わかる長期投資:これだけ押さえてしっかり運用(1)

リタイヤメント資金準備などの長期投資をするにあたって、最低限知っておくべきポイントを抑え、できるだけ簡単に長期投資を始める、あるいは維持していくための考え方を身につけるシリーズを5回に分けてお送りします。1回目の今回は、投資の基本であるダイバーシフィケーションの考え方についてです。

投資の基本・・ダイバーシフィケーションとは?

 

ダイバーシフィケーション(多様化)とは、一言でいうと、投資する対象を多様化して、数多くの投資対象にお金をばらけさせることで、大外れをするリスクを下げることです。「数打てば当たる」といいますが、ルーレットでひとつの色の一つの数字に全額掛けるのでなくて、10個くらいの数字にお金を分けて賭けをすれば、完全に外れる可能性が下げられるのと似ています。アメリカでよく使われる表現は、「卵は、ひとつのバスケットに全部いれない」という表現で、全部同じバスケットに入れていれば、そのバスケットが落ちたりしたら卵はほぼ全滅ですが、いくつかのバスケットに入れて搬送すれば、ひとつのバスケットに事故があっても、他は大丈夫・・というという考え方です。

ダイバーシフィケーションは、大外れを免れますが、反対にいえば大当たりもなくなります。ルーレットで赤の1に全額掛けていて、もしそれが当たったら大当たり、外れたら大外れですが、10個くらいの数字に分散していれば、もし当たっても小当たり、外れたら小外れです。

リスクと見返りは比例しているというのはご存知ですね。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」と言いますが、リスクはとらねば、見返りもありません。そして大きなリスクりをとれば、それなりに大きな見返りが期待できるというように、通常はリスクの大きさに見返りが比例しているものです。そうでなければ、だれも多くのリスクはとらなくなります。それゆえ投資でも、「ハイリスク・ハイリターン」というような言葉が使われるわけです。

ダイバーシフィケーションは、限られたものに賭ける「ハイリスク・ハイリターン」を、分散させていろいろなものに賭ける「ミドルリスク・ミドルリターン」へとシフトすることを意味しています。この「ミドル」という言葉ですが、これはここでは便宜上使っただけで、実は適切な調整をすることによって、自分にぴったりのリスク・リターンレベルを実現することになりますが、これは後への課題として残しておきましょう。ここでは、ダイバーシフィケーションは、投資金額を複数の対象に分散させて、リスクを下げること、大当たりはなくなるが、大外れもなくなる状態を実現することと頭にとめてください。

 

ダイバーシフィケーションの力

ダイバーシフィケーションの考え方は様々な投資対象に対して適応できますが、ここではてっとりばやく株を使って説明します。二つの株を考えましょう。A会社とB会社です。A会社だけ、B会社だけ、どちらか一つだけに投資している状態は、ダイバーシフィケーションがまったくない状態です。一社の株に全額投じそれが上がれば大きく儲かりますが、下がれば大きく損をします。そこでこの二つ株に同時に投資することにします。A社とB社は扱うビジネスの内容も競合環境もまったく異なるので、値動きがシンクロナイズしない、つまり値動きが同じパターンではないとします。そうすると、たとえば・・・

A会社の株が$5値下がったとき

B会社の株は$10値上がった

といような、動きがみられることになります。大体の場合において、A社とB社の値動きはこのように相反するパターンだったとすると、A社とB社は一緒に持つと効果が相殺されてそこそこの利回り(この場合は相殺して$5)で安定させることができるという結果になります。リターンも下がったがリスクも下がった、ミドルリスク・ミドルリターン状態になりました。ここで難しい計算式なしに大切な事実をお伝えすると、このとき、リスクもリターンも下がったものの、リターンが下がった効果以上にリスクが下がるということです。リスクもリターンも同様なペースで下がったのなら、それほど喜ぶことでもないかもしれませんが、リターンを同じくらい犠牲にせずにリスクだけをより下げることができたということです。

一つの会社より二つの会社のほうがリスクが低くでき、ダイバーシフィケーションのはじめの一歩が踏み出せたわけですですが、これを二つだけでなくより多くの株へと増やしていくと、さらにダイバーシフィケーションが進んでいくことになります。

しかしながら、このダイバーシフィケーションはどの程度まで必要なのでしょう。たとえば株式をとった場合、いくつあればいいのでしょう。ひとつの株から始まり、ふたつの株、みっつの株と数を増やしていき、ポートフォリオ全体のリスクを計るというスタディーがあります。最初は株ひとつのポートフォリオだったのが、だんだんと5種類の株で構成するポートフォリオ、10種類の株で構成するポートフォリオという具合に株の数を増やしていくわけです。もちろんここで選ぶ株はできるだけ値動きのパターンが同じでないもの、つまり相殺効果が高いものを選んで加えてやります。

結果は、株ひとつのポートフォリオにもうひとつ株を加えて株ふたつのポートフォリオにするとリスクは激減しました。これは上述のA会社とB会社の例に現れています。AとBは相反する値動きをするので、ポートフォリオ全体としてはリスクが相殺され安定しました。そこにもうひとつ株を加え、株3つのポートフォリオにすると2つめの時ほどではないですが、リスクが軽減されました。さらに、株4つのポートフォリオにするとやはり3つめの時ほどではないですが、リスクが軽減されました。

こうして株の数を増やしていくと、ポートフォリオのリスクはだんだんと減っていきますが、ただそのリスク減少度は徐々に低下していきました。下はイメージ図です。

以前このブログでは、20株もあればかなりの効果が得られ、それ以上増やしても軽減できるリスクには限りがあるというような結果をご紹介しました。また、このようなリサーチはこののちもいくつも行われ、ある時は30株、ある時は50株あればよいという結果もでています。ただ、このような研究結果は、そのまま「20株持てば大丈夫」とか「30株あればOK」というように短絡的にとらえてはならないことが後になって指摘されています。なぜなら、ある株式がすでにポートフォリオに含まれている他の株式と全く同じ動きをしない、つまり少しでも動きが違い「相殺効果」がある分においては、その株式をポートフォフォリオに加えると、たとえ小さくともリスク減少の効果はあり続けるからです。分散をするほどリスクが下がっていき、ある程度分散すればだんだんとその下がりは減速するものの、リスク減少は下がり続けるわけです。

実際、完全に全く同じ動きをし続けるふたつの株銘柄というのはありえませんから、つまり株はいくつでも増やせば増やすほど、リスク分散という意味では好ましいということになります。問題は、どう増やし続けるかです。 第2回では、具体的に投資対象を増やしていき、リスクを分散させるダイバーシフィケーションを実際にどうやって実現していくかについて見ていきます。

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