル
- Gratuityが含まれているルームサービス:テーブルのセットアップに2~3ドル
- Gratuityが含まれていないルームサービス:20%
- タオルや歯ブラシ、シャンプなどのデリバリー:2ドル
- タクシーを呼んでくれるドアマン:1~5ドル
- コンシアージュサービス:リクエスト内容により5~25ドル
- ハウスキーピング:1~5ドル
レストラン
- サーバー:13~20%
- テイクアウト:必要なし(ただバッキングを念入りにしてくれたなどなら数ドル)
- ファーストフード:必要なし
トラベル
- クルーズ乗組員:それぞれのクルーズの方針を確認
- 空港のカーブサイドチェックイン:バッグにつき1~2ドル
- タクシー:15%
- 回旋シャトルバス運転手:2~3ドル
- リムジン運転手:10~20%
ヘアサロンやスパ
- マッサージセラピスト:10~20%
- ヘアスタイリスト:10~20%(シャンプーだけしてくれた、ブローだけしてくれたというような場合は、別に数ドルずつチップするのが好ましいようです)
- マニキュア・フェイシャル施術者:15%
- ペットグルーマー:10~15%
その他、チップをするかしないか、どのくらいしたらいいかについてよく分からない場合は、オーナーやあるいは本人に直接聞くのがよいようです。日本的に考えると、チップのことを聞くなんて失礼かも・・・と感じたりしますが、それは先に出た「隷属関係」を念頭においているからであって、「当然支払うべきもの」と考えるのなら、「パーマをしてもらうといくらですか?」と聞くのと同様にあたりまえのことです。かえって、わからないからうやむやにされるよりは、サービス提供者にとってはありがたいものともいえます。
これからはチップをするとき、このあたりを心に留めて、サービスに感謝しつつ払いたいと思います。
こんにちは。私もチップには良いイメージは持っていなかった(自分で15%税金を加算するようなものですからね)のですが、従業員さんたちの給与実態を聞くにつけ、まあしょうがないかと思うようになりました。気をつけないといけないのは、店によってチェックの段階で既にチップを加算してる場合ですよね。レシートをよく見ないと二重払いしちゃうことになりますから。まあ、上手く付き合っていけたらと思います。
ほんとですね。よく見ましょう!