UTMA/UGMA口座とファイナンシャルエイド

祖父母から生前贈与や遺産としてまとまったお金を受け取り、それを子どものためにUTMA/UGMA口座に入れたというお話をよく聞きます。将来の学資準備などにはぴったりのような気がします。子どもが18歳なり21歳なりの一定年齢になるまでは、親が管理を引き受けるこのUTNA/UGMA口座、実は大学のファイナンシャルエイドの計算では非常に不利に働くということを後で知って頭を痛めるということもよく聞く話です。

UGMAは Uniform Gifts to Minors Act、UTMAはUniform Transfers to Minors Actの略でUGMAの後にできた後継の法律であり、どちらも未成年の子どもへの財産の委譲について規定しています。UTMA/UGMA口座は、カストディアル口座とも呼ばれます。親(あるいはその他の大人)がカストディアン(管理人)となり、子どもが18歳なり21歳なりの(州によって異なる)一定年齢に達するまでは、カストディアンが一切の管理を引き受けます。子どもはカストディアの了解なしには勝手にお金を使うことができません。親のコントロールが効くので、その資産(口座内のお金)はあたかも親の権限の範囲内のように勘違いしがちですが、UTMA/UGMA口座にお金を入れた瞬間に、子どもへの譲渡は完了しており、そのお金は子どものものです。後で気が変わったので、親のニーズなどにそのお金を使うということはできません。

 

100%子どものもの

 

たとえば家の頭金に使いたいとか、リモデルに使いたいとか、下に弟や妹が生まれたのでUTMA/UGMA口座を二つに分けてそれぞれに設定しなおしたいなどということは簡単にはできません。あくまでそのお金は口座を当初開いた名義の子どもの所有で、「その子の利益のために」使われなくてはならないルールになっています。ただ、「その子の利益のために」というのはなかなかグレーゾーンでもあり、子どもの住む家のリモデルがその類かはかなり微妙なところです。実際、このような利用で法的な問題に親が巻き込まれたというのはあまり聞きませんが、法律は法律なので、何かの時にはそのお金がその子の利益のために使われたことを証明できるようにしておくのが賢明です。

 

ファイナンシャルエイドへの影響

 

UTMA/UGMA口座が、ファイナンシャルエイドの計算式では、子どもの資産としてカウントされることは前回の記事で書きました。親の資産はある程度($40,000~$45,000くらいが目安)まではカウントされず、その後もカウントされても5.64%の率であるのに対し、子どもの資産はその20%が考慮され受けられる可能性のあるファイナンシャルエイドを劇的に減らします。

ただし、親のAGI(Adjusted Gross Income)が$50,000以下で、タックスリターンで1040Aか1040EZでファイルする資格があるならば、FAFSAにおいて親の資産も子どもの資産もすべてカウントされないで済み(Simplified FAFSA)という特別処置があります。この場合は、UTMA/UGMA口座がどれだけあっても、ファイナンシャルエイドに影響を与えることは心配する必要がありません。1040Aか1040EZは収入が$100,000以下で、給与所得を得ている人が対象となっており(他にも細かい規定あり)、自営(Self Employed)の人は残念ながら対象になりません。このケースに該当する場合に限り、UTMA/UGMA口座の残高がどんなに大きくても心配不要です。

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UTMA/UGMA529口座への移行

 

UTMA/UGMA口座は子どもの資産としてその20%がエイドを減らすのに対し、529カレッジファンドは子どものために使われるべき資産であっても、あくまで親の資産としてカウントされ、5.64%のみがカウントされるだけです。通常の529口座では、親が所有者、子どもがベネフィシアリーですが、これに対しUTMA/UGMA529(あるいはカストディアル529)口座というものがあり、これは子どもが所有者ですが、それでも親の資産としてカウントされるという特別処置があります。

この点を考慮し、UTMA/UGMA口座のお金をUTMA/UGMA529口座に移して、ファイナンシャルエイドを多く受けられるようにすることができます。たとえばUGMA/UTMA口座に$50,000あった場合、この20%にあたる$10,000分がエイドを減らすことになっていたところ、UGMA/UTMA529に移すことで、5.64%の$2,820のみしかエイド減に影響しないことになります。その差$7,180となります。

ただし、これはEFC(Expected Family Contribution=自己負担予想額)が$7,180減って、反対にファイナンシャルニーズが$7,180増えるということを意味するだけで、実際のエイド額は学校ごとに違うでしょうし、この$7,180のエイドの内訳はグラントだったりローンだったりとまちまちでしょうから、UTMA/UGMA529にすると$7,180余分にフリーマネーがもらえるということを短絡的に意味するわけではありませんのであしからず。また、FAFSAの代わりにPROFILEを使う私立大学などでは、529口座自体(普通の529であれUTMA/UGMA529であろうと)を子どもの資産として計算しますので、上の操作は意味をなしません。

また、通常の529口座ではベネフィシアリーの変更(兄から弟など家族内に限る)が自由にできますが、UTMA/UGMA529ではそれができません。当初の子どもの所有であり、子どもが18歳なり21歳の規定の年になったときに、所有と管理の権限は完全に子どもに移ります。なお、UTMA/UGMA口座を通常の529口座に移すことはできません。必ずUTMA/UGMA529口座である必要があります。

また、お金を移すとき、UTMA/UGMA529は現金ベースでしが入金できないので、UTMA/UGMA口座で持っていた投資などを解約し現金化することが必要になります。このとき、ミューチュアルファンドなどに長期間投資をしていた場合、キャピタルゲインが相当額あることがあります。このゲインは当年の子どもの所得としてタックスリターンで申告することになると同時に、FAFSAでも子どもの所得として数えられますので、大きくファイナシャルエイドを減らすことになります。せっかく子どもの資産を減らそうとしたのに、かえって子ども収入を増やしてしまったということになっては元も子もありません。あらかじめキャピタルゲインの大きさを把握しておくことと、FAFSA申請年の少なくとも前々年(FAFSAの申請は前の年のタックスリターンの情報を入れます)までに移行を終えておくことが必要です。

 

使ってしまうのもいいかも

子どもの学資ためにと貯めておいたUTMA/UGMA口座ですが、ファイナシャルエイドに邪魔となるなら、思い切って大学に入る前にお子さんのために口座のお金を使うというのも有効な策かもしれません。中学校、高校の学費や学校関係の費用、クラブ活動や習い事の費用、サマーキャンプや塾、パソコンや楽器、スポーツ用品などはもちろんのこと、普段の生活費でもお子さんのためであれば合法的に使うことができます。念のためレシートはきちんととっておきましょう。

また、これらの費用をUTMA/UGMA口座から出費したことで普段の生活費に余裕ができたら、それを通常の529口座(親の資産としてカウント)やRoth IRA(一切カウントされず)などに積み立てることで、よりファイナンシャルエイドに有利な形での資金準備に徐々に行こうすることができます。この戦略は、大学入学までまだ年数がある場合にとくに有効です。

もし入学までもうあまり時間がない場合でも、お子さん用の車や大学での新生活に必要な用品など値の張るものを購入することで、UTMA/UGMA口座を有効活用+自然処理することもできます。FAFSA申請時の収入に関しては、申請する年の前の年のタックスリターンの情報が使われますが、資産に関しては、FAFSA申請時点の資産情報が使われますので、たとえ直前にUTMA/UGMA口座のお金を使っても、申請時に口座残高が少なくなっていれば有利に働きます。

なるべく持っているお金を有効利用しつつ、受けられるエイドは受けつつ、有意義な大学生活になるといいですね。

8 comments

  1. 初めまして!

    いつもとてもわかりやすい説明で、たいへん参考になります。

    うちにも子供が2人いるのですが、それぞれの名義でセービングアカウント(私がジョイントホルダー)を持っています。そこで質問なのですが、上の子(A)のFAFSA申請の際には、下の子(B)の口座は全くカウントされないのでしょうか?もしそうであれば、AのFAFSA申請前に、私やAの預金を少しBの口座に移動させて、資産を減らすことは可能だと思われますか?時期によっては、不正なお金の動きと捉えられてしまうような気もするのですが…

    1. FAFSAでは兄弟姉妹名義の口座はカウントされませんが、CSSではカウントされることが多いようです。Aの預金をBの口座に移動させることは可能ですが、ゆくゆくはBがFAFSA申請するときにBの資産としてカウントされることになります。名義の違う口座間でのお金の移動はギフトということになり、ギフトタックスの限度内(2015年なら$14,000)ならほとんど問題になりませんが、それ以上だとギフトタックスリターン申請をする必要があります。FAFSAで有利にするために、口座間でお金を行ったり来たりさせて動かすと、そういう意味で「ギフトを装った資産隠し」のように見えて問題になることもあるかと思います。

      1. 大金の移動を考えていたわけではありませんが、後に問題視される可能性もあるのであれば、不必要にお金を動かすことは避けたほうが賢明ですね。そもそも少額を別口座に移したところで、エイドに及ぼす影響も少しでしょうし。

        それより、大学の入学基準が年々厳しくなっているように感じます。かといって、とても優秀でびっくりするような成績、スコアでも希望の大学に受からなかったという話も聞きますし、本当に謎だらけです…

        どうもありがとうございました。

        1. 本当にそうですね。大学側も学生のdiversityも確保しなくてはならないので、成績だけでなくいろいろなことが考慮されるようですね。。

  2. こんにちは。529アカウントのことを調べていてWebを拝見しました!
    すごく詳しく書かれていて、勉強になります。私は子供が2人おり、UTMA/UGMAアカウントを少額から子供のためにあけたのですが(通常の529アカウントと思ったのですが手違いがあり)アカウントをそのまま置いておき、通常の529アカウントを開設することに何か問題はあるのでしょうか?また、529プランの選択についてアドバイスいただくことは可能ですか?LA在住です。

    1. UTMA/UGMAと529と二つ持つこと自体は何の問題もないと思います。ただ、状況によるほかの要素との兼ね合いで、まとめるほうがよいのか別々でよいのかなどは、詳しい情報がないと何とも申し上げまれませんが。。529プランの選択のアドバイスはもちろんさせていただけますが、カリフォルニアご在住とのこと、手通り早いところでカリフォルニア州のScholarShareは低手数料でおすすめです。

      1. お返事どうもありがとございます!早速見てみます!

        IRAと併せてFidelityで作ったUTMAなのですが、Scholar Shareを見てみて、改めて別途ご相談をお願いしたい際はお時間をいただくお願いさせてください。 

        CPAや投資アドバイザーや色々な方に聞いても答えの出ない行間の部分や、ベネフィットの説明も細かくわかりやく書いてあり、とっても勉強になります。ありがとうございます。

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