このブログでは一貫して低手数料のVanguard社をお勧めしています。Vanguardのファンドの中でも、年齢に応じ必要なアロケーションがすでに組まれており、リタイヤメント年が近づくにつれ自動的に低リスクにアロケーション調整されるターゲットデイトファンドは、多くの人一般にお勧めのファンドとして何度かとりあげてきました。Vanguardはターゲットデイトファンドではダントツのシェア一位。同社は投資家の利益優先でも信頼のおける会社として根強いファンも多く、自信をもってお勧めできる会社です。Vanguardのターゲットデイトファンドは業界でも最低手数料を誇っていましたが、ここにCharles Schwabがさらに低手数料のターゲットデイトファンドを導入し、挑みをかけてきました。今日は、VanguardのターゲットデイフトファンドとCharles Schwabのターゲットデイトファンドを比較してみようと思います。
Schwabのターゲットデイトファンド
Schwabのターゲットデイトファンドには2種類あり、ひとつは以前からあったSchwab Target Fundsです。こちらは、インデックスファンドベースのパッシブ投資とアクティブファンドを使ったアクティブ投資をミックスしたファンドです(パッシブ投資・アクティブ投資については以下の記事を参照のこと。わかる長期投資:これだけ押さえてしっかり運用(2)、アクティブファンドとのつきあいかた)。アクティブ投資が入っているだけあって、手数料も高いのでおすすめしません。
一方もうひとつの、Schwab Target Index Fundsのほうは、Indexということばが入っているだけあって、100%インデックスファンドベースのパッシブ投資型です。手数料は0.08%で、Vanguardの0.14%~0.15%に比べ格段に安くなっています。
あなたが、401(k)などの雇用主提供のプログラムや、529などのカレッジファンドに加入されていて、その中でこれらのどちらかが提供されていたら(二つとも提供されていることもあるかもしれませんが稀でしょう)、どちらでも提供されているものを迷わず選んでください。どちらも低手数料のインデックスベースのターゲットデイトファンドで安心して使えるといえます。ただ、あなたが、規制のプログラムに縛られず、個人として新たにファンドを選ぼうとするとき(たとえばIRAやTaxable Accountでの投資など)、Vanguardを選ぶかSchwabを選ぶか、どちらがいいかと迷うこともあるでしょう。簡単な答えはありませんが、以下に個人的に納得のいく選択をいただくための比較をしてみます。
投資しているファンド
Vanguardはシンプルに4つのファンド。Schwabは7つのファンドに投資していますが、US株式、US以外株式、US債券で2ファンドずつ、ただしUS以外の国際債券には投資していません。また、Vanguardでは投資していないREITに投資しています。
株式も債券も世界分散させるという考え方ではVanguardが教科書的にすべてのカテゴリーに投資しています。REITは不動産関連会社の株式に特化して投資しているファンドですが、US株式、US以外の株式のインデックスファンドには、そもそもそれらの会社も含まれていますので、二重投資といえます。その意味でもVanguardの方が教科書的な世界分散だといえるでしょう。
実際、細かい内訳を見てみると、VanguardはUS以外の国際株、US以外の国際債券の比率がSchwabより高く、世界分散しています。SchwabはUSのMid Cap、Small Cap比率が高く、国際債券やエマージング国株式などがありません。バランスから行くと、Vanguardに旗が上がるように思います。
Glide Path
ターゲット年が近づくにつれて、リスクを低く自動調整していくスケジュールのことをGlide Pathといいます。
下がVanguardのGlide Path。
お次がSchwabのGlide Path。
どちらも25歳(65歳リタイヤ・ターゲットの40年前)時点では、株式比率が90%程度ではじまります。Vanguardはターゲット年で株式比率が50%に下がり、その後7年ほどで株式比率30%まで下げ、リタイヤメント期間はそのレベルで維持します。Schwabのほうは、ターゲット年で、株式比率40%まで下げ、その後20年ほどかけて株式比率25%くらいまで下げます。Glide Path面では、若干Vanguardのほうがリタイヤ年でAggressiveな投資ですが、ほぼ似たような感じです。
分散の度合い
この2社のターゲットデイトファンドの分散の度合いを比べてみました。Vanguardは4つのファンド、Schwabは7つのファンドに投資していましたが、ファンドの数が多いからと言って必ずしも分散が大きいというわけではありません。実際、それぞれのファンドに総合でいくつの種類の株式と債券が含まれているかを調べてみると。。
なんとVanguardはSchwabの2倍弱の株式数、3.5倍弱の債権数に分散しています。分散投資という面ではVanguardが大幅に先を行っています。
カスタマーサービス
最後はソフト面のカスタマーサービスを考えてみましょう。ターゲットデイトファンドを選ぶのはそれほど難しいことではありませんが、それでも口座のセットアップや必要書類のやりとり、オンラインで何か問題があった時のフォローや税金などについて質問したいときなど、カスタマーサービスに頼ることも必要になります。
ここでの軍配はSchwabに上がります。Schwabのカスタマーサービスはかなりよいレビューを受けています。Schwabは支店があり、出向いて行って質問することができますが、Vanguardは支店がありません。電話でのコミュニケーションに頼ることになります。
数あるファンド会社の中でも、Vanguardは唯一、ファンドオーナーである投資家が間接的にVanguard社のオーナーでもあるという、“Mutual Company(相互会社)”の形態をとっており、投資家の利益優先を第一にできるという大きな利点があります。しかし反面、非営利会社ですので、利潤追求のマーケティングやサービスというところでは遅れがあるように思います。オンライン機能も拡充していますが、非常に使いやすいかというとそうでもないところがたくさんあるように思います。一方、Schwabは利益追求の普通の会社ですから、使いやすさとサポートでは充実しているように思います。
なお、Schwabの0.08%の手数料ですが、これは実質の手数料は0.14%程度であるところ、意図的に0.08%に上限設定をして下げているものです。おそらくVanguardに対抗する意味で戦略的にしていることでしょうが、これが将来的にも継続的に期待できるかを危惧する声もあるようです。
まとめますと、世界分散ポートフォリオの観点からするとVanguardのほうがよいように思いますが、ただ、手数料が0.06~0.07%ほど安いSchwabは魅力でもあります。とくに投資額が増えると、たとえば$500,000のポートフォリオなら、年間$300~$350の差になります。私は個人的には、VanguardのMutual Companyの理念が好きで会社を全面的に信頼しているのと、世界分散投資のパワーも信じていますので、少々手数料が上がってもVanguardを選びたいと思いますが、ポートフォリオが大きくなって、手数料が気になるという場合はSchwabを選ぶのも理に適うかと思います。